4/12(月) 7:00配信
Yahoo!ニュース オリジナル THE PAGE
阪神のドラフト6位、中野拓夢がプロ入り初タイムリー&猛打賞の大活躍。新戦力は佐藤輝明だけじゃないことを示した
阪神が11日、横浜スタジアムで行われた横浜DeNA戦を3-2でモノにして早くも2度目の同一カード3連勝。貯金を矢野監督就任以来、最多タイとなる「7」に伸ばした。ドラフト6位の中野拓夢(24、東北福祉大→三菱自動車岡崎)がプロ初タイムリー&猛打賞の大活躍。なぜ阪神が強いのかを物語る象徴的な試合になった。
クセを盗んでダブルスチールに成功
いつから虎はソツのない野球ができるようになったのか。一回、近本、糸原の1、2番コンビの連打で作った無死一、二塁の先制機。マルテがフルカウントになって近本は、最高のスタートを切った。セットに入った阪口が投球動作に移る前にもう走っていた。
「余裕がなかったのか。(初戦の)浜口もそう。フォームを盗まれている。バッターに集中しないといけないが…」とは、三浦監督の試合後談話。
完全にクセを盗んでいたのだ。
マルテは三振。戸柱は三塁に送球したが近本は余裕のセーフ。おそらく空振りはないと踏んでのスタートのサインで、ダブルスチールのサインではなかったと思われるが、近本を追うように糸原も二塁を陥れて、結果的にダブルスチール成功となった。横浜DeNAバッテリーは牽制の気配も出さず警戒する仕草はなかった。バッテリーに余裕がなければコーチが注意を促さねばならない場面だったが、それもなく完全に意表を突かれた形になった。もっと言えば戸柱も冷静に判断して後ろの走者の糸原を二塁で刺しにいくべきだった。
今季から阪神は横浜DeNAの担当スコアラ―を変えているが丁寧な偵察も含めた阪神の事前情報収集の成果だろう。前日のゲームでもクイックのできない新人左腕の池谷から3つの盗塁を決めてダメ押し点を奪っている。このとき最初に盗塁を決めた佐藤は、池谷の初球に走っていたから、これも事前情報のたまもの。横浜DeNAバッテリーのスキを突く裏付けのある機動力である。
一死二、三塁となって大山はセカンドベース付近のゴロ。横浜DeNAは、1点仕方なしの陣形を敷いていたため、4番として最低限の仕事を果たした打席だった。しかし、予期せぬ事態が起きる。
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4/12(月) 11:05配信
webスポルティーバ
注目の左打者について語る片岡篤史。手前はYouTubeチャンネルのアシスタント吉田恵美
片岡篤史が語るYouTubeと今季のプロ野球 後編 中編を読む>>
ヤクルトの村上宗隆をはじめ、ロッテの安田尚憲、日本ハムの清宮幸太郎、阪神のルーキー・佐藤輝明など、プロ野球界には将来が期待される「左打者」がひしめいている。かつて、日本ハムや阪神で左の強打者として活躍した片岡篤史は、そんな若手たちをどう見ているのか。
【写真】中編:片岡篤史のプロ野球シーズン展望。オリックスには新庄剛志が必要だった!?
聞き手は、YouTubeの『片岡篤史チャンネル』でアシスタントを務める吉田恵美。普段の動画で見せているような軽快なやりとりで、今季にブレイクが期待される左打者などについて語った。
吉田恵美(以下:吉田) 今年、注目すべき左打者を挙げるとしたら誰になりますか?
片岡篤史(以下:片岡) もう(前編・中編でも)名前が出てきたけど、セ・リーグは阪神の佐藤(輝明)を挙げないといかんでしょ。ルーキーでどれくらいやるのか楽しみやね。大卒の野手で、ドラフト1位指名が4球団競合になったのは原(辰徳・東海大)さん以来だし、強いソフトバンクと巨人が指名した選手というのも"お墨付き"感がある。
オープン戦でのことだけど、広い甲子園で逆方向に長打を打っていたのも魅力。開幕後は苦しんでいる部分もありますが、何があっても使い続けてほしい。ホームランの本数はそこそこいくやろうと思いますし、欲を言えば打率も頑張ってほしい。僕が大卒1年目の日本ハムで残した数字(.290)を抜いてほしいな(笑)。
吉田 それは高いハードルですね(笑)。佐藤選手はソフトバンクの柳田(悠岐)選手と比較されることも多いですが、いかがですか?
