tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

アメリカの消費者物価と日本の株価

2024年09月12日 16時55分18秒 | 経済

アメリカの消費者物価指数と日本の株価に直接の関係があるわけではありませんが、間接的には大変な関係があることもあります。

今日の日本の株式市場は大変堅調で、日経平均は一時1200円を超える上昇です。このところずっとアメリカの中央銀行であるFRBが来週には政策金利を引き下げることが確定的とみられていて、そうなると日本株は下がらざるを得ないということで、元気だった日本の株式市場も、下げ続ける状況になっています。

ところが昨日アメリカの8月分の消費者物価指数が発表になったことをきっかけに、今日の日経平均は大幅の上昇になったわけです。

先日は、アメリカの雇用の増減が日本の株価に影響するという点にも触れましたが、今度はアメリカの消費者物価指数です。

ことほどさように、アメリカ経済の一挙手一投足が日本の株式市場に影響するということですから、アメリカの消費者物価はどんなことになっているのか改めて見てみようということで、その動きと主な内訳も見てみました。

(グラフが見にくくて済みません 資料:アメリカ労働省

日本の7月の消費者物価指数の対前年上昇率は2.8%で、その中で日本経済固有の原因によって動くコアコア指数の上昇率は1.9%と政府、日銀の目標とする2%インフレを漸く割り込んできました。 

アメリカの8月の消費者物価指数の対前年上昇率は2.5%で日本より低いのですが、2か月連続で前月比0.2ポイントの上昇が続いて沈静化の動きがないということのようです。

中身をみますと、はっきりしているのは今のアメリかはモノの価格は上がらないが、それに引き換えサービスの値段は上がっているという事実です。

家内食は安上がり、外食は高い。燃料やガソリン価格が下がっても電力やガス料金は上がっている。全体的に商品は下がっているが、サ-ビス料金は上がっているということで、消費者物価指数上昇の原因は人件費ということになるのでしょう。

結果的に、アメリカのコアコア指数、「食料とエネルギーを除く総合」は前年比3.2%の上昇で、前月比では0.3ポイントの上昇で前月より0.1%の加速ということです。つまりこれは賃金インフレの再燃の恐れを示唆するという判断につながるのでしょう。

賃金インフレ加速の恐れがあれば、金融をあまり緩めるわけにはいかない、18日に決まる政策金利の引き下げは小幅なものにすべきだろうということになりそうというのです。

元々生先金利を0.5ポイント下げるか0.25ポイントにするかで議論になっていて、インフレマインドを止めるためにも0.5%という予想が一般的だったのですが、昨日の消費者物価指数の発表で風向きが急変です。

引下げが小幅になれば、日米の金利差は予想ほど縮まりません。金利差縮小が小さければ、円高への影響は小さくなり、円高が急には進まないというのでれば、日本の輸出産業のうける痛手は当然軽くなります、というわけで、電機や自動車などの企業の株価は上がるという因果関係の連鎖を読んだ予測で株価は動くようです。

それにしても、日本は、アメリカのお蔭で、いろいろと大変ですね。


政権は国民に対し責任を取る必要はないのか?

2024年09月11日 17時12分01秒 | 政治

岸田総理は、次期総裁選に出ないことになりました。これに対して、多くの人は岸田内閣の評判が悪く、これで立候補しても格好がつかないからと理解しているようです。

中には、政治資金問題もけじめがつかず総理総裁として責任が取れないからだろうとか、3年の在位のうち、25か月も連続で実質賃金が下がったのだから責任を取るのが当然だ、などという意見もあるようです。

しかし総じて見ますと「責任を取った」というのではなく「出ても格好がつかない」からとか、「どうせ出てもだめだろうし」といった見方が多いようです。

そういえば、今度の裏金事件でも、賃金は下がるし、経済も少しも良くならないという問題でも、政権、政府の責任という言葉は、あまり聞いたことがありません。  

責任という言葉は、日本人の感覚からすれば「強すぎて」そこまで言われては立つ瀬がないから「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」と頭を下げる程度で済ませたいし、「済ませてやってもいいか」で「済まないで済んでいる」という事になるようです。

