tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

外交にも欧米流と日本流? トランプ・安倍会談

2017年02月11日 11時41分50秒 | 国際関係
外交にも欧米流と日本流? トランプ・安倍会談
 今朝、テレビを見ていましたら、トランプ大統領と安倍総理が、本当に親しげに握手し、抱擁しあうところが映っていて、何はともあれ一安心しました。
 共同記者会見の内容も報告されましたが、内容は大変結構なものでしょう。個人的信頼関係の構築への自信が日米の首脳から示されたと解説されています。

 この経緯を見ながら、私は外交にも日本流と欧米流がるのかな、といった感覚を持ちました。そして、ここまでのところ、日本流の外交が、その効果を適切に発揮したように感じています。勿論これから、多くの問題はあるでしょうが。

 例えて言えばこんなことです。
 このブログでは、 企業における人の採用について、欧米では、企業で、仕事に欠員や補充の必要が出来たとき、求人広告を出し、「これこれの職務の出来る人求む」というのが求人です。その仕事の出来る人が来れば採用します。日本の様に新卒一括採用はありません。

 日本の場合は、新卒一括採用も含めて、企業としてよく働いてくれそうな人を「人間として」採用します。その上で訓練し仕事に慣れさせ、適職に当て嵌めていきます。
 採用では「楽しく一緒に働けそうな人を採用する」といった人事担当者もいます。

 欧米は職務中心、日本は人間中心です。どちらが長い目で見て企業の仕事がうまく行くか、今、日本でも甲論乙駁の議論があります。安倍政権の「働き方改革」は、日本流を改め、欧米流に変えていこうという考え方が主流になっています。

 ところが今回の安倍さんの外交はまさに日本的なアプローチの典型です。個別の問題を持ち出せば、当然意見の食い違う事ばかり出てきますから、喧嘩別れか物別れでしょう。メキシコ大統領とはいわば喧嘩別れ、イギリス首相とも意見の食い違い、多くの国の首脳がトランプ政策に苦言を呈するといった状態です。

 トランプ大統領は、日本にも、自動車や為替、防衛費負担の問題でいわば喧嘩を売りました。しかし安倍さんは、そうした具体的問題には全く触れずに「首脳同士の信頼関係の確立」を目指して、まさに「一途に」人間同士の付き合いを目指したようで、その最初の結果が、今朝の報道という事でしょう。

 「安倍さんも、やっぱり日本人だったんだな」というのが私の感想です。今回の安倍外交は、政策中心ではなく、全く人間中心のアプローチです。日本人でないと、そういう発想はなかなか生まれないと感じるからです。権謀術策でそこまでやるというのは至難でしょうし、どこかで馬脚が出ます。

 トランプさんにしても、四面(二面ぐらいかな?)楚歌の中で、内心は不安感も強いでしょう(大統領令にサインしても、かつての 勝ち誇った自慢気の笑みは消えました)。そこに気心の許せる1人の外国首脳が現れたのです。

 このアプローチが最後まで成功するかは、まだ解らないというしかありませんが、具体的政策問題は担当責任者に下りるでしょう。そこでは、理詰めの話も可能になるでしょう。
 
 今回のこの問題は、外交、政治やビジネスにおける、「政策や職務」vs.「人間関係」についての大変面白い「ケース・スタディー」の教材になるのではないでしょうか。

2017春闘、労使と政府に期待したいこと

2017年02月10日 12時18分18秒 | 労働
2017春闘、労使と政府に期待したいこと
 アメリカの混迷はますます深まるようです。トランプさんには司法の逆風が吹きつけています。安倍さんもタイミングの悪い時に訪米ということになって大変だと思います。でもまあ、アメリカの問題はアメリカの良識に期待して、ここでは今春闘の問題を考えてみたいと思います。

 先日、今春闘では労使が共に、日本の人口減少問題について、マイナスを嘆くのではなく、 「プラスに変えよう」と言っていることを指摘しました。
 労使が本気でそう考えれば、それは確実に実現可能でしょう。何せ、日本経済を現場で動かしているのは労使ですから。

 「経労委報告」では「はじめに」で「人口減少という構造的問題と社会保険料負担の高まりによって生じている「将来不安」が賃金引き上げの効果を減殺している。元気な日本を取り戻すためには、国民に広がる不安を払拭することが何より重要であるとの思いを皆で共有し、官民挙げて取り組まねばならない」と言っています。

