人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

飯野ビルランチタイムコンサート(近藤愛花)を聴く/ジェフリー・アーチャー著「剣より強し」(上・下巻)を読む

2016年07月21日 07時30分09秒 | 日記

21日(木).昨日,喫茶店で新聞を読んでいる時,ちょっと離れた席の2人の男性うちの一人の声が極端に大きく聞こえて,すごく気に障りました たわいのないサラリーマンの会話でしたが,普通に話しているようなのに凄く大きな声で聞こえてくるのです 「よくいるよな,周囲の迷惑を考えない声の大きいヤツが」と思いました.30分くらいして二人は席を立ったので一安心していたら,今度は女性の二人組がそこに座りました.そのうちの一人の声がやはり必要以上に大きく聞こえるのです まさに先ほどのデカ声の男性の座っていた座席です

彼らの座っていた場所は比較的お店の中央に近い席,一方,私が座っていたのはお店の奧の突き当りの席でした ここで,ハタと考えました ひょっとして,音響力学上の関係で,部屋の中央で出た音が天井に最良の角度で反射して部屋の隅の自席に届いたのではないか,と 優れたコンサートホールは舞台上で落とした針の音が会場の隅まで聞こえるという話を聞いたことがありますが,それと似たような現象だったのではないか,と つまり,誰がその席に座って話しても私には大きな声で話しているように聞こえるのではないか,ということです

ということで,わが家に来てから662日目を迎え,おやつを食べるか ボディローションを塗るか 迷っているモコタロです

 

          

           なんで ぼくがボディローションを塗らなきゃならないんだよ!

 

  閑話休題  

 

昨日,内幸町の飯野ビル1階エントランスロビーで「第52回ランチタイムコンサート」を聴きました 今回の出演はピアノの近藤愛花さんです 2005年第52回スタインウェイ国際ピアノコンクール(ドイツ)のカテゴリーAで第1位を獲得したのをはじめ,これまで多くのコンクールで入賞を果たしています 現在は特別特待生として東京音楽大学1年に在学中です

 

          

 

プログラムは①ショパン「華麗なる変奏曲 作品12」,②同「4つのマズルカ 作品24」から第2番,③同「同・第4番」,④J.S.バッハ「フランス風序曲BWV831」より6曲,⑤ショパン「3つのワルツ作品34」から第3番ヘ長調”子猫のワルツ”,⑥「バラード第2番ヘ長調 作品38」,⑦同「エチュード 作品25」から第11番イ短調”木枯らし”」です

開演20分前の11時45分にロビーに着いて,一番前の席を確保しました 小柄な近藤愛花さんが淡いピンクの衣装で登場し,1曲目のショパン「華麗なる変奏曲」の演奏に入ります 一番前の席なのでベーゼンドルファーの迫力ある音が身近に迫ってきます

演奏後,マイクを持って次の2つのマズルカについて「第2番は農民の踊り,第4番は男女が踊ったり離れたりする様子が想像できます」と解説し,演奏に入りました

次のバッハ「フランス風序曲BWV.831」は8曲から成りますが,このうち6曲を演奏しました 序曲と銘打っていますが舞曲です この一連の演奏は聴きごたえがありました

最後にショパンの「3つのワルツ作品34」から第3番,「バラード2番」,「エチュード作品25」より第11番イ短調”木枯らし”を演奏しましたが,最後の練習曲第11番”木枯らし”は冒頭から迫力に満ちた演奏で,ロビーを行きかう人々の足を止めていました

演奏前に近藤さんが「このエチュードは”木枯らし”という激しい曲想を表すと同時に,私には祖国ポーランドへの想いやショパンのプライドが現れているように思います」と語っていましたが,その言葉を体現するかのような誇り高き演奏でした

 

  も一度,閑話休題  

 

神楽坂のギンレイホールで沖田修一監督「モヒカン故郷に帰る」(2016年,125分)を観ました

 

          

 

モヒカン頭がトレードマークの売れないバンドのボーカル永吉(松田龍平)は,妊娠した恋人(前田敦子)を連れて7年ぶりに瀬戸内海に浮かぶ故郷の戸鼻島(とびじま)に里帰りする 昔気質の頑固な父親・田村治(柄本明)は,定職についていない息子に怒りながらも二人のために大宴会を開く そうした中,父親はガンのため余命わずかという事実が発覚する そんな父親のために息子の永吉は病院で結婚式を挙げることを決心する

自分の息子に永吉と名付けるほどの矢沢永吉ファンの田村治を,大ベテランの柄本明が喜々として演じています.その妻・春を演じた もたいまさこ の演技は何気ないのに素晴らしいですね

舞台が瀬戸内海の小島であることから,テレビで野球中継を見るシーンは広島カープの試合です 今年は(セリーグでは現在のところ)カープが首位を走っているので,結果的にはグッド・タイミングです

ここで映画のタイトルをもう一度確認しておきます 「ポケモンGO」ではなく,「モヒカン故郷に帰る」です.そこんとこ よろしく

 

  最後の,閑話休題  

 

ジェフリー・アーチャー著「剣より強し(上・下巻)」(新潮文庫)を読み終りました これは,第1部「時のみぞ知る」,第2部「死もまた我等なり」,第3部「裁きの鐘は」,第4部「追風に帆を上げよ」に次ぐクリフトン年代記の第5部作です

 

          

          

物語は,第4部「追風に帆を上げよ」のラストシーンと直結して,バリントン海運が竣工した豪華客船「バッキンガム」に,敵対者たちと手を結ぶIRAテロリストが爆発物を仕掛けて一発触発の事態に・・・・という場面から始まる 結果的には,爆発物は直前に発見され海に投げ込まれるが,バリントン家は経営的な見地から事実の隠蔽に苦労することになる

その後,ハリーはシベリア強制収容所に霊閉されている一人のロシア人作家・ババコフを救出する決意を固める 彼はかつてスターリンの専属通訳を務め,内幕を暴露した本を著して逮捕されていたのだった ババコフが書いた「アンクル・ジョー」の在りかを知ったハリーは単身モスクワに赴く.しかし,そこに待ち受けていたのは国家の罠だった.ハリーは逮捕され裁判にかけられる

一方,ハリーの妻エマはバリントン海運社内の人事を巡る危機を抱えながら,宿敵ヴァージニア(ジャイルズの元妻)から起こされた名誉棄損訴訟の法廷に立つことになる そうした中で,息子のセバスチャンは恋人サマンサの愛を失い,彼女を追ってアメリカに渡る

さて,この物語に出てくるロシアのババコフは架空の作家ですが,モデルはノーベル賞作家のアレクサンドル・ソルジェニーツィンと思われます ソルジェニーツィンは1945年にスターリンを批判した罪で逮捕され,長らく流刑にされ,出獄後 東西陣営の”雪解け”の恩恵で代表作「イワン・デニーソヴィチの一日」を出版し,国際的な話題を巻き起こしました しかし,ブレジネフ時代に入ると迫害に合い,ついには国外追放されました

いったいどこまでこの物語は続くのか と思うほど代わる代わる難事件が起こり,ハリー,エマ,セバスチャン,ジャイルズたちはそれを乗り越えていきます 面白くてページをめくる手が止みません.お薦めします

 

          

 

toraブログの登録読者が900人に達しました 昨年末の時点では712人だったので今年に入ってから200日強で188人増えたことになります これも当ブログをご覧いただいている皆さまのお陰と感謝申し上げます これでますます休めなくなりました これからも 1日も休むことなくアップして参りますので,よろしくお願いいたします

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フォーレ四重奏団による「展覧会の絵」のチケットを買う/山田洋二監督「家族はつらいよ」を観る

2016年07月20日 07時54分57秒 | 日記

20日(水).わが家に来てから661日目を迎え,痒い足を噛みながら一句詠んでいるモコタロです

 

          

            痒いところに手が届く まさにその手が 欲しいけど 足しかない この悲しさよ

 

  閑話休題  

 

昨日,夕食に「豚肉とジャガイモのにんにく味噌焼き」,「生野菜とワカメとタコのサラダ」,「冷奴」,「モロきゅう」を作りました 「豚肉~」は初挑戦です  最近,初挑戦 多くね

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

10月5日(水)午後7時から横浜みなとみらい小ホールで開かれるフォーレ四重奏団のコンサートのチケットを買いました プログラムは①ブラームス「ピアノ四重奏曲第1番ト短調」,②ムソルグスキー(フォーレ四重奏団&グリゴリー・グルツマン編曲)「組曲”展覧会の絵”」です

