人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ハーディング+新日本フィルでマーラー「交響曲第2番」を聴く~第545回定期演奏会

2015年07月11日 09時11分02秒 | 日記

11日(土)。昨日の日経朝刊・文化欄に「世界のカルテット総なめ~来日公演やレコード・CD聴き続け、魅力を本に」の見出しのもと、音楽プロデューサー幸松肇(こうまつ・はじめ)氏がエッセイを書いています。超訳すると

「早稲田大学交響楽団でヴァイオリンを弾いていた。卒業後、レコード会社の東芝EMIに入社しプロデューサーも務めた その傍ら、趣味で弦楽四重奏曲を聴きまくった。日本のカルテットが発展するきっかけは、1952年と54年に米国で活躍していたブタペスト弦楽四重奏団が来日したことだ 個人的に衝撃を受けたのは、前衛的で難易度の高いバルトークの弦楽四重奏曲を得意とするジュリアード弦楽四重奏団だ 彼らに影響されて巌本真理弦楽四重奏団がバルトークを演奏会で取り上げた。さらにジュリアードの影響を受け、ヴィオラの磯村和英ら桐朋学園の出身者が69年に米ジュリアード音楽院で結成した『東京クヮルテット』は70年のミュンヘン国際コンクールで優勝した カルテットにのめり込んだ結果、自宅の離れの一軒家を丸ごと倉庫にしなければならないほどレコードやCD,資料が増えていった 現在までに活動した弦楽四重奏団983団体を国や地域別に分類した『世界の弦楽四重奏団とそのレコード』を書いて、全6巻が完結した 演奏会にも頻繁に通うが、残念なことに聴衆のほとんどは高齢者だ ベートーヴェンを筆頭にシューベルト、バルトーク、ショスタコーヴィチら素晴らしい弦楽四重奏曲を若者に聴いてほしい。人生を切り開く糧を得られるはずだ 案内役としてお役に立ちたい

幸松肇氏と言えば、今から30年ほど前の80年代半ばに、神奈川県民ホールの会議室で同氏による「世界の弦楽四重奏団の歴史」をテーマにしたレクチャーがあり、聞きに出かけたことがあります 幸松氏の弦楽四重奏団に関する知識の豊かさと深さに驚嘆しました その時「若手の弦楽四重奏団で、いま最も注目しているグループはどれですか?」という質問が出され、「上海カルテットです」と答えていたのを覚えています 残念ながら私は、その前にも後にも上海カルテットを聴いたことがありません ということで、わが家に来てから274日目を迎え,お菓子の袋に接近するモコタロです 

 

          

           カールって麦わら帽子をかぶったオジサンのお菓子かい?

 

  閑話休題  

 

昨夕、すみだトリフォニーホールで新日本フィルの第545回定期演奏会を聴きました プログラムはマーラーの「交響曲第2番”復活”」。演奏は、ソプラノ=ドロテア・レシュマン、メゾ・ソプラノ=クリスティアーナ・ストーティン、合唱=栗友会合唱団、指揮はダニエル・ハーディングです

 

          

 

実は,私はトりフォニーシリーズ第2日目の会員なのですが, 2日目が東響オペラシティ-シリーズ公演と重なったため,新日本フィルの振り替えサービスを利用して1日目にしてもらったのです ということで,用意された席は1階20列33番,会場中央通路のすぐ後ろの列の右ブロック右から5つ入った席です.オケは左奥にコントラバス,前に左から第1ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,第2ヴァイオリンという対向配置をとります 言わばハーディング・シフトです.弦楽器の後ろに管・打楽器が並び,その後ろに混声合唱団が入るので,ステージは満員状態です コンマスはチェ・ムンス,隣には西江辰郎がスタンバイします.いつもは左サイドにいる第2ヴァイオリンの篠原英和さんは右サイドにスタンバイします 先日の室内楽シリーズで応援することを決めた第1ヴァイオリンの古日山倫世,第2ヴァイオリンの松崎千鶴,ヴィオラの脇屋冴子の3人も所定の位置に着いています

 

          

 

指揮者ダニエル・ハーディングが登場,タクトを振り下ろして第1楽章が開始されます 冒頭から弦楽器の鋭い切り込みによって気迫のこもった演奏が展開します ハーディングの指揮は弛緩するところのない小気味の良いテンポが特徴かも知れません 1975年イギリス生まれのハーディングは現在,スウェーデン放送響の音楽監督,ロンドン響の首席客員指揮者を務めていますが,2016/17年シーズンからパリ管弦楽団の音楽監督に就任することが決まっています

第1楽章が終わったところで,舞台袖からソプラノのレシュマンとメゾ・ソプラノのストーティンが登場し,合唱団の前にスタンバイします.併せてパイプオルガン奏者も所定の位置に着きます

マーラーは第1楽章の後は「少なくとも5分の休止をおく」と指示しています.しかし,ジェット旅客機で世界を渡り歩く現代の指揮者はそんな悠長な指示には従いません 5分って相当長く感じると思います.おそらく聴衆も時間を持て余すことでしょう ハーディングはソリストが座ってから間もなく第2楽章を開始しました この楽章と次の第3楽章は間奏曲のような位置付けの曲です.この曲のハイライトは第4楽章「原光」と第5楽章「終曲(復活)」です

合唱団はなぜか座ったまま歌っています.しかし,第5楽章の終盤に至ると,ハーディングの合図で一斉に立ち上がり,復活の歌を歌います 多分,マーラーはそうするように指示していないので,ハーディングの考えによる演出だと思われます また,この楽章ではステージ上の演奏者と舞台裏のバンダ(小楽団)との対話が聴けますが,これを可能にしているのは小型監視カメラです 2階正面のパイプオルガンの左手の下の手すりに設置されており,レンズは指揮者を捉えています.カメラが映し出す指揮者の映像を見ながら舞台裏の演奏者は演奏しているのです.この日の”対話”は素晴らしいものがありました

 

          

 

さて,この演奏会の「プログラム・ノート」は例によって音楽評論家のA氏によって書かれていますが,分かりにくいこと極まりない内容です プログラムの解説は,あくまでもコンサートを聴く人が演奏曲目や作曲家に対する理解を深めることができるものでなければ意味がないと思うのです ところが,この人の解説は”文学”を狙っているのではないかと疑います.自分の書く文学的表現に酔っているとしか思えません 何度も言いますが,プログラム・ノートに文学は要りません.私のような音楽の素人にも分かり易く解説するのがプロの仕事だと思います.皆さんはどう思われますか

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東京藝大「ベルリン・フィルのフックスを迎えて」を聴く

2015年07月10日 07時05分48秒 | 日記

10日(金)。わが家に来てから273日目を迎え,家の中を荒らしまわるモコタロです。

 

          

             何だ坂 こんな坂 登り坂 下り坂 まさか ってか.