 「連合白書」では、「超少子高齢化と人口減少を鑑みれば、社会保障費の増大は不可避である。必要なのは給付と負担において公平性と透明性が担保されていること、そしてすべての働く人が、応分な負担を引き受けられるような水準にまで所得を引き上げることである」と公平性と透明性の大切さを指摘しています。

 勿論、放っておけば高齢化の負担は重くなるばかりですから対応策が必要です。この対応策について、今春闘では労使が共に積極策を提言していることは注目すべきだと思います。

 経団連は「人口減少によって生じる様々な制約や問題克服のカギとなるのが「生産性の向上」であると書き、そのための手段としてAIやIoTの積極的活用にも言及しています。
 連合は、「イノベーションがもたらす挑戦」(白書p11)で同様にIoT、AIを挙げ、「第4次産業革命」の中で企業はイノベーションに挑戦する以外に道はなく、そのイノベーションを起こすのは労働者で、労働者は自らの能力とスキル向上を迫られている。「イノベーションは労使双方に挑戦をもたらす」と書いています。

 こうしてみると、ジャパンシンドロームなどと言われ、まさに漠然とした不安状態の中で閉塞感の強い日本経済・社会ですが、労使はともに、今春闘を契機にイノベーションと生産性向上を突破口に、その脱出を明確に企図していることが知られます。

 ならば、今年の労使協議の中で、徹底してこの問題を議論しあったら、必ず大きな成果に繋がるのではないでしょうか。
 石油危機の時も、 日本の労使の話し合いで、危機を克服、ジャパンアズナンバーワンと言われる経済社会を実現し、プラザ合意による2倍の円高の時も、労使の話し合いで「 いざなぎ越え」に漕ぎつけた実績があります。

 さすがにリーマンショックの際は、異次元金融緩和という金融政策の助力を必要としましたが、今、人口減少という、自らに起因する困難に対して、労使が対応の基本認識で一致したことは、克服への行動は緒に就いたという事ではないでしょうか。

 労使が一致して働きかければ、政府は動かざるを得ません。石油危機の時もそうでした。賃上げしても消費が増えない春闘から、賃上げを「生かす」春闘へ、労使のより良いコミュニケーションが起点でしょう。
 今春闘、労使への期待は大です。

経常収支黒字21兆6000億円、9年ぶり高水準

2017年02月08日 11時51分04秒 | 経済
経常収支黒字21兆6000億円、9年ぶり高水準
 財務省が今日発表した2016年の我が国の経常収支は、21.6兆円余の黒字だったとのことです。これは2007年の24兆円以来の高水準だそうです。

 2007年と言えば、リーマンショック直前の年で、直後のリーマンショックで日本の金融機関や証券会社はバランスシートに大穴が空き、多くの方々が、一生懸命貯蓄に励んでいた投資信託や外貨建て証券、外貨預金なども価格が暴落して折角の貯蓄が大きく目減りしてしまったなどという経験をお持ちの方も多いと思います。

 そんなことを書いたのも、このところ日本の家計の貯蓄率は高まり、消費支出は停滞して、そのせいで経済成長率は低迷、政府の経済政策が、どうにも思うようにいかない原因になっているといった状況があるからです。

 勤倹貯蓄は立派な精神ですが、何事も「過ぎたるは及ばざるがごとし」で状況を見ながら、適切に判断しないと結局無駄になっていしまうという事も良くあるからです。

 このブログでは、政府の政策が、将来不安を作り出しているので、国民は将来の生活防衛のために貯蓄に励むといってきています。そして、国民が日本の将来、自分たちの生活の 将来に希望や安心を持てるような政策の必要を指摘し続けています。

 その意味から考えてみますと、経常黒字21兆円というのは、この1年間で日本人が稼いだ金の内21兆円を使い残したという事です。
 つまり21兆円は日本として貯蓄になっているのでから、もしこの21兆円を使い切れば、経済成長率は4%ほど高くなりことになります。貯蓄を半分にして、10兆円を使っても経済成長率はプラス2%で、安倍さんは大喜びでしょう。

 もしこうして経済が成長すれば、将来についてもそれなりの展望も出来てくるわけで、賃金も利益も共に増えるようになり、金利も正常化して、定期預金に預けておいてもきちんと利息が付いて、貯金が自動的に増えるといった昔に返ることにもなるでしょう。
 年金設計などもしやすくなり、将来不安も次第に和らぐことでしょう。

