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人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

アル・パチーノ主演「狼たちの午後」、ダスティン・ホフマン、ロバート・レッドフォード共演「大統領の陰謀」を観る ~ フェイク・ニュースを連発するトランプ政権下だからこそ観るべき映画

2019年04月29日 07時31分20秒 | 日記

29日(月・祝)。わが家に来てから今日で1669日目を迎え、トランプ米大統領は26日、通常兵器の国際取引を包括的に規制する武器貿易条約の署名撤回を宣言した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      集票力のある全米ライフル協会の意向に沿った行動だ  すべて自分の選挙 第一だ

 

         

 

現在、池袋の新文芸坐では「魅惑のシネマ・クラシックスVOL.31 ワーナー・ブラザース シネマ  フェスティバル」を開催中です 昨日はその第1日目で、「狼たちの午後」と「大統領の陰謀」の2本立てを観ました

「狼たちの午後」はシドニー・ルメット監督による1975年アメリカ映画(125分)です

 ニューヨークの猛暑の昼間、銀行に3人組の強盗が押し入る しかしそのうちの一人は怖気づいてすぐに逃亡してしまう その上、銀行には少額の現金しかなかったことが分かる 犯人のソニー(アル・パチーノ)とサル(ジョン・カザール)はあっという間に警官隊に包囲され、人質とともに籠城せざるを得なくなる 一方、集まった野次馬たちは犯人を英雄視して応援するという異常な事態に発展する そんな中、ソニーが犯行に走った理由が明らかになる。彼は大切な”伴侶”の手術代が必要だったのだ ソニー、サルと人質たちを乗せたバスが空港に到着し海外への逃亡まであと一歩のところまできたが、警察は甘くなかった

 

     

 

この映画は実際に起きた事件をもとに描かれた犯罪サスペンスです

銀行強盗をはたらくのに覆面を付けていないし、押し入ったのが銀行に現金がない時間帯だったことも知らないし、人質から「ちゃんと計画したの?」とまで言われてしまうドジな強盗をアル・パチーノが真剣に演じています それにしても、と思うのは、建物内に人質がいるにせよ、数百人の警官を動員しながら すぐ目の前の強盗を捕まえられない警察は極めて牧歌的だな、ということです 人質も人質で、ソニーから銃の扱い方を習って笑ったりしています 銃が手に入るのなら犯人に立ち向かうことが出来るのに、やらないのです また、支店長は糖尿病で倒れますが、呼ばれて駆けつけた医者の手当てを受けた後、病院で精密検査を受けるよう勧告されたのに、人質に残ると言い張ります。これも極めて牧歌的です 普通だったら、一刻も早く解放されたいでしょう 

かくして、この映画は犯人も、人質も、警官も、馴れ合いで銀行強盗事件に関わっているようで、どこか締まりのない映画のように思えますが、ただ一つビックリするのは、今から40年以上も前にLGBTを取り上げていることです

 

     

 

         

 

「大統領の陰謀」はアラン・J・バクラ監督による1976年アメリカ映画(138分)です

1972年6月、ワシントンD.Cのウォーターゲートビルにある民主党本部に不審な5人組が侵入し、逮捕される ワシントン・ポスト紙の新米記者ボブ・ウッドワード(ロバート・レッドフォード)は裁判を取材し、当初は単なる窃盗目的と思われた犯人たちの裏に何か大きな存在をかぎ取る 先輩記者のカール・バーンスタイン(ダスティン・ホフマン)と組んで事件の調査に当たることになったウッドワードは、ディープ・スロート(陰の情報提供者)の助言や編集主幹ブラッドリーの後ろ盾を得て調査報道を展開し、徐々に真相に迫っていく

 

      

 

この映画は、ウォーターゲート事件の知られざる真相を暴き、ニクソン大統領を失脚に導いたワシントン・ポスト紙の記者カール・バーンスタインとボブ・ウッドワードの回顧録「大統領の陰謀  ニクソンを追いつめた300日」を映画化した社会派サスペンスです