 

  閑話休題  

 

昨夕、上野の東京藝大奏楽堂で「東京藝大,ベルリン・フィルの首席クラリネット奏者ヴェンツェル・フックスを迎えて」公演を聴きました プログラムは①ベートーヴェン「ピアノ三重奏曲第4番”街の歌”」、②シューマン「クラリネットとヴィオラのための”4つのおとぎ話」、③プーランク「クラリネット・ソナタ」、④ヴェルディ「歌劇”運命の力”序曲」、⑤coba「30人のクラリネット達人のための~英雄の嘆き」、⑥メンデルスゾーン「コンツェルトシュテック第2番」です

 

          

 

全自由席です.小雨の中,上野公園を横切って開場時間を少し過ぎて奏楽堂に着きましたが,何とか1階12列25番,右ブロック左通路側席を押さえることが出来ました ベルリン・フィルの首席奏者の演奏が2,000円で聴けるとあってか,会場は老若男女を問わず8割方埋まっている感じです

1曲目のベートーヴェン「ピアノ三重奏曲第4番変ロ長調」は”街の歌”という愛称で呼ばれています これはフィナーレの変奏主題に当時ウィーンで大流行していたヴァイグルのオペラ「海賊,または船乗りの愛」の第12曲の三重唱が使われているからです

演奏はクラリネット=フックス,チェロ=河野文昭,ピアノ=伊藤恵です.調性からして明るい曲ですが,私は第2楽章の冒頭,ピアノの伴奏に乗ってチェロが美しいメロディーを奏でるところが大好きです 第3楽章はいかにもオペラの三重唱を歌っているような楽しげな雰囲気の曲です この3人のアンサンブルは本当に素晴らしいと思います

2曲目はシューマン「クラリネットとヴィオラとピアノのための”4つのおとぎ話”」です.この曲はシューマンが精神病院に入院する数か月前にわずか3日間で書き上げた作品ですが,曲を聴く限り,精神に異常をきたした作曲家による作品とは思えないほどリラックスしたロマンティックな曲です

クラリネット=山本正治,ヴィオラ=川崎和憲,ピアノ=伊藤恵による演奏ですが,『おとぎ話』という雰囲気が良く出た演奏でした.心地よい演奏だったせいか,前席の若い女性2人組は揃って右へ左へ舟を漕いでいました この3つの楽器の組み合わせは非常に珍しいですが,有名な曲としてはモーツアルトの「三重奏曲”ケーゲルシュタット・トリオ”」があります

次の曲はプーランク「クラリネット・ソナタ」です.初演はプーランクが死去した約3か月後の1963年4月10日で,ジャズにおけるクラリネットの第一人者ベニー・グッドマンと,かの大指揮者レナード・バーンスタインのピアノによって演奏されたということです 当時は願ってもない最高の組み合わせだったでしょう

第1楽章の冒頭は相当速いパッセージで,クラリネットが超絶技巧で演奏されます 曲想はプーランクらしい”軽妙洒脱”と言っても良いでしょう あるいはエスプリに溢れた曲想と言っても良いかもしれません 伊藤恵の伴奏のもと,フックスは何の苦も無く軽快に演奏を展開します

 

          

 

プログラム後半は,ヴェルディ「歌劇”運命の力”序曲」から始まります ヴェルディのオペラの序曲の中では一番好きな曲と言っても良いかもしれません 30人のクラリネット奏者(東京藝大クラリネットアンサンブル)がステージに登場,左サイドに高音部のクラリネットが,右サイドに低音部のクラリネット(バゼット・ホルン,コントラバス・クラリネットなど)が配置され,ステージ中央にフックスと山本正治がスタンバイします 都響首席クラリネット奏者の三界秀実が指揮者として登場します.この曲は,曲自体が持つ独特の魅力があるので,聴いていると思わず引き込まれます アリアに相当するパッセージはフックスが演奏しますが,歌心に満ちた見事な演奏です

次いでアコーディオン奏者で作曲家でもあるcobaの「30人のクラリネット達人のための~英雄の嘆き」が同じメンバーで演奏されます 聴いていて印象に残るのは,スラップ・タンギングと呼ばれる奏法(はじくような音色を出す演奏技術)です まるでジャズを聴いているような気分になります

最後はメンデルスゾーン「コンツェルトシュテュック第2番」です.ステージ左サイドにフックスが,右サイドにバセットホルンの十亀正司がソリストとしてスタンバイします 「コンツェルトシュテュック」というのは小さな協奏曲という意味で,19世紀前半に好まれていたジャンルだということです 3つの楽章から成りますが,極めて短い曲なのであっと言う間に終わってしまいます.フックスも十亀も軽快に演奏し,楽しませてくれました それにしても,メンデルスゾーンっていろいろな曲を作っているのだな,と思いました

アンコールにはモンティの「チャルダーシュ」が,フックスの超絶技巧によって鮮やかに演奏され,天下のベルリン・フィルの首席奏者の存在感をあらためて誇示し,コンサートを締めくくりました 

プログラムにフックスのレッスンを受けた学生たちの声が掲載されています.「近くだと学生の方が音量がある感じがしても,ホールで聴くと先生の音が響いているのに驚いて,そんな音を間近で聴ける幸せ」という感想が印象的です 超一流のアーティストの演奏とはそういうものかも知れません

 

          

 

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新日本フィル室内楽シリーズでオール・モーツアルト・プログラムを聴く

2015年07月09日 07時09分41秒 | 日記

9日(木)。昨日、皇居外苑で丸の内消防署主催による「自衛消防訓練審査会」が開かれたので、見学に行きました 朝から小雨模様でしたが、予定通り開催されました。この審査会は毎年1回、丸の内地区にある各ビルの自衛消防隊の日頃の消火訓練を審査するもので、男子隊、女子隊、警備隊の3つに分かれ、それぞれ順位を争います 警備隊については、今年から参加チーム(48チーム)を赤・白で分け、それぞれ順位を決めることになりました