片岡 ちょっとタイプは違うと思うんですよ。逆方向に強い打球が打てるところは共通していますし、2ストライクからでも粘り強く、バッティングを変えられるところは似ているのかな。柳田の一番いいところは柔軟性。体がかなり前にいってもバットがあれだけ振れるのは、相当体が柔らかいという証拠で、そこは佐藤と違うと思います。
佐藤はどちらかというと松井(秀喜)タイプかなぁ。松井は逆方向への長打は比較的に少ないですが、軸足に体重を残してグッと回るところが似ています。柳田と松井を足して2で割った......とは言いすぎかもしれないけど、球界を代表する左打者2人と似ている点があるのにはロマンを感じます。
吉田 佐藤選手には、具体的にどれくらいの成績を期待しますか?
片岡 打率.270、19本塁打......厳しめかな? 広い甲子園を本拠地にする阪神で、これだけやったら本物でしょう。今年はそこまでいかなかったとしても、3~5年後はタイトル争いに絡んでくる選手になると思うし、日本代表に選ばれるような選手になってほしい。とにかく1年目は、ケガせずにできるだけ試合に出ることやね。ファンの方々も球場で見たいと思うような選手でしょうし。
吉田 期待度が高いですね。今、佐藤選手のグッズは売り切れているらしいですが、私も何とか手に入れたいです(笑)。
それでは、パ・リーグからも注目の左打者を挙げてください。
片岡 西武ファンである吉田さんも気になってると思うけど、森(友哉)やね。2019年にリーグMVPに輝いて、昨年はスタメン落ちもあるなど不振に苦しんだ。彼は大阪桐蔭で春夏連覇したりバリバリやってきたから、打撃面でのスランプというのは初めてやないかな。それに昨年は、捕手としてひとつ勝つこと、ひとつアウトを取ることの苦しさを十分に学んだと思うし、その経験を今季、その先の野球人生に活かしてほしいね。
吉田 森選手は、なぜスランプに陥ったと思いますか?
片岡 守備が原因でしょうね。正捕手としてチームが勝てないことに大きな責任を感じていただろうし、心技体の「心」が崩れてしまったのかもしれないけど、今季は自分のスイングを取り戻してほしい。
森のスイングは独特で、少し下から思い切り振り上げるタイプ。僕が今まで、プロ野球で見てきたティーバッティングの中で、「これはマネできない」と思った数少ない選手のひとりです。アマチュア選手の誰もが目にするべきバッティングを取り戻してほしいね。
吉田 森選手はすでに実績がある選手ですが、2軍スタートになった日本ハムの清宮幸太郎選手をはじめ、若手の左打者についてはどうですか?
片岡 清宮に関しては、栗山(英樹)監督も「2軍で打ちまくって上がってこい」とハッパをかけてましたね。清宮は、小学校からずっとホームランバッターで、自分が思ったとおりに打ち続けてプロに入ってきた選手。うまくいかないのは初めてなんやないかな。壁にぶち当たったというか、結果が出なくて苦しんでいる"耐え時"だと思います。
日本ハムでは、偉大な成績を残した小笠原(道大)が1軍ヘッド兼打撃コーチをやっていますし、近藤(健介)のような左打者のお手本になる選手もいる。今年のキャンプでは、そういった選手をマネしようとしたり、打ち方を変えようという意識は感じました。それでも結果が伴ってこないから迷っているだろうけど、そこは「この世界で生きていくんだ」という強い気持ちを持ってやらんといかんね。
吉田 一方で、ドラフトの同期で同学年でもあるヤクルトの村上宗隆選手のブレイクが早かった理由はどこにあるんでしょうか。
片岡 ホームランが出やすい神宮球場が本拠地なのも大きな要因だと思いますよ。甲子園だったら、成長の曲線はまた違っていたかもしれない。ただ、今は22歳とは思えない自信と貫禄を感じますし、4年目であれだけしっかりしたスイングができるのはすごいですよ。
高卒1年目の初打席で初ホームランを打ったり、駆け上がっていくのも早かった。ファームでホームランを打っていたから、素材は誰もが認めていたと思うんです。ただ、実力があっても結果を残せるとは限らないのがプロ野球。初打席で一発を打った村上は、「そういう星の元に生まれた選手」とでも言うんでしょうかね。2年目は三振数が多くて打率も低かったけど、昨年にそこをぐっと上げてきたし、長打力プラス確実性が出てきた。彼もどこまで進化していくのか楽しみなバッターですよ。
吉田 昨年、多くの試合で4番を任され、優勝争いやクライマックスシリーズなど色々な経験を積んだロッテの安田尚憲選手はどうでしょうか?
