大阪府コロナ第4波、医療現場はどうなっているのか? 医療逼迫の原因、対策は

2021年04月29日 11時30分05秒 | 社会・文化・政治・経済

倉原優 | 呼吸器内科医
4/29(木) 8:45 news.yahoo

私は第1波の頃から新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者さんを受け入れている病院に勤務する呼吸器内科医です。第4波で「大阪が医療崩壊だ」と報道されていても、読者の多くはCOVID-19を受け入れている病院で働いてるわけではありませんから、医療が逼迫しているという実感はそこまでわかないと思います。
第4波がなぜここまで大阪の医療を逼迫させたのか、また医療現場はいったいどうなっているのか、説明させていただきたいと思います。
軽症中等症病床のスタッフが危機を察知

2021年4月に入ってから、コロナ病棟に肺が真っ白になった患者さんが次々と運び込まれてきました。対応した医療従事者の多くが「これまでより重症が多いな・・・」と感じていました。さほど基礎疾患がない患者さんでも広範囲の肺炎を起こしていることが多く、第3波以前には経験したことのない現象でした。報道されている通り、変異株(特にN501Y変異)が悪さをしているのだと直感しました。
初動で危機感を察知できたのは、当院が軽症中等症の患者さんをたくさん受け入れている病院だからです。パンデミック初期からCOVID-19を診ていない病院は、そこまで危機感を感じなかったと思います。また、重症のみを診ている施設は常に100%近い稼働を求められていますので、稼働病床が第4波で増えたとはいえ、適用する治療や医療資源の配分は、第3波とそこまで大きな乖離はないと思います。
そのため、今回の医療逼迫の矢面に立つことになったのは、広く軽症中等症を受け入れている国公立の病院や、急性期診療を広く行っている市中病院でした。当院は前者でした。
たとえば、軽症中等症のコロナ病床を5床だけ持っている小規模の病院であれば、万が一1人が重症化しても、そこに院内の医療資源を集中させればしのげます。しかし、国公立の病院は50床、60床、多いところでは90床がコロナ病床になっていますから、その中でたとえば10%が重症化すれば、人工呼吸器を装着せざるを得ない患者さんが院内にたくさん発生します。
軽症中等症病床では、この「院内で複数の人工呼吸器装着患者さんを診る」というのが少し難しいのです。なぜでしょうか。
軽症中等症病床で人工呼吸器を診ることの難しさ

人工呼吸器を装着した患者さんを管理するためには、集中治療レベルの人的資源が必要になります。人工呼吸器を上手に同期させるため鎮静薬を持続点滴し、太い血管の点滴ルートや膀胱・胃のカテーテルを管理し、こまめに体位変換し、清拭や排泄のケアもおこない・・・、数えればキリがないほど看護に手間がかかります。
集中治療室(ICU)では、こうした重症患者さんに人的資源を集中させることができますが、一般病床で人工呼吸器を装着した人と廊下を出歩く認知症高齢者をわずかな人員で同時に看護すると、医療過誤が起こりかねません。叫んでいるおじいちゃんの対応をしている最中に、別の患者さんの人工呼吸器のアラームに対応できなかったら、大変なことになるかもしれません。
大阪府には、もともと集中治療が可能な病床が630床あまり確保されています。ここでいう集中治療というのは、人工呼吸器を装着した患者さんを診る想定です。患者さん2人に対して、看護師1人という配置基準が通常です。患者さん4人に対して看護師1人という高度治療室(HCU)という急性期病床もあるのですが、ここでは原則COVID-19の重症者を受け入れていません。人工呼吸器を装着した患者さんが4人並んでいて、それを1人で看護するのは現実的ではありません。
患者さんが軽症中等症病床で重症化したとき、主に2つの選択肢があります。そのまま通常の酸素療法だけで頑張ってもらうか、人工呼吸器を装着するかです。マスクで酸素を投与しても、体の中の酸素が足りなくなってしまうと、まるでプールで溺れているような息苦しさを強いられることもあります。かなり高齢の場合、人工呼吸器を装着しても救命できる確率が低くなるかもしれませんが、若ければ人工呼吸器の装着に踏み切ることが多いです。
重症病床がパンク