「それも日本的でいいのかもという意見もあるかもしれませんが、お蔭で長い目で見ると国民が大変な目にあっているのに、政権には自分の責任という意識がなく結果が大変なことになってしまっているようなこともあります。

勿論、裏金問題も、実質賃金低下問題も岸田さんだけに責任があのではなく、その前からの問題の累積の結果という面が大きいので、岸田さんだけを責めても詮無いことでしょう。 

しかしそう言ってしまうと、問題は解決されないので、やはり結果が悪いことが解れば、その時点で、原因の全てを明らかにし、禍根を断つことは必要なのでしょう。

日本の政権、政府は、本来、日本の社会や経済全体をより良いものにするという国民の輿望を担って、「私(私たち)がやります」と立候補したのですから当選の暁には、その実現に全力を尽くすのが役割です。

そういう意味でいうと、戦後の自民党政権はその役割を果たしたように思います。

ところが石油危機も世界に先駆けて克服、「ジャパンアズナンバーワン」などと言われるようになると政権の指導力と過信し、驕り高ぶって、プラザ合意(G5)で円切利上げに安易にOKを出すような世紀の失敗をやってしまっています。

自民党の中にも、モノのわかった人はいて、宮沢メモによれば、G5から帰国した竹下大蔵大臣に、宮沢さんは「竹下さん、あなた、自分が何をやってきたか解っているのですか」と自民党要人の前で面罵したとのことです。

時の総理は「ロン・やす」で、レーガン大統領と「仲良し」の中曽根さんでした。宮澤さんの心配に関わらず、竹下さんは総理になり、後程、宮澤さんが総理になった頃には「あの時は毎日のように大幅に円高が進んで大変困りました」(宮沢回顧録)ということで日本は円高不況の中で長期経済停滞に落込んだのです。

その後、2008年のリーマンショックでは、アメリカのゼロ金利政策が齎した、さらなる大幅円高への対抗政策もなく日本経済は瀕死の数年間を過ごしました。

2013-14年と漸く日本もゼロ金利政策を取り、円高は解消しましたが、その後の経済政策はスローガン倒れで、実質経済成長は今に至るゼロ近傍を続け、実質賃金が25か月連続前年比低下という未曽有の記録も作り、この間1人当たりGDPはかつての世界ランキング1桁の常連から2023年には32位に転落しています。

これを経済政策の失敗、経済外交の失敗と言わずして何と言ったらいいのでしょうか。

はっきり言ってしまえば、これは自民党が長期政権の上に胡坐をかき、政権党としての責任、日本の社会・経済についての取るべき政策をなおざりにして、自らの票田の涵養に政策の重点を置いていたことの結果ということでしょう。

裏金問題はこのブログでも指摘していますように、選挙資金(票田涵養の資金)を政治資金という名称にして、国民の目を眩ませ、国民のためよりも、政権維持を主要目標にしていたことから派生した黒い豪華な仇花だったのでしょう。

自民党はそれでも今も「責任」などという言葉とは全く無縁で、政権の維持を続けようとしているようです。日本国民は何処まで寛容なのでしょうか。


エネルギー循環を人間の手で:頑張る日本

2024年09月10日 14時31分56秒 | 科学技術

これからは水素の時代だといわれています。   

人類社会の発展には、ますます多くのエネルギーが必要のようです。例えば、AIの普及に従って膨大なエネルギー需要が発生するといわれています。その一方で、環境問題が言われSDGsが重視されます。

その中で、日本は、石炭火力を使うということで2年連続ですか、不名誉な「化石賞」の受賞をしています。この辺りは政治のレベルの問題で、日本の科学技術の現場はクリーンエネルギー開発で大いに気を吐いているようです。

