3日(火).昨日午後,息子は来年4月に就職する会社の「内定式+研修」に参加するため1泊2日の日程で都内のホテルに出向きました 6月に内定を取っていたのですが,1社内定した時点で安心してしまったようで,そこに決めたようです 技術系の会社なので,大学で学んだ専門知識が生かせればいいと思います
一昨日(日曜日)の午後 大学に行き,夜中に帰ってきて,昨日の午後,支度をして内定式に出向く時のことです スーツにネクタイ姿で靴を履いて玄関を出ようとした時の親子の会話です
息子:「行ってきます」
私: 「靴,それでいいのか? 革靴だろ」(スニーカーを履いていた)
息子:「あっ」
私: 「あ~あ」
内定式にスニーカーはないでしょう.先が思いやられます いったいいつまで親は子の心配をしなければならないのでしょう 早く社会に出て一人前になって,親に心配をかけないでくれ,と言いたい
ということで,わが家に来てから今日で1098日目を迎え,民進党の枝野幸男代表代行が新党「希望の党」に合流しない民進の前衆院議員らを中心に新党「立憲民主党」を結成する方針を固めた というニュースを見て感想を述べるモコタロです
党首に前原氏を選んだことが民進の間違いだったわけね ますます混沌としてきた
昨日,夕食に「鶏肉のマヨポン炒め」「生野菜とサーモンのサラダ」「トマトとウィンナとキャベツのスープ」を作りました 「鶏肉~」は言うまでもなくマヨネーズとポン酢で鶏もも肉を炒めるのですが,醤油,酒,塩コショウによる下味付けが肝心です
佐藤正午著「鳩の撃退法」(上・下=小学館)を読み終わりました 佐藤正午氏の作品はこのブログでも何冊かご紹介してきましたね 佐藤氏は1955年長崎県生まれ.北海道大学文学部中退.1983年「永遠の1/2」で第7回すばる文学賞を,2015年「鳩の撃退法」で第6回山田風太郎賞を,2017年「月の満ち欠け」で第157回直木賞を受賞しています
私が佐藤正午ファンになったのは「ダカーポ最高の本! 2010」に選ばれた「身の上話」(2009年)の最後の1行がきっかけでした.あまりの衝撃的な結末に,思わず「えっ」と声を上げてしまいました
上・下巻合計953ページにも及ぶこの小説は,一家失踪事件と偽札事件が時間と空間を超えて進行していく形をとっています タイトルの「鳩」とは偽札,具体的には3枚の偽1万円札のことを指しています
物語は,美しい妻,幼い娘と3人で暮らすバーのマスター・幸地秀吉と,元小説家の津田伸一が,ハンバーガーショップで1度だけ出逢うところから始まる その翌日,幸地一家は神隠しに遭ったかのように姿を消す.その1年後,津田は作家の想像力を駆使して失踪事件の真相を小説とすべく執筆するが,そのさなかにひょんなことから偽札事件に巻き込まれてしまう
この小説は,語り手が「男は」になったり,「僕は」になったりするうえ,過去と現在が複層して語られるので,ストーリーを十分理解しながら読み進めないと混乱してきます 私も何度か,数ページ前を振り返りながら読んでいきました 小説家らしい,というか,佐藤正午氏らしいウィットやディテールにこだわる言い回しに出会うと思わずニヤリとします
この長編小説を書いている間,佐藤氏はフリーライターの東根ユミさんとメールによる「書くインタビュー」のやり取りをしています 「書くインタビュー」は小学館文庫で①②③と3冊出ています ①ではインタビュアーが当初 伊藤ことこさんでしたが,彼女が佐藤正午という大小説家を相手に気安く呼びかけたことから,佐藤氏が「喧嘩うってるのか」と怒ってしまい,インタビュアーが東根ユミさんに代わった経緯があります この「喧嘩うってるのか」というセリフは「鳩の撃退法」下巻の251ページに「鳥飼,おまえ小説家に喧嘩売ってるのか」として出てきます
また,①のメールのやり取りの中で「鳩の撃退法」というタイトルについても触れられています さらに,「鳩の撃退法」を書くに当たっての小説の組み立て方について「パイ構造の1人称小説」を取ることを暗示しているのは重要です.これはもともと,小説「ダンスホール」の構造ですが,これを応用しようとしています 彼は次のように説明します
「『語り手が,自分の目の届かない場所で他人の身に起きた出来事を語る,想像や潤色をまじえていかにも物語を書くように語る部分が3人称で書かれ,その3人称で書かれた部分が1人称で書かれた(いわゆるふつうの成り立ちの)部分に挟まれてパイ生地のように層をなしている小説』それが『パイ構造の1人称小説』です.小説家,つまり小説中の小説家が小説を書くわけです」
「鳩の撃退法」はまさに上に紹介した手法で書かれています
「書くインタビュー②」は「鳩の撃退法」に関するやり取りが中心になっています 主人公の小説家・津田伸一のこと,倉田健次郎のことなど,登場人物等に関する質問が出され,返信が出されます その中で,だんだんインタビューのコツがつかめて来た東根さんは「小説を書く理由」を引き出しています 佐藤氏は次のように答えています
「本気の笑いに手ごたえを感じて,というよりもその本気の笑いがまた聞きたくて鳩撃を書き続けたという側面もあります そこを少し誇張すれば,こうも言えます.担当編集者を笑わせたかったのが鳩撃を書いた第一の理由だ,とも言えるわけです」
「鳩撃」上巻の50ページに次のような会話が出てきます
「社長の喋ることはどのくらい信用できると思う」
「そうか」るり子は小考した.「いささか?」
「じゃあいささかほんとなんじゃないか?」
「津田さんの部屋になんとか賞のトロフィー飾ってあるの見たことあるって,社長は言ってた」
「ほえ」
「なのその,ほえって,うける.てか,いささか,ってどういう意味よ?」
「たは」
この会話の「ほえ」とか「たは」は東根ユミさんへのメールにも登場しますが,佐藤氏はそこで一般読者よりも前に,彼女の反応を見ていたのでしょうね 会話の内容はもちろんのこと,句読点の打ち方一つとっても,すべてが周到な準備と緊密な計算の上に成り立っているように思います
「鳩撃」が分かりにくい,という向きは,この「書くインタビュー①②」を並行して読むと理解が進むと思います 953ページ読んだ上にさらに読むのは大変だと思いますが,「鳩撃」と併せてお薦めします