人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

「マーラー 君に捧げるアダージョ」を観る

2011年05月01日 16時24分27秒 | 日記
1日(日)。渋谷のユーロスペースで「マーラー 君に捧げるアダージョ」を観ました。11時30分からの初回なので10時40分ごろ会場に行ったのですが、すでに階段までチケットを求める人たちが並んでいました。そういえば今日は1日。映画の日。チケット代が一律1000円です。ゴールデン・ウィークでもあるし、立ち見も出ました。

作曲家=スター指揮者グスタフ・マーラーは1910年の夏、精神科医フロイトを訪ねます。建築家グロピウスから妻アルマに宛てた熱烈なラブレターを見たマーラーは、妻がグロピウスと不倫関係にあったことを知り、フロイトに悩みを打ち明けます。長椅子に横たわりながらフロイトの診断を受けたマーラーはアルマと出会ったときのことなどを想いおこします。回想シーンで流れるのがマーラーの第10交響曲第1楽章「アダージョ」です。甘い思い出のときには第5交響曲の第4楽章「アダージョ」が、マーラーがアルマを恋するシーンでは第4交響曲の「静けさに満ちて」が流れます。彼の音楽で使われているのはこの3曲だけですが、その使い分けが優れています。

フロイトは「あなたが犯した罪は何ですか」とマーラーに問いかけますが、彼は「罪を犯したのは妻のアルマで、自分に罪はない」と激怒します。アルマは風景画家エミール・シントラーの娘として生まれ、子供時代からウィーンの芸術家たちとかかわりをもち、作曲も手がけた才能ある女性でした。しかし、マーラーはアルマと結婚するのあたって、彼女が作曲することを禁じ、妻として、子供たちの母親としての役割を果たすよう求めました。結婚当時マーラーは41歳、アルマ22歳、その差19歳でした。アルマは最初のうちは我慢していましたが、最終的には自分の置かれた立場に満足できませんでした。アルマは自分を認めてくれる人がほしかったのです。マーラーは大指揮者であり大作曲家でもありましたが、たった一人の女性アルマを満足させることができませんでした。それは19歳の歳の差だけの問題だけではなかったでしょう。フロイトの「あなたが犯した罪は何ですか」の問いにマーラーは答えることができなかったのです。

恋多き女性アルマはマーラーと結婚する前、画家クリムト、作曲家ツェムリンスキーと関係を結び、マーラーの後はグロピウスと結婚、そして離婚、作家ベルフェルと結婚、彼の死後、ニューヨークで85歳の生涯を閉じました。1964年といいますから、随分最近まで生きていたのだ、とあらためて感心しました

この映画で流れるマーラーの音楽はエカ・ペッカ・サロネン指揮スウェーデン放送管弦楽団が演奏しています。この映画のために特別に録音したとのことです。第10交響曲の第1楽章「アダージョ」では、監督の意図を汲んでフル・オーケストラによる演奏だけでなく、楽曲を分解したパートごとに演奏し、主旋律に耳が奪われ普段気が付かない音を再現しています。

この映画で一つだけ注文をつけるとすれば、当時マーラーは作曲家というよりもウィーン国立歌劇場管弦楽団の指揮者としての立場の方が世間に認められていたので、マーラーが指揮をするシーンがあっても良かったのではないか、ということです。当時のカリカチャーなどを見るとマーラーの指揮は相当派手であったようですが


コメント
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