人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

カンブルラン+読売日響でオリヴィエ・メシアン:歌劇「アッシジの聖フランチェスコ」全曲日本初演を聴く~日本のクラシック音楽演奏史に残る名演!

2017年11月20日 09時46分59秒 | 日記

20日(月).昨夜からのパソコンのプログラム更新手続きが長引いて,いつもの時間にアップできませんでした ということで,わが家に来てから今日で1146日目を迎え,高校の日本史,世界史で学ぶ用語を現在の半分弱の1600語程度に減らすべきだとする提言案を 大学の教員団体がまとめた というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      坂本龍馬を削るんなら 代わりに武田鉄矢をいれてくんね? 事務所が違うって?

 

                                           

 

昨日,サントリーホールで読売日響の第572回定期演奏会を聴きました   プログラムはメシアンの歌劇「アッシジの聖フランチェスコ」(演奏会形式)です   キャストは,聖フランチェスコ=ヴァンサン・ル・テクシエ,重い皮膚業病を患う人=ペーター・ブロンダー,天使=エメーケ・バラ―ト,兄弟レオーネ=フィリップ・アディス,兄弟マッセオ=エド・ライオン,兄弟エリア=ノエル・ブリアン,兄弟ベルナルド=妻屋秀和,兄弟シルヴェストロ=ジョン・ハオ,兄弟ルフィーノ=畠山茂,合唱=新国立劇場合唱団,管弦楽=読売日本交響楽団,指揮=シルヴァン・カンブルランです

 

     

 

この作品は,フランシスコ会創設者として知られるアッシジの聖フランチェスコ(1182-1226)を題材として1974年から83年まで8年以上の年月をかけ,台本・作詞も手掛けて完成させたオリヴィエ・メシアン(1908-92)唯一のオペラです   1983年11月28日にパリ・オペラ座で小澤征爾の指揮により世界初演されました

ステージに上がる楽器は,変則16型の弦楽器,変則7管編成の木管楽器,多数の金管楽器,ジオフォン(大地の音),エリオフォン(風の音)を含めた40近い打楽器,5台の鍵盤打楽器,3台のオンド・マルトノ,7人の独唱歌手,10パート(約120人)の合唱で,総勢約240人の大編成です

全3幕(8景)構成ですが,第1幕=約75分,第2幕=約120分,第3幕=約65分で 演奏時間だけで4時間半近くかかり,2回の休憩を含めると5時間半にも及びます 幸か不幸かワーグナーの長大な楽劇に慣らされてきた私にとっては別に驚くべきことではありません

 

     

 

全3幕のあらすじは以下の通りです

第1幕・第1景「十字架」=フランチェスコと兄弟のレオーネの対話で,フランチェスコはキリスト教徒にとっての真の喜びと聖性の何たるかを語る

第1幕・第2景「賛歌」=フランチェスコと3人の兄弟との会話で,聖性を熱望し,重い皮膚病患者に会わせて欲しい,そしてその人を愛することが出来るようにして欲しいと神に祈る

第1幕・第3景「重い皮膚病患者への接吻」=フランチェスコが患者に口づけすると,二重の奇蹟が起こる.患者は癒やされ,フランチェスコは聖フランチェスコになる

第2幕・第4景「旅する天使」=天使が不思議な美しい蝶のように親しげに人間たちの間に現れるが,人間たちはそれに気付かない

第2幕・第5景「音楽を奏でる天使」=天使が聖フランチェスコのもとに現れ,彼は天使に気付く.天使の奏でるヴィオルの音楽を聴いて,聖フランチェスコはあまりの美しさに気を失う

第3幕・第7景「鳥たちへの説教」=聖フランチェスコは,十字架から放たれる光線により,両手と両足と右の脇腹にキリストと同じ5つの傷を負い,聖痕による神の承認を受ける

第3幕・第8景「死と新生」=天使が再び現れることにより,天国が聖フランチェスコに約束され,聖フランチェスコは死ぬ.そして,合唱団が聖フランチェスコの復活の希望を歌う

 

     

 

新年度になって2階LB席で聴くのは今回が初めてです.会場は9割近く入っているでしょうか.よく入りました

まずP席に新国立劇場合唱団が配置に着き,オケがスタンバイします.編成はいつもの通りヴァイオリン・セクションを左サイドにまとめる並びです   その後方に木管楽器,金管楽器,最後方に打楽器群がスタンバイしますが,楽器の絶対数が多いので壮観です   オンドマルトノが2階中央正面に1台,2階後方左右の客席脇に各1台,計3台スタンバイしています  コンマスは長原幸太です

「アッシジの聖フランチェスコ」はオペラとはいえ,序曲も間奏曲もなく,歌唱は朗唱に近く,アリアやデュエットもありません ソリストは指揮台の左右に置かれた譜面台に,出番があると入れ替わり立ち代わり出演する形を取ります

 

     

 

カンブルランのタクトで第1幕第1景「十字架」が開始されます   プログラム・ノートには「ひばりの声を模した鍵盤打楽器の乾いた音色で始まる」と書かれていますが,シロフォン,マリンバ等でせわしく鳴らされる音は とてもひばりの声には聴こえません  でも メシアンにはそのように聞こえるのでしょう.この音楽は後で何度も繰り返し登場します

歌手陣は実力者揃いで,さすがはカンブルランが声をかけた歌手陣だと思わせます   ほぼ出ずっぱりの聖フランチェスコを歌ったヴァンサン・ル・テクシェは1957年フランス生まれで,歌唱力抜群でスタミナがあります   天使を歌ったエメーケ・バラ―トはハンガリー生まれで,天使に相応しい透明感のある美しいソプラノです   重い皮膚病を患う人を歌ったペーター・ブロンダーはイギリス生まれで,声に力があり説得力のある歌い手です   兄弟レオーネを歌ったフィリップ・アディスはカナダ生まれで,よく通るバリトンです   兄弟ベルナルドを歌った妻屋秀和は新国立オペラの常連ですが,ここでも安定感のあるバスを披露しました

金管楽器や打楽器による「鳥の声」の模写の音楽が多い中で,初めて聴いたこのオペラの最大の聴きどころだと思ったのは,第2幕第5景「音楽を奏でる天使」におけるオンド・マルトノの弱音による「天使のヴィオールの主題」の演奏です   オペラ全体の中のオアシスのように感じる本当に美しい音楽です

合唱に新国立劇場合唱団を起用したのは正解です   世界に通用する実力者集団といっても過言ではないでしょう.今回の合唱も迫力に満ちていました

さて,今回の最大の立役者は言うまでもなく,240名の演奏者を統率し 長大かつ複雑な歌劇を4時間半にわたり振り続け,名演を繰り広げた指揮者カンブルランです   「アッシジ~」はこれまで世界で一番多く指揮してきた というのは決して嘘ではないことを証明しました   1場ごとに分厚いスコア・ブックが用意され,合計8冊のスコア・ブックが譜面台にのりました

終演後の拍手はもちろんのこと,これほど多くのブラボーは本当に久しぶりに聞いた,と思うほど会場のあちこちから熱狂的なブラボーがかかり,カーテンコールが繰り返されました  この日の公演は,間違いなく日本のクラシック音楽演奏史に残る名演だと言えるでしょう この日,会場にいた千数百名の聴衆は,いつの日かこの日を振り返って「あの時,歴史に立ち会ったんだな」と思い出すことでしょう

それにつけても,今から34年前に48歳でこの長大且つ複雑怪奇な大曲を初演した小澤征爾という指揮者は,なんだかんだ言っても大したものだったんだな,と思います

 

     

        サントリーホール前のカラヤン広場はクリスマス・モードです

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第8回音楽大学オーケストラ・フェスティバルで東京藝大のストラヴィンスキー「ペトルーシュカ」,桐朋学園大のプロコフィエフ「ロミオとジュリエット」を聴く/N響から会員特典CD,カレンダー届く

2017年11月19日 08時04分46秒 | 日記

19日(日).わが家に来てから今日で1145日目を迎え,中国の習近平国家主席の特使として訪朝している中国共産党の宋中央対外連絡部長が18日,朝鮮労働党で国際部門を統括する李副委員長と会談した というニュースを見て 二人の主張を代弁するモコタロです

 

     