 

          

 

実は10月1日(土)午後6時からトッパンホールで開かれるフォーレ四重奏団のコンサートを聴くことになっているのです

 

          

 

こちらは①モーツアルト「ピアノ四重奏曲第2番K.493」,②細川俊夫「レテ(忘却)の水」,③ブラームス「ピアノ四重奏曲第2番」です 今回横浜の公演を聴こうと思ったのはムソルグスキーが面白いと思ったからです 直観ですが名演になる様な気がします          

 

  最後の,閑話休題  

 

昨日,神楽坂のギンレイホールで山田洋二監督「家族はつらいよ」(2016年,108分)を観ました

 

          

 

東京の郊外で三世代が同居する平田家に起こる一家の主の離婚騒動です 主の周造(橋爪功)が酔って帰ると,その日は妻(吉行和子)の誕生日だった.たまにはプレゼントでもと ほしいものを尋ねると妻は「離婚届に判を押してほしい」という 両親の突然の熟年離婚危機に遭遇した家族たちは家族会議を開くことになるが・・・・

「男はつらいよ」の山田洋二監督の久しぶりの喜劇映画ということで,期待して観に行きました 観て まず最初に思ったのは「役者揃い」ということです 主の橋爪功の演技は本当に可笑しい 離婚届を突き付けられた時の戸惑いの表情など,演技とは言えリアルです 蕎麦屋の出前に「男はつらいよ」の主題歌を歌わせたり,長女の婿(林家正蔵)に「どうもすいません」と父・林家三平のマネをさせたりと,山田監督ならではの演出も見られました

映画の中でよくクラシック音楽を使う山田監督らしく冒頭の場面では,調律師をやっている次男の省太(妻夫木聡)が父親に,「ショパンの曲を聴いているとね,不協和音がたくさん使われているんだよ 不協和音があるからこそ美しい音楽が響いてくるんだ.お父さん,お母さんとの間で何があったの?今の二人は不協和音だよ」と語らせています.その省太が調律後にショパンのノクターン作品9-2(だと思う)の最後の数小節だけ弾くシーンがありますが,個人的にはもっと目いっぱい演奏して欲しかったと思います

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「西本智美の第九」他のチケットを買う/米原万里著「他諺の空似~ことわざ人類学」を読む

2016年07月19日 07時35分39秒 | 日記

19日(火)。わが家に来てから660日目を迎え,安倍政権の影響を受けたのか やや右に傾いているモコタロです

 

          

           おいおい 傾いているのは 写メしているスマホだろうが 斜目と言うし・・・

 

  閑話休題  

 

昨日,夕食に「海鮮丼」「金目鯛の煮つけ」「生野菜と生ハムのサラダ」「冷奴」を作りました 金目鯛は先日,大学時代の友人S君が送ってくれた新鮮な魚です いうまでもなく醤油,砂糖,味醂の味付けですが,子供たちにも好評でした

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

チケットを2枚買いました 1枚目は8月18日(木)午後7時から虎ノ門のJTアートホール アフィニスで開かれる「エピス クァルテット ベートーヴェン後期作品への挑戦Vol.3」です.プログラムは①モーツアルト「弦楽四重奏曲第15番ニ短調K.421」,②ベートーヴェン「弦楽四重奏曲第15番イ短調」です 彼らの演奏を聴くのは2回目です.最初に聴いたきっかけは,東京交響楽団の首席チェロ奏者・伊藤文嗣がクァルテットを組んで活動していると知ったからです チケット代は一般3,000円,学生2,000円(当日券は各+500円)です

 

          

          

 

2枚目は9月28日(水)午後7時から東京文化会館大ホールで開かれる「西本智美の第九」です まるで宝塚出身の女優のようないで立ちの西本智美は,今年11月,ヴァチカン国際音楽祭に招かれ「第九」を指揮しますが,このコンサートはそれに先駆けて開催される「慣らし運転」的な公演です

プログラムは①モーツアルト「戴冠式ミサ ハ長調K.317」より抜粋,②ベートーヴェン「交響曲第9番ニ短調”合唱付き”」です 出演はソプラノ=熊本佳永,アルト=野上貴子,テノール=二塚直紀,バリトン=田中勉(失礼ながら4人とも知らない),管弦楽=イルミナートフィルハーモニーオーケストラ,合唱=イルミナートヴァチカン合唱団,指揮=西本智美です

 

          

          

 

  最後の,閑話休題  

 

米原万里著「他諺の空似(たげんのそらに)~ことわざ人類学」(中公文庫)を読み終りました 米原万里は1950年、東京生まれ。1959年~64年チェコで過ごし、帰国後 東京外国語大学、東京大学でロシア語を学び、ロシア語通訳・翻訳者となる  95年に文筆家デビュー、ノンフィクションや小説、エッセーを数多く残した。2006年に卵巣がんのため56歳で死去

 

          

 

「医者の不養生」「寄らば大樹の陰」「馬鹿と鋏は使いよう」「嘘つきは泥棒の始まり」「安物買いの銭失い」等々,世界中のことわざには,類似の文句が同じ意味に使われているケースが多い この本は,世界各国におけることわざの用法を比較しながら,持ち前の皮肉と毒舌で現代社会を一刀両断した痛快なエッセイです

同時通訳者として世界を駆け巡る豊富な知識と,それを軽口を叩きながら紹介する高度な表現力がなければ絶対に書けないエッセイです そして,米原万里の文章の特徴は,話の枕に一流の「シモネッタ」小噺を持ってきて,読者の興味を鷲掴みして放さないことです 「シモネッタ」・・・分かりますね.「下ネタ」のことです どんな小噺かって? それは本屋さんに行って,この本の最初のエピソード「医者の不養生」(11ページ)を立ち読みしていただければ分かります.本屋さんのために言っておくと,その本買ってくださいね

何日か前の朝日朝刊「文化・文芸欄」で米原万里を取り上げていましたが,元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏が次のように語っています

「インテリゲンチャは,教養があるだけでなく行為も伴わなければならない 米原さんはインテリゲンチャの精神的伝統を見事に継承し,体現した人だった

ひと言でいうと「滅茶苦茶面白い」本です.自信をもってお薦めします

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尾高忠明+国立音楽大学オーケストラでショスタコーヴィチ「交響曲第5番ニ短調」他を聴く

2016年07月18日 08時28分19秒 | 日記

18日(月・休).わが家に来てから659日目を迎え,白ウサちゃんに意見しているモコタロです

 

          

                白ウサちゃん いくら仲良しだといっても 乗り過ぎだよ!

 

  閑話休題  

 

昨日、初台の東京オペラシティコンサートホールで「国立音楽大学オーケストラ第125回定期演奏会」を聴きました プログラムは①W.ウォルトン「戴冠式行進曲『王冠』」、②モーツアルト「クラリネット協奏曲イ長調K.622」、③ショスタコーヴィチ「交響曲第5番ニ短調」です ②のクラリネット独奏は国立音大学長・武田忠善、指揮は尾高忠明です

 

          

 

自席は1階25列10番,左ブロック右通路側です.会場は出演学生の家族・親戚・友人・知人,大学OBを中心にほぼ満員御礼の状態です それを反映して,通常のクラシック・コンサートに比べて若い聴衆が多く見受けられました 問題は,こういう若い聴衆が在京オケの定期演奏会に来ているかどうかです

さて,私がこのコンサートを聴こうと思ったのは,2年前の7月に準メルクルの指揮でベルリオーズ「幻想交響曲」の演奏を聴いて素晴らしいと思ったからです

1曲目のウィリアム・ウォルトン(1902-83)の「戴冠行進曲」は,BBC放送局からの委嘱を受けて作曲し,1937年5月12日,ウェストミンスター寺院でとり行われた英ジョージ6世の戴冠式の際に初演されました ウォルトンは,かの「威風堂々」の作曲者エドワード・エルガーを引き継ぐ英国の作曲家として期待されたのでした 戴冠式ではメアリー王太后の入場の際にこの作品が,王と王妃の入場時にエルガーの「帝国行進曲」が演奏されました

曲は勇壮な行進曲部分と牧歌的な主題が奏でられる部分が交互に現れます エルガーの「威風堂々」を知っているわれわれの耳には,やはりちょっと物足りなさを感じますが,英国音楽の伝統に基づいた堂々たる行進曲であることは理解できます

