今朝の中国新聞はやはり福島原子力発電所がトップ記事です。私たちはこれから少なくとも数十年、いや100年以上にもわたって『核の平和利用』に頼ってきたツケを払っていかなくてはならないようです。『核と人類は共存できない』と言われていた森滝市郎先生のことばを今更ながらかみしめています。
制御できなくなった原発が、どれほど厄介な代物か、東京電力福島第1原発の事故が如実に示している。
大震災から2カ月以上たっても高濃度の放射能汚染水は漏れ続け、事態収束の見通しが立たない。
そんな中、菅直人首相が国のエネルギー政策を見直し、原発重視の方針を転換すると表明したのは賢明な判断だ。
政府が昨年決めたエネルギー基本計画では、原子力を「供給安定性と経済性に優れた準国産エネルギー」と位置づけ、54基ある原発を2030年までに14基以上増やすことなどを盛り込む。
それを白紙に戻すという。太陽、風力など再生可能な自然エネルギーを基幹エネルギーの一つに加え、省エネ社会をつくる‐。そんな内容である。
原発は総発電量の約30%を占め、直ちになくすのは現実的ではない。だが、日本の技術力があれば、そう遠くない将来に自然エネルギーの質を高め、基幹エネルギーとする国策転換は可能だろう。
事実、ドイツは電力に占める自然エネルギーの割合をこの10年で10ポイント高めた。今後10年で、さらに倍増させる。
ドイツがそうであったように、エネルギー政策の転換には政治の意思を明確にすることが何より重要だ。政府が政策的にてこ入れをすれば、投資や技術開発が進み、市場は拡大する。
日本政府は本気なのか、それがまだ見えてこない。首相は原発重視を見直すと表明しておきながら、一方で脱原発路線とは一線を画すようなあいまいな姿勢も崩していない。自然エネルギーへどこまで大胆に踏み込む気があるのか伝わってこなければ、社会は動かない。
「経済性に優れている」。原発のうたい文句は、今回の事故でメッキとわかった。放射能で汚染されたがれきや水はどこにも持って行き場がない。温室効果ガスを排出しない「クリーンエネルギー」と信じる人も、もはやいないはずだ。
本紙の世論調査などによると、それでも原発の将来について、増設、現状維持、廃止の三つに割れるのは、原発を国策として推進する一方で、自然エネルギーを「不安定なエネルギー」として正当に評価してこなかったからではないか。
事故で原発の新規立地はさらに難しくなり、そのうえ政府が増設を認めなくなれば、老朽化が進む。そうなれば安全性への不安が高まる。現実は原子力を減らす未来へ踏み出したといっていい。
原発とどう向き合っていくか。事故が突きつけたわたしたちの問題だ。