                    宋「核ミサイル放棄してくんね?」 李「それじゃ iPhoneX 100個と交換でどう?」 

 

                                             

 

N響から会員特典CDと来年のカレンダーが届きました   カレンダーは楽器シリーズ路線みたいです

 

     

 

     

 

                                           

 

昨日,池袋の東京芸術劇場コンサートホールで「第8回音楽大学オーケストラ・フェスティバル2017」参加公演のうち東京藝大と桐朋学園大の2校の演奏を聴きました   東京藝大はストラヴィンスキーのバレエ音楽「ペトルーシュカ」で,指揮はラースロー・ティハ二,桐朋学園大はプロコフィエフのバレエ音楽「ロミオとジュリエット」で,指揮は中田延亮です

 

     

 

このフェスティバルは毎年 日程が空いている限り聴くようにしていますが,今回は4公演のうち第1日目の昨日の公演しか聴けません   東京藝大と桐朋学園大の組み合わせとあってか,会場はほぼ満席に近い状態です   もちろん出場する学生の家族・友人・その他関係者などが多く来場していることは想像できますが,それにしてもよく入りました   自席は1階P列11番,左ブロック右から2つ目です

東京藝大の演奏に先立って,共演校からのエールを込めたファンファーレが演奏されます   桐朋学園大の中村匡寿君作曲によるファンファーレが同大オケの金管と小太鼓・シンバルにより華やかに演奏されました

藝大の学生たちが入場し配置に着きます.東京藝大シンフォニーオーケストラの編成はヴァイオリンを左側にまとめ,右側にチェロ,ヴィオラ,コントラバスを置く並びです   指揮者の前にはグランド・ピアノが置かれています.名簿によるとコンミスは徳田真侑さん.オケは総勢84名で,相変わらず女子学生が多い(特に弦楽器)ことに変わりはありませんが,前回見た時よりも男子学生が増えているように思います

よく知られているように,ストラヴィンスキーはディアギレフの主宰するロシア・バレエ団(バレエ・リュス)のために3つのバレエ音楽を作曲しました   作曲順に「火の鳥」(初演1910年),「ペトルーシュカ」(同1911年),「春の祭典」(同1913年)です   「ペトルーシュカ」はサンクトペテルブルクの謝肉祭の市場の人形劇を題材にした作品です.この曲の特徴は,ピアノが重要な役割を果たすことで,さながら「ピアノ協奏曲」のような形態をとっていることです

この曲は第1場「謝肉祭の市場」,第2場「ペトルーシュカの部屋」,第3場「ムーア人の部屋」,第4場「謝肉祭の市場(夕方)それからペトルーシュカの死」の4場から成ります

ハンガリーのブタペスト生まれ,1979年からリスト音楽院の教授を務めるラースロー・ティハ二が指揮台に上がり,第1場「謝肉祭の市場」の演奏に入ります   冒頭から管弦楽による色彩感溢れる音楽が展開します   フルート,ファゴット,トランペット,そしてティンパニの好演が目立ちます   ピアノの演奏もメリハリが効いていて素晴らしい   弦楽器は柔軟性に富みストラヴィンスキーの変拍子をモノともしません.さすがは藝大のオケです

 

     

 

プログラム後半は桐朋学園オーケストラによるプロコフィエフ:バレエ音楽「ロミオとジュリエット」(抜粋)です   演奏に先立って,東京藝大の石川健人君作曲によるファンファーレが華々しく演奏されました

桐朋学園大の学生たちが配置に着きます.オケは藝大と同じ並びです   コンマスは女子学生ですが名前が分かりません.東京藝大よりも多い総勢95名のメンバーは,東京藝大と比べ圧倒的に女子学生が多く,特に弦楽器などは男子学生は数えるほどしかいません.これが現在の私立音楽大学の縮図でしょうか

この日演奏するのはプロコフィエフ:バレエ音楽「ロミオとジュリエット」の第1組曲と第2組曲から8曲を抜粋したものです   演奏順に①第2組曲第1曲「モンテギュー家とキャビュレット家」,②第2組曲第2曲「少女ジュリエット」,③第1組曲第3曲「マドリガル」,④第1組曲第4曲「メヌエット」,⑤第1組曲第6曲「ロミオとジュリエット」,⑥第1組曲第7曲「タイボルトの死」,⑦第1組曲第5曲「別れの前のロミオとジュリエット」,⑧第2組曲第7曲「ジュリエットの墓の前のロミオ」です

京都生まれ,筑波大学医学専門学群在学中に桐朋学園ソリストディプロマコースに入学しコントラバスを専攻する一方指揮を学んだという変わった経歴の持ち主,中田延亮(のぶあき)が指揮台に上がります

中田氏のタクトで1曲目の「モンタギュー家とキャビレット家」が開始されます   この曲は騎士と貴婦人を表す荘重な音楽で,この曲の一番有名な音楽です   弦楽器がメイン・メロディーを奏で,管楽器がそれを支えます.この曲を聴いて,指揮者・中田氏の並々ならぬ気迫を感じました   2曲目の「少女ジュリエット」ではフルートとサクソフォンが素晴らしいパフォーマンスを見せ,チェロのソロが聴かせてくれました   5曲目の「ロミオとジュリエット」ではコンミスのソロが冴え,6曲目の「タイボルトの死」ではオーケストラ挙げての迫力ある演奏に圧倒されました   この後,チューニングを行い,7曲目の「別れのロミオとジュリエット」に入りました   ここではヴィオラのソロが素晴らしい演奏を展開しました   そして最後の「ジュリエットの墓の前のロミオ」の演奏が静かに閉じられ,しばしの”しじま”の後,会場いっぱいの拍手とブラボーに包まれました   中田氏はセクションごとに演奏者を立たせ聴衆にアピールしていましたが,若き日のコバケン(小林研一郎氏)もこうだったのではないか,と思わるパフォーマンスでした(コバケンは藝大出身ですが)

全体を通じて,管楽器ではホルンがとても素晴らしい演奏を展開したのをはじめ,個々の楽器が並々ならぬ好演を見せ,弦楽器は厚みのある演奏を展開していました   彼らの力を最大限引き出していたのは指揮者・中田延亮氏です.今後の活躍が期待されます

この日のオケを聴いて思ったのは,「これが学生オーケストラの演奏だろうか? ほとんどプロの水準に達しているのではないか」ということです   とくに桐朋学園オーケストラについては つくづくそう思いました

学生オーケストラの演奏を聴いていつも思うのは,1年後,あるいは2年,3年後に彼らはどこでどうしているだろうか,ということです   新聞報道では,来春は空前の就職状況だと喧伝されていますが,果たして音楽大学出身者の就職はどうなのだろうか?  やりたい仕事に就ける若者が果たして何割くらいいるのだろうか? 子供の才能を信じて幼い頃から音楽教室に通わせ,音楽大学に合格したのもつかの間,授業と並行して個人レッスンも受けさせ,卒業したら大学院へ,あるいは海外に留学させ・・・と,一人の子供にいくら投資したら親として報われるのだろうか? そうした親の苦労を子供たちどう考えているのだろうか?・・・他人事ながらそんなことを考えてしまいます

私は「教育は子供たちに対する最大の投資だ」と考えています   もちろん,投資の成果を出すのは子供たち自身だということは言うまでもありません

 

     

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ソヒエフ+シーロヴァ+キマチ+N響でプロコフィエフ「オラトリオ版『イワン雷帝』」を聴く~語りの片岡愛之助にブラボー!