2曲目はモーツアルトの「クラリネット協奏曲イ長調K.622」です.この曲はモーツアルトの死の年,1791年9月28日~11月15日に作曲されました この曲を作ったきっかけは,1781年ごろに知り合ったクラリネットとバセット・ホルンの名手アントン・シュタートラーとの出会いです シュタートラーという人は,モーツアルトに「この人に自分の作った曲を吹いてほしい」と思わせる実力があったクラリネット奏者だったということです 初演は1791年10月16日にシュタートラーのソロでプラハ国立劇場で行われたと言われています

コンマスがチューニングの準備に入ります.いつもはオーボエに音出しを指示するのですが,モーツアルトの「クラリネット協奏曲」はクラリネットが使われません.代わりにチェロに基調となる音を出させていました

この曲は第1楽章「アレグロ」,第2楽章「アダージョ」,第3楽章「アレグロ」から成ります.ソリストの武田忠善が尾高忠明と共に登場します 武田氏は1975年に国立音大を卒業し,フランス国立ルーアン音楽院でジャック・ランスロに学び,同音楽院を一等賞で卒業しました その後,内外のコンクールで目覚ましい活躍をして,現在は国立音楽大学の学長を務めています

第1楽章は,死の年に作曲されたとはとても思えないような晴れやかささえ感じさせる曲想です 第2楽章はこの曲の白眉です.独奏クラリネットによるモノローグは,人生を達観したモーツアルトの心象風景を表しているかのようです そして,第3楽章は再び第1楽章のように明るく何事もなかったかのように淡々と音楽が進みます

武田学長の演奏は円熟の演奏で,しみじみと聴き入りました.学生たちのサポートも見事でした

 

          

 

休憩後はショスタコーヴィチ「交響曲第5番ニ短調」です この曲は,オペラ「ムツェンスク郡のマクベス夫人」に対する酷評記事がプラウダに載った,1936年のいわゆる「プラウダ批判」の後に,起死回生をかけて世に問うた作品です.彼はこの曲を文字通り”命がけで”作ったのです

プログラムの曲目解説に次のような記述がありました

「作品の構想に関しては今なお謎が多いのだが,2000年のペンデッキ―の論文をはじめ『引用のカモフラージュ』について近年,興味深い指摘がなされている ショスタコーヴィチには1934年来,エレーナというロマンスの相手がいた.エレーナは1932年に結婚したばかりのショスタコーヴィチが真剣に離婚を考えたほど,熱烈に愛した女性だった やがて作曲家に長女が生まれ,またエレーナが密告で逮捕されたことなどから,2人の関係は終わり,その後1936年に出所した彼女はスぺインに渡り,著名な映画監督ペンディツキ―・カルメンと結婚した.『プラウダ批判』による絶望・恐怖と,エレーナへの愛.ここからペンディツキ―は秘められた『愛と死』のテーマを指摘し,『愛』の側面の音楽的根拠として,ビゼーの『カルメン』との関連を第1・第4楽章で指摘した そこでは冒頭からの明らかな引用を避けつつも,『カルメン』の音列・リズム・テンポ・調性を巧みに変化させている様子が観察されている

ショスタコーヴィチの「第5交響曲」について,このような指摘を見たのは初めてだったので,ビゼーの「カルメン」の音楽が,変形しながらも第1楽章と第4楽章に紛れ込まされていることを耳で聴いて確かめようと思いました

尾高の指揮で第1楽章が力強く開始されます.低弦は根性が入っています コントラバスの男子学生の一人がとても元気です 踊っているような感じで演奏していました.楽章を通して気を付けて聴いていたのですが,「カルメン」を聴きとることは出来ませんでした 第2楽章はアイロニカルです.ショスタコーヴィチ得意の諧謔的なメロデイーが続きます 第3楽章はまるで葬送行進曲です.ここでは,フルートの独奏が美しく響き渡りました 第4楽章ではティンパ二が大活躍でした 残念ながらこの楽章でも「カルメン」のメロディーを聴きとることが出来ませんでした

学生たちは尾高忠明の指揮のもと,終始緊張感に満ちた素晴らしい演奏を繰り広げました 演奏後は拍手とブラボーがしばらく鳴り止みませんでした 会場を満たした演奏学生たちの家族・親戚・友人・知人・大学OBの皆さんも満足されたことでしょう

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ノット+東響でブルックナー「交響曲第8番」を聴く/フックス+藝大でモーツアルト「グランパルティータ」を聴く

2016年07月17日 08時32分11秒 | 日記

17日(日)。わが家に来てから658日目を迎え,昨日の夕刊を見て日本の安全を憂いるモコタロです

 

          

          フランスのテロの後は トルコでクーデターだって 日本は大丈夫?

 

  閑話休題  

 

千葉県勝浦市在住の大学時代の友人S君から「海の幸」のセットが送られてきました S君の奥さまの実家が魚介類の卸問屋を営まれているとのことで,アジ,カマス,あこう鯛,カレイが所狭しと詰まっています わが家は子供たちが肉好きなので どうしても肉中心の食事になりがちですが,これをきっかけに魚料理をローテーションに入れることができると思います  持つべきは友だちだな S君ありがとう.また飲みましょう.魚を肴にして

 

          

 

 も一度,閑話休題   

 

昨日午後3時から東京藝大奏楽堂で「ヴェンツェル・フックスを迎えて~ハルモニームジークの愉しみ~」を聴きました 開演に先立って午後2時15分から「プレトーク」があるというので1時半には会場に着いて並びました  その結果,1階11列13番,センターブロック左通路側を押さえました フックス効果か,会場はほぼ満席です

ベルリン・フィル首席クラリネット奏者ヴェンツェル・フックスが藝大教授・山本正治と 通訳の横田揺子(クラリネット専攻・准教授)とともに登場し,プレトークが始まりました.山本氏がフックス氏にインタビューする形で進められました 要約すると

「ベルリン・フィルで演奏するようになってから24,5年になる 定期的に東京藝大に毎年来るようになって今年が5回目となる.現在,ジュリアード音楽院,マンハッタン,モーツアルテウムのほか,カラヤン・アカデミーでも教えている ベルリン・フィルのもう一人のクラリネット首席のオッテンザマーはそこで私のレッスンを受けた生徒だった 毎年夏に来て見ている東京藝大の学生はハイレベルだ.両親がオーストリアでスキー用具を販売する仕事をしていた関係で,スキーの道に進むべくその道の学校に通っていたが,スキーで足を骨折してしまい,考えた挙句スキー板をクラリネットに持ち代えることになった 父親はスキー板も作っていたが,かのトニー・ザイラーのスキーを初めて作ったのは父親だった ベルリン・フィルは各楽器にレベルの揃った首席が二人いるので半分は休める態勢にある.それで,今回の来日のように自由に行動できる面がある

このプレトークは素顔のフックス氏を知ることが出来て良かったのですが,通訳の横田さんが素晴らしかった 山本氏によると,フックス氏はドイツ語で話すと思ってドイツ語の通訳を用意したとのことですが,本人は英語を話していました.それでも少しも慌てず騒がず,横田さんは完璧に英語でこなしていました

さて,この日のプログラムは①モーツアルト「セレナード第12番ハ短調K.388”ナハトムジーク”」、②同「セレナード第10番変ロ長調K.361”グラン・パルティータ”」です 演奏は、クラリネット=ベルリン・フィル首席奏者ヴェンツェル・フックス、山本正治、オーボエ=小畑善昭、湯原由香、バセット・ホルン=福島広之、西澤いずみ、ホルン=日高剛、田中みどり、荻野谷美咲,岡田彩愛、ファゴット=岡本正之、古谷挙一、コントラファゴット=石井野乃香です

 

          

 

このコンサートのサブ・テーマにある「ハルモ二―・ムジーク」とはドイツ語で,通常は重い金管楽器や打楽器を含まない管楽器の重奏による音楽を意味します 最盛期は1780年代から1830年代までとされています.この日のプログラムはモーツアルトのセレナードのうち短調と長調の最高傑作のカップリングです

1曲目の「セレナード第12番ハ短調K.388”ナハトムジーク”」は,オーボエ,クラリネット,ホルン,ファゴット各2本から成る8人の編成で演奏されます「ナハトムジーク」とは「夜の音楽」という意味です.この曲は1782年(モーツアルト26歳)の時に作曲されました

「セレナード」とか「ディヴェルティメント」は言わば「娯楽音楽」なので,短調で作曲するのは異例のことだったと思います それでも敢えて短調で作ったのですから,相当作品に自信があったのだと思います.それはこの曲を聴けば判ります

