<聴覚障害>「手話も言語」初認定…事故で腕不自由賠償訴訟
11月25日22時23分配信 毎日新聞
交通事故で負傷して手話が不自由になったとして聴覚障害者の60歳代の主婦が、加害者の男性に損害賠償など約2600万円の支払いを求めた訴訟の判決が25日、名古屋地裁であった。徳永幸蔵裁判官は「手話は意思疎通の手段で、健常者が口で話すことに相当する」と、手話の障害が言語障害にあたると認定し、計約1220万円の支払いを命じた。
原告側代理人によると、手話の障害を言語障害と同等に認める判決は全国で初めてだという。 訴えたのは、名古屋市中川区の大矢貴美江さん。大矢さんは聴覚障害で身体障害者1級の認定を受けている。
訴えなどによると大矢さんは04年7月、自宅近くの市道で横断歩道を横断中、乗用車にはねられ右肩や左手などを骨折。入院、通院、リハビリ期間を合わせると140日間を要した。右肩と左手に運動障害が残り、手話が不自由になった。しかし自賠責保険では健常者の「言語障害」が手話には適用されず、大矢さんのけがは障害程度の軽い「機能障害」とされた。
徳永裁判官は判決で(1)手話が分かりにくいと言われる(2)表現しにくい単語がある(3)1時間手話を続けると左手に痛みを感じる--などから「手話能力の14%が失われている」と認定。慰謝料や家事ができないことによる逸失利益などの支払いを命じた。
判決を受け大矢さんは名古屋司法記者クラブで会見した。大矢さんは支援者を通じ手話で語った。後遺症で左手をひねる動きや手を握る動作ができず「男」「女」などの簡単な言葉も表現できないという。大矢さんは「事故の後は手話が下手だと言われてつらいこともあった。こちらの主張が認められて喜んでいる」と、目に涙を浮かべながら話した。【山口知】