第4波の変異株の威力はなかなかすさまじく、あっという間に重症病床が埋まってしまいました。私の記憶が正しければ、4月7日時点で「重症病床はもう"待ち"が発生していて、転院できません」と言われました。グラフ(図)をみても、第4波では重症病床使用率の立ち上がりが第2波・3波より急峻なのが分かります。
大阪府病床使用率
大阪府病床使用率
かくして、多くのCOVID-19を引き受けてきた軽症中等症病床では、いつ重症化するか分からない大量の患者さんを抱えた戦いが始まりました。4月に入って3週間、その間50人以上の患者さんが当院に入院したのですが、その6割以上が酸素が足りない状態(呼吸不全)に陥っており、第3波より酸素療法が必要だった割合がかなり高い状況です。
人工呼吸器を装着しても転院できないケースが大阪府内で多発し、一時、約70人の重症者が軽症中等症病床で管理されているという状況に陥りました。
重症病床に大量の"待ち"が発生していたため、重症予備軍を多数かかえることに現場の不安と負担が常に大きい状態でした。ここで人工呼吸器を装着せざるを得ない患者さんが病棟で3人、4人と発生すれば、ケアする看護師の心は折れてしまうかもしれないと感じました。
すみやかな病床確保が必要

それでも、誰かが診ないと、患者さんは自宅やホテルで病状が悪化してしまうかもしれません。実際、COVID-19と診断された人の症状が悪化して救急要請をしたものの、搬送までにかなりの時間を要した事例が報道されています。これは、軽症中等症病床に入院している患者さんの重症度が底上げされていて、人的資源が枯渇していたからです。
大阪府は改正感染症法に基づき170以上の病院に病床確保を要請しました。これにより、軽症中等症病床を追加で約1100床確保することを目指しています。ゴールデンウィークがおそらく大阪府第4波のピークになるため、新規に確保したうちの約200床は稼働させるよう依頼しています。また、待機手術もできるだけ遅らせて、使えるベッドをできるだけCOVID-19に回すよう要請しています。
ありがたいことに、府内の多数の病院が協力し、当初220床あまりだった重症の確保病床が一気に100床以上増えました(図の矢印)。
大阪府重症患者数(※府の重症の定義は「ICU入室、挿管、人工呼吸器装着、ECMO使用」のいずれかとしています。現在COVID-19でICUに入るということは、人工呼吸器を装着することとイコールです。)
大阪府重症患者数(※府の重症の定義は「ICU入室、挿管、人工呼吸器装着、ECMO使用」のいずれかとしています。現在COVID-19でICUに入るということは、人工呼吸器を装着することとイコールです。)
もちろん、病床は原泉のように湧いて出てきたわけではなく、カンフル的な捻出だとは思います。ここから先は、病床をさらに増やす以外に第4波を乗り切る方法はなさそうです。しかし、それ以外の救急医療、外科手術など集中治療も守らなければいけません。やみくもにコロナ病床を増やして、それ以外の医療がおそろかになってしまえば、通常の重症医療を医事することができなくなります。
現在、大阪府の医療従事者が一丸となってコロナに立ち向かっています。今後到来しうる第5波以降の医療逼迫を最小限にするためにも、ワクチン施策がすみやかにすすむことが重要です。
これまでの傾向から、次の波は7~9月と予想されます。できるだけ山を低くするためにも、外出を控え、マスクを装着し、密を避けるという地道な予防策を続けていく必要があります。

 
倉原優
呼吸器内科医
国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医、日本感染症学会感染症専門医、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関