訓練の想定は「事業所の勤務時間中に火災が発生、消火器の初期消火にも関わらず火勢が拡大し、屋内消火栓による消火活動(ホースを延長)を必要とする火災に拡大した」となっています 審査は初期対応要領(迅速性、確実性)、屋内消火栓操法と各操作のタイムに着眼して行われます。実際にホースから水を出して的を当てて倒します 放水に当たっては相当の圧力がかかるため、うっかりすると手元を離れ、暴れまくります 隊の構成は、指揮者、1番員、2番員の3人一組で、それぞれの行動が合計330点満点で採点され、得点順に1位から3位まで入賞隊が決まります 

われらがPCビル自衛消防隊は、指揮者が3年前にルーキーとしての出場経験があり頼りがいのあるK君、1番員が5年連続出場で25年度の敢闘賞に輝くT君、2番員が今年入社したばかりの運動神経抜群のI君の3人です この3人を、昨年まで指揮者を務めてきた防災センター副隊長のI君が練習から本番まで統括します。出場順は警備隊全48チーム中28番目ですが、赤組と白組とが交互に出場する形で午後の9番目となりました。早目の昼食を取って現地に向かいました

私は、ここ1か月の間、何度となく地下2階駐車場での練習を見てきましたが、日を追って上達していく3人の姿を見ていて頼もしく感じていました。昨日は日頃の練習の成果を十二分に発揮し、24チームの中で堂々の第2位(準優勝)を獲得しました

 丸の内消防署管内の自衛消防隊は、ほとんどが30階建て以上のビルの防災センター要員で、警備員もそれだけ揃っているところばかりです 丸の内管内は日本一の強豪チームが揃っていると言っても過言ではありません その中で、11階建てのわがビルを警備する10名に満たない隊員の中から選ばれた自衛消防隊が準優勝に輝いたということは、驚くべき快挙なのです しかし,私は優勝しなくて良かったと思っています なぜなら,優勝してしまったら来年の目標を失うからです.準優勝は狙ってもなかなか獲得できない理想的な位置といえるのです

出場した輿石君、玉田君、石井君、ありがとう 皆さんは当ビルの誇りです 統括的な役割を果たしてくれた池ノ谷副隊長、3人の練習時間を確保するためにローテーションの変更等で3人を陰で支えてくれた鈴木隊長以下隊員の諸君、ご指導いただき,応援にも駆け付けて下さった警備会社T社の皆さん、当社社員の皆さん、本当にお疲れ様でした 

なお,3人の活躍の模様は当社のホームページhttp://www.presscenter.co.jpで公開しています 

ということで、わが家に来てから272日目を迎え,小林秀雄のエッセイに疑問を抱くモコタロです 

 

          

             なんで小林秀雄のエッセイがここにあるのかな?

 

  閑話休題   

 

昨夕、すみだトリフォニーホール(小)で新日本フィル室内楽シリーズ・コンサートを聴きました オール・モーツアルト・プログラムで①弦楽四重奏曲第13番ニ短調K.173、②ピアノ四重奏曲第1番ト短調K.478、③弦楽五重奏曲第4番ト短調K.516です 演奏は、ヴァイオリン=篠原英和、松宮麻希子、ヴィオラ=木村恵子、原孝明、チェロ=多田麗王、ピアノ=出久根美由樹です

 

          

 

久しぶりにトークの天才・篠原さんのプレ・トークを聞きました このシリーズは「楽団員プロデュース編」と名打っており,今回のプロデューサーは新日本フィル第2ヴァイオリン奏者・篠原英和さんなのです この日に演奏する「短調のモーツアルト」の趣旨と演奏曲目を解説,モーツアルトの死因に関する最新の研究情報を解説しました.結論から言うと「モーツアルトはトリカブトのような毒を盛られて暗殺された」.それでは誰が殺したのかと言うと「アマデウス」で有名になったサリエリでもなく,所属していたフリーメーソンでもない サリエリは地位も名誉も財産もすべて持っていた.したがって,いくらモーツアルトに嫉妬していたとしても暗殺するまではいかない フリーメーソン説,つまり歌劇「魔笛」でフリーメーソンの儀式を暴露されたからだと言っても,それは返ってフリーメーソンの有利な宣伝材料にになる訳だから暗殺する訳がない,ということで,「犯人はもっと身近で毒を確実に盛ることが出来た人物,それは・・・皆さん,分かりますね.この続きはコンサート後のワンコイン・パーティーで・・・・」と結論が持ち越されました これはパーティー(500円)に参加しない訳にはいきません.トークの天才・篠原氏は営業の天才でもありました

 

          

        

自席は6列1番です.1曲目の「弦楽四重奏曲第13番K.173」はニ短調の曲です 篠原氏の解説によれば,ニ短調はデモ―二シュな性格を持ち,代表的な曲として歌劇「ドン・ジョバンニ」の序曲が挙げられるとのことです

演奏は篠原,松宮,木村,多田の各メンバーです.このK.173はモーツアルトの弦楽四重奏曲の中でもあまり演奏される機会がない曲ですが,ハイドンから影響を受けて17歳の時に作曲したものです 私はこのところベートーヴェンの弦楽四重奏曲ばかり聴いてきたので,あらためてモーツアルトを生演奏で聴いて新鮮に感じました

2曲目の「ピアノ四重奏曲第1番K.478」はト短調の曲です 篠原氏の解説によれば,ト長調の”喜び”に対しト短調は”強い哀しみ”を表し,代表的な曲として交響曲第40番が挙げられるとのことです

篠原,木村,多田の各メンバーにピアノの出久根美由樹が加わります.このピアニストは今回と同じメンバーで2年前にブラームスのピアノ四重奏曲第1番を演奏した感性豊かな人で,何を隠そう篠原夫人です この人が加わったことで,いっそう演奏が引き締まったような気がします とくに第1楽章はデモ―二シュそのもので,モーツアルトの魅力が満載の曲です

 

          

 