2017年11月18日 08時07分04秒 | 日記

18日(土).わが家に来てから今日で1144日目を迎え,経団連等の経済3団体が17日,安倍晋三首相から要請を受けていた約3千億円の拠出を受け入れる方針を表明した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

         自民党筆頭副幹事長の小泉進次郎クンは「おれ聞いてねーよ」と言ってるけど

 

                                           

 

昨日,夕食に「スタミナ丼」と「生野菜とワカメと生ハムのサラダ」を作りました   「スタ丼」は息子のリクエストです

 

     

 

                                           

 

昨夕,NHKホールでNHK交響楽団定期演奏会Cプログラムを聴きました   プログラムはプロコフィエフ/スタセヴィチ編「オラトリオ版 イワン雷帝」です   出演は,メゾ・ソプラノ=スヴェトラーナ・シーロヴァ,バリトン=アンドレイ・キマチ,合唱=東京混声合唱団,児童合唱=東京少年少女合唱隊,語り=歌舞伎役者・片岡愛之助,指揮=トゥガン・ソヒエフです

 

     

 

「イワン雷帝」はセルゲイ・エイゼンシテイン(1898-1948)が1944年から1946年にかけて制作したソ連映画で,音楽を担当したのがセルゲイ・プロコフィエフ(1891-1953)です   これは「イワン雷帝」ことイヴァン4世(最初のロシア皇帝)の生涯を描いた作品で,全3部構成で制作される予定でしたが,第1部は第1回スターリン賞を受賞するなど評価されたものの,第2部はスターリンを暗に批判した内容だったため上映禁止となり,第3部は完成されませんでした

映画の内容は

第1部=16世紀半ば,帝位に就いたイワンはロシアの強力な統一国家にすべく邁進するが,それを快く思わない伯母のエフロシニアは,彼の愛する王妃アナスタシアを毒殺してしまう   悲嘆にくれたイワンは退位して田舎に引きこもるが,民衆の熱い要請を受けて,再び王位に就く

第2部=民衆の熱い要請を受けて再度王位に就いたイワンだったが,宮廷内は依然としてエフロシニアを中心とする反イワン派の抵抗を受けていた   イワンはこの状況を打開すべく大粛清を決行する

というものです  

1956年にフルシチョフが行ったスターリン批判が大きな転機となり,プロコフィエフ没後の1961年,指揮者で作曲家のアブラム・スタセヴィチが 合唱,語り手,独唱,オーケストラのためのオラトリオとして編曲したのがこの「イワン雷帝」です  基本的には映画の第1部と第2部の内容がほぼ時系列で展開しますが,フィナーレは第1部の結末で閉じられています

ところで,エイゼンシテインは1920年代からジャポニズムに傾倒していました   エイゼンシテインは,2代目市川左團次率いる一座による歌舞伎初の海外公演が1928(昭和3)年8月にモスクワとレニングラードで実施された際に「仮名手本忠臣蔵」等を観て,花道の「見得」に大いに感銘を受け,第1部ではクローズアップ・ショットで主人公に見得を切らせるという歌舞伎様式の演出をしているとのことです   その関係もあって,この日の公演は歌舞伎俳優の片岡愛之助氏が「語り」を担当しています

 

     

 

最初にステージ奥に東京混声合唱団100数名が,その手前に東京少年少女合唱隊の40名が配置に着き,コンマスの篠崎史紀氏以下オケのメンバーが入場し配置に着きます   オケはヴァイオリン・セクションを左サイドに固める いつものN響の配置です   そして,メゾ・ソプラノのスヴェトラーナ・シーロヴァとバリトンのアンドレイ・キマチがチェロの後方に,小型ワイヤレス・マイクを付けた片岡愛之助氏が第1ヴァイオリンの手前にスタンバイします

この曲は全20曲から成りますが,曲の合間 あるいは曲に被せながら片岡氏の語りが入り,演奏が展開します   ソロと合唱の部分では舞台左右に字幕スーパーが出ます.事前のアナウンスによると途中休憩がありません(約1時間25分)

ソヒエフの指揮で「序曲」の勇壮な音楽(イワンの主題)が開始されます   実は,この曲は初めて聴く長時間のオラトリオなので途中で退屈するのではないかと”警戒”していました   が,元が映画のために書かれた音楽だという親しみやすさと,片岡愛之助氏の 時にストーリーを語り,時にイワン雷帝に成り切った雄弁な語りによって,その心配はすっかり払拭されました

合唱団の力強いコーラスには圧倒され,オケの柔軟さにはさすがはN響と思いました   メゾ・ソプラノのスヴェトラーナ・シーロヴァは恵まれた身体から,ロシアにどっしり根を張った凄みのある歌声を聴かせてくれました   たった1曲(第18曲=フョードル・バスマーノフと親衛隊の歌)しか出番がなかったバリトンのアンドレイ・キマチは,イワンの腹心バスマーノフの歌を力強く歌い上げました

今回の公演は予想以上の好演で,作品自体の魅力と片岡愛之助氏の雄弁な語りとが相まって熱狂のうちにフィナーレを迎えました  今回の演奏を聴いて,エイゼンシテイン監督による「イワン雷帝」を是非観てみたいと思いました

 

     

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新国立オペラでヴェルディ「椿姫」を観る~イリーナ・ルングはトラヴィアータその人か!? / METライブビューイング「ノルマ」の座席指定を取る

2017年11月17日 08時11分34秒 | 日記

17日(金).わが家に来てから今日で1143日目を迎え,大相撲の横綱日馬富士の暴行問題で,ビール瓶などで殴打され,頭部にけがをした平幕貴ノ岩が 10月下旬に暴行を受けた当初,師匠の貴乃花親方に対し「転んだ」と報告していたことが分かった というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      日馬富士 対 貴ノ岩  殴り倒しで日馬富士の勝ち 行司差し違えで 貴ノ岩の不戦勝 

 

                                           

 

昨日,夕食に「牛肉と玉ねぎの甘辛炒め」と「生野菜とワカメのサラダ」を作りました   「牛肉と~」は初挑戦ですが,美味しく出来ました

 

     

 

                                           

 

いよいよ待ちに待った「METライブビューイング2017-18」が18日(土)から始まります   昨日,新宿ピカデリーで第1作:ベッリーニ「ノルマ」の座席指定を取ってきました   21日(火)午後10時からの部で,いつものように左ブロック後方の席です.早く観たいです

 

     

 

                                           

 

昨夕,初台の新国立劇場「オペラパレス」でヴェルディのオペラ「椿姫(ラ・トラヴィアータ)」を観ました   新国立劇場の玄関では早くもクリスマス・ツリーのお出迎えです

 

     

 

初日公演のキャストは,ヴィオレッタ=イリーナ・ルング,アルフレード=アントニオ・ポーリ,ジェルモン=ジョバンニ・メオーニ(レヴェンテ・モルナールの代演),フローラ=小林由佳,ガストン子爵=小原啓桜,ドゥフォール男爵=須藤慎吾ほか,合唱=新国立劇場合唱団,管弦楽=東京フィル,指揮=リッカルド・フリッツァ,演出=ヴァンサン・ブサールです

 

     

 

アレクサンドル・デュマ・フィス原作による「ラ・トラヴィアータ」のあらすじは次の通り

「19世紀半ばのパリ.売れっ子の高級娼婦ヴィオレッタは,プロヴァンス出身の富豪の息子アルフレードからの求愛にためらいながらも一途な愛に心を開く   二人はパリ郊外で一緒に暮らすが,ある日アルフレードの父ジェルモンがヴィオレッタを訪れ,自分の娘の縁談のためにアルフレードと別れて欲しいと頼む   ヴィオレッタは涙をのんで身を引くが,これを裏切りと思ったアルフレードは夜会で彼女を罵倒する   しかし,やがてそれが誤解であることが分かるが,時すでに遅く,結核のため病床に伏せるヴィオレッタは愛するアルフレードに見守られながら息絶える

このオペラのタイトル「椿姫(ラ・トラヴィアータ)」ですが,アレクサンドラ・デュマ・フィスの原作が「椿姫」だったのを,ヴェルディが「ラ・トラヴィアータ(道を踏み外した女)」に変更したものです

 

     

 

私が新国立オペラで「椿姫」を観るのは2002年,2004年,2008年,2011年,2015年に次いで今回が6度目,ヴァンサン・ブサールの演出では2度目です   ブサールの舞台演出は,床と左サイドの壁が鏡張りになっていて,舞台の一部が三角形にせり出しています.なぜそうなのかは最後の最後に明らかになります

指揮者リッカルド・フリッツァがオーケストラピットに入り,第1幕 ヴィオレッタの運命を暗示するかのような儚い前奏曲が奏でられます   次いで導入曲に入り,ヴィオレッタ,アルフレード,そして合唱により あまりにも有名な「乾杯の歌」が華やかに歌われます   そして,ヴィオレッタが一人になった時,超絶技巧アリア「ああそはかの人か~花から花へ」が歌われますが,ロシア出身のイリーナ・ルングのコロラチューラ・ソプラノの何と素晴らしいことか   恋の予感にときめきながら,次の瞬間には自分の立場を考え自嘲的になるヴィオレッタの心情を切々と歌い上げます

