17日(金)。道尾秀介の初エッセイ集「プロムナード」を読み終わりました 道尾秀介は1975年生まれ。2004年に「背の眼」で第5回ホラーサスペンス大賞特別賞を、07年に「シャドウ」で第7回本格ミステリ大賞を受賞したのをはじめ、2011年には「月と蟹」で第144回直木賞を受賞しています
新聞各紙、週刊誌、月刊誌などに掲載されたエッセイを集約した46篇が収められています 読んでいると、「アメンボの話」などのように、ああ、これはあの小説の元ネタだな、という記述がそこかしこに発見できます
私は道尾という苗字が珍しいと思っていましたが、小説家の都築道夫から名前をとったと書かれていて、やっとその秘密が分かりました
小説に直接つながらないものでも、よくこんなところに眼がいくなあ、と感心させられる記述が少なくありません
また、「小説家はこういうことをやって思考する”技術”を磨いているのか」と感心したのは「人生の4コマ目」というエッセイです。道尾氏はY紙とN紙を定期購読しているそうですが、Y紙に掲載されている4コマ漫画「コボちゃん」の「逆読み」をやって遊んでいる、というのです
つまり、上の3コマを手で隠し、最後の4コマ目を最初に読んで、それまでの展開を想像する。どうしてもわからなければ、3コマ目を見る。それでも分からなければ2コマ目を見るというものです
「小説を書く上で役立つのではないかと思い、使ったことのない筋肉を使ってみようというような軽い気持ちではじめたことだった。が、やってみるとこれがけっこう面白い
~しばらくこの遊びはやめられそうにない
」と書いています。A紙の「ののちゃん」でやってみようかと思います
道尾氏はいつもiPodで音楽を聴きながらランニングをしているそうですが、どんなジャンルの音楽でも気分の上がり下がりは関係ない、と書いています。常に気分は高揚したままで変わらないそうです
その理由は「音楽の中にはリズムやメロディーのほかに”魂”が入っているからなのではないだろうか。何より人間の心を揺さぶるのは、曲が展開するスピードでも音符の動きでもなく、そこに込められた魂なのではないか
いい音楽には必ず魂がこもっている。だからリズムやメロディーに関係なく、聴いていて気分が高揚する
」と書いています。そして小説を書くのも同じだと言っています
道尾氏は音楽自体に魂が込められているかどうかを言っていますが、とくに生のコンサートでは演奏そのものに魂がこもっているかどうかが大切だと思います。そういう意味で、今までコンサートを聴いていて「魂がこもっているか」と意識して聴いたことはあまりありませんでした かつて経験したコンサートの中では宇宿允人(うすき・まさと)指揮フロイデ・フィルの演奏するベートーヴェンの第3番、第5番のシンフォニーが、まさに魂が込められて迫ってきた音楽でした。残念ながら、彼は一昨年の3.11東日本大震災のほんの数日前に死去しました
これからは、その演奏に”魂”がこもっているかどうか、意識して聴いてみようと思います
この本には、著者が17歳の時に描いた「緑色のうさぎの話」という”絵本”が特別収録されています 内容については見てのお楽しみにしておきます