2日(月)。わが家に来てから今日で1279日目を迎え、桜が例年より1週間ほど早く散り始めた というニュースを見て感想を述べるモコタロです
「森友問題で現政権が散るのが早まりそう」って サクラ それ言っちゃおしまいよ!
昨日、上野学園石橋メモリアルホールで「副島理沙 オーボエ・リサイタル」を聴きました これは東京・春・音楽祭の一環として開かれたコンサートです。副島理沙は1989年神戸市生まれ。シュトゥットガルト音楽舞台芸術大学、リューベック音楽大学などを経て、現在はローザンヌ高等音楽院で学び、13年からユンゲ・ドイチェ・フィルハーモニー管弦楽団のメンバーです。今回のコンサートは「第11回国際オーボエコンクール・軽井沢(2015年)入賞・奨励賞受賞記念」という位置づけにあります
プログラムは①クープラン「王宮のコンセール」より「コンセール第1番ト長調」、②シューマン「3つのロマンス」、③プーランク「オーボエ・ソナタ」、④クルークハルト「葦の歌」、⑤モーツアルト「オーボエ四重奏曲ヘ長調K.370」、⑥ルトスワフスキ「墓碑銘」、⑦ドラティ「協奏的二重奏曲」です 出演は、オーボエ=副島理沙、ヴァイオリン=三上亮、ヴィオラ=鈴木康浩、チェロ=金子鈴太郎、ピアノ=江口雅子、チェンバロ=大塚直哉です
自席は1階F列20番、センターブロック右通路側です。会場は6割程度の入りでしょうか。ステージ中央にはチェンバロが置かれています
1曲目はクープランの「王宮のコンセール」から「コンセール第1番」です フランソワ・クープラン(1668-1733)は1693年にヴェルサイユ宮殿 礼拝堂のオルガニストになり ルイ14世(太陽王)に仕えました この曲は1714~15年に書かれた全4曲から成る「王宮のコンセール」の最初の作品です 第1楽章「プレリュード」、第2楽章「アルマンド」、第3楽章「サラバンド」、第4楽章「ガボット」、第5楽章「ジーグ」、第6楽章「メヌエット・エン・トリオ」の6楽章から成ります
上が銀のラメ入り、下が淡いピンクの鮮やかな衣装の副島理沙がチェンバロの大塚直哉とともに登場し、さっそく演奏に入ります まさに「王宮」で演奏されるのに相応しい優雅な音楽が繰り広げられます
演奏自体はすばらしかったのですが、この曲が演奏されている間、会場中央の右方向から誰かの話し声が聞こえてきました 演奏中にも関わらず平気で話をしていつまでも止めない無神経さに呆れます この曲が終わったあと、後ろを振り返って見ると、どうやら高齢者の男女4~5人が横並びに座っていて(全員が同じグループかどうかは不明)その中の一人が隣人に話しかけていたようでした 同じ「島」でも、副島さんのリサイタルを、なぜか北島三郎の歌謡ショーと間違えて入場したとしか考えられません(サブちゃん好きですが)。あのお喋りはとてもエイプリルフールといって許されるものではありません ハッキリ言って 本人の存在自体がエイプリルフールです。「年寄りは無敵だからな」と皮肉を言われても仕方ない蛮行でした。第一に演奏者に対して失礼です。第二に他の聴衆に対して失礼です こういう人は近所の健康ランドにでも行ってゆっくりお湯に浸かって、時に沈んでいればいいのです
さて、ステージ上ではチェンバロに代わりにピアノが中央に移動し、2曲目のシューマン「3つのロマンス」に備えます この曲はロベルト・シューマン(1810-1856)が39歳の時、1849年にわずか5日で完成させた作品です 第1曲「速くならずに」、第2曲「素朴に、心から」、第3曲「速くならずに」から成ります 副島理沙がピアノの江口雅子とともに登場します。この曲では第1曲におけるオーボエの寂寥感が強く印象に残りました
次いで、プーランク「オーボエ・ソナタ」の演奏に入ります この曲は作曲者が最晩年の1962年に作曲した作品で、プロコフィエフの追憶に捧げられました 第1楽章「エレジー」、第2楽章「スケルツォ」、第3楽章「デプロラシオン(嘆き)」の3楽章から成ります
この曲では特に両端楽章の穏やかな曲想の演奏がオーボエの美しい音色が生きていて良かったと思います
前半最後の曲は19世紀後半のドイツの作曲家アウグスト・クルークハルトの「葦の歌」です オーストリアの詩人ニコラウス・レーナウの同名詩集から着想して1872年に作曲されました プログラムには何の説明もありませんが、「葦の歌」の「葦」はオーボエのリードの意味も持たせているように思いましたが、関係ないのでしょうか
この曲は第1曲「ゆっくりと、夢みるように」、第2曲「情熱的に、激しく」、第3曲「繊細に、静かな動きで」、第4曲「燃えるように」、第5曲「非常に静かに」の5曲から成ります
オーボエとピアノに加え、ヴィオラの鈴木康浩(読響ソロ首席)が入ります 第1曲の演奏に入り オーボエに次いでヴィオラの豊かな音色が会場に広がった時、「あっ、まずい」と思いました 鈴木康浩のヴィオラがあまりにも上手すぎて主役のオーボエを食っていたからです でも、こういうのは仕方ないのでしょう。上手いのは上手いのですから しかし、第2曲以降は、オーボエ主体で展開したので一安心しました
休憩後のプログラム後半の最初は、モーツアルト「オーボエ四重奏曲ヘ長調K.370」です この曲はモーツアルト(1756-1791)がミュンヘン滞在中の1781年に書かれました 第1楽章「アレグロ」、第2楽章「アダージョ」、第3楽章「ロンド:アレグロ」の3楽章から成ります
ヴァイオリンの三上亮(札幌響・元コンマス)、ヴォイラの鈴木康浩、チェロの金子鈴太郎(大阪響・元首席)とともに、黒の衣装に赤のリボン付ベルトに”お色直し”した副島理沙が登場し、演奏に入ります この曲ほどオーボエの特性が単純明快に生かされた作品も珍しいでしょう 第1楽章では青空を突き抜けるような明るい音色、第2楽章では哀愁の漂う音色、第3楽章では華やかな音色、とオーボエの魅力が全開です 男性陣3人はしっかりと主役のオーボエを引き立て、素晴らしいアンサンブルを展開しました
次はポーランドの作曲家、ルトスワフスキが作曲し1979年に初演された「墓碑銘」です ごく短い作品ですが、オーボエによる切ない音楽が会場を満たしました
プログラムの最後は指揮者として知られるアンタル・ドラティが1983年に作曲した「協奏的二重奏曲」ですが、オーボエの名手ハインツ・ホリガ-に献呈されました 2つの楽章から成ります。第1楽章はオーボエが冒頭から息の長い旋律を奏でますが、副島理沙のオーボエは良く歌います 第2楽章ではピアノと丁々発止のやり取りをしながら技巧的な演奏を展開します 聴きごたえのある演奏でした
この演奏を聴き終わって、一昨年(2016年)4月12日に同じ会場で開かれた「荒木奏美オーボエ・リサイタル」のことを思い出しました 当時、彼女は東京藝大大学院生であり東響の首席になったばかりだったと思いますが、東響の弦楽の先輩たちと共にモーツアルトの「オーボエ四重奏曲」を演奏したのでした 今や東響のオーボエといえば荒絵理子とともに荒木奏美はなくてはならない存在になっています
今から2年後、副島理沙は第2の荒木奏美となって どこかのオケで首席を吹いているかも知れません それを楽しみに期待したいと思います