人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

スピルバーグ監督「ペンタゴン・ペーパーズ」を観る~経営よりも報道の自由を選択したワシントン・ポストの女性社主の決断の物語 / プッチーニ「三部作」、「バーンスタインのアメリカ」のチケットを取る

2018年04月17日 08時14分47秒 | 日記

17日(火)。昨夕、内幸町の日本記者クラブのレストランで「K氏と語る会」があり、出席しました K氏は新聞関係団体で総務部長、欧米駐在代表、欧州駐在代表などを歴任された国際派の大先輩で、私にとっては入職後 最初の直属の上司です   K氏は現在ロンドン在住のため、昨年12月5日と同様、来日したのを機に OBのU氏が呼びかけ人となって、K氏のかつての部下に声をかけたものです  

参加したのは、K氏、U氏のほか、先輩のSW氏、HN氏、MK氏、SH氏、AY君、女性OBのKAさん、現役女性のOAさんと私の10人です 全員が揃う前に、私が「ペンタゴン・ペーパーズ」を観てきたという話をしたことから、その話題になり、同じ映画を観たK氏、HN氏、SW氏と私の間で感想を述べ合いました。その内容はこのブログの最後でご紹介します 

個々人の近況報告では、この日のゲストK氏と先日ゴルフをやったというU氏、犬を散歩させて毎日を規則正しく生活しているSH氏、2020年の東京オリンピックを控え いつも通っている競技場のトレーニングセンターが閉鎖され 別の体育館に通っているSW氏、考え事をしながら歩ける道が日本にはないと嘆くHN氏、家族のためにまだ現役で働いているというMK氏、中学二年生を抱えて主婦業をしているが たまには刺激が欲しいというKAさん、トップが変わり職場環境が改善したと語る現役のOAさん、ビル管理の仕事に専念するAY君と話が続き、私からは5つの目標(コンサート、映画鑑賞、読書、ブログ、料理)の現況について話しました 肝心のK氏は現在一人で住むロンドンの家を売り払って日本に戻るか、英国に住み続けるか 今年中に決断したいと話されていました

予定では2時間程度を見込んでいたと思いますが、話が尽きず、結局解散したのは3時間後でした。楽しい時間は短く感じるものです Uさん、AY君をはじめ、ご参加のみなさん 楽しい時間をありがとうございました また今度、K氏が来日する際に再会できれば嬉しいです

ということで、わが家に来てから今日で1294日目を迎え、トランプ米大統領から解任された連邦捜査局(FBI)のコミー前長官が 回顧録の出版を前に米ABCテレビのインタビューに応じ、トランプ氏を「常に大小のあらゆるウソをつく。マフィアのボスのようだ。道徳的に大統領に向かない」と痛烈に批判した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      トランプ大統領から解雇された人が 次々と懐古的になって 回顧録を書くようだ

     

         

 

昨日、夕食に「豚もやし炒めのおろしポン酢かけ」と「大根の葉のお浸し」を作りました 大根の葉は、捨てるのがもったいないですからね

 

     

 

         

 

コンサートのチケットを2枚取りました 1枚目は9月7日(金)午後2時から初台の新国立劇場「オペラパレス」で開かれる東京二期会公演「プッチーニ『三部作』」公演です 「三部作」とはジャコモ・プッチーニが作曲した「外套」「修道女アンジェリカ」「ジャンニ・スキッキ」のことです 私はこのうち「ジャンニ・スキッキ」しか観たことがないので、今回はいいチャンスだと思ってチケットを取りました 公演は9月6日(木)、7日(金)、8日(土)、9日(日)の4回あり、ダブルキャストでの上演となっています 日程はコンサートの予定が入っていない7日を選びましたが、この日は平日マチネスペシャル料金ということで、他の公演よりも安く設定されているのでラッキーです

 

     

 