休憩後の「弦楽五重奏曲第4番K.516」はト短調の曲です この曲で思い出すのは小林秀雄のエッセイ「モオツァルト」です.新潮文庫「モオツァルト・無常という事」の45ページにこの曲の第1楽章冒頭の楽譜が載っています アンリ・ゲオンがこれをtristesse allante(疾走するかなしさ)と呼んでいるのを読んだとき,小林秀雄は「自分の感じを一言で言われた様に思い驚いた」と書いています

 

          

 

篠原,松宮,木村,原,多田のフルメンバーによる演奏を聴いていて思ったのは,仕掛け人・篠原氏がこの日本当に演奏したかったのはこのクインテットだったのではないか,とりわけ第3楽章「アダージョ・マ・ノン・トロッポ」と第4楽章「アダージョーアレグロ」だったのではないか,ということです 第3楽章における篠原氏の第1ヴァイオリンを聴いていると,若き日に師事したというアマデウス弦楽四重奏団の演奏を思い起こさせる音色が聴こえてきたように感じました

アンコールも短調にこだわり,弦楽五重奏曲ハ短調K.406の第3楽章「メヌエット」を演奏しました

 

          

 

演奏後のワンコイン・パーティーでは演奏を終えたばかりの篠原氏が颯爽と登場,マイクの前で「プレ・トーク」で取り上げたモーツアルトの死を巡るミステリーの続きを語りました いろいろな状況証拠からして,モーツアルトを毒によって死に至らしめたのは妻コンスタンツェとその母チェチェーリア・ウェーバーだった.首謀者がチェチェーリアで実行者がコンスタンツェだったとのことです

モーツアルトの死を巡る研究が,ここまで進んでいたとは全く知りませんでした それにしても,プレ・トークにしても,ワンコイン・パーティーのマスター役にしても,原稿なしで立石に水のように豊富な知識を披瀝する篠原氏は,まさにトークの天才と呼ぶのに相応しい人物だと,あらためて思いました その篠原氏の締めの言葉は「女は恐ろしい」でした. 議長,異議なし

前日が飲み会で帰りが遅く,昨夜は6日連続コンサートの初日だったことから,最初からペースを上げると後がバテるので,ワンコイン・パーティーはワインを飲みながら篠原氏の有益な話を聞いた後,しばらくしてから失礼しました.なかなか篠原さんとの飲み会に参加できなくて申し訳なく思っています

 

          

 

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奥田英朗著「噂の女」を読む~”噂の女”は女性にとって憧れの対象か?

2015年07月08日 07時01分38秒 | 日記

8日(水)。わが家に来てから271日目を迎え,タイガースのマスコット「トラッキー」に阪神の成績を尋ねるモコタロです 

 

          

          首位争いしてるって? 阪神半疑だな. ところで君 埃だらけだね 

 

  閑話休題  

 

奥田英朗著「噂の女」(新潮文庫)を読み終わりました 奥田英朗の作品は当ブログでも何冊かご紹介してきました 奥田英朗は1959年,岐阜県生まれ.2004年に「空中ブランコ」で直木賞を受賞しています.「最悪」「マドンナ」「サウスバウンド」「ララピポ」などエンタテインメント小説を書き続けています

 

          

 

高校までは地味な存在だったが,短大時代に突然,自分の見えざる能力に目覚め,一介の事務員から高級クラブのママにのし上がった糸井美幸 雀荘で知り合った中小企業の社長を手玉に取り,睡眠薬を飲ませたうえで風呂でおぼれ死にさせる 色仕掛けで高齢者に取り入り保険金目当てに殺害する 肉体を武器にそうした犯罪を繰り返しながら着実に大金をせしめていく.ついに警察が嗅ぎ付けるが,そう簡単には捕まらない

糸井美幸は,最初は中古車販売店に勤めています.次に現われるのは麻雀荘のアルバイト.そして料理教室の生徒として登場し,パチンコ屋にも出没,遂には柳ヶ瀬の高級クラブのママに成り上がり,お寺の総代として登場します.資産家の相続人になるため子供まで生みます

新聞の三面記事を賑わした『保険金目当ての殺人事件』を題材にしていることは容易に想像が付きます が,新聞はあくまで『勧善懲悪』なので,噂の”容疑者”を徹底的に叩きますが,この作品の筆者はそうはしません 最初から途中までは,いかにも糸井美幸がひどい女であるか,と思わせておいて,最後には女性の立場に立って糸井美幸の擁護に回ります.その辺が,一般の小説と違うところです

そうは言うものの,深刻な推理小説ではありません.思わず笑ってしまうシーンがそこかしこに登場するのが奥田英朗ワールドです

地方に生まれ,平凡な生活を送り,平凡な結婚を強いられる女性たちから見れば,手練手管と肉体を使って男を踏み台にしてのし上っていく糸井美幸は,ある意味で憧れのヒロインなのかも知れません 気持ちは分かりますが,殺人が良い訳がありません でも,そう言ってしまったら奥田英朗の小説らしくなくなってしまいます.これでいいのか?それでいいのだ

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映画「0.5ミリ」を観る~安藤サクラの魅力満開

2015年07月07日 07時01分32秒 | 日記

7日(火).ギリシャは5日に実施されたEU債権団が要求する財政緊縮策への賛否を問う国民投票で、反対が6割以上を占め、”要求拒否”の結論を出しました チプラス首相は勝利宣言をしたようですが、何に対して勝ったのでしょうか? いったいこれからどうするつもりなのでしょうか

 『海の色に染まるギリシャのワイン』 は高橋真梨子が歌う『桃色吐息』ですが、今のチプラス首相が歌うのは差し詰め『青色吐息』でしょうか ギリシャの銀行の手元資金は枯渇していると言われています.金庫の底が付いたら文字通りbankruptになってしまいます

報道によると、ロシアや中国が何らかの形でギリシャに経済的な支援をしようとする動きがあるようですが、個人的には危険な兆候だと思います ギリシャは国民投票で提案拒否の意志を示したことで国の尊厳を守ったという評価があるようですが、これらの大国の思う壺になって国の尊厳を失うことのないように祈るばかりです 指導者が変わらないのなら、稚プラスでなく智プラスであってほしいと思います

かつてソクラテス、プラトン、アリストテレスという3大哲学者を排出した”英知の宝庫”ギリシャ、20世紀最高のソプラノ歌手マリア・カラスを生んだ誇り高きギリシャはどこに向かおうとしているのでしょうか よその国のことながら心配です ということで、わが家に来てから271日目を迎え,食後の運動を終えて床に寝そべるモコタロです  

