人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

女性指揮者のパイオニア、アント二ア・ブリコの半生を描く「レディ・マエストロ」を観る ~ マーラー「第4交響曲」、ドヴォルザーク「第9交響曲」、エルガー「愛のあいさつ」他も流れる

2019年10月27日 07時22分34秒 | 日記

27日(日)。わが家に来てから今日で1854日目を迎え、安倍晋三首相は25日、公設秘書が地元有権者に香典を渡していたなどと、公職選挙法で禁じられた寄付に関する疑惑を報じられた菅原一秀経済産業相を事実上更迭した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      秘書が勝手に香典を持っていったとか言っても ヒショヒショ話でバレちまうだよ

 

         

 

昨日、渋谷のル・シネマでマリア・ベーテルス監督・脚本による2018年オランダ映画「レディ・マエストロ」(139分)を観ました

舞台は1926年のニューヨーク。オランダ移民の貧しいアント二ア(クリスタン・デ・ブラーン)は、指揮者になるためならいかなる困難にも立ち向かうことを決心していた 当時「女性は指揮者にはなれない」と言われる中、音楽に対する情熱だけは誰にも負けなかったアント二アは、ナイトクラブでピアノを弾いて稼いだ学費で、音楽学校に通い始める。しかし、ある”事件”から退学を余儀なくされ、引き留める恋人フランク(ベンジャミン・ウェインライト)を置いて、アムステルダムからベルリンへ移る。そこで、遂に女性に指揮を教えてくれる師カール・ムック(1859-1940)と巡り合う 憑かれたようにレッスンに没頭するアント二アだったが、出生の秘密を知り、フランクの裏切りを受け、女性指揮者への激しいバッシングを経験するなど、次々とアクシデントが襲いかかるのだった   しかし アント二アは、数多くの苦難を乗り越え、1930年にベルリン・フィルを振ってデビューを果たす

 

     

 

この映画は、女性指揮者のパイオニア、アント二ア・ブリコ(1902-1989)の没後30周年を機に、その半生を描いた実話に基づく作品です 指揮者を主人公とした映画だけに、マーラー「交響曲第4番」、ドヴォルザーク「交響曲第9番」「ロマンス」、ストラヴィンスキー「火の鳥」、ガーシュイン「ラプソディー・イン・ブルー」、エルガー「愛のあいさつ」、ベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第32番」、バッハ「オルガン・コラール」、ビゼー「カルメン」~ハバネラ、ドビュッシー「夢」など名曲の数々が演奏されます

この映画のハイライトは、全員男性で構成されるオーケストラから「女性指揮者の”生意気な”指示に従うのは我慢ならない」として、本番前日のリハーサルをボイコットされそうになった時、コンマスのストラディヴァリウスを取り上げ、「あなたはこの楽器がなければ演奏ができない。私の楽器はオーケストラであって、あなたたちがいなければ私は演奏することができない。男性指揮者だったら年に何度も指揮をする機会が与えられるでしょう。でも私にはこのコンサートだけなのです。これが公平と言えるでしょうか 」と訴えるシーンです。この場面はジーンときました それと同時に、こうした状況は今でも大して変わらないのではないか、とも思いました

映画では冒頭、オランダの名指揮者ウィレム・メンゲルベルクが登場し、コンセルトヘボウ管弦楽団を指揮してマーラーの「交響曲第4番」を演奏しますが、彼を演じるハイス・ショールテン・バン・アシャットという役者が、写真で見るメンゲルベルク(1871-1951)にそっくりでビックリしました さらに、フランクを演じたベンジャミン・ウェインライトが、ポーランド出身で2013年から16年まで東京交響楽団の首席客員指揮者を務めたクシシュトフ・ウルバンスキ(1982~)によく似ていたのにも驚きました

冒頭シーンでは、会場案内係を務めるアント二アが、メンゲルベルクが指揮を始める直前に、客席の中央通路のど真ん中に椅子を置いて座り、スコアブックを広げて演奏を聴こうとする姿が映し出されます メンゲルベルクは後ろを振り返り、なぜ彼女がそこにいるのか不思議そうな顔を見せて、再びオケに向き合い演奏を始めます

「実話に基づいた映画」とはいえ、このエピソードは常識的にあり得ないでしょう 入場料を払って席に着いている多くの聴衆を差し置いて、会場案内係が一番良い場所に椅子を置いて聴くなど、とても考えられません このエピソードは、作品のリアリティーを減殺させています しかし、このシーンがなければラストのシーンが成り立たなくなってしまいます 映画には脚色が付きものとはいえ、この脚色だけはどうもしっくりきません

今年9月、フランスのブザンソン国際指揮者コンクールで沖澤のどかさんが優勝を飾りました   また、シドニー出身の女性指揮者シモーネ・ヤングは今年の年末、N響を指揮して「第九」を演奏します しかし、現在 世界で活躍する指揮者を見渡すとき、まだまだ女性指揮者はマイナーな存在に甘んじていると言わざるを得ません ”女性指揮者”とは言うが、”男性指揮者”とは言わないのが何よりの証左です 遠くない将来、「女性指揮者」という肩書が無くなる日が到来することを信じたいと思います

コメント
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