イリーナ・ルングはスカラ座アカデミー在籍中にリッカルド・ムーティによりスカラ座2003~04シーズン開幕「モイーズとファラオン」アナイ役に抜擢され,その後同劇場で「愛の妙薬」アディ―ナなどに出演   「椿姫」のヴィオレッタはスカラ座,ウィーン国立歌劇場,ローマ歌劇場,マドリード王立歌劇場などで歌っています   彼女は新国立オペラの情報誌「ジ・アトレ」のインタビューで「ヴィオレッタは私自身です」と語っていますが,その言葉通りヴィオレッタに成り切って歌い演じています

第3幕で歌われる「さようなら,過ぎた日よ」は涙なくして聴けませんが,この中に「トラヴィアータ(道を踏み外した女)」という言葉が出てきます

ジェルモンを歌ったジョヴァンニ・メオーニは,ローマ・サンタ・チェチーリア音楽院で学び 世界の歌劇場で歌っているバリトンですが,第2幕で歌われるアリア「プロヴァンスの海と陸」では,自分が悪役になってでも息子や娘の幸福を第一に考えて行動しなければならないという父親の辛い立場を切々と歌い,その思いが聴く側に伝わってきました

アルフレードを歌ったアントニオ・ポーリは,イタリア出身のテノールですが,前回 2015年の新国立オペラ「椿姫」で同役を歌っています   第2幕で歌うアリア「燃える心を」ではヴィオレッタとともに暮らす幸せを見事に歌い上げました

 

     

 

演出上,よく分からなかったのは,第2幕で白いパラソルが一つ宙に浮いているシーンです   あのパラソルは何を象徴しているのか,さっぱり分かりません

また,第1幕と第3幕ではピアノが登場しますが,演出家ブサールのプロダクション・ノートによると,「19世紀半ばに使われていた実際のピアノ」が使われています   しかし,どちらの幕も音楽を奏でるために使われているわけではありません   第1幕では,ヴィオレッタがピアノの上に乗り,シャンペン・グラスのピラミッドにワインを注ぐという使い方です   一方,第3幕では,瀕死のヴィオレッタがピアノの上に身体を横たえている,つまりベッドとして使われています

フリッツァ指揮東京フィルは大健闘でした.ヒロインの悲しみに寄り添い,時に自らカンタービレを歌い上げていました

さて,この演出のフィナーレは独特です   一般的な「椿姫」の演出は「瀕死のヴィオレッタがベッドの上でアルフレードの腕に抱かれて息を引き取る」というものですが,ブサール版では,最後のドラマティックな音楽の中,ヴィオレッタが せり出した舞台に立って 右手を挙げた状態で幕が下りるのです

病床に伏したヴィオレッタの最後の言葉は「まあ,不思議だわ!苦しい痙攣がなくなった.私の中にいつにない力が生まれ動いている.ああ!私はまた生きるのだわ.ああ,うれしい!」というものです  その言葉を発した後, ヴィオレッタをセリに立たせるブサール版は,あたかも このセリフの中の「私はまた生きるのだわ」というヴィオレッタの強い意志と希望を生かしてあげたい という演出ではないか,と思います

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ポーランド映画「ショパン 愛と哀しみの旋律」を観る~ピアノ協奏曲第1番・第2番,エチュード,ノクターン,ワルツ,ポロネーズがふんだんに流れる

2017年11月16日 07時51分56秒 | 日記

16日(木).わが家に来てから今日で1142日目を迎え,15日午前5時35分ごろ,世田谷区の東急田園都市線で架線トラブルが発生し,渋谷ー二子玉川駅間の上下線が約4時間半にわたり運転を見合わせた というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

       そもそも「田園」と「都市」が混在した名前だからトラブルが絶えないんだな

 

                                           

 

昨日,夕食に「大根とひき肉の煮物」「生野菜サラダ」「イワシ団子,エノキダケ,チンゲン菜のスープ」を作りました   「大根~」はヘルシーメニューです

 

     

 

                                           

 

昨日,神楽坂のギンレイホールで「ショパン  愛と哀しみの旋律」を観ました   これはイェジ・アントチャク監督による2002年ポーランド映画(126分)です

帝政ロシアの専制支配下にあった19世紀のポーランドで,後にピアノの詩人と呼ばれるフレデリック・ショパンは,ロシアの圧政に苦しむ母国の姿に心を痛めながら,自由な芸術活動をするため祖国を離れる   パリでは作品が認められず失意のどん底にいたが,人気作曲家・ピアニストのリストの計らいで念願のサロン・デビューを飾り,たちまちサロン界の寵児となる   そのサロンで人気女流作家ジョルジュ・サンドと出会い,彼女の情熱を受け入れるようになる   ショパンは肺炎を患いながらも サンドと彼女の二人の子供とともに暮らした10年間に数々の名曲を作曲していく   彼は39歳の若さで亡くなり,彼の心臓は遺言により祖国ポーランドのワルシャワの聖十字架教会に収められることになった

 

     

 

この作品では,「ピアノ協奏曲第1番」,「同第2番」,「エチュード作品10-12”革命”」,「エチュード作品25-11”木枯らし”」,「幻想即興曲」,「英雄ポロネーズ」,「ノクターン第21番ハ短調”遺作”」,「ワルツ第19番イ短調”遺作”」,「チェロ・ソナタ」をはじめ数々のショパンの名曲が流れます   このうち何曲かは横山幸雄の演奏が採用されていて,チェロはヨーヨー・マが弾いています   この映画を観ていて感じるのは,内容的にはショパンよりもジョルジュ・サンドが主人公で,ショパンとサンドの2人の子どもたちの間に挟まれて,双方から「いったい,どっちを愛しているのか」と迫られる一人の女性・母親の苦悩を描いているのではないかということです   そのサンドをダヌタ・ステンカという女優が演じていますが,気の強そうな男勝りの風貌がサンド役にピッタリです

ストーリーはともかく,ショパンの音楽が最初から最後まで流れるので,ショパン好きにはたまらない映画です

 

     

     

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ユベール・スダーン+フランク・ブラレイ+東響でダンディ「フランス山人の歌による交響曲」,ドヴォルザーク「交響曲第9番”新世界より”」他を聴く

2017年11月15日 07時50分43秒 | 日記

15日(水).わが家に来てから今日で1141日目を迎え,サッカーのワールドカップ「ロシア大会欧州予選プレーオフ」,イタリアのミラノでイタリア対スウェーデンの第2戦が行われ,前回まで14大会連続出場で優勝4度の実績をもつイタリアが敗退し,60年ぶりにW杯出場を逃した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

       ワールドカップだけが人生じゃないよ ワンカップ大関を飲んで居直ろうぜ!

 

 

                                           

 

昨日,夕食に「クリームシチュー」と「生野菜と生ハムのサラダ」を作りました   寒い日は胡椒を振ったシチューに限ります

 

     

 

                                            

 

昨夕,サントリーホールで東京交響楽団の第655回定期演奏会を聴きました   プログラムは①レーガー「ベックリンによる4つの音詩」,②ダンディ「フランス山人の歌による交響曲」,③ドヴォルザーク「交響曲第9番ホ短調”新世界より”」です   ②のピアノ独奏はフランク・ブラレイ,指揮はユベール・スダーンです

 

     

 

オケはいつもの東響の編成で,ヴァイオリン・セクションは左サイドに固まります.コンマスはグレヴ・二キティンです

私は秋山和慶氏からユベール・スダーン,そして現在のジョナサン・ノットに至るまで,東京交響楽団の音楽監督は3人とも好きです.それが定期会員を続けている理由とも言えます

1曲目はレーガー「ベックリンによる4つの音詩」です   スイスの画家ベックリンの絵画からインスピレーションを受けた曲です.つい先週,上岡敏之+新日本フィルの演奏で聴いたばかりです   第1曲「ヴァイオリンを弾く隠者」,第2曲「波間の戯れ」,第3曲「死の島」,第4曲「バッカナール」の4つの曲から成ります