クリーンエネルギーのチャンピオンは「水素」のようで、「これからは水素社会」などと言われます。 

水素はよく燃えますが、燃えた結果は「水」ですから環境への悪影響はありません。

それだけではありません。これまで使ってきた燃料、藁や木材から石炭・石油などは炭素が燃えてCO₂になるから問題ですが、このCO₂に水素を混ぜてやると燃料になるメタンを作ることが可能になっています。これはメタネーションと言います。

つまり水素は燃やしても環境問題は起こさず、環境問題の元凶のCO₂を再び燃料に変えるエネルギー循環も可能になるのです。

水素は空気の中に2割ほど含まれているのですが、水素を集めるのは大変なようで、一番便利な方法は水に電気を通して、水素と酸素に分解する方法です。

原理は解っていて理科の実験でもやることですが、電気エネルギーが必要ですから問題は効率です。

そこで問題になるのが安い電力コストと、少ない電力で水を効率的に酸素と水素に分解するための「触媒」などの金属や構造物です。

最近のニュースでは信州大学が、雪が少なく日照時間が長い長野県の飯田地方で、人口光合成、水素製造の、世界最大規模の実証研究施設を2025年スタートさせるプロジェクトを発表しました。

人口光合成というのは、地球上では植物がやってくれているCO₂と水から太陽光によって、人間の呼吸に必要な酸素と炭水化物の根や幹・枝・葉を作るという作用を人間の手でやろうということで、これにも触媒などの研究開発が大きな役割を果たすものと思われます。

この「触媒」や構造物などには白金やイリジュウムといった貴金属、希少金属などが有名ですが、希少なために高価なものが多く、化学反応のコストの大きな部分を占めることが多いようです。

ところで、こうした触媒や構造物、蓄電池や電気分解に使う電極材などについては、日本の材料分野の研究が大きな成果を上げているようです。

マスコミが報道しているものでも、理化学研究所の水の電気分解に使う水素吸着材の性能を2倍に引き上げた研究がありました。

同じく水の電気分解の際の消費電力の1割削減を達成した電極材の開発など地道な研究の成果も住友電工から報告されています。

更には、東京ではどこの家庭の毎日お世話になっている東京ガスも,水の電気分解の研究には熱心で、装置の中核部品のセルスタックの性能を高度化しつつコストを3分の1に下げるということです。

旭化成も水の電気分解ではグリーン水素プロジェクトの先行企業で、福島県浪江町の研究フィールドは来年には事業化を目指し、事業の海外展開も視野ということのようです。

未だニュースを拾えばいろいろなものがあると思いますが、こうした分野は伝統的に日本の得意技ということもあり、水素時代の先取りといった形での動向は世界の注目にもなっているようです。

思い起こせば、高度成長期の日本も、こうした頑張る企業の挙げた成果が積み重なって日本経済を高度成長に押し上げたように感じているところです。

「これについては日本に頼まなければ」といった企業が増えれば、世界にとっても日本は重要な国ということになるのでしょう。


<月曜随想>日本は日本の得意な道を生かそう

2024年09月09日 14時27分17秒 | 文化社会

世界の国々には、それぞれのお国柄があります。日本にも、日本のお国柄があり、いろいろと注目されるようになったようでインバウンドが増えています。

そういうと、「そんなの自惚れだよ。インバウンドが増えているのは円安のせいだよ。」という人もいます。

多分本当のところはその両方でしょう。日本は島国で、高度な文化は殆んど海外から入って来ましたから舶来崇拝は、知識人、文化人の伝統のようにもなっていた面もないではありません。

しかし人の国際移動の一般化し、更にはネットの普及で、舶来崇拝は、一部、ボジョレヌーボーの輸入は日本が世界一という事などを残して消えて来たようです。

今後重要になってくるのは、自分のことなので気がつかなかったといった日本の得意な面を、客観的な視点から意識的に発掘し、それを使って世界に貢献するようなことを大いに推進し、世界に役立つ国、世界に必要な国と見られたり言われたりする国になるという道が日本の重要な選択肢になるのではないでしょうか。

