14日(月).昨日,北とぴあ・さくらホールで寺神戸亮指揮レ・ボレアードによるモーツアルトの歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」を観てきました北トピアは北区の施設で,JR王子駅のすぐ近くにあり,巣鴨の自宅からは都電を利用してドア・トゥー・ドアで25分弱です.自宅から一番近いコンサートホールかもしれません 何年か前に一度何かのコンサートを聴いたことがあります.第9だったかも 自席は1階M列30番で,前から13列目のやや右サイドの通路側,会場はほぼ満席です
レ・ボレアードは北とぴあ国際音楽祭から生まれた古楽オーケストラです.リーダーの寺神戸亮はバッハ・コレギウム・ジャパン(B.C.J)がマタイ受難曲など大曲を演奏するときにコンサートマスターを務めています.古楽ヴァイオリンの第1人者といってもいい存在です その関係もあってかB.C.Jで活躍しているオーボエの三宮正満,フルートの前田りり子等も参加しています.今回公演のコンサートマスターは,イギリスのジ・エイジ・オブ・エンライトゥメント管弦楽団等の古楽オーケストラでコンサートマスターを務めてきたエリザベス・ウォルフィッシュです
キャストはドラベッラ=ロベルタ・マメリ,フィオルディリージ=森麻季,フェルランド=櫻田亮,グリエルモ=大山大輔,デスピーナ=高橋薫子,ドン・アルフォンソ=フルヴィオ・ベッティーニという面々で,合唱は北区民混声合唱団(女性20人,男性9人)です.今回の公演はコンサート形式で催されました.歌手はオーケストラの手前,指揮者の横で譜面を見ながら歌います
オペラの第1関門は序曲です.寺神戸のタクトが振り下ろされて軽快な序曲が始まります.古楽器特有のくすんだような音,モーツアルトのテンポ.この序曲を聴いて,この公演の成功を確信しました
第1幕が始まり,ドン・アルフォンソ対グリエルモ+フェルランドの”賭け”の重唱が歌われ,フィオルディリージとドラベッラが加わって四重唱になったところで,指揮者の寺神戸が指揮棒を落としてしまいました グリエルモ役の大山大輔が,それに気がついて,歌って演技しながら拾い上げ,寺神戸に手渡しました.これには舞台上の歌手陣も観客も目には見えない拍手を送りました コンサート形式とは言え,歌手陣は分厚い譜面を持って右に左に動き回らなければならないので大変です.
歌手陣は男性も女性も申し分ない素晴らしさです.森麻季は澄みきったきれいなソプラノで聴衆を魅了しました マメリはちょっぴり浮気な妹役を好演していました.大山はよく通るバリトンで堂々と歌い,B.C.Jでもソリストとして歌っている櫻田は絶好調のテノールを聴かせましたベッティーニは,”賭けの仕掛け人”ドン・アルフォンソを素晴らしい演技力とともに,いい声を聴かせてアピールしていましたまた,デスピーナ役の高橋薫子は,まじめな役柄が似合うと思っていましたが,今回のコケティッシュな役柄も自然に歌い,演じていて好感が持てました
アリアや重唱が終わるたびに,うしろの方の真ん中の席の男性が「ブラボー」「ブラビー」と叫んでいました.一人だけなのですごく目立ちました その時,頭をよぎったのはこのホールの名前でした(1行目).観客の拍手の大きさを聞けばそんな人は必要ないと思いますが
プログラムの曲目解説によると,このオペラは18世紀のオペラの中では珍しく,単独のアリア以上に重唱曲の方が多く,二重唱6,三重唱6,四重唱1,五重唱2,六重唱1で合計16になるといいます.重唱は,違う台詞を旋律に乗せて歌うことことによって,オペラならではの対話を可能にするといわれます.そうした意味で「コジ・ファン・トゥッテ」は「アンサンブル・オペラ」と評しても差し支えないといわれています.どれもがモーツアルトらしく,思わずいっしょに口ずさんでしまいそうなメロディーに溢れています
フィナーレの六重唱が終わるや否や会場は熱狂的な”ブラボー”との嵐となりました.モーツアルトの曲を聴いた時にいつも想うことは,作曲家としてのモーツアルトの素晴らしさを認識させてくれるかどうか,ということです.そういう意味で,今回の公演は”これぞモーツアルト”という素晴らしいパフォーマンスでした
〔写真左はコンサートのチラシ.右はロビーに掲示されていたリハーサル風景写真.左からロベルタ・マメリ,高橋薫子,森麻季〕
〔追伸〕
夕べ,野球好きの息子がテレビで「日本シリーズ=中日対ソフトバンク」第2戦を観ていました.得点は「中1:ソ1」となっていました.そこに娘がやって来て「中国とソ連で試合やってるの?」・・・・・・・・・・・・・今の世界のどこにソ連がありますか? 「中華:ソバ」に決まってますよねぇ,みなさん