左からオーボエ(小畑,浅原),ファゴット(岡本,古谷),ホルン(日高,田中),クラリネット(フックス,山本)の態勢をとります

この曲は第1楽章「アレグロ」,第2楽章「アンダンテ」,第3楽章「メヌエット・カノン」,第4楽章「アレグロ」から成りますが,短調の魅力に溢れています 聴いていて特に印象に残ったのは第3楽章のトリオの部分です.オーボエとファゴットが各2本でカノンを演奏するのですが,素晴らしいアンサンブルでした

 

          

 

休憩後は,モーツアルト「セレナード第10番変ロ長調K.361”グラン・パルティータ”」です この曲は「13管楽器のセレナード」と呼ばれることがありますが,モーツアルトが自筆譜で指定していた最低声部の楽器はコントラバスでした したがって,正確には「12管楽器とコントラバスのセレナード」ということになります また「グラン・パルティータ」(大規模な管楽合奏曲)という愛称もモーツアルトが名付けたわけではなく,後世の人が付けたものです 作曲年代もあやふやで,1781年~82年頃とする説と1783年~84年頃とする説があるようです 自筆譜に年代の記入がないのです.楽器編成は1曲目の「ナハトムジーク」の八重奏曲に,バセットホルン2本,ホルンを2本(追加),コントラバス(今回はコントラファゴット)を加えた13楽器から構成されます  ところで,「バセットホルン」というのはホルンではなく,クラリネットに似た木管楽器です

編成は,後方にホルンが4人横に並び,前に左からオーボエ(小畑,浅原),ファゴット(岡本,古谷),コントラファゴット(石野),バセットホルン(福島,西澤),クラリネット(山本,フックス)という並びです

この曲は第1楽章「ラルゴーモルト・アレグロ」,第2楽章「メヌエット」,第3楽章「アダージョ」,第4楽章「メヌエット:アレグレット」,第5楽章「ロマンス:アダージョ」,第6楽章「主題と変奏:アンダンテ」,第7楽章「フィナーレ:モルト・アレグロ」から成ります

この曲の白眉は何といっても第3楽章「アダージョ」でしょう.ゆったりした分散和音に導かれ,オーボエがメロディーを奏で,クラリネットが引き継ぎます これを聴いた時「これは本当に人間が作った音楽だろうか」と感嘆しました

あの有名なピーター・シェーファー原作の映画「アマデウス」の一場面を思い出します モーツアルトとコンスタンツェがお菓子を食べながらイチャイチャしているのを,サリエリが陰で隠れて見ていると,隣室からこの世のものとも思えない神秘的なメロディーが流れてきます モーツアルトはコンスタンッェに言います「この曲は僕が作ったんだ」.それを陰で聞いていたサリエリは思います.「目の前でお菓子を食べながら悪ふざけしている不真面目な男が,あの素晴らしい音楽を書いただって とても信じられない.私は真面目に神のために人生を捧げて音楽を作っているのに報われない.不公平だ」.そして,サリエリは「モーツアルトは作曲者として神から選ばれた しかし,自分はモーツアルトが天才であることが判る者として選ばれたに過ぎない 復讐してやる」と決意するのです.ここからシェーファーは,サリエリによるモーツアルト暗殺説をなぞっていった訳です モーツアルトの天才を論じるのに一番ふさわしい音楽として,この「セレナード第10番K.361」の第3楽章「アダージョ」を選んだ故ピーター・シェーファーに敬意を表します

第7楽章「フィナーレ」は愉悦間に満ちた音楽です 13の楽器が良く鳴っています.フックスはもちろんのこと,オーボエの小畑氏を中心に素晴らしいアンサンブルでした

 

          

 

13人はアンコールに「グラン・パルティータ」の第6楽章のフィナーレを演奏し,コンサートを締めくくりました この日のコンサートは極めて水準が高く,「生きてモーツアルトが生で聴ける幸せ」を十分に感じ取ることができた公演でした

さて,この公演の終了時間は午後4時42分.私は急ぎ足で地下鉄銀座線の上野駅に向かいました.目指すは溜池山王のサントリーホールです

 

          

 

  も一度、閑話休題  

 

サントリーホールに着いたのは午後5時25分.上野の東京藝大奏楽堂からサントリーホールまで,ドア・トゥー・ドアで43分でした

午後6時からサントリーホールで東京交響楽団第642回定期演奏会を聴きました プログラムはブルックナー「交響曲第8番ハ短調」(ノヴァーク版第2稿)です 指揮は音楽監督ジョナサン・ノットです

 

          

 

ブルックナーの第8番だからでしょうか.会場はいつもより聴衆の入りが多いように思います オケの態勢は,左奥にコントラバス,前に左から第1ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,第2ヴァイオリンという対向配置をとります 左サイドにはハープが3台スタンバイしています.コンマスは客員の林悠介です.ステージのそこかしこに集音マイクが立てられています.この公演を収録していつかどこかの番組で放映するのでしょうか

 

          

          

この曲は1884年7月~1887年8月に作曲され,1887年10月~1890年3月に改訂されています なぜ改訂したかと言えば,この間に2人の指揮者に「演奏困難」として指揮を断られてしまったからです 1人目はヘルマン・レーヴィ,2人目はレーヴィから推薦されたフェリークス・ヴァインガルトナーです.改訂版が初演されたのは1892年12月18日,ウィーンでハンス・リヒターの指揮でした

この曲は第1楽章「アレグロ・モデラート」,第2楽章「スケルツォ:アレグロ・モデラート」,第3楽章「アダージョ」,第4楽章「フィナーレ」から成ります この曲はマーラーが交響曲第6番で迷ったように,第2楽章と第3楽章の扱いで悩んだようです.初稿のスケッチ段階では第2楽章に「アダージョ」を,第3楽章に「スケルツォ」を想定していましたが,その後,現在の形に変更したようです.曲全体を聴く限り,第3楽章にアダージョを持ってきた方が第4楽章が生きると思います

ジョナサン・ノットが登場,第1楽章の演奏に入ります.管楽器も弦楽器も厚みのある音で迫ってきます 管楽器ではオーボエ首席の荒木奏美,フルート首席の相澤政宏,ホルン首席の上間善之を中心に素晴らしい演奏を展開していました 第2楽章「スケルツォ」を経て,第3楽章「アダージョ」に移りますが,弦楽器を中心に美しい音楽が会場の隅々まで響き渡ります 第4楽章のフィナーレは,ブルックナー自身がロシア皇帝の表敬訪問になぞらえて,弦楽器を「コサック兵の騎行」,金管楽器を「軍楽」,トランペットを「死の行進と(金管による)浄化を含むもの」と表現しています.文字通り受け取って良いものかどうか分かりませんが,聴いていると,その通りだと言いたくなるような曲想です

80分の長旅が終わり,ノットのタクトが下されると,若干フライング気味の「ブラボー」がかかり,万雷の拍手とブラボーの嵐が続きました

ノット+東響による80分の演奏を振り返って,思い出したのが,かつてユーゴズラヴィアの巨匠ロブロ・フォン・マタチッチがNHK交響楽団を振った「第8番」の演奏です あの演奏は狂気迫る”重い”演奏でした(私はテレビ録画でしか観たことがない).それに比べ,ジョナサン・ノットによる演奏は,21世紀のブルックナーを感じさせます.テンポが速く,スマートさを感じます どちらが良いか,という問題ではなく,演奏は時代を反映するということでしょうか 汽車や船が主な移動手段だった時代の演奏と ジェット旅客機が当たり前の時代の演奏では テンポが異なるのも当然かも知れません

コンサートのハシゴは出来るだけ避けたいと思っているのですが,今回は避けなくて正解でした

 

          

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新交響楽団第235回演奏会他のチケットを買う/吉本隆明著「真贋」を読む

2016年07月16日 07時28分15秒 | 日記

16日(土)。わが家に来てから657日目を迎え、夏バテか あまり食欲がなく、テーブルの下で一休みするモコタロです

 

          

            昨日は雨が降って涼しかったけど 今年の夏は暑いよね!