考えて見ますと、日本は太平洋戦争で廃墟のような状態になって以来、北海道、本州、四国、九州の4つの島だけになってから著しい経済発展をしました。

資源がなくても、自分の得意の分野で付加価値を作れば、世界第二の経済大国にもなれることを実証し、そのやり方をアジアの国々に広めた結果21世紀はアジアの世紀という状態になることに大きく貢献したといってもいいでしょう。

中国の発展も日本の科学技術の発展に倣って、高付加価値製品の生産で世界の工場となることで成功しましたが、日本のようにお行儀がよくなかったので、アメリカとは喧嘩になり、アジアの国々に対しては高利貸のような関係になって行き詰まっています。

もう少しお行儀をよくすることも、日本から知識・技術移転とともに移転出来ていれば、アジアの平穏、自由なインド太平洋の実現には大いに役立ったのではないでしょうか。

生産技術だけ移転ではなく、これからも、日本が、お行儀をよくすることにも協力するようにしたららどうでしょうか。没交渉や敵対は、最悪の選択ですね。

日本文化の特徴には神仏習合があります。日本人は殆んど近所の神社の氏子であり、歴代の墓のある寺の檀家です。鎮守のも森のお祭りも、盆、お彼岸の法要もやります。さらにはクリスマスもイースターもカーニバルもハロウィーンもやります。これは、人類の培った多様な文化に興味を持っているからでしょう。

嘗て、明治維新の際に、狭量なリーダーによる「廃仏毀釈」もありました。しかし、国民大衆は、そんな国の方針はなし崩しに無視し、今に至っています。

これが日本独特なのか、それとも「大衆」にとっては、世界でも、ある程度一般的にも言えるのか、私には解りません。

しかし、宗教は人の心や霊の安らぎを願うものであれば、寛容のベースである宗教の相互理解もありうるのではないかと思うところです。

日本はかつて世界宗教者平和会議の第1回世界大会を京都で行っています。こうした人間の思考方法の普及やそのための行動を、地球人類の将来の平和への可能性を開くという視点から、これも日本人の特性として行動の選択肢に入るものかもしれません。 

もう少し具体的な産業社会の事象を書こうと思っていましたが、それは、またの機会になってしまいました。


アメリカ経済は落ち着いてきたようですが

2024年09月07日 13時59分23秒 | 経済

アメリカでも日本でも投機筋などが特に注目をしていた8月の非農業雇用者数の増加が6日(日本の昨夜)発表になりました。

数字そのものは14.2万人増と結構な数字ですが、マスコミの報道では数字などは書かずに「市場の予想より低かった」とだけ書いているところもありますように、市場の予想に比べて高いか低いかが問題だったようです。

市場の予想はたいていが投機筋の調査機関などによるものです。投機筋は、FRBが9月に利下げをすることを望んでいて、それもパウエル議長が以前言っていた0.25%ではなくて0.5%の方が景気刺激、株価上昇の環境としてはいいわけですから、多少高めの予想をしたくなるでしょう。

失業率の方は4.3%まで行ったのが4.2%に下がってきて、アメリカの雇用情勢が悪化とはいえないようですが、これで一応9月の政策金利の引き下げが大幅(0.5%)になる確率が高くなったということで満足でしょう。

日本にしてみれば、アメリカがより大幅な金利の引き下げの可能性ということで、円高が141円台まで進み、この間までの日経平均40000円越えの騒ぎは当面「過去の話」となりそううで、すべてはアメリカのご都合次第ということです。

アメリカ政府としても、ドル高は都合のいい面もありますが、株価の上昇は大統領選の最中でもありアメリカ経済は順調と言うためにも歓迎でしょう。

前FRB議長で現財務長官のイエレンさんは、雇用の伸びも順調、失業率は低下でアメリカの雇用は健全という見方をしているようです。

それでは日本の方はどうかと言いますと、日経平均40000円で止まらず、50000円もあるなどといった、ついこの間までの論調は何処へやら、円高が140円で止まるのか、アメリカの年内の更に0.5%引き下げもあるなどの論調に対して、日銀も利下げで対抗などという余地もないので、甘んじて投機筋の作る円高を受け入れということになるのでしょう。