スダーンのタクトで第1曲「ヴァイオリンを弾く隠者」の演奏に入ります   この曲ではコンマスのヴァイオリン・ソロが活躍しますが,二キティンの演奏は抒情的で聴かせます   第3曲「死の島」は,まるでインディー・ジョーンズが髑髏島に上陸した時に流れる音楽のような不気味さを感じます   第4曲「バッカナール」はお酒を飲んでの大騒ぎのようです

否が応でも先週の上岡+新日本フィルの演奏と比較することになりますが,全体を通して聴いた印象は,上岡+新日本フィルがどちらかと言えば水彩画で描くサッパリ系だとすれば,スダーン+東響は油絵で描くこってり系とでも言えるでしょうか

ピアノがステージ中央に移動し,2曲目のヴァンサン・ダンディ「フランス山人の歌による交響曲」に備えます   この曲は北フランス山岳地帯セヴェンヌ地方の民謡に基づくピアノ付き交響曲です

確かクララ・ハスキルがピアノを弾いたCDを持っていたはずですが,例によって見つからず予習できませんでした   したがってほとんど初めて聴くのと同じようなものでした   第1楽章「きわめて遅く~適度にいきいきと」,第2楽章「きわめて穏やかに,しかし遅くなく」,第3楽章「いきいきと」の3楽章から成ります

1991年のエリーザベト王妃国際コンクールの優勝者フランク・ブラレイがスダーンとともに登場,ピアノに向かいます   ブラレイは楽譜を見ながら演奏します.滅多に演奏する機会のない曲だからでしょう   第1楽章はイングリッシュ・ホルンがノスタルジーに満ちた民謡主題を奏でますが,この演奏が素晴らしい   第2楽章ではピアノと管弦楽との対話が楽しく聴けますが,甲藤さちのフルートが冴えています   第3楽章は目まぐるしい曲想で始まり,民族音楽のような曲想が展開します   全体的にはダンディの師であるセザール・フランクの「循環形式」を継承した曲想が印象的です

ブラレイはアンコールにドビュッシー「前奏曲第1集」から第6曲「雪の上の足跡」を静かに演奏し,クールダウンを図りました

 

     

 

プログラム後半はドヴォルザーク「交響曲第9番ホ短調”新世界より”」です   あまりにも有名なこの曲は,ドヴォルザークがアメリカのナショナル音楽院の院長として活躍していた頃にニューヨークで作曲されました   第2楽章と第3楽章では,アメリカの詩人ヘンリー・ロングフェローがアメリカ先住民の伝説に基づいて書いた「ハイアワサの歌」が使われています

スダーンのタクトで第1楽章に入りますが,この楽章ではフルートの甲藤さち,オーボエの荒絵理子,ファゴットの福士マリ子の演奏が冴えていました   第2楽章では冒頭イングリッシュ・ホルンによって有名なメロディー(遠き空に陽は落ちて~)が奏でられますが,最上峰行の演奏がしみじみと良い演奏でした   第4楽章ではフルートに加え,エマニュエル・ヌヴ―のクラリネットが冴えていました

10年間東響の音楽監督を務めたユベール・スダーンは,どちらかというとゆったりとしたテンポで音楽を進めます   そうかと思えば速めのテンポで畳みかけたりします   私が一番印象に残っているのは数年前に展開したシューベルトの交響曲全曲演奏会です   大谷康子さんをコンマスに迎え,とくに第3番,第4番といった若い番号の交響曲が忘れられない名演でした

ところで,最近チェロの樋口康世さんの姿を見かけませんが,どうしているのでしょうか

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映画「敬愛なるベートーヴェン」を観る~「第九」と「大フーガ」 がテーマ音楽のように流れる:ギンレイホール / バッハ・コレギウム・ジャパンから次シーズンのチケット届く

2017年11月14日 08時18分06秒 | 日記

14日(火).わが家に来てから今日で1140日目を迎え,トランプ米大統領が12日 ツイッターで,北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長について「金正恩氏はなぜ私を『年寄り』と侮辱するのだろうか.私は彼を『チビでデブ』と決して呼ばないのに」とツイートした というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      「年寄り」よりも「好戦狂」とか「戦争商人」と呼ばれる方を気にすべきじゃね?

 

                                          

 

昨日,夕食に「牛肉のしぐれ煮」と「豚汁」を作りました   子供たちは「牛肉~」をすき焼きみたいに卵につけて食べていました   「豚汁」に野菜がたっぷり入っているので いつもの生野菜サラダは用意しませんでした

 

     

 

                                           

 

バッハ・コレギウム・ジャパンから「2018-2019シーズン」定期演奏会のチケット5枚が送られてきました   目玉は3月30日のバッハ「マタイ受難曲」で久しぶりにアルトの鈴木大地が出演することです

 

     

 

                                            

 

昨日,神楽坂のギンレイホールで「敬愛なるベートーヴェン」を観ました  チケットの整理番号は13番,余裕で良い席を押さえました   が,クラシックをテーマとする映画はそれほど人気がないのか,いつもは満席近い会場はせいぜい30人位しか入っていません   図らずも日本全体のクラシック人口の実態を見せつけられたような残念な思いをしました   

スクリーンの左手前にはアップライト・ピアノが設置されていますが,誰も弾いていないのにショパンのワルツが流れていました   近づいて見ると,スタニスラフ・ブーニンによる自動ピアノ演奏でした

 

     

 

さて,「敬愛なるベートーヴェン」は,アニエスカ・ホランド監督による2006年イギリス・ハンガリー映画(104分)です

難聴となった晩年のベートーヴェンが若い作曲家志望の学生アンナに写譜をしてもらいながら,交響曲第9番「合唱付き」や弦楽四重奏曲「大フーガ」を誕生させるシーンが描かれます

1824年のウィーン.「第九」の初演を4日後に控え,未だ合唱パートが完成していないベートーヴェン(エド・ハリス)のもとに,作曲家を目指す若き女性アンナ(ダイアン・クルーガー)が写譜師として送り込まれる.女性のコピイストが現れたことに激怒するベートーヴェンだったが,やがて彼女の才能を認め,写譜という仕事を任せるようになる   ベートーヴェンの音楽を深く理解するアンナは苦悩するベートーヴェンを力強くサポートしていく   そして,ついに迎えた「第九」初演の日,難聴のためタクトを振ることに怯えていたベートーヴェンだったが,アンナに励まされ指揮台に立ち,オケの真ん中で指揮の合図を出す彼女に従い指揮をやり遂げる   残された時間の中で,ベートーヴェンは「大フーガ」を完成させる

 

     

 

この映画では,言うまでもなくベートーヴェンの作品が数多く流れます   映画の冒頭はコピイストのアンナが馬車で瀕死のベートーヴェンの家に向かうシーンですが,バックに流れているのは弦楽四重奏のための「大フーガ」の切羽詰まったメロディーです   もともとこの作品は「弦楽四重奏曲第13番変ロ長調作品130」の最終楽章(第6楽章)として書かれたものですが,「晦渋な作品」「曲全体が長く 重い」という批判が相次ぎ,新しい「アレグロ」と差し替えられました   この曲は後に独立した「大フーガ変ロ長調作品133」として出版されました.「大フーガ」は何度かこの映画の中で流れます   そして,交響曲第9番ニ短調(「第九」)は,第1楽章から第4楽章までが作曲中と初演時のシーンで感動的に流れます   この2つの作品がベートーヴェンの晩年を描く重要なテーマ音楽として使われています  

それ以外で衝撃的に使われているのが「ピアノ協奏曲第4番ト長調」の第2楽章「アンダンテ・コン・モト」の冒頭部分です   ピアノ協奏曲なのに,なぜかピアノが登場する前に音楽が切られてしまいますが,重厚感に溢れた演奏です   この映画では「ラズモフスキー第3番」など弦楽四重奏曲が多く使われていますが,一番印象的なのは,ベッドに横たわるベートーヴェンが傍らのアンナに「神に対する感謝の歌」だとして示した「弦楽四重奏曲第15番イ短調作品132」の第3楽章「モルト・アダ―ジョ」です   楽譜の冒頭にはベートーヴェン自身によって「病が癒えた者の神に対する聖なる感謝の歌,リディア旋法による」と書かれています   素朴なコラール風の「感謝の歌」が繰り返されますが,これは天上の音楽です

