人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

チョン・ミュンフン=ソウル・フィルを聴く~東日本大震災チャリティーコンサート

2011年05月10日 23時43分57秒 | 日記
10日(火)。サントリーホールでチョン・ミュンフン指揮ソウル・フィルのコンサートを聴きました。当初のプログラムは①ドビュッシー「海」②ラベル「ラ・バルス」③チャイコフスキー「交響曲第6番・悲愴」でしたが、チョンの強い希望により①②の代わりにチャイコフスキー「バイオリン協奏曲」になりました。バイオリンは庄司紗矢香です。

オーケストラのメンバーは若く、平均年齢はおそらく20歳代後半ではないかと思われます。コンサートマスターと管楽器・打楽器の何人かが西欧人で、あとは韓国人と思われます。また、友情出演でしょうか日本人としてN響の主席コンサートマスターが参加していました。

最初にチョン・ミュンフンが舞台に出てきて英語であいさつをしました。
「人から”あなたは誰ですか?”と問われることがあります。その時は、第1に一人の人間です、第2に音楽家です、そして第3に韓国人です、と答えます。3月にチェコ・フィルと来日した際には大震災が起き、最後まで公演を続けることができず、非常に残念な思いをしました。その時、バイオリニストの庄司紗矢香さんとチャイコフスキーの協奏曲を演奏する予定でした。しかし、大震災が発生したため、彼女は日本に帰国したのに、われわれオーケストラ側は韓国に帰国しなければなりませんでした。そのようなこともあって、今回のソウル・フィルとの来日公演にあたって、急きょ彼女を迎えてチャイコフスキーを演奏することにしました。音楽を通じて日本の置かれた状況に対して、同じ気持ちを共有できればと思って演奏します。」

彼が触れていたのは3月19日にミューザ川崎で開催が予定されていたチェコ・フィルの公演です。プログラムはチャイコフスキーの「バイオリン協奏曲」とブラームスの「交響曲第4番」でした。この公演を楽しみにしていたのですが、キャンセルになり払戻しとなりました。そして今回のソウル・フィルの公演に飛びついたのでした。

1曲目のチャイコフスキーの「バイオリン協奏曲」は、当時最高のバイオリニストといわれたアウアーに捧げられたのですが、「演奏不可能」と断られ、3年後にブロツキーの独奏で初演されたという曰くつきの作品です。最近では「オーケストラ!」という映画で、テーマ曲のように扱われていました。

バイオリン独奏の庄司紗矢香は鮮やかな黒と赤のコスチュームで颯爽と登場し、ダイナミックかつ繊細にチャイコフスキーを描きました。彼女はどちらかというと童顔で小柄です。そんな彼女のどこからあんなに凄い音楽が出てくるのか、と感心してしまいます。演奏スタイルは自然体といっていいでしょう。イヤミなところがありません。演奏のあまりの素晴らしさに感動してか、第1楽章が終わると会場から拍手が沸きました。本当はマナー違反ですけどね。まあ大目に見ておきましょう。

「悲愴」交響曲は、チャイコフスキー最後の交響曲です。自ら指揮をして初演しましたが、直後に急逝しました。享年53歳でした。チョン・ミュンフンは完璧にオーケストラを掌握しています。この曲でも第3楽章の「行進曲」のテーマが鳴りおわると、拍手とともに「ブラボー!」の声がかかりました。これはやり過ぎでは?

聴いていた座席は1階10列28番という席で、かなり前の方でチェロの前あたりでした。この席から指揮者を見ると主席第2バイオリン奏者(女性)が目に入ります。自然と指揮者とこの女性の演奏を観ながら音楽を聴くことになりました。この人が実に感情表現が豊かな人で、楽しそうに、時に悲しそうに、そのときどきの気持ちを顔に現して演奏するのです。それが実に自然体で見ていて気持ちがよいのです。この人を通してオーケストラ全体を見通すと言ったらいいのでしょうか。一般的に韓国人は感情が激しいと言われているようですが、芸術面で生かしてくれれば好ましいと思います。

鳴り止まない拍手に答えて演奏したのは、なんとチャイコフスキーの「交響曲第4番」の第4楽章でした!交響曲のアンコールに交響曲を演奏してしまうんですよ!!その迫力たるや言葉では言い尽くせません!!!

今回が今年に入ってナマで聴いた41回目のコンサートですが、断言します、今回がこれまでの「ベスト1」です!






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