 もう一つ付け加えれば、トランプさんは、アメリカの赤字の元凶として黒字国の中国や、日本などを標的にしているようですが、多分その手段としてドル安、円高を考えているのでしょう。理不尽なことですが、対応は至難でしょう。 
 その予防策としても、日本は大幅黒字ではありません、アメリカに損害を与えているようなことはありませんよ、といえるようになります。

 経常黒字は日本人の勤勉の証でもありますが、それがかえって仇になって、日本人自身が損をするようなことを避ける工夫が、政府、企業労使、国民の皆に必要なようです。

アメリカの利上げ遠退く、日本は?

2017年02月07日 12時48分03秒 | 国際経済
アメリカの利上げ遠退く、日本は?
 アメリカの金融政策の正常化は昨年12月順調に進み始めたかに見えましたが、今年に入って、また先行き不透明になったようです。

 今年は3回の利上げなどと言われていましたが、最近の報道では3月は取りやめになる様で、足元の雇用は堅調で、物価も2%強の上げ基調ですが、、政治の混乱は当分続きそうという事で、先行き見通しを固めることは容易ではないでしょう。

 昨年来の雇用堅調というのも、経済実態を反映しての事なのか、トランプ発言で「雇用創出」が連呼されるのを先取りした形なのか、読み切ることは難しいでしょうから、雇用と物価を判断材料にという利上げ方針も、安易な判断はできないというところではないでしょうか。

 トランプ発言を先取りしてでしょうか、米国各地で最低賃金の大幅な引き上げがみられたりといった動きもあるようですが、ただでもコスト高のアメリカで、「偉大なるアメリカ」の掛け声に反応して、雇用や賃金に対する先取り現象が出るようであれば、トランプ経済政策には黄信号が出かねないでしょう。

 3月の金利引き上げがなさそうということで、ドル安・円高になっているようですが、トランプ大統領は、アメリカの貿易赤字の原因という事で、日本も為替操作国に入れてしまったようです。
 
 為替操作国の定義は難しいでしょうが、リーマンショックの後、異次元金融緩和、2%インフレ目標という政策を打ち出したのはアメリカで、そのお蔭で円は$1=¥120から80円に大幅円高になりました。

 黒田日銀の異次元金融緩和はまさにそのコピーですが、アメリカならOKで、日本がやると為替操作になるというのがトランプ大統領の判断のようです。
 現実には、トランプ大統領のツイッター次第で、$1=¥は1~2円容易に動きますが、これも結果的には為替操作と思う人は多でしょう。

 少し余計なことを書いてしまいましたが、前にも書きましたが、 矛盾の多いトランプ経済政策では、アメリカ経済の安定的な成長、黒字国への転換は容易ではないように思われ、漸進的、着実な経済と金融の正常化を目指しているFRBの路線と整合的に動くことは、短期の思惑はともかく、中長期には極めて難しいでしょう。

 アメリカが利上げを着実に進めるというのであれば、そうは円高にならないという見通しも立ちましょうが、アメリカが混乱を極める中で日本は、経済政策、その与件となる為替政策をどうするのか、ますます問われそうな気がして心配しています。

アメリカの混迷はどこまで行くのか

2017年02月06日 10時58分32秒 | 国際政治
アメリカの混迷はどこまで行くのか
 このブログでも、トランプ大統領の就任演説から、その後の動きを追ってきましたが、状況はますますひどくなるようです。

 「三権分立」が「三権相克」といった状況にまで発展しそうな、成熟した先進国では考えられないような事態にまで発展しつつあるというのでは、アメリカはどうなってしまうのかと案じざるを得ません。

 大統領選の最中から、「アメリカは途上国に戻ってしまったのか」という感覚を持っていましたが、今、アメリカの世論は二分し、半数の先進国マインドと半数の途上国マインドがせめぎ合うようなことになっているようです。

  ツイッターというごく短い文章で、極めて大事な事を言おうとする「言語文化の退化」も一役買っているようです。
 言語は人間の相互理解に極めて重要な役割を持っていますから、これは大変恐ろしいことのように感じられます。