二人の記者がスクープをものにし、一国の大統領を辞任に追いやることが出来たのは、地道な調査報道のほかに、「ディープ・スロート」(喉の奥)や政権に近い情報提供者の協力があったからです ウッドワードは、3年前の海軍在籍時に親しくなった政権内部の重要人物に接触し、1972年10月の深夜、ワシントンのポトマック湖畔の ある駐車場で面会し、事件の真相を尋ねました それが「ディープ・スロート」(政権内部の匿名の密告者)との接触の発端でした ウッドワードは「取材源の秘匿」を条件に彼の協力を取り付けました そういうこともあって、長い間「ディープ・スロート」の正体は謎に包まれていました そして2005年5月、事件当時FBI副長官だったマーク・フェルトが自分がディープ・スロートだったことを雑誌「バニティ・フェア」の記事をきっかけとして公表しました ただし、マーク・フェルトは内部告発を行ったわけではなく、また直接 情報機密情報を漏らしたわけでもなく、「どこに行けば事件に関連した情報が得られるか」といった”情報を得る方法”を記者たちにアドヴァイスしたに過ぎません その情報を得るのはあくまでも記者たちの仕事でした

共和党の選挙管理委員会などの関係者への取材は、上層部からの圧力により箝口令が引かれてなかなか協力が得られませんが、二人の記者は粘り強く説得に当たり、情報を引き出します その時も「情報提供者があなたであると名指しして記事に書くことはしません。迷惑をかけないので本当のことを話してください」という「取材源の秘匿」を約束します。これは報道する者にとっての憲法のような鉄則です これを破ったら、誰もその新聞に情報提供する人がいなくなります

事件が起こったのが1972年、この映画の製作が1976年、私が新聞関係団体に入職したのは ちょうどその中間の1974年でした この映画が公開された時は、「あの映画もう観た?」というのが職場で合言葉のようになっていたことを懐かしく思い出します

ここで、いつものように突然音楽の話になりますが、バーンスタインがウッドワードの家に新情報を持ってきた時、ウッドワードはいきなりステレオのスイッチを入れ、大音量で音楽を流します    彼は「ディープ・スロート」から「君たちも狙われている。警戒すべし」と警告を受けていたので、「盗聴されているかも知れない」と考えたからです その時に流れたのはヨーゼフ・ハイドンが1796年に作曲した「トランペット協奏曲変ホ長調」の第1楽章「アレグロ」でした これを大音量でかけられたら人の声が聴こえないばかりか、文字通り話になりません 二人はタイプライターに文字を打って”会話”をしていました

映画の話に戻ります。同じワシントン・ポスト紙がニクソン政権を相手に戦ったものに「最高機密文書(ペンタゴン・ペーパーズ)」のスクープがあります これはニクソン政権下の1971年、ベトナム戦争に関する国防総省の調査・分析文書「ペンタゴン・ペーパーズ」の一部が暴露され、政府の欺瞞が明らかにされた事件です これはスティーヴン・スピルバーグ監督により2017年に「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」として映画化されています。興味のある方は、2018年4月17日付toraブログをご覧ください。「大統領の陰謀」が記者の視点から描かれているのに対し、「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」はワシントン・ポスト紙の社主キャサリン・グラハムの視点から描かれています

ところで、ロブ・ライナー監督による2017年アメリカ映画「記者たち」(91分)がロードショー公開されています この映画は、イラク戦争の大義名分となった大量破壊兵器に疑問を持ち、真実を追い続けた「ナイト・リッダー」の記者たちの姿を描いています これは是非観なければ、と思っています

さきにご紹介した「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」にしても、この「記者たち」にしても、2017年1月に誕生し「自分の都合の悪い情報を流す報道機関のニュースは全てフェイク・ニュースだ」と断じて止まないトランプ米大統領の言動を考える時、撮るべくして撮られた映画だと言えるでしょう

 

     

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