14日(土)その2。よい子はその1から見てね モコタロはそちらに出演しています
昨日は、錦糸町の すみだトリフォニーホールで新日本フィルの定期公演を聴いた後、午後7時から東京文化会館小ホールで郷古廉(ヴァイオリン)、加藤洋之(ピアノ)によるベートーヴェン「ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会Ⅱ」を聴きました プログラムは、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ①第4番イ短調、②第6番イ長調、③第7番ハ短調、④第8番ト長調です
郷古廉は「ごうこ・すなお」と読みます。私も最初は「きょうこ・れん」と読んでいました 宮城県出身。2013年8月ティボール・ヴァルガ シオン国際ヴァイオリン・コンクール優勝並びに聴衆賞・現代曲賞を受賞
現在、ウィーン私立音楽大学在学中です
一方、加藤洋介は東京藝大大学院修了。在学中にジュネーヴ国際音楽コンクール第3位入賞を果たしています
自席はE列28番、右ブロック左通路側です。会場は8割以上入っているでしょうか
1曲目は「ヴァイオリン・ソナタ第4番イ短調」です この曲は第5番「スプリング・ソナタ」とともに1801年に出版されました。第1楽章「プレスト」、第2楽章「アンダンテ・スケルツォ―ソ、ピゥ・アレグレット」、第3楽章「アレグロ・モルト」の3楽章から成ります
郷古廉と加藤洋介がステージに登場、さっそく演奏に入ります 第1楽章の演奏を聴いて まず思ったのは、ヴァイオリンの音色がとても美しいということです
これは、プログラムノートに「使用楽器は1682年製ストラディヴァリ」と書かれていたことで納得しました
が、郷古の演奏はヴィブラートのかけ方が抜群で、イヤミにならず上品であるのが特徴です
これは第2楽章、第3楽章も同じ印象です。それと、ピアノの加藤洋介が滅茶苦茶上手い
彼は1999年から現在に至るまでウィーン・フィルのコンマス、ライナー・キュッヒル氏(現在はコンマスをリタイア)と組んで数多くの共演を重ねているとのことなので、その実力の程が分かります
2曲目の「ソナタ第6番イ長調」は、1802~3年にかけて作曲されたとされる作品30の1~3(第6、7、8番)の最初の作品ですが、3曲セットでロシア皇帝アレクサンドル1世に献呈されています しかし、献呈時には代金が支払われず、12年後にウィーンを訪れた皇后エリーザベトが支払ったとのことです。当時はリボ払いも仮想通貨もなかったから現金でしょうね
二人の演奏を聴いていて、第2楽章のアダージョがとても爽やかで美しいと思いました 第3楽章の変奏曲も楽しく聴けました
休憩後の後半の最初は「ソナタ第7番ハ短調」です ハ短調はベートーヴェンの”勝負調性”です
「交響曲第5番”運命”」しかり、「ピアノ協奏曲第3番」しかり、「ピアノ・ソナタ第8番”悲愴”」しかり、そしてこの「ヴァイオリン・ソナタ第7番」しかりです
第1楽章「アレグロ・コン・ブリオ」、第2楽章「アダージョ・カンタービレ」、第3楽章「スケルツォ:アレグロ」、第4楽章「フィナーレ:アレグロ」の4楽章から成ります
第1楽章は、短調特有の「ほとばしる情熱」とでも言うべき曲想です そして、第2楽章のアダージョ・カンタービレは穏やかで美しい音楽です
第3楽章のスケルツォを聴いていて、十数年前にトリフォニーホールで開かれた豊嶋泰嗣+園田孝弘によるベートーヴェン「ヴァイオリン・ソナタ選集」の演奏を思い出しました
その当時、園田氏は晩年の境地にありましたが、軽やかなピアノで豊嶋氏のヴァイオリンを支えていました
最後の曲は「ソナタ第8番ト長調」です 第1楽章「アレグロ・アッサイ」、第2楽章「テンポ・ディ・メヌエット、マ・モルト・モデラート・エ・グラティオ―ソ」、第3楽章「アレグロ・ヴィヴァーチェ」の3楽章から成ります
この曲では、第7番の深刻な曲想の音楽との落差を感じます
長調特有の明るさを持ち、楽観的な気分を持った曲想です
この曲では、第3楽章におけるヴァイオリンとピアノによる丁々発止のやり取りが楽しく聴けました
度重なるアンコールの拍手に、二人は「それじゃ、これはどうだ」と言わんばかりに、意外にも20世紀の現代音楽を持ってきました
ベートーヴェン繋がりでウィーンに所縁のある作曲家だろうと予想していましたが、後でロビーの掲示で確かめたら「シェーンベルク『幻想曲作品47』とありました
ハッキリ言って私はシェーンベルクは大嫌いですが、なぜか二人の演奏を聴いている時は「おぬしたち、なかなかやるな
」とニヤニヤしながら聴いていました。そして、あろうことか「シェーンベルクも良い曲書いてるじゃん
」と思いました。この二人の演奏でなければそう思ったかどうかは分かりません
アンコールがシェーンベルクで終わる訳がない、と思っていたら、案の定クライスラーの「美しきロスマリン」を演奏し、満場の拍手の中 公演を終了しました 来年のパートⅢが今から楽しみです