人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

R.シュトラウス「カプリッチョ」を観る~METオペラ・ライブ・ビューイングより

2011年05月15日 16時27分38秒 | 日記
15日(日)。新宿ピカデリーでMETオペラ・ライブ・ビューイング=リヒャルト・シュトラウスのオペラ「カプリッチョ」を観ました。今年4月23日に挙行されたニューヨーク・メトロポリタン・オペラを映画化したものです。指揮はアンドリュー・デイビス。

「カプリッチョ」というのは、諧謔的で気まぐれな性格をもった小曲につけられた名称(音楽の友社:音楽中辞典)です。オペラの中身は伯爵令嬢マドレーヌと2人の男(作曲家フラマンと詩人オリビエ)の三角関係を描いた他愛のない日常的な話です。それが、シュトラウスの手にかかると「全1幕休憩なし141分のオペラ」になってしまうのです。彼の「バラの騎士」は大好きで、CDなど8セットも揃えているのですが、そのほかの曲は交響詩にしても、オペラにしても、誇大妄想的だと決め付けて積極的に聴かない傾向がありました。

しかし開演直前のインタビューで、ヒロインのマドレーヌを演じたルネ・フレミングの話を聞いて考え方を改めました。先週観たロッシーニの「オリー伯爵」でズボン役(男役)をやったメゾ・ソプラノのJ.ディドナートがインタビュアーを務め「R.シュトラウスをどう捉えますか?」と質問したのに対して、フレミングは「彼は第2次世界大戦中に活躍した作曲家でした。ドイツ国内に止まって作曲したわけですが、本来ならドイツ礼賛オペラを書かなければならないのに、フランスを舞台とした”カプリッチョ”を作曲しました。それだって相当勇気のいることだったでしょう。戦争下では身の回りの日常を描くことぐらいしかオペラを書くことはできなかったのです。そういう意味では苦労されたのではないでしょうか」と答えていました。さすがにメト・オペラの看板ソプラノ歌手です。ただ歌詞を歌うだけではなく、その背景を分析し理解した上で歌っています

伯爵令嬢マドレーヌに作曲家フラマン(ジョセフ・カイザー:テノール)と詩人オリビエ(ラッセル・ブローン:バリトン)の2人がプロポーズします。彼女の気を引くため、オリビエは「まず先に詩があって、次に音楽がある」と主張し、フラマンは「まず音楽があって、次に詩がある」とそれぞれ自分の方が優れていると主張します。オリビエが作った詩にフラマンが曲を付けると素晴らしい歌が出来上がります。「音楽によって詩が生かされた。どちらかを切り離すことはできない!」と悩みます。どうしたらよいかわからないマドレーヌは「2人で協力してオペラを作って」と依頼します。2人は協力してオペラ作りに励むのですが、いずれにしても、彼女はどちらかを選ばなければなりません。鏡を前に悩んだあげくある結論を下します。最後の場面で彼女は1枚の便箋にメモを走り書きします。そこに結論が書かれているはずですが、観客にはその内容がわかりません。まさに”カプリッチョ”に相応しい終わり方です。演出はジョン・コックスという人です。








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