人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

グリーグ「ピアノ協奏曲」,シベリウス「第5交響曲」を聴く~東京交響楽団オペラシティ・シリーズ

2011年11月04日 06時48分11秒 | 日記

4日(金).昨日は「文化の日」で休日だったので,1日中忙しく過ごしました.注文していた眼鏡が出来たというので,眼鏡屋に取りに行き,神保町の「チケットぴあ」で,都民芸術フェスティバルのオーケストラ公演のチケットを買いました 昨日予告した3つのコンサートです.神保町では「神田古本祭り」をやっていて,神保町の交差点近くの歩道に多くの臨時古本屋が出店していました.一方,三省堂寄りの裏通りにある喫茶店「さぼうる」「さぼうるⅡ」のⅡの方に多くの人が並んでいました.この店は昔からクラシックなたたずまいで有名な店で,私も大学時代に時々利用していました.なぜか,ホットコーヒーを注文するとピーナッツが付いてきました.普通,喫茶店には並びませんよね.不思議な光景でした

午後,初台の東京オペラシティ・コンサートホールで東京交響楽団のオペラシティシリーズ第64回公演を聴きました.プログラムは①ホルスト「セント・ポール組曲」,②グリーグ「ピアノ協奏曲イ短調」,③シベリウス「交響曲第5番変ホ長調」の3曲.指揮は大友直人です.

1曲目のホルスト「セント・ポール組曲」は1913年,ホルスト39歳のときの作品で,当時,彼はロンドン郊外にあるセント・ポール女子学校で音楽主任をしていて,学校に防音装置が完備したお礼として弦楽合奏のためのこの曲を作曲したとのことです.ちょっと聴いた感じはエルガーに似ていたところがあったり,チャイコフスキーのようなメロディーがあったり,民謡調の聴きやすい曲でした

2曲目のグリーグ「ピアノ協奏曲イ短調」でソリストを務めるのは,1966年ノルウェー生まれのホーヴァル・ギムセ.金髪で長身のピアニストです.ノルウェー国立音楽院,ザルツブルク・モーツアルテウム音楽院,ベルリン芸術大学で学び,これまでスタインウェイ賞,グリーグ賞,シベリウス賞などを獲得した実力者とのことです.

第1楽章冒頭から,長身を生かしたダイナミックな音楽づくりで,力強い演奏を展開します カデンツァは聴きものでした.第2楽章は一転して弱音の世界をロマンティックに演奏します.まさに”男のロマンティシズム”を感じさせる演奏と言えます.第3楽章は,再び男性的な,ほれぼれするような気持ちのいい演奏です 私はこれまで,グリーグの「ピアノ協奏曲」といえば女性が弾くのに相応しい曲だと勝手に思っていましたが,この日を境に考えを改めることにしました

鳴り止まないにアンコールを演奏しました.何となくグリーグかな?と思ったのですが確信が持てません.目にも留まらぬ速さで演奏を始めたかと思うと,途中からロマンティックなゆるやかなメロディーになり,再び冒頭の速いパッセージで締めくくりました.あまりの見事な演奏に会場が沸き立っていました 休憩時間にロビーに出て掲示版にアンコール曲を探したのですが,なかなか張り出されません.諦めかけていると,やっと掲示されました.グリーグの「抒情小曲集第5番作品54の3”トロルのマーチ”」であることがわかりました.掲示が遅くなったのは,主催者側にとって予想外の曲だったのかもしれません

休憩後のシベリウス「交響曲第5番」は,シベリウスの交響曲の中で一番好きな曲です.第1番も第2番もいいのですが,この曲の第1楽章フィナーレと第3楽章フィナーレが特に好きなのです

1904年にシベリウスはヘルシンキ郊外のヤルヴェンパーに山荘を建て,これを夫人の名(アイノ)からアイノラと名付けて生涯の住まいとしました.シベリウスの交響曲の第3番以降はここで作曲されました.交響曲第5番は50歳の誕生日(1915年12月8日)に行われる記念コンサートのために構想されました.完成は誕生日当日,ヘルシンキ大学大ホールで作曲者自身の指揮で初演されたとのことです.

大友の指揮で第1楽章が始まります.この人は指揮棒を使いません.シベリウスは管楽器が一つのポイントになりますが,東響は演奏者の技量が安定しているので,安心して聴くことができます.第1楽章フィナーレは,どんどんテンポが上がっていき,最後は急に空間に放り出されるような感覚に襲われます.ここがとても好きです

交響曲としては珍しく,この曲は3楽章形式です.あっという間に第2楽章を経て3楽章に突入です.このフィナーレは6回の総奏による和音で締めくくられますが,ここをどういうテンポで演奏するか,それが最大の関心事です

実は,この日まで,毎日のようにバルビローリ指揮ハレ管弦楽団のCD(1966年の録音)で予習をしてきました.バルビローリのフィナーレの6回の和音は,演奏が6回止まってしまったような印象を受けます.それほど,間を十分過ぎるほど十分に取って次の和音を演奏しています現代人には”我慢の限界”を通り越した”間”でしょう.

今回の大友直人は,バルビローリほど長い”間”は取りません.バルビローリが1960年代の”間”だとすれば,大友は,まさに21世紀の”間”を取って演奏したと言えるでしょう.これを今,バルビローリのように演奏したら,まさに”間が持たない”状態になってしまうでしょう大友の解釈は正解だったと思います.

終演後,何回か指揮者が呼び戻され,もうお仕舞いだろうと思って席を立って後方のドアに向かうと,大友が「アンコールにグリーグの”組曲ホルベアの時代”から”プレリュード”を演奏します」と言って,弦楽だけによる演奏を始めました.会場後方で立って聴きましたが,これも親しみやすい曲で,東響の弦楽合奏のレベルの高さを示しました

 

〔写真左はプログラム表紙.絵はシェーンベルクが描いた「期待」.右はバルビローリ指揮ハレ管弦楽団のシベリウスの交響曲第5,第7番のCD〕

          

 

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