思い起こせば、りーマンショックの時も、アメリカのゼロ金利で円レートは80円になり、日本経済に生死の境の数年間を齎しました。アメリカの金利政策は恐ろしいです。

今回は、アメリカが勝手に賃金インフレをやってFRBはその抑制に政策金利の引き上げを重ねた結果投機筋はここぞと円安を演出、日本株を異常に吊り上げ、日本政府も「貯蓄から投資へ」と提灯に火をともして浮かれましたが、後始末をするのは国民です。

アメリカが景気対策で政策金利を動かすと予想されたら、日本は直ちに円レートへの影響、それも投機筋の好む過剰な反応を考慮の上,積極的に対応を考える必要があるというのが、度重なる経験の教えるところでしょう。

今回の場合は、未だ円レートは141~2円ですが、9月19日ですか、FRBの政策決定でどうなるかを読むのは簡単ではないでしょう。

141円というレベルは日銀「短観」で企業は予測しているところですし、今回のごたごたの発生前は110円前後でしたから、日本企業の抵抗力はリーマンショックの時とは大違いでしょう。

折しも日本経済は再生の緒に就いた段階で、これまでの経験を産業労使も適切に生かし、官僚を含む政府全体が誤りのない舵取りに専念する必要があるようです。

アメリカについていく限りは避けられないことですし、アメリカ自体が、日本のように安定した社会構造や労使関係ではありませんから、これは容易ではないでしょう。

アメリカという大船に追走して、その起こす波に揺れ動く日本丸です。近くに寄るほど危険のようです。


平均消費性向にも慣性の法則が?

2024年09月06日 14時29分10秒 | 経済

昨日は厚労省から毎月勤労統計が発表になり、25か月続いた実質賃金の対前年対価が止まりそうな気配ということを報告しましたが、今日は総務省統計局から家計調査の「家計収支編」の7月分が発表になり、賃金と消費、さらにその延長線上にある景気回復への検討資料が集まってきました。

マスコミでは家計の実質消費支出は3か月ぶりの増だが僅か0.1%といった消費不振を指摘していますが、確かに賃上げ率も高く、ボーナスも多かったにも関わらず消費はあまり伸びていないようです。

7月の二人以上の全世帯の実質消費支出は名目値で3.3%増、実質値では0.1%増ということで昨年は殆んど毎月前年比実質減、今年1月が最悪で実質6.3%の減少から4月は0.5%増加になりましたが、5月、6月は減少で、7月ようやく0.1%の増加という低迷状態です。

毎月追跡している二人以上勤労者世帯の平均消費性向も、少しは変化が出ているかなと思って見ましたが、下のグラフのように、対前年同月比大幅低下で期待には全く答えてくれませんでした。(昨年7月59.7%→今年7月55.0%へ5.7ポイントの低下)

ということで、少し中身を見ようと勤労者世界の可処分所得の増加状況と消費支出の伸び具合を並べてグラフにしてみました。

可処分所得というのはいわば「手取り収入」で、家計調査の場合は、世帯主、配偶者、その他家族の実収入の合計から税金や社会保険料などの天引き分を差し引いたもので、平均消費性向を計算する際の分母になるものです。

その分母で家計の消費支出を割って、%表示したものの集計が「平均消費性向」になるわけです。

今年に入っての状況をご覧いただくと下のグラフです。

 

1月から5月までは、何かあまり変化はありません。大企業関連ではでは4月から世帯主の賃金が上昇という世帯もありますが、前年度で世帯主が再雇用転換とか退職という世帯もあるでしょう。平均値の変化は少ないのです。

ところが6月、7月と状況は様変わりで、青い柱(可処分所得)は、6月は大幅に伸び、7月のも結構伸びています。ボーナスは多くは6月支給ですが、7月支給もあるからです。