 さきに、「第一に、トランプ氏本人の発言や行動が選挙戦の中でのものからどう変わっていくか、第二に、共和党の主流派との関係がどのように収まるのか、第三に、反トランプ・デモの今後、「アメリカの融和」がどう進行していくのか、の 3つが今後の推移を決めるのではと書きましたが、事態は混迷の一途のようです。

 トランプ現象はフランスにも飛び火しそうな様相も見えます。しかし、世界の主要国が、内向きになっていったら、世界はどうなるのでしょうか。二度の世界大戦の苦い経験を経て国際からグローバルへと進歩してきた人類の知恵はどうなったのでしょうか。

 今のトランプ政権の状況では、このブログが提唱して生きた「 NGR」などは一顧だにされないでしょう、企業には社会的責任を求めても、国には地球的責任を負う必要はないというのでしょうか。

 道義的、社会的責任は個人から企業までは進歩しましたが、国レベルになると「必要ない」というところで、人類の知恵の進歩は止まってしまっていいのでしょうか。
 まだまだ未熟なホモ・サピエンスです。進歩をやめてしまったら、世界はどんなことになるのか、終末時計がジョークであり続けて欲しいものです。

日米首脳会談:安倍総理の手土産と忘れ物 (つづき)

2017年02月04日 17時09分02秒 | 国際関係
日米首脳会談:安倍総理の手土産と忘れ物 (つづき)
 公的年金積立金をアメリカに投資するという報道でビックリしましたが、昨日安倍総理が、衆院の予算委員会で「そんなことは私一存でできるはずがない」と答弁していましたから、まあ一安心です。しかし、もともとGPIFは、海外株式にも投資するのですから、アメリカ株も買うでしょう。今後も損しないように願いたいものです。

 ここで本当に言いたいことは、アメリカに協力したいという安倍さんの気持ちは大事ですが、2つほど問題があるという事です。
 1つは、アメリカは世界一豊かな国だという事です。日本の経済協力を欲しい国は世界中に沢山あります。皆日本より貧しい国です。経済協力は貧しい国優先でしょう。

 世界一豊かな国が、赤字だからと言って、巨額な経済協力をする必要があるのでしょうか。このブログでは NGRという概念を提唱していますが、本当はアメリカが自身の生活態度を改め、黒字の国にして、世界に貢献できるようになることが必要なのです。

 そのために本当は黒字国日本が、赤字国アメリカに黒字国になるためにはこうしましょうと「カネ」ではなく「ノーハウ」を提供することが重要なのでしょう。
 企業の例でいえば、かつてトヨタが、GMの最悪の工場といわれたフリーモント工場をNUMMI という形で立派に建て直したようなことを、国レベルでやることでしょう。
 
 但しそのためには、赤字国が黒字国に学ぶ気になることが必要で、トランプさんのように「アメリカは被害者だ」という意識の塊では望み薄です。

 2つは、世界一豊かなアメリカが、「稼ぎより支出が多く」、赤字を何十年も垂れ流していて、一向に改まらないという状況の下で、いくらアメリカにカネをつぎ込んでも、投資の収支が黒字になる可能性は小さいという事です。

 50兆円の投資がどれだけのリターンを生むか採算のめどが立つのかどうかです。金融機関が融資や投資をするにしても、頼まれたからとか、いろいろお世話になっているからとか、気の毒だから、などという事でしたら、経営者は背任という事になるのではないでしょうか。
 金融機関には、再建計画の提案や指導、実施状況の把握など指導・監督が求められます。

 こう考えてみると、報道からしかわかりませんが、安倍総理訪米の中で、の忘れ物と思われるのは、「アメリカは世界のために損ばかりしている」という被害者意識でアメリカを纏めることではなく、アメリカ自身が世界最大の経済力を持ち、「覇権国」「基軸通貨国」としての役割を担う責任感を持ち、自らを律して、世界から尊敬される国になることが何よりも大事だという事を、トランプさんに気付かせるような「知恵や仕掛け」を、手土産と同時にもっていくことなのではないでしょうか。
 安倍さんにそこまで要求しては酷かな?