 

          

               ご主人に遊んでもらって 走り回ったら 疲れちゃったよ

 

  閑話休題  

 

5日(日)に飯田橋のギンレイホールで映画「百円の恋」と「0.5ミリ」の2本立てを観ました 昨日「百円の恋」について書いたので,今日は「0.5ミリ」について書きます

介護ヘルパーの山岸サワは,ある日,派遣先の家庭で予想外の依頼を受け引き受けるが,アクシデントで火災に巻き込まれ,職も家も失ってしまう 後がないサワは道で出会ったおじいちゃんたちを見つけ出しては,押しかけて行きヘルパーとして居着くようになる

サワは一見”押しかけ女房”的な強引さでおじいちゃんたちに取り入っていきますが,料理は上手いし老人介護も上手ときているので,おじいちゃんたちは,最初のうちは胡散臭そうにしているけれど,別れる時には「ありがとうね」と言うようになります そこがこのサワというヒロインの魅力になっています

「百円の恋」では使われていなかったクラシック音楽が,この「0.5ミリ」では使われています まず,冒頭の老人を介護するシーンで流れるのはワルトトイフェルの「スケーターズ・ワルツ」です.この曲はエンディングでも流れたので,この映画のテーマ音楽と言っても良いでしょう ヒロインのサワの生き方を象徴するかのような軽快な音楽です この曲は園子音監督の「冷たい熱帯魚」でも使われていました

途中,モーツアルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」の第2楽章「アンダンテ」やバッハらしき曲が流れます 寝たきり女性が両手を振って歌う「乾杯の歌」(ヴェルディ『ラ・トラヴィアータ』)もあります.さらに,ハイドンの弦楽四重奏曲第67番ニ長調『ひばり』の第1楽章がいくつかのシーンで流れますが,現代風にアレンジされています 

この映画の監督は安藤サクラの姉・安藤桃子です.この映画は,監督自身の介護経験から発想を得て書き下ろした小説を映画化した作品です 「0.5ミリ」とは,人間の”心と心の間の距離”のことを指しているそうです

さきに見た「百円の恋」とともに安藤サクラの演技力満開の映画です.お薦めします

 

          

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映画「百円の恋」を観る~安藤サクラの演技力がすべて

2015年07月06日 07時01分45秒 | 日記

6日(月).わが家に来てから270日目を迎え,カメラ目線でこちらを見るモコタロです 

 

          

              チャーム・ポイントは 後ろ足の位置 かな?

 

  閑話休題  

 

昨日,雨の中を久しぶりに飯田橋の「ギンレイホール」に出かけました 開演5分前の9時15分に着くと,会場はすでに結構な数の観客でいっぱいです 4日から17日までは「百円の恋」と「0.5ミリ」の2本立てです 今日は最初に観た「百円の恋」について書きます

弁当屋の娘・32歳の一子は実家でひきこもり生活を送っているが,離婚して出戻ってきた妹と折り合いが悪く,やけになって家を飛び出し一人暮らしを始める 100円ショップで深夜のアルバイトにありついた一子は,近くのジムに通う中年ボクサーの狩野と出会い,半同棲生活を始める.年齢の関係でボクシングを止めた狩野はアパートを出たまま帰らず,他の女性と付き合っていることが分かる 一子は狩野が通っていたジムに通い,試合に出たい一心で厳しい練習に励む.そしてプロ試験に通り,第1戦に挑むことになる

 

          

 

この映画は,何と言っても主人公の一子を演じた安藤サクラの役者魂に徹した演技力に尽きます 最初に画面に登場した時は,いかにも,どうしようもないブクブク太った不器用な引きこもり女といった風情を醸し出していますが,ジムで練習をはじめ,鍛練を重ねるごとに身体が引き締まり,動きが敏捷になって行きます プロ第一戦に挑む一子は髪を短く切り,引き締まった身体で戦いますが,そこにいるのは,かつてのブクブク太った引きこもり女ではありません.その変身ぶりはプロの女優のプライドと言っても良いでしょう

ジムに掲げられているのは「ハングリー/アングリー」です.一子がボクシングを始めたきっかけは,闘った者同士が,闘い終われば勝敗は別として,お互いに健闘を讃え合うところ(ノーサイド)に魅かれたのかもしれませんが,しだいに,狩野に対する憎しみが練習の原動力になっていったのかもしれません

主役の一子を演じた安藤サクラの映画を観るのは,実は今回が2回目です 1度目は園子音監督の「愛のむきだし」で,彼女は新興宗教団体の教祖の右腕の役を演じていました.その時は,どこか変に癖のある女優だな,という感じで,あまり良い印象はありませんでした しかし,今回,この映画を観て彼女に対するイメージは180度転換しました.もちろん良い方にです

2014年 日本映画 113分 監督は武正晴です.お薦めします

 

          

 

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車谷長吉著「世界一周恐怖航海記」を読む~楽よりも苦を楽しむのが好きな作家の旅行記

2015年07月05日 08時30分48秒 | 日記

5日(日).昨日の朝日別冊「be」第1面で,先日観た鈴木清順監督映画「ツィゴイネルワイゼン」に登場した「切通」が取り上げられていました 撮影場所は鎌倉市の釈迦堂口切通で,映画の中では陸軍士官学校ドイツ語教授の青地豊二郎(藤田敏八)の洋館と,元同僚の中砂(原田芳雄)の古民家の間にあり,二人の関係を微妙に結び付け,微妙に隔てている象徴のような存在になっています

なぜこの記事をご紹介しようとしたかというと,記事に次のような記述があったからです

「園(中砂の妻)は青地の名を取った娘・豊子を生んだあと急逝.中砂は,園とそっくりの芸者・小稲をめとる.そして中砂もあっけなく死ぬ.5年後.青地は切通で豊子と出会う.洞内に鈴の音を響かせる幼子を見て青地は思っただろう.もしかすると,私の娘ではないのか?」

映画の中に,その伏線はありました.青地が友の不在時に中砂宅を訪ねた時,園に「お帰りにならないで」と泣いて懇願されたのです そこで何があったのか この記事を読んで,映画の数々のシーンを思い起こしています ということで,わが家に来てから269日目を迎え,4つのリモコンに飽きれるモコタロです 

