22日(日)その2.最近読んだ本は①誉田哲也「月光」②万城目学「プリンセス・トヨトミ」③内田樹「疲れすぎて眠れぬ夜のために」④角田光代「八日目の蝉」で,いま佐藤正午の「象を洗う」を読んでいます.今日は内田樹(うちだ・たつる)「疲れすぎて眠れぬ夜のために」
を取り上げます.
著者の内田さんは神戸女学院大学文学部教授で,専門はフランス現代思想,武道論,映画論などです.この本は今から8年前の2003年5月に単行本として出版され,その後文庫本化されたエッセー集です.
読んでいて「なるほど
」と思うところが少なくないのですが,その一つに「フランス人の愛想の悪さ」があります.
「フランスに行ってびっくりすることの一つは,ふつうの小売店の売り子さんたちの態度があまりに悪いことです
あまりのことに”なんでこんなにフランスの人たちというのは愛想悪いんですか”って訊いたら,フランスの友人が”サービスというのは奴隷が主人に向かってすることだっていう意識があるからだ”という説明をしてくれました.”目上の人に向かって,権力関係の中で自分が下位にあるので,止む無くするのがサービスというふうに考えているから,対等な人間だとか,あるいは自分が上だと思っていたい人は,出来るだけ愛想悪くするように努力しているんだ”と.」
このくだりを読んで,20数年前のことを思い出しました.ドゴール空港でノドが乾いたので立食の売店でオレンジ・ジュースを注文したのですが,売り子が2人いるのにこちらを見向きもしないでぺチャぺチャおしゃべりをしているのです
何回か英語で話しかけたのですが,だめでした.フランス人はプライドが高いからフランス語で話さないと相手にしてくれない,と聞いていたのでその時は諦めました.内田さんの見解によると,それだけではないようです
「ビジネスとレイバーの違い」というのもおもしろいです.
「気付いていない人が多いのですが,ビジネスの愉しさは,お金が儲かることではなく,何か新しいことをすると,その結果がすぐに出る,その反応の速さにあります.ビジネスは自分自身が変化したり工夫したりしたことの結果がすぐに評価される.自分自身の仕事のクオリティがとりあえずすぐに検算できる世界です.レイバーはそれとは違います.2つとも仕事と訳されますが,この2つは違うものです.今の若い人たちの多くは「仕事」というと「レイバー」しか知りません.暮らしていける最低限のレイバーだけして,お金を稼いで後は好きなことをして暮らしたい.それなら,働くのは時間の空費であり,苦役でしょう.そんなものなら嫌いで当然です.マニュアルがきちんと決まっているアルバイトの場合は,10年間やっても多分それを通じて社会的なスキルが身につくとか,人間的な成長を遂げるということは期待できないでしょう.ビジネスとレイバーの違いはどこにあるのでしょう.それは「リスク」と「責任」ということにかかわってきます.ビジネスにおいては,リスクを取る人間が決定を下します.デシジョン・メイキングはリスク・テイキングと表裏一体です.リスクを取ることと引き換えに決定権を受け取り,それが成功したら報酬が得られる.失敗したら責任を取らされる.単純な話です」
これなども,なるほどと思います
そうは言うものの,自分の好きなことや得意とすることが,そのまま仕事に直結している人は数えるほどしかいないのではないか,とも思います.ほとんどの人が,本当にやりたいことは別にあるけれども,能力の限界,生活のため,といった理由で,どこかで自分自身に”折り合いをつけて”仕事をしているのだと思います.ただ,仕事に限らず,社会的なスキルを身につけ,人間的な成長を目指す
ことは大事なことだと思いますが.
この本のタイトルは「疲れすぎて眠れぬ夜のために
」ですが,じっくりと読んでいくと「疲れすぎて眠れぬ夜に
」なってしまいます.テキトーにすっ飛ばして読みましょう


著者の内田さんは神戸女学院大学文学部教授で,専門はフランス現代思想,武道論,映画論などです.この本は今から8年前の2003年5月に単行本として出版され,その後文庫本化されたエッセー集です.
読んでいて「なるほど

「フランスに行ってびっくりすることの一つは,ふつうの小売店の売り子さんたちの態度があまりに悪いことです

このくだりを読んで,20数年前のことを思い出しました.ドゴール空港でノドが乾いたので立食の売店でオレンジ・ジュースを注文したのですが,売り子が2人いるのにこちらを見向きもしないでぺチャぺチャおしゃべりをしているのです


「ビジネスとレイバーの違い」というのもおもしろいです.
「気付いていない人が多いのですが,ビジネスの愉しさは,お金が儲かることではなく,何か新しいことをすると,その結果がすぐに出る,その反応の速さにあります.ビジネスは自分自身が変化したり工夫したりしたことの結果がすぐに評価される.自分自身の仕事のクオリティがとりあえずすぐに検算できる世界です.レイバーはそれとは違います.2つとも仕事と訳されますが,この2つは違うものです.今の若い人たちの多くは「仕事」というと「レイバー」しか知りません.暮らしていける最低限のレイバーだけして,お金を稼いで後は好きなことをして暮らしたい.それなら,働くのは時間の空費であり,苦役でしょう.そんなものなら嫌いで当然です.マニュアルがきちんと決まっているアルバイトの場合は,10年間やっても多分それを通じて社会的なスキルが身につくとか,人間的な成長を遂げるということは期待できないでしょう.ビジネスとレイバーの違いはどこにあるのでしょう.それは「リスク」と「責任」ということにかかわってきます.ビジネスにおいては,リスクを取る人間が決定を下します.デシジョン・メイキングはリスク・テイキングと表裏一体です.リスクを取ることと引き換えに決定権を受け取り,それが成功したら報酬が得られる.失敗したら責任を取らされる.単純な話です」
これなども,なるほどと思います


この本のタイトルは「疲れすぎて眠れぬ夜のために