日米首脳会談:安倍総理の手土産と忘れ物

2017年02月03日 10時38分49秒 | 国際関係
日米首脳会談:安倍総理の手土産と忘れ物
 今朝はまた大変なニュースが入ってきました。安倍総理が2月10のトランプ大統領との会談で、信頼関係の構築に役立つようにというのでしょうか、50兆円の対米投資で、米国に70万人の雇用を創るという手土産を持っていくという事のようです。

 トランプさんとの信頼関係を促進するためには、このぐらいの事をしなければというのかもしれませんが、信頼関係というのは、手土産の大きさによるものなのでしょうか。
 日本は黒字国ですが、日本の政府には金がありません。毎年大幅赤字で、「2020年にプライマリー・バランス回復」という見通しも絶望的です。

 その政府が50兆円をどこから捻出するのかですが、民間企業に対米投資促進を言うのならまだしも(判断は民間企業がしますから)、まさか増税や国債発行という訳にもいきませんでしょう。報道によれば、外為特別会計や公的年金積立金の流用まで考えているようです。

 外為特別会計は、トランプさんが「日本は為替操作国だ」と言いそうなので、その口封じという事かもしれません。 
 しかしタダでも足りない公的年金の積立金という事になると、安倍総理の頭の中はかなりおかしなことになっているように思えてなりません。

 これは国民からの借金です。政府債務です。GPIFの株式運用で損を出せば政府は非難されます。非難だけではなく、国民の将来不安を増幅するのです。日本経済に大きなマイナスです。

 安倍さんは「アメリカの再建に協力すれば、必ず大きなリターンになって返ってくる」と言うつもりかもしれません。しかしそんなのは夢のまた夢です。
 リターンを伴って返って来る可能性と、日本の対米投資失敗という可能性とどちらが大きいか、よほど慎重に考えなければならないでしょう。トランプ流のビジネス勘定が必要でしょう。

 具体的問題は山ほどあります。事の中身は次第に明らかになるのでしょうが、現状では、年金で生活する一人の国民として、朝刊を見た途端に、朝食の量が半分に減るほどの不安感に襲われたことを報告するにとどめたいと思います。
「忘れ物」については、次の機会に回したいと思います。

キリギリスの逆襲

2017年02月02日 10時48分42秒 | 国際関係
キリギリスの逆襲
 このブログではイソップの寓話になぞらえ、日本人をアリに例え、ギリシャやアメリカをキリギリスに例えてきました。

 いま日本は「アリ精神」が行き過ぎて、消費と貯蓄のバランスが貯蓄超過になって、経済成長にブレーキがかかっていると見ています。

 一方アメリカは「キリギリス型」で消費に偏り、万年赤字になっています。国内が消費中心で投資がないと、生産は外国に頼ることになり、国内では生産があまり行われなくなり雇用も減ります。
 
 トランプさんは、国内の雇用を増やすことを掲げて当選したのでしょうが、「みんな働いて競争力のある生産をしよう」というのではなく、「輸入先の外国が安くて良い品を売り込むのがいけない」と日本の自動車産業などを口撃しています。

 これではまさに「キリギリスの逆襲」です。イソップの教えは「遊んでばかりいると後から苦労しますよ」という事なのでしょうが、イソップならぬトランプによれば、「働き好きのアリが怪しからん」という事になるようです。

  ツイッターのような不十分なコミュニケーション手段で、世界中に影響するような大事な事を伝えようとしても、多分、本当の思いはうまく伝わらないのが通常でしょう。あとからいろいろ補足したりしていますが、広がった情報はそう簡単には変えられません。混乱は起こすのは簡単ですが、収めるのは大変なのです。

 大統領令になると、内容はもう少しはっきりするのでしょうが、トランプさんが大統領令に署名するときのあの誇らしげなお顔は何となく不気味ですね。

 安倍さんも、近じかトランプさんとの首脳会談という事ですが、「信頼関係を築きたい」という発言は、当を得たものだと思っています。
 首脳会談といっても、人間どうしですから、首脳どうし個人間の信頼関係がなければ、まともな二国間関係は成り立たないでしょう。

 権謀術策の上でのバランス関係という外交もあるでしょうが、日本人はそういうのは多分下手で、すべては信頼関係が出来てからというのが、日本人には向いていると思うからです。
 
  現状は世界中が混乱といった状況ですが、批判や悪口の言い合いだけではない、「正常な」でしょうか、「まともな」でしょうか、「合理的な」でしょうか、世の中を丸く収めるような首脳どうしの人間関係をまず考えるのが、日米のためにも、世界のためにも大切だという気がします。