これは例年のことですが、今年のボーナスはかなり高かったということです。

それ自体は大変結構なことですが、赤い柱の消費支出の方は、そんなことには全く関係ないようにそれ以前と変わらにペースを維持したままというのです。

まさに「これが今の日本の家計の有り方か!」という感じです。所得が増えても消費は容易に伸ばさない。長年の不況の中で、いかに生活を守るかと身構えた姿勢のようです。

国民の消費生活にも「慣性の法則」があって、これまでのような日本の政治・経済ではまず大事なのは生活防衛」といった意識は、簡単には変わらないようです。如何にして、この堅固な家計防衛の意識をもっと前向きの姿にするかを真剣に考える必要があるようです。

いずれにしても、消費が延びないと日本経済は元気にならないというのがいまの状況です。

「ボーナスや一時金じゃダメ」やはり、月例給が増えるのが必要という声もあります。さらに考えれば、「これからは生活が良くなる時代」という期待を国民が持てれば解決するでしょうという声も聞かれます。

さしあたって、経営者の考え方、そして、国民に安心感を与えるような政府をつくることが必要なようです。


実質賃金前年比低下からの脱出達成か?

2024年09月05日 12時42分15秒 | 経済

今朝、厚労省から2024年7月分の「毎月勤労統計」が発表になりました。

賃金動向に関心の深い皆様は、先月から、さて7月はどうなると心待ちにしていた結果が出ました。

ご承知のように毎月勤労統計で明らかになる平均賃金水準の指数の推移と、消費者物価指数で明らかになる物価動向で、両方の対前年同月変化率(通常は伸び率)を比較して、消費者物価指数の上昇率の方が高ければ、実質賃金は前年同月より下がっているといいう事になります。

経済が成長していれば、賃金指数も、物価指数も上がっていて、賃金指数の上り幅の方が大きいから、その分生活が良くなっているというのが結果ですが、日本の場合は、2022年の4月から2024年の5月まで、25か月連続で実質賃金が前年より下がるという異常状態が続いてきました。

それが今年の6月は企業の収益が順調で、ボーナスが良かったことものあり。やっとプラス6.2%に転じました。

賃上げ率も高かったから7月以降もプラスになるという楽観論もありますが、毎月勤労統計の結果がでないとわかりません。

その結果が今日出たわけで、さてどうだったのかと言いますと、微妙なところです。

今年の7月の対前年7月上昇率の数字を並べてみるとこうなります。

<賃金指数の動き>

賃金給与総額・・・・・・・・3.6%(残業ボーナス含む)

(内特別に支払われた給与・・6.2%)

決まって支給する給与・・・・2.5%(残業含む)

<消費者物価指数の動き>

消費者物価指数:総合・・・・2.8%

(注)消費者物価指数には「持ち家の帰属家賃を除く総合」というのもあって、これは3.2%です。(自宅に住んでいる人も相応の家賃を払っていると仮定しない場合)

さて、これをどう読むかです。7月ボーナスという企業もありますから、現金給与総額は3.6%の伸び率で、消費者物価指数の伸び率の「注」の数字より高く実質賃金上昇という結果です。

ボーナスがないと賃金指数の伸びは2.5%ですから、2.8%引いて、実質賃金は0.3%の低下です。

政府が使ってきた「持ち家の帰属家賃を除く総合」では実質賃金低下幅が0.7%になります。

このブログでは上のグラフのように、「現金給与総額」と「消費者物価指数:総合」を使っていますから6月も7月の実質賃金はプラスです。

このブログでは更なる物価の鎮静を読んで、プラスが続くと見ていますが。新米の高値が当面気になるところです。


今日は秋の気配をお届けします

2024年09月04日 16時19分02秒 | 環境

今年の夏もまた格別に暑かったですね。台風一過なのにまだまだ暑いような予報です。

台風10号は列島各地に大きな爪痕を残しました。下水道などの設計は、降雨量1時間50㎜が基準になっているなどと聞きますが、ニュースを聞いていますと100㎜などというケースがいくらでも出てきているように思われます。