 

  閑話休題  

 

チケットを2枚買いました 1枚目は10月28日(金)午後7時から上野の東京藝大奏楽堂で開かれる「藝大フィルハーモニア第377回定期演奏会」です。プログラムは①ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第3番ニ短調」、②ストラヴィンスキー「春の祭典」で、①のピアノ独奏は有森博、指揮は高関健です なお、6時15分からプレコンサートがあり、ストラヴィンスキーの「弦楽四重奏のための3つの小品」が演奏されます。入場料は全席自由で3,000円です

 

          

 

2枚目は11月3日(木・祝)午後2時から池袋の東京芸術劇場コンサートホールで開かれる「新交響楽団第235回演奏会」です プログラムは①吉松隆「鳥のシンフォニア ”若き鳥たちに”」、②伊福部昭「シンフォニア・タプカーラ」、③ブラームス「交響曲第1番ハ短調」です 指揮は山下一史。入場料はS席=3,000円、A席=2,500円、B席=1,500円です。私の目当ては”ゴジラ”の音楽でお馴染みの伊福部昭の曲です

 

          

 

  も一度、閑話休題  

 

吉本隆明著「真贋(しんがん)」(講談社文庫)を読み終りました 吉本隆明は1924年東京生まれ、詩人、評論家。東京工業大学卒。戦争体験の意味を自らに問い詰め、50年代に文学者の戦争責任論・転向論で論壇に登場、60年安保闘争を経て、61年「試行」を創刊。主な著書に「共同幻想論」「言語にとって美とは何か」などがある。2012年3月死去

 

          

 

著者は「まえがき」で次のように書いています

「いま、世の中を見ていると、すべてが逆な方向に進んでいるような気になることがある あまりにも常識的な『問い』と『答え』にあふれ、実は本当に考えるべきことを考えずに、考えなくてもいいことを考えているのではないか 滑稽ですらある。まずは、どうでもよさそうなことから考えてみる。そういった視点が必要なのではないか。これまでとはちょっと違う部分を見る。そうしたことで少しは世の中の見方が変わっていく可能性があるかもしれない。そんなことを期待して本書に取り掛かることにした

そして次の6つのテーマについて語っていきます

1.善悪二元論の限界

2.批評眼について

3.本物と贋物

4.生き方は顔に出る

5.才能とコンプレックス

6.今の見方、未来の見方

テーマが広範に及ぶので一つだけ例を挙げてみましょう 「2.批評眼について」の中の「『いいもの』は好き嫌いで判断できない何かを持っている」という話の中で、著者は次のように語っています

「文句なしにいい作品というのは、そこに表現されている心の動きや人間関係というのが、俺だけにしかわからない、と読者に思わせる作品です この人の書く、こういうことは俺にだけしかわからない、と思わせたら、それは第一級の作品だと思います

文芸批評の一番重要なところは、『俺だけにしかわからないことだ』あるいは『俺と作者にしかわからない』と読者に思わせる作家もいるし、『俺たちの世代にしかわからない』と思わせる作家がいることが、まず基本的に判断できて、そういうことを文章で表現できれば、批評を商売にできるのではないでしょうか それはたぶん、素質の問題ではなくて、読みの深さや、その人の持っている時代性、周囲の小さな環境から、さらには社会の大きな環境まで、そういうものを含めていろいろなことを精神的に体験してことが必要なのかもしれません。それが文芸批評家だと言える条件のもっとも基本的なことだと思います

吉本氏は文芸批評の専門家なので、批評眼といったときには文芸批評のことを取り上げることになりますが、上記のことは音楽批評に当てはまるのだろうか?と考えてみるのも無駄ではないかもしれません

例えばベートーヴェンの弦楽四重奏曲第13番を聴いて、「この音楽は俺だけにしかわからない」、あるいは「ベートーヴェンと俺だけにしかわからない」と思うでしょうか? どうもそうではないように思います しかし、タイトルにあるように「『いいもの』は好き嫌いで判断できない何かを持っている」というのは真実だと思います

この本はそうした「考えるきっかけ」を与えてくれます。成り行きで生きている人にお薦めします       

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藝大モーニングコンサートを聴く/マイスター+読売日響でマーラー「交響曲第6番」他を聴く

2016年07月15日 07時29分57秒 | 日記

15日(金)。わが家に来てから656日目を迎え、お中元のメロンゼリーには目もくれず、オヤツにかぶりついているモコタロです

 

          

            だって おいら メロンゼリーなんて食べられないもんね

 

  閑話休題  

 

昨日、夕食に「メカジキの照り焼き」「焼肉」「生野菜サラダ」「冷奴」を作りました メカジキかなり安かったけど、まさかサメだったりして

 

          

 

  も一度、閑話休題  

 

昨日午前11時から、上野の東京藝大奏楽堂で「第8回モーニングコンサート」を聴きました  プログラムは①イベール「フルート協奏曲」、②エルガー「ヴァイオリン協奏曲ロ短調」です ①のフルート独奏は八木瑛子、②のヴァイオリン独奏は城戸かれん、指揮は湯浅卓雄、オケは藝大フィルハーモニアです

 

          

 

チケットの入場整理番号は324番でしたが、1階15列24番というセンターブロック右通路側席が確保できました 会場は9割方埋まっているでしょうか。前回といい今回といい、かなり人気があります

1曲目はジャック・イベールの「フルート協奏曲」です イベール(1890-1962)はフランス生まれで、1911年にパリ音楽院に入学しています。この曲は1932~33年に作曲され、当時の名フルート奏者マルセル・モイーズに献呈されました

4年在学中の八木瑛子がブルーの衣装で登場します 彼女は第25回日本木管コンクールで第1位を受賞した実力者です

この曲は第1楽章「アレグロ」、第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「アレグロ・スケルツァンド」から成りますが、第1楽章冒頭からフランスの作曲家らしい軽妙洒脱なアレグロが疾走します 第2楽章は一転、抒情的で優雅な曲想です。どこかラヴェルを思い起こさせる雰囲気を持っています 第3楽章は再度、速いパッセージを超絶技巧で駆け抜けます 実に鮮やかな演奏でした

さて、この曲の最中、私の周囲で問題がありました 隣に20代半ばと思われる若い女性が座っていたのですが、演奏の最中、膝の上に乗せたスマホの光が漏れていたのです 別にメールや検索をしていた訳ではなさそうだったのですが、曲が終わっても拍手をしないのでオカシイと思ったら、おもむろに耳からイヤホンを外したのです。つまり、生の演奏を前にして、スマホでまったく別の音楽を聴いていたらしいのです 私は最近、大抵のことでは驚きませんが、これには心底驚きました とても常識をもった同じ人間とは思えません。「こいつ、何しにここに来たんだ」と怒りを覚えました。「お前なんか、コンクリート詰めにして東京湾に・・・」と罵倒するのをジッと我慢して、次の曲で同じことをやろうとしたらイヤホンを取り上げてやろうと思っていましたが、幸か不幸かスマホと共にバッグにしまって、ずっと「寝ていた」ので ほおってきました 結局この女は、コンサートに来て、スマホで別の曲を聴いて、ぐっすり寝て帰っていったわけで、もの凄く時間を無駄に過ごしています これからも一生そうして生きていくのでしょう。想像がつきます

 

          

 

オケが拡大して2曲目のエドワード・エルガー(1857-1934)の「ヴァイオリン協奏曲 ロ短調」の演奏に入ります 黒を基調としたシックなドレスの城戸かれんが舞台に登場します 現在4年に在学中ですが、第79回日本音楽コンクールで第2位に入賞するなど多くの受賞歴があります

この曲は第1楽章「アレグロ」、第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「アレグロ・モルト」から成ります。第1楽章は、オーケストラによる長い序奏のあと独奏ヴァイオリンが悠然と登場します 城戸さんが書いた曲目解説に「英国人ならではのノーブルさが音楽から香ってきます」とありますが、まさに「ノーブル」(気高さ)を感じる曲想が続きます 第2楽章のアンダンテにもその気高さが感じられます。第3楽章では、弦楽器群が、楽器をマンドリンのようにつま弾く奏法”ピッツィカート・トレモロ”(エルガーが考案したとのこと)によって独奏ヴァイオリンを支える音楽が聴けますが、ここは幻想的な雰囲気に満ちています 最後に、第1楽章冒頭のテーマが回帰されて大協奏曲の幕を閉じます

城戸かれんは楽譜を見ながらの演奏でしたが、50分にも及ぶ超大作を確かな技巧と並々ならぬ集中力で弾き切りました

 

ところで、7月7日の当ブログでご紹介した藝大オペラ「コシ・ファン・トゥッテ」のチラシが出来たので、ここに掲載します

 

          

          

 

  最後の、閑話休題  

 

昨夕、サントリーホールで読売日響第560回定期演奏会を聴きました プログラムは①ハイドン「交響曲第6番ニ長調”朝”」、②マーラー「交響曲第6番イ短調”悲劇的”」です 指揮は2017年度から読響の首席客員指揮者に内定しているドイツ生まれの俊英コルネリウス・マイスターです

 

          

 