[文科省天下り問題]霞が関の悪弊、総点検を

2021年04月29日 11時16分06秒 | 事件・事故


沖縄タイムス社説 

2017年1月20日 09:30

 文部科学省が組織的にOBの天下りに関わっていた疑いが強まっている。

 事務方トップの前川喜平文科事務次官が責任を取って辞任する意向を示しているが、これで幕引きにしてはならない。

 何度も退職金をもらう厚遇や官民の癒着にもつながる天下りに対する国民の目は厳しい。規制をかいくぐり、半ば公然と続いてきた霞が関の悪弊に徹底的にメスを入れるべきだ。

 国家公務員の天下りを監視する政府の第三者機関「再就職等監視委員会」が調査しているのは、文科省が元高等教育局長の早稲田大への再就職をあっせんしたとする問題である。

 元局長は退職から約2カ月後の2015年10月、早稲田大大学総合研究センターの教授に就任。この再就職で同省人事課が元局長の経歴に関する書類を送っていた疑惑が浮上している。

 当初、文科省はあっせんの事実はないと説明していたが、大学への調査で虚偽が判明したという。隠蔽(いんぺい)しようとしたのなら悪質である。 

 07年に成立した改正国家公務員法は、省庁による再就職あっせんのほか、民間企業、団体に対する求職活動などを禁じている。

 元局長の再就職は国家公務員法違反の疑いが強い。

 同様の事例は数十件に上るといい、組織的なあっせんが常態化していた可能性がある。問題の根は深い。

 過去の天下り先や件数、経緯など事実関係を明らかにした上で、厳正な対処を求めたい。

■    ■

 06年に発覚した防衛施設庁を巡る官製談合事件は、職員の天下り受け入れ実績に応じて同庁発注の土木、建築工事などを配分するという露骨なものだった。長官以下80人余りが戒告などの処分を受け、その後、施設庁は解体された。

 国家公務員法の改正は、相次ぐ談合事件を受けたもので、同法が業務と関係の深い民間企業などへの求職活動を規制するのは、官民癒着の悪弊を防ぐ狙いからだ。

 文科省高等教育局は私立を含む大学への助成金配分や運営の監督を所管する部署である。大学にとって、文科省とのパイプは重要ということなのだろうか。

 公正であるべき教育行政に疑念が持たれている以上、天下り先に特別に不当な利益が供与されていないかについても、調査し公表する必要がある。

■    ■

 監視委はきょう20日、疑惑に対する調査報告書を公表する。

 文科省の規範意識の低さは指摘されて当然だ。しかし天下りは文科省だけの問題ではない。

 利害関係企業へ大っぴらに天下るケースが影を潜める一方で天下りは巧妙化し、各省庁が民間に「指定席」を持ち代々引き継ぐ構図や、再就職を繰り返す「わたり」は根強く残る。

 規制の「抜け穴」を防ぐ取り組みと同時に、キャリア官僚が定年前に辞める慣行の改革が必要だ。

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霞が関全省庁「天下りリスト」 官僚受け入れ大学トップは京大! 
 ironna.j
 高橋洋一(嘉悦大学教授)

 文科省の天下り問題がいまだに国会で議論されている。

 10年ほど前、筆者は第1次安倍晋三政権で官邸勤務の内閣参事官として、天下りを是正する国家公務員法改正の企画立案を担当した。そのポイントは、国家公務員の再就職について、退職前に利害関係のあるところへの求職活動を禁止したこと、役所の斡旋を禁止したことと、それを監視する再就職監視委員会の設立だ。

 一般に、いわゆる「天下り」は好ましくないというが、実は公務員の再就職全般を禁止することは憲法上許されない。そこで、再就職に際して、正当なものと不当なものを分ける必要がある。何がマズいかというと、退職前に利害関係先に求職活動したり、権限を持つ役所が斡旋するから再就職を受け入れざるを得なくなることだ。そうしたものを不当な再就職として規制する。