もう1枚は、10月11日(木)午後7時から東京藝大奏楽堂で開かれる 東京藝術大学の藝大プロジェクト「バーンスタインのアメリカ」の第3回公演です このプロジェクトは第1回「バーンスタインへの道」、第2回「ピアニスト・バーンスタイン」、第3回「作曲家・バーンスタイン」の3回構成になっていますが、残念ながら第1回と第2回は別のコンサートの予定が入っているので行けません 入場料はいずれも全自由席で@2,000円ですが、2回セレクト券が3,000円、3回セレクト券が4,500円と格安になっています

 

     

 

     

 

         

 

昨日、新宿ピカデリーで「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」を観ました これはスティーヴン・スピルバーグ監督による2017年アメリカ映画(116分)です

時はリチャード・ニクソン大統領政権下の1971年。ベトナム戦争が泥沼化し、アメリカ国内には反戦の気運が高まっていた。国防総省(ペンタゴン)はベトナム戦争について客観的に調査・分析する文書を作成していたが、戦争の長期化により、それは7000枚にも及ぶ膨大な量に膨れ上がっていた。そこには勝ち目のない戦争を拡大させ多くの若者たちを戦場に送り続けてきた歴代大統領の政策も含まれていた ある日、その最高機密文書(通称『ペンタゴン・ペーパーズ』)の内容の一部を、執筆者の一人ダニエル・エルズバーグからニューヨーク・タイムズ紙のニール・シーハン記者が入手しスクープしたことから、政府の欺瞞が明らかになった ライバル紙であるワシントン・ポスト紙は、亡き夫に代わり発行人・社主に就任していたキャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)のもと、編集主幹のベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)らが文書の入手に奔走し 何とか入手に成功するが、ニクソン政権は「国家機密の情報漏洩である」として記事を書いたニューヨーク・タイムズの差し止めを要求した 新たに記事を掲載すれば、ワシントン・ポストも同じ目にあうことが危惧された。ちょうどその時、ワシントン・ポストは家族経営から脱却し、株式を公開して外部資本を導入したばかりのタイミングで、記事の掲載を巡り 会社の経営陣とブラッドリーら記者たちの意見が対立、キャサリンは会社の経営を守るか 報道の自由を貫くかの間で困難な判断を強いられる

 

     

 

社主キャサリンはまさに会社としての生き残りをかけて真実の報道を決断したわけですが、ワシントン・ポスト紙の報道に勇気づけられた他の地方紙が 同紙に協調して追いかけ報道し 各紙の1面の見出しが「ペンタゴン・ペーパーズ」で揃ったシーンを観た時は目頭が熱くなりました

スピルバーグ監督が なぜ今「ペンタゴン・ペーパーズ」を製作しようと思ったのかを考えるとき、ツィッターを通して「フェイクニュース」を平気で流す一方で、自分に不利な情報があると「それはフェイクだ」と言って否定するトランプ大統領の存在を抜きには考えられません アメリカ史上初の自分本位の気まぐれ大統領を前にして、報道する側は「何が真実で 何が嘘かを見極めて」国民に報道する責任があります

それは日本においても同じで、最近では 朝日新聞が3月2日に、森友学園との国有地取引の際に財務相が作成した決裁文書の書き換えをスクープした「森友学園問題」にせよ、愛媛県が「首相案件」文書の作成を認めた「加計学園問題」にせよ、最初は「ない」と言っていた資料が後から出てきたり、行政のトップが”お友だち”に有利になるように役人に忖度させて便宜を図ったことに国民のほとんどが気が付いているのに「関与していない」と言い張ったりしている現状の中で、報道する側は今まで以上にファクト(事実)を積み上げ、真実を追求する姿勢が求められています

さて、この映画を観たK氏とHN氏(共にアメリカ駐在代表として米国で数年間勤務していた経験がある)の感想は、次のようなものでした

K氏の感想は「『ペンタゴン・ペーパーズ事件』と言えば、最初にスクープしたニューヨーク・タイムズのニール・シーハン記者のことを思い浮かべる ワシントン・ポストは二番手で追っかけたに過ぎない。ところが、この映画では、シーハンは最初にちょっと登場するだけで、後はワシントン・ポストの話に移ってしまう。確かに株式公開直後というタイミングでの極秘文書の公開の意味は大きいと思うが、当時のことを思い出すと、そこが何ともしっくりこない」というものです