 世界の平和はそこから始まるのでしょうし、そうでないと不信と混乱が、「終末時計をさらに進めるような」ことになりかねません。人類の知恵が試されているのでしょう。

消費性向の回復:政府に期待したい政策

2017年02月01日 21時18分15秒 | 経済
消費性向の回復:政府に期待したい政策
 前回は丁度、労使の春闘への基本政策が出ていたので、その中で、将来不安にかかわる高齢化・人口減少の問題についての労使の見解を見ました。
 注目した理由は、労使が共通して、高齢化、人口減少を悲観せずに、それを克服して将来の明るい展望を開く新しい発想を提起していることです。

 政府に要請されるのは、こうした労使の共通の思いを確り汲み上げて、そのための環境整備を実行することでしょう。経済活動のプレイヤーは民間労使であり、政府はそのための環境整備役なのです。
 その政府が、プレイヤーに加わって、賃上げをしろと毎年言っても、結果は出ません。自分のやるべきことをやっていないからでしょう。

 ではやるべきことは何かというのが今回の課題です。目的は「将来不安の解消」です。労使はすでに動き出そうとしています。
 
 政府は、企業の先行き不透明感の解消のために何ができるか、年金制度への不安感解消のために何が出来るか、現実の生活への不安感解消のために何ができるか、将来不安解消のために国民が励む「 貯蓄への不安感解消」のために何ができるか、などと言うのが、これまでの「なぜ」から出てきた問題点でしょう。

 企業の先行き不透明感の最大の原因は「 為替レートの変動」でしょう。今日の報道でも、トランプ新政権は、日銀の異次元金融緩和の批判を始めそうだという事で、1円ほどの円高に動いています。
 正直言って、今、この問題には、対応不可能です。嵐が過ぎて、はじめてまともな議論が可能になるのでしょう。(タイミングが悪すぎました)

 現実の国民生活上の多くの不安は、経済成長しない、賃金が上がらないといったことにあるように思われがちですが、そのじつ「乏しきを憂えず、等しからざるを憂う」といった側面の方がずっと大きいと思われます。
 日本は世界で見ても豊かな国です。国民所得の配分の仕方によって、豊かさの均霑は可能です。

 このブログでは、資本主義が生き延び(共産主義が破綻し)たのは、経営者革命(経営者の登場、資本家の退場)と社会保障・福祉国家の登場によると書いてきました。
 政府が、適切な国民所得の再分配政策を導入し、格差を縮小したことで、資本主義は共産主義に勝ち、サバイバルを果たしたのです。
 
 今、日本は、かつてに比べて、格差社会化が進んでいます。1つだけ端的な例を言えば、所得税の累進課税の状況は、かつての最高税率80%超から50%に下げられています。
 格差問題の原因の1つ、非正規従業員の問題については、企業の問題の方に書きました。

 公的年金問題については、制度の問題は専門家が納付者の縮小をはじめ多くの問題を指摘しています。ここでは財政問題として、安倍総理が、消費増税の延期や、GPIFの損失などのたびに、「年金の支給には影響はありません」(プライマリーバランスの2020年達成についても同じですね)といった全く不合理な説明を平気で繰り返すといったところに、国民の不信感、不安感の大きな原因のあることも指摘しておきましょう。

 社会保障の税の一体改革の中でも、消費税の増収(延期による減収)が、社会保障の掛金や給付に具体的にこれだけ役立ちました(マイナスでした)といった、我々にもわかる説明はありまあせん。正しい情報を国民とシェアする姿勢が足りないようです

  ゼロ金利 マイナス金利については、為替レートとの関連で、問題は沢山ありますが、金融を緩めれば必ず経済にプラス効果があるとは限らないことが分かってきました。2%インフレにこだわる理由もはっきりしませんが、「流動性の罠や」「ゼロ金利の罠」の存在の含め、出来るだけ早期に金融の正常化の目指す方向への切り替えが必要でしょう。

 トランプ政権の発足で、政府の役割は一層難しいものになりました。しかし、この点だけははっきりしています。
日本は豊かな国なのです。500兆円超のGDP ・ GNIを、国の手でいかに適切に再分配するかを、 国民の意向を適切に聞きながら具体的な政策に繋げていけば、国民の理解と信頼が生まれ、自ずから突破口は開けるのでしょう。

 今の状況では、国民の将来不安は増すばかりで、消費不振は続くでしょう。まず、国民との正確な正しい情報の共有、独りよがりでない国民との真摯な対話が基本になるようです。