21日(日)。わが家に来てから今日で1661日目を迎え、トランプ米大統領は19日、ツイッターで、詳細が公表されたマラー特別検査官による「ロシア疑惑」報告書が「いかれた報告書」だと非難した というニュースを見て感想を述べるモコタロです
3月に出た概要では「疑惑が晴れた。素晴らしい報告書だ!」と言ってなかった?
早稲田松竹でエミール・クストリッツァ監督・脚本によるフランス・ドイツ・ハンガリー合作映画「アンダーグラウンド」(171分)を観ました
第2次世界大戦中、ナチス・ドイツ軍に侵略されたセルビアの首都ベオグラードに住む武器商人マルコは、クロを誘いレジスタンス活動を行うために市民を率いて自分の祖父の地下室に潜伏し、そこで武器を製造させて巨万の富を築き上げていた そして戦争が終結した後も、彼は終戦の事実を市民に知らせず、せっせと武器を作らせ続けていた 50年後、地下に潜伏していた市民たちが地上に出たとき、ようやく祖国ユーゴスラヴィアが失われている事実を知る
この映画の大きな特徴は、実際の記録映像に主人公たちが紛れ込み登場するという合成カットが多用されていることです 1941年のナチス爆撃、1944年の連合軍爆撃、ユーゴスラヴィア共和国誕生、トリエステ紛争、チトー大統領の葬儀などのシーンで、当時の雰囲気を伝える貴重な映像が見られます 爆撃シーンでは、サン=サーンス「交響曲第3番ハ短調作品78」の「第2楽章第1部:スケルツォ」が、続いてドヴォルザーク「交響曲第9番ホ短調作品95」の第4楽章「アレグロ・コン・フォーコ」が流れました 両者とも何かを煽り立てるような音楽です
二宮敦人著「最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常」(新潮文庫)を読み終わりました 二宮敦人は1985年東京生まれ。一橋大経済学部卒。2009年に「!」(アルファポリス)でデビューしました
実は、2年前の4月に、この本と間違えて茂木健一郎著「東京藝大物語」(講談社文庫)を買ってしまい、しかたがないので読んだのですが、脳科学者の書いた小説は意外に面白く読めました そうした経緯から言うと、本書は待望の文庫化と言えます
この本は、筆者の妻が東京藝大生(美術学部)で、編集者と雑談中に「藝大生の妻が大変面白い」と数々のエピソードを語ったところ、「それ本にしましょう」ということになり、妻の友人から芋づる式に藝大生を紹介してもらい、音楽と美術の両学部の学生やOBにインタビューをして、藝大生の素顔に迫ったものです
私が東京藝大に親しみを感じるのは、音楽学部構内の「奏楽堂」で開かれる「藝大モーニングコンサート」をはじめとする各種コンサートに通う機会が少なくないからです 来週25日(木)には新年度第1回目のモーニングコンサートが開かれるので、久しぶりに奏楽堂に行きます
この本を読んで初めて知ったのは、同じ東京藝大なのに音楽学部(音校)と美術学部(美校)とでは学生や彼らを取り巻く環境があまりにも違うということです 誤解を恐れずに ごく大雑把に言えば、①国立大学なのに際限なく金がかかる音楽学部に対し、あまり金のかからない美術学部、②教授と学生との師弟関係が濃密な音楽学部に対し、師弟関係がゆるく かなり自由な美術学部、③指を怪我しないように家事やスポーツをほとんどやらない(特に楽器を扱う科目)音楽学部に対し、ほとんど肉体労働のように全身を使う(特に工芸)美術学部、ということになりそうです 逆に、共通点としては①両学部とも入学者が少人数で 入学するのは東大よりも難しい(実技重視)、②卒業後は行方不明者が半数近いということでしょうか
相違点①で言えば、音楽学部卒の ある女性は月50万円の仕送りを受けていたそうです 「コンサート用のドレス代がかかるほか、パーティの衣装代もかかる パーティで顔を売っておけば将来の仕事につながるから 止むを得ない支出」ということらしい 「仕送りを受けていた」ということなので、地方出身者でしょうから 部屋代もかかるだろうし、そもそも楽器が高いということでしょう
②で言えば、音楽学部の場合は、「〇〇先生に師事」と言う具合に、マン・ツー・マン教育が徹底しているようです
共通点①で言えば、入試倍率は東大の3倍だそうです また どんなにペーパー・テストの成績が良くても実技試験がダメだと合格しないとのこと また、器楽科の試験では「全音符の書き順をこたえよ」という問題があったそうです あの数字の0みたいな記号です。書き順は本を読んでお確かめください
②で言えば、平成27年度の進路状況は卒業生486名のうち「進路未定・他」が225名となっています。486名の卒業生のうち会社員や公務員など、いわゆる就職したのは48名で、毎年1割にも満たないとのこと。就職先は音校なら楽団や劇団など、それ以外なら放送局、音楽事務所、自衛隊音楽隊など。美校なら広告代理店、デザイン会社、ゲーム制作会社など、ということです 大学院に進学するケースも多く、美校では「取りあえず院に行ってから先を考える」というタイプも珍しくない。音校では「クラシックの本場を見る」ため留学する人もいる。平成27年度は168名が進学している。これは全体の約4割を占める。つまり「進学」と「不明」とで8割を占めるということになります
この本では、美校が上野動物園とフェンス一つで接していることから、いろいろと逸話が伝えられていることを紹介しています 「学生が絵画棟からペンギンを一本釣りした」とか、「鹿を盗んできて 焼いて食べた」とか、「酔った勢いでペンギンをさらい、冷蔵庫で飼おうとしたが死なせてしまった」とか、「藝大生は無料で上野動物園に入れたが、悪行のためダメになった。上野の博物館や美術館は学生証を見せれば無料で入れるのに、動物園が例外なのはこのため」とか。真相はこの本を読んでお確かめください
巻末に東京藝大の澤和樹学長と筆者の対談が載っています(藝大広報誌「藝える」第1号より)。
二宮氏が「もうちょっと世の中に、その活動が知られてもいいんじゃないか、と感じます」と振ると、澤学長は「そうですね。秘境と呼ばれるような面白さは、当事者たちがあくまで自然体だから滲み出るわけで、今後もそういう部分は貫いた方がいいと思います ただ、世の中との接触は、もう少しできたらなと。二宮さんが本に書かれていたように、『卒業したら行方不明』になるでもなく、ね」と切り返しています
普段の藝大生の意外な素顔が見えてくるようで、今まで以上に東京藝大を身近に感じるようになりました