 

          

            何で 4つも リモコン必要なの? ご主人はテレビ見ないけど

 

  閑話休題  

 

車谷長吉著「世界一周恐怖航海記」(文春文庫)を読み終わりました 著者の車谷長吉(くるまたに・ちょうきつ)の存在を知ったのは,朝日新聞・土曜の別冊「be」の読者相談コーナー「悩みのるつぼ」の回答者としてです 何人かの回答者が持ち回りで読者の相談に回答を寄せているのですが,その中でただ一人,『人間なんてどうしようもない存在だ』といったような,相談者を奈落の底に落とすような回答をしていたのがこの車谷氏だったのです

 

          

 

車谷長吉氏は昭和20年兵庫県生まれ.慶應義塾大学文学部卒.広告代理店や料理屋で働きながら小説家を目指す.平成5年に「鹽壺の匙(しおつぼのさじ)」で三島由紀夫賞と芸術選奨文部大臣新人賞を受賞,平成10年には「赤目四十八瀧心中未遂」で第119回直木賞を受賞しています 残念ながら今年5月17日に69歳で死去しています

この「日記」は,平成17年12月26日に旅客船トパーズ号で横浜港を出港してから翌18年3月30日に横浜港に寄港するまでの出来事とともに,著者の昔話や文学論が展開されています 旅の道連れは夫人の高橋順子(詩人)と新藤涼子(詩人)です

平成18年元日の日記では,生き方についてこう書いています

「乗客はみな,この船旅を貪り楽しもうとしている.この『むさぼる』という空気が息苦しい.私は『楽しむ』というのが嫌いだ.『楽をする』のが嫌い.『楽』よりは『苦』が好き.と言うより『苦を楽しむ』が好き」

2月20日の日記では,小説を書く姿勢について,こう書いています

「私の小説を評して,二流の文芸評論家が『車谷の作品は自虐的だ.』とよく言う.身に覚えのないことだ.私は自虐など考えてみたこともない.他者に厳しい目を向ける以上,それ以上に厳しい目を自己に向けなければいけない,と思うだけだ.自分が自分であることの不快.これが私が書きたいことだ.この『不快』を『自虐的』などと言われるのは,不快である」

1月24日の日記では,吉田兼好についてこう書いています

「この世への執着として,吉田兼好は『徒然草』を書き残した.『徒然草』は絶望の書である.仏道修行にも実は救いがないことを知らしめる書である.それでいて兼好は自殺もしなかった.天寿を全うした.愚か者である」

しかし,2月9日の日記を読むと,清少納言との比較では兼好は持ち上げられています

「清少納言は俗物だ.栄華へのあこがれだけで生きている.人の地位だけを見て,人の存在を見ていない.その点,吉田兼好の『徒然草』と大違いだ.兼好は無常観(死)によって人を見ている.末期の眼で人を見ている.もちろん,清少納言にも自然風物を鮮やかな美意識で見る目はあるが,それだけでは駄目だ.人間存在とは何か,を見ていない.人間の地位の上下だけを見ている.私は『枕草子』を全部読むのはこれで二度目だが,こんどは失望した」

長い船旅の中で,1月10日にはこんな感動的なシーンにも出会っています

「安西冬衛に『春』と題して『てふてふが一匹韃靼海峡を渡って行った』という一行詩があるが,夕五時頃,インド洋を飛んで行く蝶を見た.黄色い小さな蝶だった.この船に乗ってから最高の感激だった」

恥ずかしながら,私が車谷長吉氏の作品を読むのはこれが初めてですが,日常の一コマを切り取った日記を読んだだけでも著者の味わいのある語り口に魅かれます 最初は漢字が読めなかった「鹽壺の匙」でも,遠くない将来に読んでみようかと思います

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アジアユースオーケストラ東京公演のチケットを買う~超お薦めコンサート

2015年07月04日 07時48分23秒 | 日記

4日(土).昨日はさすがに一昨日の「飲み会+カラオケ疲れ」が残っており,飲んで帰ろうという気持ちは起きませんでした 神保町でコンサート・チケットを買って素直に帰りましたが,途中で降ってきた雨のため最寄駅から自宅までびしょ濡れになりました これを世間では『水もしたたる良い男』と言いますが,放っておくと風邪を引きます.家に帰ってすぐに風呂に入りました.こういう素早い風邪対策を『バス・ストップ』と言い,いつまでも放っておいて風邪を引くのを『コールド負け』と言います ということで,わが家に来てから268日目を迎え,刺激が強い薬に接近するモコタロです 

 

          

            キンカンて何ですか? ご主人は金管が好きだけどね

 

  閑話休題  

 

神保町のチケットぴあで8月のコンサート・チケットを2枚買いました 毎年聴くのを楽しみにしている「アジアユースオーケストラ東京公演」です.8月28日(金)午後7時からと29日(土)午後6時からのコンサートで,会場は両方とも東京オペラシティコンサートホールです

プログラムは28日(金)が①J.S.バッハ/ストコフスキー編「トッカータとフーガ ニ短調」,②ショスタコーヴィチ「チェロ協奏曲第1番変ホ長調」,③マーラー「交響曲第4番ト長調」で,②のチェロ独奏はスティーヴン・イッサーリス,③のソプラノ独唱は坂井田真美子,指揮は首席指揮者のジェームズ・ジャッドです

29日(土)のプログラムは①ベートーヴェン「エグモント」序曲,②ハイドン「チェロ協奏曲第2番ニ長調」,③ベートーヴェン「交響曲第9番ニ短調”合唱付き”」で,②のチェロ独奏はイッサーリス,③の合唱はAYO東京合唱団,指揮は芸術監督・指揮者のリチャード・パンチャスです 今回の公演はAYO創立25周年なので,思い切って第9を取り上げたのでしょう

 

          

 

アジア各国から選抜された103名から成るこのオーケストラは,プロのオーケストラにない純粋な喜びに溢れています 毎年2日連続で聴いていますが,いつも感動して帰ってきます 入場料金は指定席(前売)4,000円,自由席(前売)2,000円と格安になっています.当日券はそれぞれ+1,000円となります.これは自身を持って推薦する”超お薦め公演”です

