24日(金).昨日の朝日朝刊の死亡欄を見て「えっ」と声を上げてしまいました
METライブビューイングでもお馴染みのロシアのバリトン歌手ディミトリ・ホロストフスキー氏が22日にロンドンの自宅で死去したという内容でした
今年5月下旬に上映されたMETライブビューイング,チャイコフスキー「エフゲニー・オネーギン」(4月22日上演)で,タチヤーナ役のアンナ・ネトレプコを相手にオネーギンを歌う予定でしたが,「健康上の理由」で降板し,ペーター・マッテイが代演を果たしたのでした
ホロストフスキーで忘れられないのは,2011年6月10日のメトロポリタン歌劇場来日公演のヴェルディ「ドン・カルロ」におけるロドリーゴ役の雄姿と,2015年10月のMETライブビューイング,ヴェルディ「イル・トロヴァトーレ」におけるルーナ伯爵役のカッコよさです
2011年6月のMET来日公演は,プッチーニ「ラ・ボエーム」,ヴェルディ「ドン・カルロ」,ドニゼッティ「ランメルモールのルチア」の3公演すべて観ましたが,3か月前の東日本大震災に伴う東京電力 福島原発事故の影響で,アンナ・ネトレプコ,オルガ・ボロディナ,ヨナス・カウフマン,ジョセフ・カレーヤなど,スター級の歌手が次々と来日を見合わせる中で,ホロストフスキーは来日して素晴らしいバリトンを聴かせてくれ,感激したものです
故人の冥福を心よりお祈りいたします
ということで,わが家に来てから今日で1150日目を迎え,東京ディズニーランドで重さ10キロの着ぐるみに入って手を振るなどし 腕が激痛に悩まされた女性に労働災害が認められた というニュースを見て感想を述べるモコタロです
ねえ 実はキミも 中に誰か入ってアルバイトしてるんじゃないの? 腕痛くね?
昨日,夕食に「鶏のトマト煮」「生野菜と生ハムのサラダ」「湯豆腐」を作りました 「鶏~」は娘のリクエストです.何度か作ったので味が安定してきました
昨日,東京藝大奏楽堂で,東京藝大ウィンドオーケストラ第84回定期演奏会を聴きました プログラムは①グスタフ・ホルスト「吹奏楽のための第1組曲」,②グスタフ・マーラー/中村克己編「交響曲第5番」です
指揮は今回最後の指揮をとる山本正治教授です
全自由席です.1階18列34番,右ブロック右から3つ目の席を押さえました 会場は9割近く埋まっているでしょうか
1曲目はグスタフ・ホルスト(1874-1934)が1909年に作曲した「吹奏楽のための第1組曲」です プログラム冊子の解説によると「吹奏楽ファンで知らない人はいない名曲」とのことですが,私は初めて聴きました
第1楽章「シャコンヌ」,第2楽章「間奏曲」,第3楽章「マーチ」の3楽章から成ります
管楽奏者たちと,なぜかコントラバスが2人スタンバイします コンマスはクラリネットの男子学生です.吹奏楽なので編成が独特です.大雑把に言うと,ヴァイオリンの位置にはクラリネットが,ヴィオラ,チェロの位置にはサクソフォンとチューバがスタンバイします.もちろん本来の金管楽器は正面後方にスタンバイします
この曲は12~13分程度の短い曲なので,あれよと言う間に終わってしまい,鑑賞している余裕がありませんでした ホルストの代名詞的な名曲「惑星」とはだいぶ趣が異なる曲想だと思いました
プログラム後半はマーラーの「交響曲第5番」を聖徳大学准教授・中村克己氏が編曲した版で演奏します この曲の第4楽章「アダージェット」はルキーノ・ヴィスコンティ監督映画「ベニスに死す」(1971年)でテーマ・ミュージックのように使われ話題になりました
ステージの左サイドにハープが2台,右サイドにコントラバスが8挺,後方には打楽器群が並びます
マーラーは南オーストリアのヴェルタ―湖畔の別荘で1901年の夏休みに作曲を開始しましたが,同年11月にマーラー(当時41歳)は23歳のアルマ・シンドラーと出会い,12月にはスピード婚約,翌1902年3月には超スピード結婚しています いわば,マーラーの人生で一番幸福な時期に作られたのがこの曲と言えるでしょう
それなのに,第1楽章は「葬送行進曲」です マーラーの頭の中はどういう状態なのでしょうか
冒頭トランペットがソロでファンファーレを高らかに歌い上げますが,これが葬列の開始の合図です.男子学生が吹きましたが,素晴らしい演奏でした
弦楽器の役割を果たすクラリネットではない本来のクラリネットは,時にベルアップ奏法を見せます
山本教授はマーラーの指示にこだわっているようです.第2楽章では,コントラバスとチューバによる嵐のような音楽から開始されますが,これを聴くと,やっぱり管楽器だけでなく弦楽器も必要な部分があるのだな,と感じます
この楽章では,ワグネル・チューバの演奏が優れていました
第3楽章では,ホルンの学生が指揮者のそばでソロを吹きます この曲はまるでホルン協奏曲のような趣があるので,山本教授はあえてホルンをフィーチャーしたのでしょう
このホルンも素晴らしかった
さて,この曲のハイライト,第4楽章「アダージェット」です
ハープにのってフルートがメロディーを奏でます
次いでサクソフォンとクラリネットを中心にこれを受け継いでいきますが,編曲者・中村氏が一番苦労したのがこの楽章ではないか,と想像します
弦楽器の弱音の魅力をどの楽器で引き出せるか,ということです.なるほどサクソフォンか
と感心しましたが,やっぱり弦楽器の魅力にはどうしても勝てません
「吹奏楽」による編曲版だということを忘れずに聴かないと欲求不満が残ります
しかし,演奏自体は素晴らしいものがありました
最後の第5楽章は,ベートーヴェンで言えば「苦悩を通しての歓喜」の「歓喜」に当たるフィナーレです
この楽章でも管楽器だけでなく,コントラバスと打楽器が演奏に加わることがだいぶ助けになっています
やっぱり,マーラーの交響曲は管弦楽でないとその良さがストレートに伝わってこないのだと思います
それでも,フィナーレは熱狂に満ちた熱演で,聴衆を興奮の坩堝に巻き込みました
山本氏+藝大ウィンドオーケストラは満場の拍手に応え,マスカーニの歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」から「間奏曲」を抒情性豊かに演奏し,クールダウンを図りました