HN氏の感想は「『ワシントン・ポスト』は現在『アマゾン』の経営傘下にある(※2013年に当時のオーナーのドナルド・グラハムから『アマゾン』創業者ジェフ・ベゾスが買収した)。このべゾスはトランプが大統領になる前から批判的な立場を取っており、ポスト紙もそういう論調を展開していた 二人はいわば犬猿の仲だ。そういう背景を考慮すると この映画は、現在のトランプ大統領に対する当てつけに『ワシントン・ポスト』を持ち上げる映画を作らせたように思え、どうも胡散臭いものを感じる 実際、ブラッドリー編集主幹に会ったことがあるが、それほどの人物とは思えなかった」というものです

私としては、株式公開により外部からの取締役が入ってきて 会社存続の立場から記事の掲載を思い止まるよう迫られる中で、”初めての女性新聞経営者”として苦悩の末、報道の自由を守る決断を下す姿を、現在のトランプ大統領の危険性を告発しつつ描いた映画だと思います

あなたはどう思われるでしょうか? 映画をご覧になってから判断してください

さて、この映画は、何者かが真夜中にビルに忍び込んでいるのに気が付いた警備員が 警察に通報するシーンで終わります

このシーンは、もう一つの「ニクソン大統領対ワシントン・ポスト紙」という構図の「ウォーターゲート事件」の始まりを描いています これは 1972年6月17日、首都ワシントンのウォーターゲートビルに入居する民主党全国委員会本部に5人組の男が侵入し 不法侵入で逮捕された事件で、現職の大統領ニクソンが次の大統領選挙で有利になるようにと、ニクソン再選委員会と大統領側近が民主党の本部に盗聴装置を仕掛ける計画に関与していたというものです   さらにニクソン大統領自身が 事件のもみ消し工作を行った との疑惑まで浮上してきたことから、大統領と議会との対立が深まりましたが、最高裁判所が証拠提出要求を支持する判決を下し、下院司法委員会が大統領の弾劾を可決するに至ったため、ついにニクソンは1974年8月9日に米国史上初めて、現職大統領として辞任します

この事件では、ワシントン・ポスト紙のカール・バーンスタイン、ボブ・ウッドワード 両記者が、ニュースソース(「ディープ・スロート」)からの情報提供などにより調査報道を展開し、編集主幹のブラッドリーの後押しを受けて真実の報道を貫きました

この事件は、当事者となったワシントン・ポスト紙の二人の記者が書いた「大統領の陰謀  ニクソンを追いつめた300日」を基に、1976年4月にアラン・J・パクラ監督により「大統領の陰謀」として映画化され、カール・バーンスタインをダスティン・ホフマンが、ボブ・ウッドワードをロバート・レッドフォードが演じ、第49回アカデミー賞の4部門で受賞しています

「ペンタゴン・ペーパーズ事件」と「ウォーターゲート事件」を通して、国家権力を相手に報道の自由を貫き通したワシントン・ポスト紙の闘いから得られる教訓は、報道する側は「第一線で取材する記者を 上層部が ひいては最高経営責任者が 最後まで守る覚悟を決め、事実の裏にある真実を報道する」ということです 事実はいくつかあっても、真実は一つしかないのです

蛇足ですが、この事件の真っ最中の1973年の秋、私は新聞関係団体の入職試験を受けましたが、その時の英文和訳の問題でこの「ウォーターゲート事件」が出題されました 答案の採点をしたのは、このブログのトップに登場するK氏でした。幸運にも一人だけ合格し 翌74年4月に入職しましたが、K氏から「あの問題で大統領の弾劾(impeachment)が訳せたのは君だけだったんだよ」と言われました。ただし、私は「劾」が漢字で書けなくて「弾がい」と書いた記憶があります 今は昔、忘却の彼方の出来事です

メリル・ストリープとトム・ハンクスによる迫真の演技を観て、そして 同じ映画を観たK氏やHN氏の感想を聞いて、そんな いろいろなことを思い出したり 考えたりしました

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