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串田孫一著「考えることについて」を読む~美について、希望について

2015年07月03日 07時18分23秒 | 日記

3日(金)。昨日、当ビルのテナント新聞・放送社の若手社員の方々と地下の焼鳥Rで飲みました 主に若手社員同士の交流を図り,当ビルが管理上抱えている問題点について意見を拝聴するというのが趣旨です テナント側,当社の社員,会議のコーヒーをサービスするパントリーのMさんを含め総勢約20人で2時間半近く話し合いが続きました 最後に私が音頭をとって,参加者の健康とモコタロの幸せを祈念して3本〆でお開きにしました テナント側出席者が帰った後,「実に有意義な会だった.やってよかった」と思ってお店を出るとき,なぜか示し合わせたように,カウンターで飲んでいた女性2人組が合流,男4人女3人のゴールデン7で新橋のカラオケ店に繰り出し,われ先にとマイクの奪い合いを展開しました 女性のうちMさんとKさんの歌はこれまでも聴いたことがありますが,Hさんの歌は初めて聴きました.パンチのある歌声で松田聖子からNHKの「みんなの歌」まで見事に歌い分けたのにはビックリしました 何組かの即興カップルによりデュエットも歌われ,当事者はつかの間の幸せに浸りながら新橋の夜は更けていきました 私のスマホで何枚か写メしましたが,写された某女性から「それ消去しといてね」とくぎを刺され,それ以外の重要参考人からも「その写真が週刊文春やToraブログに公開されたら今後の政治生命は絶たれる」と悲痛な叫びが上がったので,内心忸怩たる思いがありますが,個人情報保護法の精神に則り,写真をここに掲載することは控えます.ということで,わが家に来てから267日目を迎え、わが家の主人のようなデカイ態度を取るモコタロです 

 

          

                    デカイのは目だけだよ どう 目立つ?

 

  閑話休題  

 

串田孫一著「考えることについて」(徳間文庫カレッジ)を読み終わりました 串田孫一は1915年東京生まれ.詩人,哲学者,随筆家で,2005年に死去しています

私のように,普段ろくに考えることをしない人間は,たまにはこういう本を読んで,人生についてゆっくりと考えた方が良いのではないかと思ったのが本書を手に取ったきっかけです

 

          

 

考えることについて,疑うことについて,遊ぶことについて,愛することについて,幸福について,運命について,嘘について,美について,愚かさについて・・・など,44のテーマについて語っています

読んでいて最初に気が付くのは,随分感覚が古いなぁという感触です それもそのはず,ここに収められた文章は1950年~55年の間に雑誌で連載したものなのです.著者は巻末の「覚書」で

「1950年からの数年間は,人生とか思索とか教養などに関係の深いテーマで書くようにという要求が多く,世間に人生論が目立った時代で,私としても最も読者を意識して書いた時期のものである.25年から30年近く歳月の流れた今,どの程度役に立つ内容のものか,自分では正確に判断できない

と述べています(1979年).それからさらに36年経った2015年の今,1979年に刊行された旺文社文庫を底本にして,あらためて徳間文庫カレッジから刊行される運びになったわけです

哲学者らしく,時にプラトンやソクラテスのような古の哲学者の思想が引用されますが,文章は平明で分かり易く書かれており,おそらく中高生でも分かるように書かれています

44のテーマの中で,私の関心を引いたのは「美について」語ったところです.彼は問います

「私どもは美しいものを発見したでしょうか.本当に美しいものを知っているのでしょうか.それを各人がめいめい自分に問いただしてみることです.それには何の方法も要りません.ただ眼を開くだけです.美しい音を聞くためには,ただ耳をすますだけでよいのです.その簡単なことを,案外していないことがあります.人の心の美しさを知るにも,やはり特別な手段があるわけではありません.その美しさを受け入れる構えがありさえすればよいのです」

著者の言われているとおり,「美しい音を聞くためには,ただ耳をすますだけでよい」のかも知れませんが,それがいかに難しいかと言うことです ここであらためて,1950年代に著者が聴いていた音とは(ここでは音楽と解釈して)どんな音楽だったのだろうか,と考えます.そのヒントは「気質について」という文章の中にありました

著者の友人の姪・愛子さんはN響のKさんからヴァイオリンを習っているが,著者はKさんも良く知っている人である.ある日,その愛子さんが稽古の帰りにやってきた時に,何かを弾いて欲しいと頼んだところ,彼女が弾いたのはバッハの管弦楽組曲第2番ロ短調の「サラバンド」だった 弾き終って愛子さんに「それバッハのサラバンドでしたね」と言ったので印象を良くした なぜ著者がその曲を知っていたのかと言えば,高等学校の時,音楽部の友人が昼休みによくその曲を弾いていたので,放送などで聴くたびに,自分の十代の日を懐かしむ習わしみたいなものが出来てしまっていたからだ,という話です

やはり,当時はバッハ,モーツアルト,ベートーヴェンといった誰もが認める大作曲家が聴かれていたのだろうな,と素直に思います

また,「希望について」の中で,著者は次のように書いています

「負けない気になって言うわけではないが,希望を抱くことも,また夢見ることも,これは若いひとだけに許されたこととは思わないので,私もそれを進んで求めようとしている 長いあいだ気が付かずにいたことでも,何かの拍子に発見することがある だからこの人生は,いつまでたっても希望があり,新しい足取りがあり,未来に向かっての,明るいおののきが続いている.私は眠る間際に,明日のことをいろいろと考えて計画を立てるのがやっぱり嬉しい

こういうところは共感できます.この文章を読んであらためて思いました.知らないことを知ろうとする,経験したことのないことを経験する,他人の言動に振り回されず自分の意志で行動する・・・・・これからもそういう姿勢で生きていこうかな、と それから,「夕べはもう1曲デュエットを歌いたかったな」と

 

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鬼才フランソワ・グザヴィエ・ロトの指揮で聴く~読売日響第550回定期演奏会

2015年07月02日 07時01分17秒 | 日記

2日(木).昨夜、当ブログの「読者」登録数がついに500人に達しました ご覧いただいている皆さまのお蔭です。ありがとうございます 益々休めなくなりました ということで、わが家に来てから266日目を迎え,人生の代わりに靴下を背負っているモコタロです 

 

          

             ぼくは靴下は履かないんだよ 履かない一生だよ

 