読響は通常、左サイドにヴァイオリン・セクションを集めるオーソドックスな態勢を取っていますが、この日は左から第1ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、第2ヴァイオリン、その後ろにコントラバスという対向配置を採ります ドイツの指揮者はこの編成が多いように思います。コンマスは小森谷巧です

この日のプログラムは、マイスターのたっての希望で実現したそうです。約140年離れた時代に作曲された2つの交響曲を一晩で描き分けようとする試みです

1曲目はフランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732-1809)の「交響曲第6番ニ長調”朝”」です ハイドンは1761年からハンガリーの貴族パウル・アントン・エステルハージ侯爵に仕えて作曲活動に勤しんでいましたが、交響曲の作曲活動の初期に書いた第6番、第7番、第8番には、それぞれ「朝」「昼」「晩」という標題が付いています どうやらエステルハージ侯爵は3曲セットで作曲するように命じたようです

第6番は「朝」ですが、第1楽章を聴くと、何気に”朝ぼらけ”の雰囲気が伝わってきます 弦楽器に乗せてフルートが朝を告げているようです。このフルートが素晴らしい 第2楽章と第4楽章ではヴァイオリンとチェロの独奏が聴かれます。さながらダブル・コンチェルトのようです ハイドンは個々の作品に性格を与えながら、最終的に104曲の交響曲を作曲して、後世の人々から「交響曲の父」と呼ばれるようになったのですね

マイスターの指揮はしなやかです 彼は楽章が終わってもタクトを下ろさず、そのままの姿勢をキープします。そしてタイミングを見計らってタクトを下ろし 次の楽章に入ります。この人の特徴は 楽員の緊張感を解かないことかもしれません

 

          

 

休憩後はハイドンの約140年後の作品、グスタフ・マーラー(1860-1911)の「交響曲第6番イ短調”悲劇的”」です オケの規模が拡大し、フルオーケストラで対峙します

ところで、休憩時間中にプログラムの曲目解説を読んでいて「おやっ?」と思いました それは中間楽章(第2楽章と第3楽章)の演奏順の扱いです プログラムに書かれていたのは第2楽章「アンダンテ・モデラート」、第3楽章「スケルツォ」という順番でした これに対し、これまで私が聴いて来た生演奏やCDの多くは第2楽章「スケルツォ」、第3楽章「アンダンテ・モデラート」という順番でした この問題について、プログラムの解説では詳細に書かれていないので、ネットで調べてみたら、1963年に出版された国際マーラー協会による「全集版」では「スケルツォーアンダンテ」の順がマーラーの最終的な意志だったとされていたが、2003年に国際マーラー協会が発表したところによると、マーラー自身が「スケルツォーアンダンテ」の順で演奏したことがないとして、「アンダンテースケルツォ」の順番を最終的な解釈としていることが分かりました

マイスターのタクトにより第1楽章が開始されます 冒頭の行進曲風の第1主題は、まるで死への行進です マイスターの音楽作りを聴いていて感じたのは、クリアな見通しの良い音楽作りをする人だな、ということです 個々の楽器の音がはっきりと分別して聴こえ、しかもそれが見事なアンサンブルを構成していきます 要するに、音が団子状になって一度に襲ってこないということです

マイスターは、マーラーでも 楽章が終わっても 自身は姿勢を崩しません いつでも次の楽章に移る態勢にあります マーラーほどの大曲になると、大抵の指揮者は胸ポケットからハンカチを取り出して顔を拭いますが、マイスターはそういう素振りは一切見せません。常にオケに緊張感を持たせているように見えます

第2楽章のアンダンテは美しい楽章です。第3楽章は第1楽章の変形のような音楽で、スケルツォで悲劇を強調しているように思われます そして、最後の第4楽章は、悲劇の集大成です。言葉で言い表せば「破滅」とか「崩壊」というのが最も相応しいかもしれません とにかく救いようのない音楽です。誰が付けたか知りませんが「悲劇的」とは良く表現したものです

第4楽章が中盤にかかった頃、私は打楽器奏者の中の誰がハンマーを叩くのだろう?と興味深々で、予想を立てていました 向かって右サイドの動きの少ない打楽器奏者が最もそれらしいな と予想していたのですが、見事に外れ、ど真ん中にいた奏者が大きな小槌を持ち上げて「ドーン」と大きな音を出していました すぐ前に座っているトロンボーン奏者は、きっと床から数センチ浮き上がり、難聴になって労災申請するのだろうな、と余計な心配をしてしまいました

最後の音が鳴り終わっても、指揮者がタクトを下すまで誰も拍手をしません。これがコンサートの醍醐味です マイスターのタクトが下されると、会場のそこかしこからブラボーがかかり大きな拍手がステージを囲みました これがサントリーホールの良いところです

この演奏をもってコルネリウス・マイスターの読響・首席客員指揮者は「内定」から「決定」に変わったのではないかと確信します

 

          

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新日本フィル室内楽シリーズ~吉村知子プロデュース公演を聴く/映画「コップ・カー」を観る

2016年07月14日 08時17分03秒 | 日記

14日(木)。昨日午前、大塚のスマホ・ショップS=bankに行って、スマホのメルアドを変更してきました なぜ代えなければならなかったのか

そもそもの始まりは4月上旬のことでした。ケータイのメルアドに「ご婚約おめでとうございます。また共演する機会があれば、よろしくお願いします。Jより」というメールが届きました 私は今さら婚約した覚えがないので、「相手が違うので、本来の宛先に電話するなりして本来のメルアドを確認してほしい」旨の返信メールを送りました

すると「違った相手に届いたのなら滅多にないこと。何かの縁なので一度会って話がしたい」旨の返信がきました。そこで「会うつもりはないので、このメルアドを削除してほしい」と返すと、「私は20代の男性だが、マスコミ関係で働いている。テレビ界の裏話に通じているので友達になってくれれば裏話を教えてあげてもいい」と こちらの言い分をまったく無視した内容の返信がきました 「こいつは頭がおかしい」と思い、ほっておいたら、「メール見てくれましたか?」というメールが何通も届いたので、「あなたのメールは迷惑メールに登録した。今後一切メールは寄こさないでほしい」と返しました それでも何度かメールが来ましたが、それ以降は無視しました

しばらくして止んだので「やっと諦めたか、愚か者めが」と思っていたら、今度は6月に入って、Tと名乗る者から「〇〇の打ち合わせの日程は〇日で良かったですよね」という内容のメールが入りました 文章の書き方や絵文字の使い方が4月の時のバカ者とほとんど同じなのです。同一人物か、同じ自己チュー人種か、あるいは同じ業界の知り合いなのかも知れません。無視していると何度か「メール見てもらいましたか?」という内容のメールが来ましたが、今度は一切返信しませんでした

やっと静まったと思ったら、今度は11日のブログに書いたように、いろいろな金融機関を名乗る迷惑メールが5分おきに届くようになったのです 以上の3件は別々のように見えますが、私には、メールに返信しなかった腹いせに悪徳業者を通じて迷惑メールを送りつけてくるようになったとしか思えません

そこで、選択肢は2つです 一つは着信拒否の設定をすること、もう一つはメルアドを変えることです。ただ、もし着信拒否を設定しても、相手が別のアカウント名で送りつけてくることもあり得ることです。また、私のメルアドとよく似たメルアドを持っている人物が存在していることは間違いないので、そうであれば、また別の人物から宛名間違いメールが来ることが十分予想されます こうなったらイタチごっこなので、思い切ってメルアドを変え、今後一切愚か者どもを相手にするのは止めることにしたのです

これで、朝起きたら180件の迷惑メールが届いている悪夢から解放されます 取りあえず、緊急を要する主だった登録先にメルアド変更メールを送っておきました あとは、登録しているチケット・サービス関係の連絡先アドレスを変更すれば一段落です。これで清々しました。やれやれです

ということで、わが家に来てから655日目を迎え、都知事選の動向よりも「天皇陛下 生前退位の意向」のニュースに驚いて目を丸くしているモコタロです

 

          

            えっ まじすか? 生前退位は「皇室典範」に規定がないよね どうするの?

