5日(木)。わが家に来てから今日で1282日目を迎え、米通商代表部が3日、知的財産の侵害などを理由に新たな関税をかける中国製品の約1300項目を発表した というニュースを見て感想を述べるモコタロです
このアイスキャンディーは対象に入ってるの? えっ、台所用スポンジだって?
昨日、夕食に「豚しゃぶ」と「生野菜とタコのサラダ」を作りました 昨日も夏のような陽気だったので夏メニューです
昨夕、上野の東京国立博物館 平成館ラウンジで「ミュージアム・コンサート 東博でバッハ vol.40」公演を聴きました プログラムはJ.S.バッハ「ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ」全6曲です
演奏はヴァイオリン=島田真千子、チェンバロ=北谷直樹です
島田真千子は東京藝大を首席で卒業後、デトモルト音楽大学大学院を最優秀で修了。現在セントラル愛知交響楽団ソロ・コンサートマスターを務めています 一方、北谷直樹はアーノンクールやシュタイアーらに師事、ヨーロッパを中心に活動しています
島田真千子と言えば「東京春祭チェンバー・オーケストラ」の常連メンバーでしたが、今年は”めでたく”独立してバッハを弾くことになりました バッハのヴァイオリン曲では「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ」がよく演奏されますが、「ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ」をまとめて6曲聴く機会はほとんどありません
今回は良いチャンスだと思いチケットを購入しました
蛇足ですが、チェンバロ(ドイツ語)は、英語ではハープシコード、フランス語ではクラヴサンと言います
東京国立博物館に行くのは(多分)初めてです 東京藝大奏楽堂に行く途中、上野公園の噴水広場を横切る時に遠くの正面に見えるのを垣間見る程度でした。今回 博物館の敷地に入ってみると、庭園の敷地がかなり広く、博物館関係の建物も堂々たる威容を誇っていて、東洋の中の西洋みたいで良い所だな、と思いました
外のテラスでコーヒーを飲むところもあるみたいなので、今度一度昼間の時間帯に訪ねてみようと思いました(幸い コンサート終了後、全員に東京国立博物館「総合文化展」の招待券がプレゼントされました
)
平成館は敷地の奧に入った所にあって、ラウンジもかなり広いスペースでした 自由席というのを忘れていて、開場時間の10分前に着いたら すでに長蛇の列ができていました
それでも、センターブロック3列目の右通路側を押さえました
「ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ」各曲の楽章構成は次のようになっています
【第1番 ロ短調 BWV1014】 第1楽章「アダージョ」、第2楽章「アレグロ」、第3楽章「アンダンテ」、第4楽章「アレグロ」
【第2番 イ長調 BWV1015】 第1楽章「速度指定なし」、第2楽章「アレグロ」、第3楽章「アンダンテ・ウン・ポコ」、第4楽章「プレスト」
【第3番 ホ長調 BWV1016】 第1楽章「アダージョ」、第2楽章「アレグロ」、第3楽章「アダージョ・マ・ノン・タント」、第4楽章「アレグロ」
【第4番 ハ短調 BWV1017】 第1楽章「シチリアーノ:ラルゴ」、第2楽章「アレグロ」、第3楽章「アダージョ」、第4楽章「アレグロ」
【第5番 ヘ短調 BWV1018】 第1楽章「速度指定なし」、第2楽章「アレグロ・アッサイ」、第3楽章「アダージョ」、第4楽章「ヴィヴァーチェ」
【第6番 ト長調 BWV1019】 第1楽章「アレグロ」、第2楽章「ラルゴ」、第3楽章「アレグロ」、第4楽章「アダージョ」、第5楽章「アレグロ」
上記の通り 6曲のうち5曲が基本的には《緩・急・緩・急》の4楽章構成になっており、すべてが異なる組み合わせになっていることが分かります 「第6番」は通常パターンの4つの楽章の前に「アレグロ」を持ってきて5楽章構成にしたと考えるべきでしょう
J.S.バッハ(1685-1750)の作曲によるこれらの作品の作曲年代は、1717年から1723年の間の いわゆる「ケーテン時代」と推定されています
さて、この日のプログラム構成は 次のようになっていました
①第4番 ハ短調
②第5番 ヘ短調
〈休憩〉
③第6番 ト長調
④第1番 ロ短調
〈休憩〉
⑤第2番 イ長調
⑥第3番 ホ長調
二人の演奏家はなぜこのような順番で演奏することを選んだのか? 演奏を聴きながら考えることにしました
黒を基調とするシックな衣装を身にまとった島田真千子が北谷直樹とともに登場します 調弦後、さっそく「第4番ハ短調」の演奏に入ります
冒頭の悲壮な旋律を聴いて気が付くのは バッハの「マタイ受難曲」の第47曲のアリア「憐みたまえ」のメロディーそのものだということです
6曲ある「ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ」を一つも知らなくても「マタイ受難曲」のアリアなら知っている人が多いかもしれない、と考えたのでしょうか? 人を惹きつけるインパクトのある「第4番」を冒頭に持ってきました
さらに、2回の休憩を挟んだ3部構成の各作品の調性を見ると、短調+短調、長調+短調、長調+長調という構成になっています 勝手に想像すると、全体として「暗から明へ」という流れを意識して演奏曲順を考えたのではないか と思いますが、さて どうでしょう
演奏を聴いて感じるのは、ヴァイオリンと同じくらいチェンバロが対等な立場で雄弁に語っているということです バッハはこの6つの作品によってバロック時代の「チェンバロはヴァイオリンの伴奏(通奏低音)」という概念を覆し、ヴァイオリンとチェンバロの右手と左手の3声によって音楽を奏でるという道を切り開いたのでした
とくに最後の「第6番」の第3楽章「アレグロ」はチェンバロのソロによる演奏で、ヴァイオリンの出番はありません
これは「ブランデンブルク協奏曲第5番」におけるチェンバロの独奏と同じ意味を持ちます
全体を通して、どの曲の演奏が良かったとかいうことはありません。強いて言えば、すべてが良かったと言うべきでしょう 島田真千子の使用ヴァイオリンは1769年製ガダニーニとのことですが、音色が美しく音が遠くまで飛びます
若手演奏家を中心にロマン派など個性が強く出せる曲を選んで演奏するケースが多くみられる中、クラシックの背骨とでも言うべきバッハの”地味な”曲に敢えて挑戦し 結果を出す姿勢は素晴らしいと思います
その彼女の意を汲んで息を合わせ、しっかりとサポートした北谷直樹も素晴らしいと思います
この日の演奏を聴き終わって あらためて思うのは「バッハの多様性」です 「ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ」の6曲だけ取ってみても、同じ「アレグロ」でもすべて様相が違います
バッハの天才を感じます。この日の二人の演奏は、バッハの多様性をあらためて再認識させてくれた見事な演奏だったと思います
なお、この日の公演を聴くに当たり、シギスヴァルト・クイケンのヴァイオリン、グスタフ・レオンハルトのチェンバロによるCD(1973年6月録音)で予習しておきました