人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

奥田英朗「オリンピックの身代金(上・下巻)」を読む

2011年11月15日 06時34分43秒 | 日記

15日(火).昨夕はテナントFのHさんと,わが社のE部長とで地下Kで飲みました もちろん仕事上の情報交換ですが,いつもOやRばかりで飲んでいるので,たまにはKで飲もう,ということになりました.E部長はこの日インフルエンザの予防注射を打ったばかりで,クリニックの先生から「当分お酒は”あまり”飲まないように」と言われたと言っていましたが,うそでしょう.先生が”あまり飲まないように”とは言わないはずで”飲んではいけません”と言ったはずです.にもかかわらず飲んでいる訳で,気の弱い私には止められません 2時間くらい飲んでHさんと別れて帰ろうとすると,いつも飲んでいるRのWさんに呼び止められ,結局2次会になってしまいました.そんな訳で,今朝も頭痛です.月曜日から飲んだ週は1週間が長くて辛いです身体中痛いし・・・・・自業自得

さて,ここでクイズです.インフルエンザの注射を打ってはいけない”腕のある部分”があります.それはどこでしょうか?・・・・・・・・・・・答えは「ひじ」です.その理由は・・・・・・・・・・・「曲がり角はちゅうしゃ禁止」なんちゃって・・・・・・山田くーん,座布団・・・・・やっぱ,いらないや

 閑話休題 

最近読んだ本から紹介します.奥田英朗著「オリンピックの身代金(上・下巻)」を読みました 著者の奥田英朗は1959年生まれ.1997年に「ウランバーナの森」で作家デビュー,2002年「邪悪」で大藪春彦賞,04年「空中ブランコ」で直木賞,07年「家日和」で柴田錬三郎賞,そして09年にこの「オリピックの身代金」で吉川英治文学賞を受賞しています.ほかにも「最悪」「イン・ザ・プール」「サウスバウンド」「ガール」などの著作があります

東京オリンピックは昭和39年に開かれました.スポーツの祭典であり,日本が戦後から立ち直り,高度成長を果たすことを世界に印象付ける国家的イベントでした.「オリンピックの身代金」は,東京オリンピックを目立たぬところで支えた地方からの出稼ぎ労働者たちの苦労を背景に,拡大する格差に歯止めをかけようと国家に挑戦しようとする東大生の物語です

秋田県の貧しい農家の生まれではあるが,わけあって東大経済学部の大学院に在籍する島崎国男は,オリンピックのための工事現場で死んだ兄の真の原因を突き止めるべく,兄が働いていた現場に行き肉体労働に従事します.そこで,大企業の下請けの下請けという社会の底辺で働く肉体労働者の厳しい現実を目の当たりにして,現状を打破しなければならない,と決心します 国家を転覆することができなくても,国家に一泡吹かせることはできるだろうと,「8000万円を渡さなければダイナマイトでオリンピック会場を爆発させる」と警察を脅します.そして旅の途中で知り合った同郷のスリ村田とともに10月10日にオリンピック会場に乗り込みます 

主人公の島崎国男は正当性はあるものの人を殺した犯罪者です.しかし,いつの間にか,島崎ガンバレ警察の検問を潜り抜けてダイナマイトを爆発させろと応援している自分がいます.奥田英朗の作品は「邪悪」も「最悪」も「イン・ザ・プール」他いろいろ読みましたが,どれもが,どこかトボケタ味がある,それでいて息もつかせぬ作品でした.それに比べてこの「オリンピックの身代金」は格差社会と正面から戦おうとする一人の真面目な青年の真摯な生き方を描いており,いままでとは若干作風が違うな,と思いました.とは言え,読み出したら止まらないエンターテイメント小説には違いありません 余談ですが,同じ直木賞作家の向田邦子は,確かこのオリンピックの開会式の10月10日に家を出たのでしたね

ところで,ほぼ同世代が昔を振り返る話になった時,必ず話題になるのが「東京オリンピックの時にどこで何をしていたか?」ということです.私は埼玉県狭山市の公立中学の2年生でした.オリンピックを迎えるために,東京を中心に高速道路が整備され,数々の競技場がオープンし,新幹線が開通しました.教室にはオリンピックの5輪マークや陸上選手のスタート場面のポスターが飾られ,学校でも家でも話題はオリンピックだらけでした.陸上部で短距離を走っていたので,興味はロバート・ヘイズの100メートル走でした.ヘイズが10秒の壁を破ることに挑戦していたときに,こちらは12秒の壁に挑戦していました.当時の記録は100メートル12秒3で,200メートル26秒0でした

オリンピックの次の年だったか,隣の家のKさんが「娘が京都に修学旅行に行ったんだけど,向こうで熱を出してしまって,これから新幹線で迎えに行くんですよ」と悲しいような,嬉しいような顔で言っていたのが忘れられません

「オリンピックの身代金」はそんな昔のことを思い出させてくれる材料があちこちに散りばめられています

 

          

 

コメント (2)
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