tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

エネルギー循環を人間の手で:頑張る日本

2024年09月10日 14時31分56秒 | 科学技術

これからは水素の時代だといわれています。   

人類社会の発展には、ますます多くのエネルギーが必要のようです。例えば、AIの普及に従って膨大なエネルギー需要が発生するといわれています。その一方で、環境問題が言われSDGsが重視されます。

その中で、日本は、石炭火力を使うということで2年連続ですか、不名誉な「化石賞」の受賞をしています。この辺りは政治のレベルの問題で、日本の科学技術の現場はクリーンエネルギー開発で大いに気を吐いているようです。

クリーンエネルギーのチャンピオンは「水素」のようで、「これからは水素社会」などと言われます。 

水素はよく燃えますが、燃えた結果は「水」ですから環境への悪影響はありません。

それだけではありません。これまで使ってきた燃料、藁や木材から石炭・石油などは炭素が燃えてCO₂になるから問題ですが、このCO₂に水素を混ぜてやると燃料になるメタンを作ることが可能になっています。これはメタネーションと言います。

つまり水素は燃やしても環境問題は起こさず、環境問題の元凶のCO₂を再び燃料に変えるエネルギー循環も可能になるのです。

水素は空気の中に2割ほど含まれているのですが、水素を集めるのは大変なようで、一番便利な方法は水に電気を通して、水素と酸素に分解する方法です。

原理は解っていて理科の実験でもやることですが、電気エネルギーが必要ですから問題は効率です。

そこで問題になるのが安い電力コストと、少ない電力で水を効率的に酸素と水素に分解するための「触媒」などの金属や構造物です。

最近のニュースでは信州大学が、雪が少なく日照時間が長い長野県の飯田地方で、人口光合成、水素製造の、世界最大規模の実証研究施設を2025年スタートさせるプロジェクトを発表しました。

人口光合成というのは、地球上では植物がやってくれているCO₂と水から太陽光によって、人間の呼吸に必要な酸素と炭水化物の根や幹・枝・葉を作るという作用を人間の手でやろうということで、これにも触媒などの研究開発が大きな役割を果たすものと思われます。

この「触媒」や構造物などには白金やイリジュウムといった貴金属、希少金属などが有名ですが、希少なために高価なものが多く、化学反応のコストの大きな部分を占めることが多いようです。

ところで、こうした触媒や構造物、蓄電池や電気分解に使う電極材などについては、日本の材料分野の研究が大きな成果を上げているようです。

マスコミが報道しているものでも、理化学研究所の水の電気分解に使う水素吸着材の性能を2倍に引き上げた研究がありました。

同じく水の電気分解の際の消費電力の1割削減を達成した電極材の開発など地道な研究の成果も住友電工から報告されています。

更には、東京ではどこの家庭の毎日お世話になっている東京ガスも,水の電気分解の研究には熱心で、装置の中核部品のセルスタックの性能を高度化しつつコストを3分の1に下げるということです。

旭化成も水の電気分解ではグリーン水素プロジェクトの先行企業で、福島県浪江町の研究フィールドは来年には事業化を目指し、事業の海外展開も視野ということのようです。

未だニュースを拾えばいろいろなものがあると思いますが、こうした分野は伝統的に日本の得意技ということもあり、水素時代の先取りといった形での動向は世界の注目にもなっているようです。

思い起こせば、高度成長期の日本も、こうした頑張る企業の挙げた成果が積み重なって日本経済を高度成長に押し上げたように感じているところです。

「これについては日本に頼まなければ」といった企業が増えれば、世界にとっても日本は重要な国ということになるのでしょう。