 

  閑話休題  

 

METライブビューイング事務局から「全10作制覇キャンペーン オリジナルオペラ観劇ノート」(A5版)が送付されてきました これはMETライブビューイング2015-16で上映された全10作のチケットの半券を送ると もれなくもらえる景品です

表紙は 拍子抜けするようなシンプルなデザインです

 

          

 

中面は、左サイドが「観劇ファッション」「幕間のお供」「お食事」「お土産」「今日のメモ」「観劇券を貼る」から構成されており、右サイドが「日付」「天気」「公演名」「指揮」「演出」「歌手」「劇場名・映画館名」「感想」「今日のブラボー点数」から構成されています 

 

          

 

併せてMETライブビューイングのアンコール上映のチラシが入っていました 8月6日から9月23日まで東銀座の東劇で全26演目が上映されます 

今回の”ウリ”は、ロベール・ルパージュ演出によるワーグナー「ニュルンベルクの指環・全4部作」です 序夜「ラインの黄金」=8月15日午前11時~、9月10日午前11時~、第一夜「ワルキューレ」=8月15日午後3時~、9月10日午後3時~、第二夜「ジークフリート」8月16日午前11時~、9月11日午前11時~、第3夜「神々の黄昏」=8月16日午後5時~、9月11日午後5時~となっています 全26演目の詳細はMETライブビューイングのホームページをご覧ください

 

          

 

          

 

  も一度、閑話休題  

 

池袋の新文芸坐で「コップ・カー」を観ました これはジョン・ワッツ監督による2015年、アメリカ映画です

 

          

 

家出中の少年2人が荒野で1台のパトカーを偶然見つける ”マリオカート”で覚えた運転知識で本物のパトカーを乗り回していたが、トランクの中に血だらけの男が縛られているのを発見する パトカーの持ち主は悪徳保安官だったのだ。保安官からパトカーを返せという無線が入る。トランクから救出された男は少年たちを脅し、保安官を誘き出してライフルで殺害しようと企む やがてパトカーを挟んで、保安官と監禁男との撃ち合いが始まる 少年たちの運命やいかに

現在の自動車は昔の車と違って、少しでも知識があれば、ある程度”自動的に”動いてくれるので、まったくあり得ない話ではないかも知れません それにしても”マリオカート”で覚えた知識しかないのに本物の自動車を運転してしまうのですから、たまったものではありません

結局のところ、この映画の原題「Their First Drive Could Be Their Last 」が主人公の少年たちの教訓になりました

 

          

 

  最後の、閑話休題  

 

昨夕、錦糸町のすみだトリフォニーホール(小ホール)で「新日本フィル室内楽シリーズ~吉村知子プロデュース公演」を聴きました  プログラムは①モーツアルト「アダージョ ハ長調K.580a」、②ヨハン・クリスチャン・バッハ「6つの五重奏曲」~第6番ニ長調、③ベートーヴェン「セレナーデ ニ長調」、④A.ブリス「オーボエ五重奏曲」です  演奏はフルート=野口みお、オーボエ=金子亜未、ヴァイオリン=吉村知子、松崎千鶴、ヴィオラ=濱本実加、チェロ=多田麗王です

 

          

 

開演に当たり、この日のコンサートのプロデューサーである第2ヴァイオリン首席・吉村知子さんによるプレトークがありました

「プロデューサーとしては最初に演奏曲目を決め、次に出演者を決めることを考えましたが、まさか自分がプレトークをやるとは考えもしませんでした 人前で話をするのが苦手なので。選曲としては、どうせ演奏するなら普段演奏しない曲を取り上げようと思って、40回目にして初めて昨年日本で開催されたダブルリード(オーボエやファゴット)の世界大会で、ヴァイオリニストとして参加し演奏したブリスの「オーボエ五重奏曲」を取り上げることにしました オーボエはもちろん、弦楽も滅茶苦茶難しい曲ですが、頑張ります

そして、モーツアルトとクリスチャン・バッハとベートーヴェンの曲を選んだことを説明し、出演者のプロフィールを簡単に紹介しました 「話すのが苦手」とおっしゃる割には、つっかえることもなく要領よく話されていたので感心しました ただ 10分で終わってしまったところは、トークの天才・篠原英和氏に遠く及びません。彼の場合、持ち時間の15分ジャストに終わります

1曲目はモーツアルト「アダージョ ハ長調K.580a」です 赤の衣装はフルートの野口みお、黄色の衣装はイングリッシュホルンの金子亜未、白と濃いピンクの衣装はヴァイオリンの松崎千鶴、そしてチェロの多田麗王がスタンバイします 野口、多田のベテラン・コンビと金子、松崎の若手コンビとの共演です

この曲は、メロディーがモーツアルト晩年の傑作「アヴェ・ヴェルム・コルプス」とほとんど同じです 天国的な曲です。それにしても金子亜未のオーボエはよく鳴ります 彼女の名前は知っていましたが、今年から新日本フィルの首席オーボエ奏者になったということは今回初めて知りました 東京交響楽団の首席・荒木奏美とともに注目すべき若手演奏家の入団です 松崎千鶴は私が応援している昨年入団の3人の女性弦楽奏者の一人です

2曲目はヨハン・クリスチャン・バッハの「6つの五重奏曲」から第6番ニ長調です クリスチャン・バッハはヨハン・セバスチャン・バッハの末子(第20子11男)です。モーツアルトは人生の3分の1を旅で過ごしましたが、彼がイギリスに旅行した際に交響曲の手ほどきをしたのがクリスチャン・バッハでした

ヴァイオリンの吉村知子とヴィオラの濱本美加が加わります。淡いパープルの衣装の濱本実加は今年入団のニューフェイスです この曲は、第1楽章「アレグロ」、第2楽章「アンダンティーノ」、第3楽章「アレグロ・アッサイ」から成りますが、第1楽章をはじめ ほとんどモーツアルトです それはそうですね 聴いていて感心したのは管楽器と弦楽器がすごく良くマッチしていたことです

休憩後の第1曲目はベートーヴェンの初期の作品「セレナーデ ニ長調 作品25」です 6つの楽章から成りますが、5つが長調で書かれており、全体的に明るい基調の曲です 演奏は野口みおのフルート、松崎千鶴のヴァイオリン、濱本実加のヴィオラです。若きベートーヴェンの作品ですが、すでにベートーヴェンらしい音楽も聴くことが出来ます 第1楽章は野口みおのフルート主導で演奏されますが、ユーモラスな曲想です 演奏で特に感心したのは、第4楽章「アンダンテ」の変奏曲を演奏した松崎千鶴と濱本実加です。二人とも、若き日のベートーヴェンの作品の素晴らしさを教えてくれました 最後の第6楽章では再び野口みおの美しいフルートが冴えわたりました

さて、最後の曲はイギリスの作曲家アーサー・ブリス(1891-1975)の「オーボエ五重奏曲」です この作品は1927年に、オーボエの名手レオン・グーセンスの演奏に刺激されて作曲されました 第1楽章「アッサイ・ソステヌート」、第2楽章「アンダンテ・コン・モト」、第3楽章「ヴィヴァーチェ」の3つの楽章から成ります 金子亜未、吉村知子、松崎千鶴、濱本実加、多田麗王による演奏です

漠然とした印象は、いかにもイギリスの作曲家らしい抒情的な雰囲気の曲だな、ということです ただ、きちんとしたメロディーがある曲なので、初めて聴いても 訳がわからんちん といったことはありません プレトークで吉村さんが言っていたように、確かにオーボエは演奏困難な超絶技巧に近い演奏を展開していました

大きな拍手を受けて、吉村さんが

「何とか出演者6人全員で演奏出来ないかと思って、アンコールに、グリーグの『過ぎし春』という曲を6人で演奏するように書いてみました 美しい響きが聴けると思います。お楽しみください

と言って6人全員で演奏しました 「書いてみました」ということは「編曲=吉村知子」ということだよな、と思いながら聴きましたが、素晴らしいアレンジで、管楽器と弦楽器とが見事なアンサンブルを奏でていました

吉村知子という人は、これまであまりよく知らなかったのですが、演奏だけでなくトークもきちんとしているし、若手の有望株を登用することにも配慮があるし、さすがは首席を務めているだけのことはあるな、と感心しました

 

          

 

さて、最後に言いたいのは、この日のコンサートは「素晴らしいプログラム」「素晴らしい出演者」「素晴らしい演奏」にも関わらず、会場の半分も埋まっていなかったという事実です 本当にもったいないと思います

この室内楽シリーズは「楽員プロデューサー編」と銘打って、一人のプロデューサーを決めて、その人にプログラミング、人選を任せてコンサートを作り上げている訳ですが、私から言わせてもらえれば「プロデューサーである演奏者に”丸投げ”して、あとはどれだけお客さんが入るか蓋を開けてみみなけりゃ分からない」という”経営的感覚無視”のやり方ではないかと思います 「演奏する人が決めるのだから文句はないだろう」と思うかも知れませんが、今回のようにバランスの取れたプログラミングの場合は良いとしても、内容によっては独りよがりの聴衆無視公演かもしれないし、演奏する人たちだって一人でも多くの聴衆が聴いてくれた方が演奏のし甲斐があるに決まっています