映画の本筋のことで言うと,「実際の『第九』の初演時にはウムラウフが正指揮者を務め,聴力を失っていたベートーヴェンは各楽章のテンポを指示する役目で指揮台に上がったが,初演は失敗したと思ったベートーヴェンは 耳が聴こえなかったこともあり,聴衆の喝采に気が付かなかった   アルト歌手のカロリーネ・ウンガ―がベートーヴェンの手を取って聴衆の方を向かせ,初めて熱狂的な拍手に気が付いた」という逸話が伝えられています

つまり,この映画の脚本家は,「第九の初演時にアルト歌手がベートーヴェンの手を取って聴衆の方に向かせた」というエピソードに着目し,アルト歌手に代えて女性の写譜師を登場させ,オーケストラと合唱団を指揮するベートーヴェンに指示を出す重大な役割を与えたのです

部屋で水を浴びて階下の住人から漏水のクレームを受けるとか,いつも怒鳴り散らしているとか,ベートーヴェンの気性をよく表したエピソードを取り入れて製作していることには共感できますが,やはりストーリー的に無理があります   それでもベートーヴェンの名作を映像とともに楽しむことが出来るので満足です

 

     

 

     

 

 

toraブログのトータル訪問者数が 85万 I P を超えました   これもひとえに普段からご覧いただいている読者の皆さまのお陰と感謝申し上げます  

ちなみに,本日現在のトータル訪問者数は850,296 I P ,トータル閲覧ページ数は

3,156,873 P V,gooブログ全体における直近1週間(11/5~11日)の順位は

2,782,134 ブログ中 895位,登録読者数は1438人となっています   これからも1日も休まず根性で書き続けて参りますので引き続きご覧くださるようお願いいたします

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クァルテット・エクセルシオでハイドン,ベートーヴェン,シューベルトの「弦楽四重奏曲」を聴く / 「東京・春・音楽祭2018」の公演チケットを8枚取る

2017年11月13日 07時54分19秒 | 日記

13日(月).わが家に来てから今日で1139日目を迎え,東京・上野動物園で6月に生まれたジャイアントパンダの赤ちゃん,シャンシャンが12月19日に公開される見通しになった というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

        ナンだパンダ言っても希少動物だからモテるよね  パトカーみたいな色だけど

 

                                           

 

昨日は「東京・春・音楽祭2018」のチケット先行発売日でした   すでに11月5日の先行発売で4月8日の「ローエングリン」は押さえてあるので,主に東京文化会館小ホールで開かれるコンサートを中心に次の8公演を押さえました

①3月21日(水・祝) 午後3時開演 「東京春祭チェンバー・オーケストラ~トップ奏者と煌めく才能が贈る極上のアンサンブル」 ロッシーニ「弦楽のためのソナタ第1番」,モーツアルト「交響曲第13番」,ハイドン「チェロ協奏曲第1番」ほか.

②3月27日(火)午後7時開演 「THE  DUET~中村恵理&藤木大地~世界が認めたふたつの声のハーモニー」 モーツアルト,ヘンデル,プッチーニほか.

③3月29日(木)午後7時開演 「名手たちによる室内楽の極」

 

     

 

④4月1日(日)午後3時開演 「副島理沙オーボエ・リサイタル」 モーツアルト「オーボエ協奏曲」ほか.

⑤4月7日(土)午後6時開演 「ブラームスの室内楽Ⅴ~弦楽六重奏」 

 

     

 

⑥4月9日(月)午後7時開演 「ウェールズ弦楽四重奏団~宮田大を迎えて」 

 

     

 

⑦4月13日(金)午後7時開演  「郷古廉&加藤洋之~ベートーヴェン ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会Ⅱ」

 

     

 

⑧4月15日(日)午後3時開演 「ロッシーニ『スターバト・マーテル~聖母マリアの7つの悲しみ』」 モーツアルト「交響曲第25番」 スカップッチ指揮東京都交響楽団ほか.

以上のうち②④⑥は上野学園石橋メモリアルホール,⑧は東京文化会館大ホールで,その他は東京文化会館小ホールです

  

                                           

 

昨日,東京文化会館小ホールでクァルテット・エクセルシオの「第33回東京定期演奏会」を聴きました   プログラムは①ハイドン「弦楽四重奏曲第41番ト長調」,②ベートーヴェン「弦楽四重奏曲第4番ハ短調」,③シューベルト「弦楽四重奏曲第13番イ短調『ロザムンデ』」です

 

     

 

全自由席です.F列27番,センターブロック右通路側を押さえました.会場は6割程度の入りでしょうか

エクセルシオの面々が登場します.女性陣はデザイン違いのパープルの衣裳で統一しています

1曲目はハイドン「弦楽四重奏曲第41番ト長調」です   ハイドンは1781年に,弦楽四重奏曲第37番から第42番までの6曲(作品33ー1~6)を作曲しロシア大公ペトロヴィッチに献呈しました.このことからこの6曲は「ロシア四重奏曲」と呼ばれています   ハイドン自身が「まったく新しい特別な方法で作曲した」と述べているように,それまでのメヌエット楽章に代わりスケルツォをおく手法(第41番)などが取り入れられています  モーツアルトはこれらの曲に刺激を受け,「ハイドン・セット」と呼ばれる6曲の弦楽四重奏曲(第14番~第19番)を作曲し,ハイドンに献呈しています

この曲は第1楽章「ヴィヴァーチェ・アッサイ」,第2楽章「ラルゴ・エ・カンタービレ」,第3楽章「スケルツォ:アレグロ」,第4楽章「フィナーレ:アレグレット」の4楽章から成ります   この曲を聴くのは初めてですが,とくに第2楽章の西野ゆかさんによるカンタービレが心に響きました   第3楽章こそ,ハイドンが開拓したスケルツォ楽章です.4人のアンサンブルは完璧です

2曲目はベートーヴェン「弦楽四重奏曲第4番ハ短調」です   初期の弦楽四重奏曲の中で一番好きな作品です   「ハ短調」は交響曲第5番”運命”と同じ調性で,秘めた情熱とでも言うような力強さを感じさせます   第1楽章「アレグロ・マ・ノン・タント」,第2楽章「アンダンテ・スケルツォ―ソ・クアジ・アレグレット」,第3楽章「メヌエット」,第4楽章「アレグロ」の4楽章から成ります

第1楽章の冒頭は,まさに秘めた情熱の発露でも言うべき力強さと推進力に満ちています   第2楽章では,第2ヴァイオリン⇒ヴィオラ⇒チェロ⇒第1ヴァイオリンへと受け継がれ,今度はその逆に演奏されるフーガが展開しますが,ここは目で見て面白いところです   第3楽章を経て,第4楽章は速めのテンポでハイドン風のジプシー・ロンドが心地よく響きます   全曲を聴き終わって頭に浮かんだ言葉は『名曲』でした

 

     

 

プログラム後半はシューベルト「弦楽四重奏曲第13番イ短調『ロザムンデ』」です  この曲はシューベルト(1797-1828)が27歳の時=1824年に作曲されました   「ロザムンデ」という愛称は第2楽章で,彼の作曲した劇音楽『ロザムンデ』第3幕の間奏曲の旋律を主題としていることから付けられたものです   第1楽章「アレグロ・マ・ノン・トロッポ」,第2楽章「アンダンテ」,第3楽章「メヌエット:アレグレット」,第4楽章「アレグロ・モデラート」の4楽章から成ります

同じ主題メロディーが何度も繰り返される 第1楽章と第2楽章を聴くたびに「シューベルトはなんでこんなに悲しい音楽ばかり書くのだろう」と思います   そこはかとなく悲しさが漂い,「これだから31歳の若さで天に召されてしまうんだろうな」と思ってしまいます   救いは第4楽章のロンド・フィナーレの明るさです

エクセルシオの演奏を聴くたびに,4人が進化を続けているように感じます   とくにベートーヴェンの演奏は,昨年の「サントリーホールチェンバーミュージック・ガーデン」におけるベートーヴェン「弦楽四重奏曲全曲演奏会」の完奏が大きな自信となり,演奏に磨きがかかり 円熟味を帯びてきたのではないかと思います

 

     

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「トリトン晴れた海のオーケストラ」第3回演奏会を聴く:モーツアルト「交響曲第39番」,「オーボエ協奏曲」他~矢部達哉コンマスのもと 指揮者なしで最高のアンサンブル