片岡 安田は、昨年の数字だけを見ると打率は.221、ホームランも6本と少なかったんですけど、クライマックスシリーズの第一戦でホームランを打ったり、固め打ちをしたり、数字以上のインパクトを残しました。チームも「将来的にロッテを背負ってほしい」と期待をしていて、井口(資仁)監督も我慢して使った部分もあると思いますけど、そう思わせる何かがあるということ。さすがに今年は、数字も求められる1年になりますけどね。
そういえば、吉田さんが応援する西武も、鈴木(翔平)や川越(誠司)、高木(渉)といった若い左打者が多いけど、注目している選手はいるの?
吉田 昨年、試合中にケガをしてしまった鈴木選手には、「今年こそ」という意味でも頑張ってほしいですね。シーズンを通して活躍するためには、ケガをしないっていうことが大切なんだなと、あらためて思いました。
片岡 西武は山川(穂高)、森、中村(剛也)、かつては秋山(翔吾)もそうだったように見本となる打者がたくさんいる。そういう選手が身近にいると、練習方法なども参考にしやすいから、いい伝統が生まれているんやろね。
吉田 たくさんの若い選手たちにチャンスを生かしてほしいです。個人的には、「辻(発彦)監督はお気に入りの選手を長く使い続ける傾向にあるのかな?」という印象もあるんですが(笑)。
片岡 それはファン目線やん(笑)。
吉田 そうなんですけどね(笑)。私の予想では、開幕から1カ月くらいは選手が入れ替わらないのかな、と思うんですけど......各選手には、その間に2軍で頑張ってほしいと思っています。中でも高木選手は調子がよかったようですが(4月8日時点で、2軍で9試合に出場し打率.533)、ケガをしてしまったとのことなので早く戻れることを願っています。
1軍のイスを争う鈴木選手は、バッティングフォームがだいぶ変わった印象があります。秋山選手と一緒に、静岡で合同自主トレをしていることも影響しているんでしょうか?
片岡 阪神の板山(祐太郎)も参加していたけど、皆が秋山をマネしてる。「やっぱりこうしたほうがいいんちゃうか」と試行錯誤していると、そうなるものなんですよ。そこに参加している選手は、もっと上手くなりたい、何かを変えたいと思って参加しているわけだから、なおさらね。
吉田 今季、どんな打者が台頭してくるか楽しみです。ちなみに、過去に片岡さんが実際に見てきたなかで、「理想的なスイングをしているな」という左打者は誰ですか?
片岡 間近で見た選手では、阿部(慎之助)ですね。理にかなった打ち方をしていたから、打率が高く、ホームランも多かった。阿部の間の取り方、ボールの待ち方、スイングの軌道は、プロの選手もそうやけど、すべての野球少年が参考にすべきだと思います。今はスイングの動画なども見やすい時代だし、お手本にしてほしいね。
【プロフィール】◆片岡篤史(かたおか・あつし)1969年6月27日、京都府生まれ。PL学園時代に甲子園春夏連覇を達成。同志社大学を経て、1991年のドラフトで日本ハムから2位指名を受け入団し、主力野手として活躍。2001年オフにFAで阪神に移籍し、2003年にはリーグ優勝に貢献した。引退後は阪神の一軍ヘッドコーチや打撃コーチを務め、現在は解説者や、自身のYouTubeチャンネル「片岡篤史チャンネル」など多方面で活躍中。
◆吉田恵美(よしだ・めぐみ)1998年12月10日生まれ。2017年のミス東京薬科大学グランプリ。メットライフドームでビールの売り子として働いていたこともあり、西武ファンに。『non-no』(集英社)の専属読者モデルとして活動するほか、ボイスメディアVoicy『スポニチニュース』月曜の公式パーソナリティーなど活躍の場を広げる。2021年1月26日から、「片岡篤史チャンネル」のアシスタントを務めている。
浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo