人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

フォーレ「レクイエム」,シェーンベルク「モノドラマ・期待」を聴く~東響第594回定期演奏会

2011年11月20日 07時31分21秒 | 日記

20日(日).昨夕,サントリーホールで東京交響楽団第594回定期演奏会を聴いてきましたプログラムは①シェーンベルク「モノドラマ:期待」,②フォーレ「レクイエム」の2曲,指揮は東響の音楽監督ユベール・スダーンです.

1曲目のシェーンベルク「モノドラマ:期待」は,プログラムの解説によると「登場人物は名のない女1人.彼女は月夜の森をさまよいながら恋人を探している.森を抜けると,恋敵の家の前で惨殺されている恋人を発見し,錯乱した彼女は,苦悩,回想,性的な欲求,嫉妬,憤り,諦めといった感情を絶え間なく吐露してゆく」という内容です

台本はウィーン大学で医学を勉強して卒業した初めての女子医学生マリー・パッペンハイムによって書かれました.シェーンベルクは義兄で作曲家のツェムリンスキーを通じて彼女と知り合い,台本作成を依頼したとのことです.全体は1幕4場からなりますが,恋人の死体を発見して錯乱して感情を吐露する第4場が全体の4分の3を占めます

オーケストラがスタンバイし,ソプラノのエレナ・ネべラが深紅のドレスで登場します.プログラムに収録された音楽評論家との対談で,スダーンは「歌手には,オーケストラの後方,P席手前の立ち台に立ってもらい,”ト書きどおり”白いドレスを着用するようお願いしようとは思っています」と発言していますが,そうはならなかったようで,赤いドレスで,指揮者の隣で歌いました

ネべラは南ロシア出身で,サンクトペテルブルク音楽院を卒業,2000年ザルツブルク音楽祭にデビュー.01年からドルトムント歌劇場の専属歌手を務めているとのこと.2007年フェニーチェ歌劇場でスダーンの指揮のもと初めて「期待」の主人公を歌って絶賛されて以来,当たり役になっているとのことで,今回の公演でも,錯乱した一人の女の刻々と変化する感情を「一人芝居」で見事に表現していました

シェーンベルクの曲は苦手なのですが,人の声による「期待」は比較的すんなりと耳に入ってくる音楽でした.それだけでも収穫がありました

休憩後オーケストラのメンバーが登壇します.1曲目の時と違って,ビオラのメンバーが向かって左サイドから入場してきたので,あれ?と思いました.よく見ると,向かって左からヴァイオリン(第1,第2ヴァイオリン各6人の混成),その右にヴィオラ(10人),右サイドにチェロ(10人),その後ろにコントラバス(8人)という編成です.スダーンによる”レクイエム・シフト”とでも言うのでしょうか

合唱の東響コーラスが揃ったところで,拍手の中,スダーンとソリストの登場です.ここでも,あれ?と思いました.バリトンの青山貴しか登場しません.ソプラノの森麻季はどうしたのか??と思ってうちに1曲目の「イントロイトゥスとキリエ」が始まりました.ところが,ヴァイオリン・セクションが休んだままで,中低音のヴィオラ,チェロ,コントラバスが中心になってメロディーを奏でているのです.ここでも???でした

後でプログラムを見て理解しました この曲は1888年に初演されましたが,その後,何度か楽器編成が変更されたようで,今回の公演では1900年4月にリールで,さらに7月にパリの万国博覧会で演奏された「コンサート・バージョン」で演奏されたのです.このバージョンではヴァイオリンは第3曲目の「サンクトゥス」になって初めて登場するのです

フォーレ「レクイエム」は,通常のレクイエムとは異なり,「怒りの日」が除外されているため,レクイエム(安息を)という意味を強く感じさせる静かで穏やかな音楽です.第3曲の「サンクトゥス」の合唱による美しさをどのように表現すればよいのでしょうか

「サンクトゥス」の終わりの方で,P席後ろの通路を黒い服を着た女性が歩いているのに気がつきました.曲の途中で気分が悪くなった人が退席するのかな,と思っていると,彼女は中央のパイプオルガンの真下で止まり,正面を向きました.美しい合唱が終わり,女性にスポットライトが当てられました.森麻季の登場です 彼女は第4曲目の「ピエ・イエス(ああ,イエスよ)」を歌いましたが,天上から天使の歌が降ってくるような感覚を覚えました.彼女の声を何と表現すればよいでしょうか ひと言でいえば”穢れのない澄み切った美しい声”とでも表現すべきでしょう.彼女は,先週日曜日にモーツアルトの「コジ・ファン・トゥッテ」のヒロインを歌いましたが,オペラも良いけれど,宗教曲の方がもっと良いように思います

歌い終わるとスポットライトが消され,彼女は静かに来た方向に戻り,開かれたドアから退出しました.サントリーホールの特性を生かした素晴らしい演出だったと思います

第5曲「アニュス・デイ」,第6曲「リベラ・メ」,そして最後の第7曲「インパラディスム」と続きましたが,本当に穏やかで素晴らしい曲です 最後に余韻を残して音楽が消えると,拍手とブラボーが会場を満たしました.森麻季が舞台袖から再登場すると会場からはもちろんのこと,合唱団からもさかんな拍手が寄せられました 

今回のシェーンベルクとフォーレの”声楽曲”による組み合わせは良い企画だったと思います

ところで,今月号のプログラムの表紙は作曲家シェーンベルクの描いた「期待」です.この日演奏された「モノドラマ:期待」を絵にしたのでしょうか.それにしてもプロ級の絵だと思います

 

          

 

 

 

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