2017年11月12日 08時08分47秒 | 日記

12日(日).わが家に来てから今日で1138日目を迎え,投打の「二刀流」で活躍するプロ野球日本ハムの大谷翔平選手が11日,日本記者クラブで記者会見を行い,「来年以降,米国で頑張りたい.一番の選手になりたい」と 今オフの米大リーグ挑戦を正式に表明した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

                 アメリカに行ったら「二刀流」は通用しないから 宮本武蔵で通した方がいいよ

 

                                           

 

昨日,晴海の第一生命ホールで「トリトン晴れた海のオーケストラ」第3回演奏会を聴きました   オール・モーツアルト・プログラムで①歌劇「フィガロの結婚」序曲,②セレナータ・ノットゥルナK.239,③オーボエ協奏曲ハ長調K.314,④交響曲第39番変ロ長調K.543です   出演は②のオーボエ独奏=広田智之,コンマス=矢部達哉,他のメンバーは都響を中心とする首席クラスの寄せ集めメンバーです

 

     

 

自席は1階9列14番,センターブロック左から2つ目です.会場は9割近く入っているでしょうか.良く入りました

拍手の中,オケの面々が登場し配置に着きます   オケを見渡して気が付くのは豪華な顔ぶれです    弦楽器の1列目だけをとってみても,左からコンマスの矢部達哉(都響ソロ・コンマス),渡邉ゆづき(都響第1ヴァイオリン副首席),双紙正哉(都響第2ヴァイオリン首席),戸上眞里(東京フィル第2ヴァイオリン首席),清水詩織(都響チェロ),山本裕康(神奈川フィル・チェロ首席),村田恵子(都響ヴィオラ副首席),篠崎友美(新日本フィル・ヴィオラ首席),池松宏(都響コントラバス首席)といった錚々たるメンバーです   第1ヴァイオリンには2010年ルーマニア国際音楽コンクール第1位の会田莉凡さんの姿があり,第2ヴァイオリンにはウェールズ弦楽四重奏団の三原久遠氏がスタンバイしています   が,一人一人挙げていったらキリがありません.ひと言で言えば「スーパー・オーケストラ」です   女性陣はブルー系,グリーン系の衣裳の人が多く,赤系統の派手な衣裳の人はいません.それだけに秋らしい爽やかさを感じます

1曲目は歌劇「フィガロの結婚」序曲です   周知の通りフランスの劇作家ボーマルシェの戯曲「フィガロの結婚」をもとに台本作家ダ・ポンテがシナリオを書き,モーツアルトが作曲し,1786年に初演された喜歌劇の最高傑作の序曲です

指揮者がいないので,コンマス矢部氏の音頭で演奏に入ります   これがたった30数名で演奏しているのか と驚くほど厚みのある力強い演奏が展開します   まずは小手調べといったところでしょうか

2曲目は「オーボエ協奏曲ハ長調K.314」です   この曲は,モーツアルトがパリに行く前に立ち寄ったマンハイム時代に書いた「フルート協奏曲第2番ニ長調K.314」の元になった曲であると言われています   しかし,自筆譜が残されていないため出自がはっきりしていないというのが実情です  そのため,この2曲は同じケッヘル番号314番が振られています

個人的なことになりますが,「フルート協奏曲第2番K.314」はン十年前の私のクラシック入門曲です  N響のライブ(Fl:N響首席・宮本明恭氏)をラジカセに録音したものですが,その時の音楽評論家S氏の解説は次のような内容でした

「モーツアルトがマンハイムに行ったとき,現地にヨハン・ヴェントリングという高名なフルート奏者がいた   モーツアルトは,彼を通じてオランダ出身の商人でフルート愛好家ド・ジャンから『フルート協奏曲』3曲と『フルート四重奏曲』2曲の作曲を依頼された   モーツアルトはマンハイムを去る前にそれらを作曲したが,ド・ジャンからは約束の半分しか報酬をもらえなかった   というのは,モーツアルトは時間的な制約もありフルート協奏曲については「第1番」だけ作曲し,もう1曲はザルツブルク宮廷管弦楽団のオーボエ奏者フェルナンディスのために書いた『オーボエ協奏曲ハ長調』をニ長調に編曲したものを『フルート協奏曲第2番』としてド・ジャンに渡したからだった

これについては,「もともとフルート協奏曲であったものを一度オーボエ協奏曲として編曲し,さらにフルート協奏曲として編曲し直したものだ」という説(ブリュッヘン)もあるようです   こればかりは,モーツアルトに訊いてみないと真相は分かりません

この曲は第1楽章「アレグロ・アぺルト」,第2楽章「アダージョ・ノン・トロッポ」,第3楽章「ロンド:アレグレット」の3楽章から成ります

都響オーボエ首席・広田智之氏が登場,ステージ中央にスタンバイします   矢部氏の音頭で第1楽章「アレグロ・アぺルト」に入ります   「アぺルト」はイタリア語で「解放された」といいう意味ですが,広田氏はまさに解放的な明るさをもって素晴らしい演奏を繰り広げます   矢部氏の率いる海オケは広田氏にぴったりと付けています   第2楽章「アダージョ・ノン・トロッポ」ではオーボエ特有の音色を生かして伸び伸びとした演奏を展開します   第3楽章「ロンド:アレグレット」では,リズム感も良くオケと丁々発止のやり取りを展開し,モーツアルトの愉悦感を醸し出していました

都響にオーボエの広田智之あり,と強く印象づけた演奏でした

 

     

 

プログラム後半の最初は「セレナータ・ノットゥルナK.239」(夜のセレナーデという意味)です   1776年,モーツアルトが20歳の時にザルツブルクで作曲されました   この曲の特徴は,弦楽器とティンパニだけで演奏されることです   ティンパニの岡田全弘氏(読響首席)を中央に,向かって左側にヴァイオリンセクション12人,右側にヴィオラ,チェロ,コントラバスの計7人がスタンバイします

この曲は第1楽章「マルチア(行進曲):マエストーソ」,第2楽章「メヌエット」,第3楽章「ロンド:アレグレット~アダージョ~アレグロ」の3楽章から成ります

矢部氏の合図で第1楽章に入りますが,弱音によるティンパニに導かれて,弦楽器が優雅なメロディーを紡いでいきます   3つの楽章それぞれの中間部で矢部,双紙,篠崎,池松の4人による四重奏が奏でられますが,まさに「セレナード」に相応しい洗練された素晴らしいアンサンブルでした

プログラムの最後は「交響曲第39番変ロ長調K.543」です  この曲は10月中旬に 有田正広+クラシカルプレイヤーズ東京 と ジョナサン・ノット+東響 の演奏で3回聴いています   さあ,どんな演奏になるのか,聴く前から期待が高まります

モーツアルトの後期三大交響曲(第39番変ホ長調,第40番ト短調,第41番ハ長調)は1788年の夏に一気に書き上げられましたが,この第39番は同年6月に完成しています   3曲の作曲動機は今なお不明ですが,モーツアルトの三大交響曲の少し前(1785~86年)にハイドンが作曲した交響曲(第82番ハ長調,第83番ト短調,第84番変ホ長調曲)と調整が一致していることから,モーツアルトが尊敬していたハイドンを意識して3曲セットで作曲したのではないか,という説は説得力があります

この曲は第1楽章「アダージョ~アレグロ」,第2楽章「アンダンテ・コン・モート」,第3楽章「メヌエット:アレグレット」,第4楽章「フィナーレ:アレグロ」の4楽章からなります   この曲の大きな特徴はオーボエがなく,管楽器はフルート1,クラリネット2,ファゴット2,ホルン2,トランペット2となっていることです

矢部氏の音頭で第1楽章が重量感のある総奏でゆったりと開始されます   この楽章はアダージョからアレグロに移るのですが,テンポ設定は私の頭の中にあるイメージそのものです   言い換えれば理想のテンポです   10月に聴いた有田+クラシカルプレイヤーズ東京と,ノット+東響は若干速すぎました   速い演奏は小気味の良さがありますが,速ければ良いというものではありません   その点,矢部氏率いる海オケの演奏は”中庸”をいくテンポ設定で十分に音楽を味わうことが出来ます