日本列島に住んでいる限り地震と台風とは共存する覚悟で生活することが必須だということは解っていますが、台風と集中豪雨は近年ますます強烈になってきて、巨大地震の懸念もあるというのですから、国土強靭化の方も格段に進めていく必要があるようです。

ところで、今日は朝から快晴で、日差しは強いですが、風は何となく涼しく、やっぱり秋の気配だなと思わせるような朝でした。

我が家の狭い庭でもススキが先日から穂を出し始め、ちょっと強めの風に、数本の穂が揺れる様になりました。

今日は好天ですから、昼近くになりますと、日影になっている隣家のサイディングとフェンスを背景に、真っ青の空からの日光の直射がススキの穂を浮き立たせることになります。

窓ガラスのむこうに、逆光を受けて銀色に輝いて風に揺らぐススキの穂を眺めて、「やっぱりもう秋の気配だな」と感じるところです。

マスコミでは、「今年の秋は10月から」などという見出しがあったりしますが、それでも秋は確り来るでしょう。四季のはっきりしている日本列島は、そこに住む人の心を長い時間をかけて繊細にしてくれたのかななどと考えてみたりします。

こうした自然の変化は大変大事だと思うので、地球温暖化で、日本の四季はいいな、などと言っていられないような事になってしまっては大変ですから、温暖化防止策の一層の徹底と、合わせて国土強靭化には大いに力を入れなければと思うところです。

日本人が自然との心身の交流を安心して楽しめるような環境が、これからもずっと維持されることを願っています。


日鉄のUSスティール買収:「祈!成功」だが

2024年09月03日 14時21分44秒 | 経営

日本製鉄がUSスティールを買収するというニュースを聞いて驚いたのはこの春ですが、多くの障害にもかかわらず、話はどんどん進んでいるようで、9月に結論は12月に伸びましたが日本製鉄の意志は固く、あくまで買収の成立を目指しているようです

この話を聞いてまず気になったのはUSスティールの労働組合USWが反対しているということでした。

しかしその後話が進んでくると、大統領選の期間でもあり、バイデン大統領も必ずしも賛成ではないようで、今日は、ハリス候補が反対を表明したというニュースが入ってきました。

アメリカでは、会社は株主のものですから、組合が反対しようが、誰が何と言おうが株主がOKならば、ということかもしれませんが、トランプさんは「そんな事はさせない」といっているようです。

日本製鉄にしてみれば、アメリカの株主の意向が頼りという所ですが、かつて、世界トップだった企業も今は世界鉄鋼業界では27位だそうで(日本製鉄4位)で、株主は日本製鉄に買ってもらって、少し株価が上がればと考えているのかもしれません。

もうだいぶ前から鉄鋼は斜陽産業と言われていますが、日本製鉄が新日鉄の時代に育てた中国の宝山鋼鉄が世界トップになったという経験もありますから、今後の世界展開で斜陽産業とは言わせないという気概もあるのかもしれません。

しかし、その宝山鉄鋼とは、体制の違いからでしょうか,縁を切ろうという状況のようですから、自由世界の鉄鋼産業のリーダーという立場を狙っているのでしょうか。いずれにしても世界的な視点での動きの一環としてのUSスティール買収のようです。

そうした目で日本製鉄の動きを見ますと、タイ、インドなど海外展開の積極化が見えているように思えます。

同時に、製鉄に必要な石炭にも確り手を打っているようですが、従来の高炉方式については環境問題の分野から、かなり厳しい目が向けられているようです。

この点については、いかにCO²を出さないかという新たな技術開発が要求されることになるのではないでしょうか。例えば、出したCO²は、すべてメタネーションに使うといったことが可能にあれば、素晴らしいななどと考えるところです。 