 

  閑話休題  

 

昨夕,サントリーホールで読売日響の第550回定期演奏会を聴きました プログラムは①ブーレーズ「ノクタシオン」から第1,7,4,3,2番,②ベルク「ヴァイオリン協奏曲”ある天使の思い出に”」,③ハイドン「十字架上のキリストの最後の7つの言葉」(管弦楽版)です 指揮は鬼才フランソワ・グザヴィエ・ロト,②のヴァイオリン独奏は郷古廉です

 

          

 

指揮のロトは1971年パリ生まれ.2003年に,17世紀から現代までの作品を,それぞれの時代の楽器で演奏するオーケストラ「レ・シエクル」を創設,各国で演奏しています 2011年には読響常任指揮者カンブルランの後任としてバーデンバーデン&フライブルクSWR(南西ドイツ放送)響の首席指揮者に就任,今年9月にはケルン歌劇場の音楽監督兼ケルン・ギュルニヒ管の首席指揮者に就任することが決まっています 今,世界が注目する指揮者の一人です

 

          

 

1曲目のピエール・ブーレーズ「ノクタシオン」は,1945年にメシアンの下で学んでいた20歳の彼が「ピアノのための12のノクタシオン」を作曲したのが始まりで,その33年後の1978年(第1~4番)と1997年(第7番)に5曲が自らの手で管弦楽版に編曲されたものです この日は第1番,第7番,第4番,第3番,第2番の順に演奏されましたが,これは作曲者自身が推奨している順番とのことです

最初からフル・オーケストラ編成で,左サイドにハープ3台,ピアノ,オルガンが配置され,弦楽器は左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,その後ろにコントラバスというオーソドックスな態勢をとります

ちょっと見がジャック・ニコルソン似のロトが登場,第1番の演奏に入ります.大管弦楽が咆哮する,まさに”現代音楽”の代表のような曲です 最後の第2番は「とても生き生きと,けたたましく」と指示されていますが,文字通りけたたましい音楽です さすがにサントリーホール広しと言えどもこれを聴いて寝ている人はいないようです 2階席の上の方から盛んにブラボーがかかっていましたが,私にはこの曲の良さが分かりません.普段聴きなれていない音楽への拒否反応と言っても良いかもしれません

オケが少し縮小して,2曲目のベルク「ヴァイオリン協奏曲”ある天使の思い出に”」の演奏に移ります.なぜこのサブ・タイトルが付いたのかと言えば,マーラーの未亡人アルマが建築家ヴァルター・グロピウスと再婚してもうけた娘マノンが,病気のため18歳の若さで死去し,マノンをかわいがっていたベルクが,マノンへの追悼曲としてヴァイオリン協奏曲を作曲したのです.つまり”ある天使”とはマノンのことです

1935年に作曲されたこの曲は2つの楽章から成りますが,それぞれが2つの部分から成り立っています この曲を生で聴くのは,数年前に南紫音の演奏で聴いて以来です ソリストの郷古廉(これで「ごうこ・すなお」と読みます)がロトとともに登場し,早速演奏に入ります この曲を聴く限り,師のシェーンベルクよりもずっと聴きやすい曲想で,亡きマノンへの追悼の想いが迫ってきます 第2楽章冒頭などは慟哭の音楽です.郷古廉の演奏は初めて聴きましたが,テクニック上は優れたものがあり,理知的ながらも抒情性にも溢れ,好感を持ちました

 

          

 

休憩後のハイドン「十字架上のキリストの最後の7つの言葉」(管弦楽版)では,オケが極端に縮小され総勢40数人の小編成になります ロトはオケの態勢を変えます.この曲では左奥にコントラバス,前に左から第1ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,第2バイオリンという対向配置をとります

この曲はスペインのカディスの有力な司祭ホセ・サルーズの依頼により作曲したものです.司祭は聖金曜日の礼拝にあたって,キリストの最後の7つの言葉のそれぞれを唱えるごとに,間奏曲のように1曲10分ずつハイドンの管弦楽曲を演奏することを望んだといいます しかし,ハイドンは聴衆を飽きさせることなくアダージョばかりの曲を7つも演奏することには抵抗を覚えたようです その結果,時間的な制約を緩めてもらうことで妥協し作曲に取りかかったと言われています 「7つの言葉」であるから7つの曲から成り立っているかと思いきや,最初に「序奏」があり,第1のソナタ~第7のソナタが続き,最後に「地震」で締めくくるので全部で9つの部分から成ります 最後の「地震」を除いてすべての部分が「アダージョ」「ラルゴ」などの緩徐楽章から成り立っているので,クラシック音楽を聴くことに慣れていない人にとっては辛いものがあるかも知れません アレグロ~アダージョ~アレグロというように緩急が交互に演奏される曲であれば目先が変わって飽きないのですが,緩・緩・緩・緩と続くとさすがに刺激が欲しくなります その点,ハイドンは作曲に当たって苦労したのだと思います.9曲のちょうど中間に当たる第4のソナタ「ラルゴ」は力強い総奏により開始することでアクセントを持たせており,次の第5のソナタ「アダージョ」では弦によるピチカートによって目先を変えます

第7のソナタ「ラルゴ」が終わるところでフルートがずっとなり続け,その直後の荒々しい強奏による「地震」につなげます.これは,イエスの死の直後に起きたと伝えられる地震が描写的に表されています マタイ福音書によると「そのとき,神殿の垂れ幕が上から下まで真っ二つに裂け,地震が起こり,岩が裂け,墓が開き,眠りについていた多くの聖者たちの体が生き返った」と書かれています

静かな曲が淡々と演奏されてきて,最後に大地震が起きて天地がひっくり返るというところは,後にラヴェルが「ボレロ」にアイディアを転用したのではないか,と勘繰ってしまいました

さすがに”鬼才”と呼ばれるロトです.普通ならアダージョ続きの曲に飽きてしまうところを,集中力を絶やさず,最後まで聴衆を引っ張っていきます

この日のコンサートを聴き終って思ったのは,ロトはなぜブーレーズ,ベルク,ハイドンによるプロブラミングを計画したのかということです そういうことが,事前のインタビューなどによってプログラムの解説に書かれているともっとコンサートが楽しめるようになると思うのですが,そう簡単なことではないのでしょうか

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