私がこの曲で最も注目するのは第3楽章「メヌエット:アレグレット」です   これも申し分のない理想的なテンポです   そして中間部の木管群による「トリオ」では,クラリネットの三界秀実(都響首席)と糸井裕美子(都響),フルートの小池郁江(都響),ファゴットの岡本正之(都響首席),岩佐雅美(読響)の演奏が光りました   残念ながらホルンは必ずしも絶好調ではなかったようです

第4楽章「フィナーレ:アレグロ」は軽快そのものです   モーツアルト特有の愉悦感に満ちた音楽が展開します   弦楽器,管・打楽器の総力を挙げての熱演に 聴いている聴衆の興奮が高まります

指揮者なしでこれほど集中力に満ちたレヴェルの高い演奏が出来るのは,コンマスの矢部達哉氏の非凡な統率力はもちろんのこと,個々の演奏者がソリストも務まるほど高いレヴェルの実力者ばかりであり,「サイトウキネンオーケストラ」等で共演する機会もある気心の知れたメンバーであることが大きな要素になっていると思われます

実力者揃いの彼らが指揮者を置かないのは正解です   なぜなら,オーケストラの演奏会で一番ギャラが高いのは,音を一つも出さずに演奏者に指示を出すだけの指揮者だからです

演奏後,矢部氏が「2020年の東京オリンピックを見据えて,来年からベートーヴェン・チクルス(交響曲全9曲演奏会)を開始する」旨をアナウンスしました   そして矢部+海オケは,アンコールにモーツアルト「ディベルティメント第17番ニ長調K.334」から第3楽章「メヌエット」を優雅に演奏し,満場の拍手の中 幸福感に満ちたコンサートを締めくくりました

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上岡敏之+カティア・ブニアティシヴィリ+新日本フィルでチャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番」,ラフマニノフ「交響詩”死の島”」他を聴く~閃きのあるピアニスト:ブニアティシヴィリ

2017年11月11日 08時06分28秒 | 日記

11日(土).わが家に来てから今日で1137日目を迎え,今年1年の世相を映した言葉に贈られる恒例の「2017ユーキャン新語・流行語大賞」にノミネートされた30語が9日発表され,「インスタ映え」「忖度」「ひふみん」「アウフヘーベン」「ちーがーうーだーろー!」「フェイクニュース」「ユーチューバー」などが挙がった というニュースを見て友だちの白ウサちゃんと会話するモコタロです

 

     

      モコタロ:ボクってインスタ映えするよね 白ウサ:ちーがーうーだーろー!

     

                                           

 

昨日,夕食に「ハッシュドビーフ」と「生野菜とワカメのサラダ」を作りました   「ハッシュドビーフ」はカレーと同じように時々食べたくなりますが,インスタ的にはほとんど変わりませんね

 

     

 

                                             

 

昨日,すみだトリフォニーホールでルビー第10回定期演奏会を聴きました   プログラムは①ラフマニノフ「交響詩『死の島』」,②チャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番変ロ短調」,③レーガー「ベックリンによる4つの音詩」です   ②のピアノ独奏はジョージア生まれのカティア・ブニアティシヴィリ,指揮は上岡敏之です

 

     

 

オケのメンバーが登場,いつもの配置に着きます   コンマスはチェ・ムンス氏.第2ヴァイオリンの篠原英和氏と松崎千鶴さんの位置を確認

1曲目はラフマニノフ:交響詩「死の島」です   「死の島」というのはスイス・バーゼル生まれの画家アルノルト・ベックリン(1827-1901)が1880~86年に描いた5点のシリーズ絵画で,ラフマニノフは複製されたモノクロの「死の島」を観てインスピレーションを受け,1909年に交響詩として作曲しました   その絵は,暗い海に浮かぶ岩が聳え立つ島に,白い光を帯びた人物と棺をのせた小舟が到着しようとしている様子を描いたものです

指揮者・上岡氏のタクトで暗い色調のロマン的な音楽が奏でられます   絵に描かれた人は誰で,棺の中にはどんな人物が入っているのか,と絵を観ているように想像してしまいます   途中,コンマスのソロにより明るい曲想のメロディーが奏でられますが,再び暗い世界に戻ります.20分程度の曲ですが,曲を聴きながら「この曲はアニメ映画にしたら面白い作品が出来るのではないか」と思いました   とにかく,想像力を掻き立てる音楽です

グランド・ピアノがセンターに移動し,淡いピンクの艶やかな衣装のブニアティシヴィリを迎えます   2曲目はチャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番変ロ短調」です   この曲は,第1楽章「アレグロ・ノン・トロッポ・エ・モルト・マエストーソ~アレグロ・コン・スピリト」,第2楽章「アンダンティーノ・センプリーチェ~プレスティッシモ」,第3楽章「アレグロ・コン・フーコ」の3楽章から成ります

上岡氏のタクトで第1楽章がゆったりしたテンポで開始されます   これを受け,ブニアティシヴィリのピアノが速めのテンポで毅然と入ってきます   この時点で「波乱の幕開け」を感じさせます.もともと上岡氏はテンポを動かす方ですが,それに輪をかけてブニアティシヴィリのピアノが,まるで即興演奏のように自由自在にテンポを動かし,エモーショナルな演奏を展開します   まさに独奏ピアノと指揮者+オケとの丁々発止のやり取りが繰り広げられます   私の知る限り,こういう情熱的な演奏はマルタ・アルゲリッチ以来かも知れません   そうかと思うと,第2楽章(緩徐楽章)では,ピアノの弱音の美しさが際立ちます.歌わせるべきところはテンポを落としてじっくりと歌わせます   第3楽章に入ると再び即興演奏のように”今生まれたばかりの曲”のごとく演奏します.畳みかけるフィナーレは圧巻でした

アルゲリッチは動物的な瞬発力を持ったアーティストとしての閃きを感じさせますが,ブニアティシヴィリはそれに近い閃きを感じさせるピアニストだと思います

鳴りやまない拍手とブラボーに,シューベルト/リスト編「セレナーデ」を抒情的に演奏,聴衆のクールダウンを図りました

 

     

 

プログラム後半は,レーガー「ベックリンによる4つの音詩」です   この曲も1曲目のラフマニノフの曲と同様,ベックリンの絵画を観た時の印象を音楽にした作品です

マックス・レーガー(1873-1916)はドイツ南部で生まれましたが,ほぼ同じ時代にストラヴィンスキーやシェーンベルクが革新的な音楽を開始し,世界の音楽界に殴り込みをかけていた状況の中で,ブラームスのように古典的な作風を守っていました   そうしたことが,音楽史の中で埋もれてしまった原因となったのかも知れません   この曲は1912年~13年に作曲されました.第1曲「ヴァイオリンを弾く隠者」,第2曲「波間の戯れ」,第3曲「死の島」,第4曲「バッカナール」の4楽章から成ります

第1曲「ヴァイオリンを弾く隠者」では,コンマス・チェ氏の独奏ヴァイオリンが物語を紡いでいきます   第2曲「波間の戯れ」では,波に漂う小舟が思い浮かびます   第3曲「死の島」はラフマニノフと同じ絵を見て感じた印象を音楽にしたものです.同じ年の生まれのラフマニノフとレーガーですが,ラフマニノフの方は多少明るさも見える一方,レーガーは怖さや不気味さを感じます   第4曲「バッカナール」は熱狂的な舞曲です.どういう絵か不明ですが,一度観てみたいと思いました

会場いっぱいの拍手に上岡氏はアンコールに入りました  世の中には「登り坂」「下り坂」,そして第3の坂「まさか」がありますが,冒頭の数小節を聴いて「まさか」と思いました   演奏されたのはワーグナーの楽劇「神々の黄昏」から「ジークフリートの葬送行進曲」でした   「まさか!」と思ったのは,アンコールに重厚なワーグナーを,しかも「葬送行進曲」を持ってくるだろうか? と疑問に思ったからです   しかし,演奏を聴いている間,この日のプログラムをいま一度振り返ってみたら,ラフマニノフもレーガーも「死の島」を取り上げているので,「死」つながりで「葬送行進曲」も不自然ではないのではないか,と思い直しました   さらに言えば,上岡氏はこの日のプログラムをアンコール曲を含めてプログラミングしたのではないか,とも   つまり,前半の2曲はロシアもの,後半の2曲はドイツもので組み立ててバランスを取る,ということです.「上岡氏ならやる」と確信します

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