財務の面で見ますと買収金額は約2兆円ですが、日本製鉄のバランスシートでは、自己資金4.2兆円、有利子負債3.1兆円ですから、買収に2兆円、その後USWの対策費や他の追加費用の支出などもふくめれば、蓄積した自己資本の半分ほどを使っての買収ということです。

アメリカの企業は金食い虫のことが多く、東芝などは、ウェスティングハウスの買収で、下請け工事会社のコスト補填などで、自己資金を使い尽くし、撤退になってしまったようです。

日本は金持ちだということで、それを当てにされる面もあるようですので、要注意です。

まあそんなことは疾うにご承知での買収計画でしょうから、心配することはないかもしれませんが、誇り高い企業を買収するときには、USWという労働組合も含めて、その気位の高さにも十分気を使う必要があるように思うところです。

気になる事ばかり書きましたが、日本製鉄の壮大なプロジェクトが恙なく成功裏に進むことを祈るところです。


<月曜随想>結果かプロセスか?

2024年09月02日 14時37分34秒 | 文化社会

大谷翔平選手の活躍は凄いですね。昨年は投手と打者の2刀流、今、年は、投手役はお休みですが今度は打者と盗塁、やる事何でも記録を作ってしまいます。しかもいつもニコニコで楽しそうです。

天賦の運動神経と体力に、優れた人柄、羨ましいと思う人は多いかもしれませんが、あの記録を生み出している最大の原因は、大谷選手自身の努力だと解っている人も多いのではないでしょうか。

大谷選手のことはテレビや新聞でしか知りませんが、私もそう思っています。

ところで、分野は全く違いますが、経営学で良く出てくるマネジメントの手法に「目標による管理」と「結果による管理」というのがあります。

両者の関係から言えば、仕事を達成するのに、先ず「目標」を明確にし、目指す所を明らかにして「よしやろう」という気を起こさせるのでしょう。そのうえで出された「結果」によってその人間やグループの評価をするということになるわけです。

確かにこれは大事なことで、まず行く先がはっきりしないと人間は適切に動けないでしょう。

そしてその成果が出たら、それによって判断して、評価を決めるというのはそれなりの合理性があります。

しかし、経営学で「プロセスによる管理」というのは聞いたことがありませんでした。結果が出るまでのプロセスは、仕事をする本人たちにお任せということになっていたのでしょうか。

当然のことですが、仕事の出来具合は、そのプロセスでどんなことが起きているかで決まってくるのです。

「明日朝までに、これを纏めといてくれ」と命令して。明朝「これじゃ駄目だよ。やり直し」と言って、プロセスに無関心でいますと過労死につながる事さえあります。

やはりプロセスが大事だと気付いて、生まれたのが人間関係論で、どうすれば人間本気になって課題に取り組むかということで、人間の性格論や心理学に関係する分野に入っていったのが「リーダーシップ理論」や「動機付け理論」「交流分析」などの人間工学といわれる分野です。

こうした理論的発展は、ほとんどがアメリカの経営学の発展の中で生まれたもので

っすから、アメリカン・ドリームのアメリカでも、結果を出すにはプロセスが大事ということに気づいていたのです。しかし、その後の長期不況の中でアメリカも日本も「結果中心」に戻ってしまったような気がします。

話が飛んで、国の経営である政治の世界で見ても、安倍、菅、岸田政権の時代になって、目標のスローガンは次々出てきますが、ほとんど結果が出ません。プロセスの検討・研究、その重要性の認識に欠如があるようです

考えてみますと、やっぱり素晴らしい結果には、その前提となるだけの確りした「努力」のプロセスがあったと考えるのが本当でしょう。

嘗てスポーツでも「巨人の星」の様な根性モノ全盛の時代もありました。根性モノは今は余り流行らないようですが、大谷選手にも、子供のころからの長い努力の日々というプロセスがあったと考えるべきでしょう。

その努力のプロセスを、元気に真面目に楽しくやり遂げた結果が今の大谷選手なのではないかと思っています。