このシリーズに より多くの聴衆が聴きにくるにはどうしたらよいか、今回の演奏会にヒントがあると思ったので書いてみます

プロデューサーを決めてプログラミングをするのも良いけれど、その際には①弦楽だけ、管楽だけというよりは、今回の公演のように管と弦が混じった曲目を少なくとも1曲は入れること ②演奏曲目に誰もが知っているような有名な曲を1つでも良いから入れること ③演奏の質を高めるため、必ず首席クラスの演奏者を2人以上そろえること ④プレトークはこの企画の”ウリ”なので、充実を図ること(篠原英和氏が担当していた頃は聴衆が多かったと思う。篠原氏の復活を望む)・・・ということを条件に付けたらどうでしょうか 要はシリーズ4回のラインアップを見たときに「是非4回連続券を買いたい」と思わせることができるかどうか、だと思います

以上によって一人でも多くの人が聴きに来てくれるようになれば経営的にも良いことだし、演奏する側もやる気になると思われます 新日本フィル事務局の方々はどのようにお考えでしょうか

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タランティーノ監督「ヘイトフル・エイト」を観る/中山七里著「ヒポクラテスの誓い」を読む

2016年07月13日 07時40分24秒 | 日記

13日(水)。わが家に来てから654日目を迎え、ソファーから下に飛び降りようかどうしようか悩んでいるモコタロです

 

          

            飛び降りるか      飛び降りないか      それが問題だ

            to be(とべ)  or  not  to be(とべ) that  is  the  question

 

  閑話休題  

          

昨日、夕食に「鶏ももキャベツの味噌マヨガーリック」、「生野菜と鮭のサラダ」、「冷奴」を作りました 「鶏もも~」は前日に続いて初挑戦レシピです

 

          

 

  も一度、閑話休題  

 

池袋の新文芸坐で映画「ヘイトフル・エイト」を観ました これは2015年、タランティーノ監督による168分の長編映画です

 

          

 

全員が嘘をついている訳アリの男7人+女1人が雪嵐のためロッジに閉じこめられる そこで殺人事件が起こり、いったい誰が誰の味方か分からない状況に陥る しかし、次第に意外な真相が明らかになり、そのうちの何人かがグルであることが分かる。さて最後まで生き残るのは誰か???

この映画はミステリーでいう「密室殺人事件」を題材にしています 主人公である黒人マーキス・ウォーレン(サミュエル・L・ジャクソン)の推理で 誰がコーヒーに毒を入れたのか謎解きが始まりますが、その推理はなるほどと思わされます ただ、その後の拳銃での殺し合いのシーンは頭や顔がすっ飛んだりして、気持ちの良いものではありません 

なお、この映画の音楽はエン二オ・モリコーネが担当し、アカデミー賞作曲賞を受賞しています

 

          

 

  最後の、閑話休題  

 

中山七里著「ヒポクラテスの誓い」(祥伝社文庫)を読み終りました つい先日、このブログで「追憶の夜想曲(ノクターン)」をご紹介したばかりですね。中山七里は2009年「さよならドビュッシー」で「第8回 このミステリーがすごい!」大賞を受賞し作家デビューしました

 

          

 

研修医・栂野真琴は浦和医大・法医学教室に”試用期間”として入った。彼女を迎えたのは傲岸不遜な法医学の権威・光崎藤次郎教授と”死体好き”の外国人准教授・キャシーだった 光崎教授は若手刑事・小手川和也に「既往症のある遺体が出たら必ず教えろ」と伝えていたが、それに応じて凍死や事故死など、一見 事件性のなさそうな遺体が運ばれてくる。教授はなぜ既往症のある遺体を解剖しようとするのか? 解剖によって何が分かると言うのか 最後に意外な真実がか語られる

この本は全5話から成る一話完結の短編連作です タイトルの「ヒポクラテスの誓い」というのは、真琴が初めて法医学教室を訪れた日に、キャシー准教授から読まされた文章です

「養生治療を施すにあたっては、能力と判断の及ぶ限り、患者の利益になることを考え、危害を加えたり不正を行う目的で治療することはいたしません。また、どの家に入っていくにせよ、すべては患者の利益になることを考え、どんな意図的不正も害悪も加えません。そしてこの誓いを守り続ける限り、私は人生と医術を享受できますが、万が一、この誓いを破る時、私はその反対の運命を賜るでしょう」

医の極意とは患者第一ということですね 一連の事件が解決した後、真琴は次のように語ります

「不思議な話だった。生きている患者を担当していた時には見えなかったものが、死者と語らうようになってからはぼんやりとだが見え始めてきた」

それは光崎教授の「生きている者はウソをつくが、死者はウソをつかない」という言葉に通じるところがあります

 

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新田ユリ指揮プロースト交響楽団コンサートのチケットを買う/新保裕一著「ローカル線で行こう!」を読む

2016年07月12日 07時48分43秒 | 日記

12日(火)。わが家に来てから653日目を迎え、昨日の夕刊を見て「いよいよ3分の2を押さえたか!」と感嘆するモコタロです

 

          

           万が一 国民投票になっても 英国の二の舞は避けてよネ!

          

  閑話休題  

 

昨日、夕食に「豚バラ、甘酢ネギ胡麻だれ」、「生野菜とタコのサラダ」、「インゲンのお浸し」、「冷奴」を作りました 「豚バラ~」は知る人ぞ知る cookpad の殿堂入りレシピです 「冷奴」はミョウガ、オクラ、シソの葉を乗せ、山芋をすりおろしてあります。これは自己流です

 

          

 

  も一度、閑話休題  

 

プロースト交響楽団第24回定期演奏会のチケットを買いました 11月13日(日)午後2時からミューザ川崎シンフォニーホールです。プログラムは①シベリウス「交響詩”フィンランディア”」、②同・レミンカイネン組曲~トゥオネラの白鳥、レミンカイネンの帰郷、③ショスタコーヴィチ「交響曲第5番ニ短調」です 指揮は日本シベリウス協会会長でもある新田ユリです

プロースト交響楽団は2003年4月設立のアマチュア・オーケストラで、首都圏の大学オーケストラや、第18回全日本大学オーケストラ大会合同演奏出演者が中心となって結成されました 『プロースト』というのはドイツ語で『乾杯』のことです 年2回定期演奏会を開いているそうです

10日に新交響楽団のコンサートを聴きにに行ったときにチラシが入っていたので、興味を持ちました 側聞によると演奏の実力はアマ・オケの中では新交響楽団といい勝負とのことで、今から聴くのが楽しみです

 

          

 

  最後の、閑話休題  

 

新保裕一著「ローカル線で行こう!」(講談社文庫)を読み終りました 新保裕一は1961年東京都生まれ。アニメーションディレクターを経て、91年「連鎖」で第37回江戸川乱歩賞を受賞し作家デビューしました。このブログでは「デパートへ行こう!」をご紹介しました

 

          

 

舞台は宮城県にある第三セクターの赤字ローカル線もりはら鉄道(もり鉄)、全17駅のうち14駅が無人駅という総延長42キロの鉄道である 2億円を超える赤字を解消するため、もり鉄の会長であり森中町長でもある実業家の五木田陽造は思い切った策に出る 経営経験ゼロの31歳独身、元東北新幹線のカリスマ・アテンダント、地元出身の篠宮亜佐美を社長に招聘したのだ 「こんな素人女に何が出来るか」という周囲の誹謗中傷にもめげず、篠宮は県庁から副社長として送り込まれた鵜沢哲夫を味方に引き入れ、「金がないなら知恵を出せ」のスタイルで次々と地元住民を巻き込んだイベントを仕掛けていき、もり鉄ファンを増やしていく しかし、すべてが順調に行くわけではなく、ボヤ騒ぎが起きたり、線路が土砂崩れでふさがれたりと、思わぬ妨害工作が待ち受けている 篠宮と鵜沢は社員を巻き込んで妨害を乗り越えて赤字解消に向けて突き進む

日本のどこかにありそうな話ですが、この物語は「もり鉄の再生」を描いていながら、実は「地域の再生」を主張しているところがミソです 社員総出で地元住民を巻き込んで展開していくアイディア企画は、実に爽快です シャッター通り商店街の再生に役立つ企画もありそうです 

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