 逆にいえば、不当な自分の求職活動や役所の介入・斡旋がなければ、正当な再就職とする。こうすれば、再就職の弊害がかなりなくなるので、求職禁止と斡旋禁止条項を設けた。そして、それらの求職、斡旋活動を監視するために再就職監視委員会を設けた。

 それと同時に、一定の役職以上の国家公務員の再就職状況を公表するようにした。内閣官房のホームページ(http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/jinji_j.html)に毎年公表されている。

 今回の早稲田大学の件でも、内閣官房のHPで毎年の再就職状況が個人名と再就職先を含めて公開されている(http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/files/kouhyou_h280920_siryou.pdf)。

 それをみると、氏名、退職時の年齢、退職時の官職、離職日、再就職日、再就職先の名称、再就職先の業務内容、再就職先における地位などが記されている。こうした資料を公開することによって、不当な再就職を牽制しようとしたのだが、今回は再就職監視委員会がよくやっており、マスコミは貢献していない。マスコミは天下り問題を報じても、こうしたネタの宝庫である原資料をまともに調べていないからだ。

 今回の文科省事件でも、文科省から提供されている資料ばかりを報じているところが多い。常日頃感じていることだが、どうして日本のマスコミは調査報道ができないのだろうか、不思議である。

 今回も人事課OBが介在して、その人物のみに焦点が当たっているが、これは役所からの情報リークにまんまとマスコミが乗っているからだ。実は、役人OBは今の制度では基本的に処罰されない。むしろ問題は実際に斡旋を行っていた現役の人事担当らにある。

 現役役人が主で、OBはその補助役でしかないことを再就職監視委員会もつかんでいるからこそ、現役役人の斡旋を違法と認定できた。はっきりいえば、現役役人が将来得られる報酬は、OBのノンキャリア職員の比ではないほど大きい。その意味で、文科省の報道で、人事課OBの「ノンキャリア」をことさら強調するのは、トカゲの尻尾切りでしかない。

話を再就職状況に戻すと、あれだけの情報の宝庫を放っておくのはもったいない。そこで本稿では、2012年4月から2016年3月まで4年間の再就職数6000件あまりの全体的な傾向を分析してみよう(一人で複数箇所に再就職しているものは複数件としてカウント)。

 再就職規制をクリアして再就職するためには、退職前での求職活動は独力かつ利害関係先以外で行うというのが基本である。退職後であっても独力でないとダメだ。

 再就職を短期間で行うためには、利害関係先でないところに退職前から準備して行う必要がある。それはなかなか大変なことである。しかし、全体の中で、退職日の翌日に再就職しているケースは多く、全体の1割程度もある。1ヶ月程度(翌日を除く)も多く、全体の2割程度である。つまり、1ヶ月以内に全体の3割が再就職しているわけだ。

次に、今回話題になっている大学への再就職状況をみてみよう。大学に限らず学校法人への再就職は、この4年間で一定役職者以上であるが、300件あまりある。

 再就職者数の多い大学は、京都大学10件、東京大学9件、日本大学9件、国際医療福祉大学9件、早稲田大学8件などとなっている。
再就職者数の多い大学
 学校法人に再就職した人の出身官庁は文科省だけに限らない。文科省が69件と多いが、全体の2割であり、他の省庁からも大学に再就職する者は多い。
学校法人へ省庁別再就職者数
 筆者もその一人であるが、役人の再就職先として大学を選択する人は少なくない。というのは、文科省以外であれば、利害関係先になることはまずなく、大学の教員公募に応じればいい。大学としても、元役人は基本的な知識もあり、さらに大学人が苦手とする「雑務」もこなせるので重宝とされることが多い。

 筆者も、役人を辞めたら何ができるか考えたとき、大学かマスコミしか無理だろうと思った。一般企業に行くのは、役所のよほどの利権を背負っていかないとできないだろうと思ったものだ。

 今回の文科省の事件は、他省庁出身の再就職とは異なる、文科省の利権があまりに強く影響して、それが目立ってしまったのだろう。しかし、再就職状況をみると、出身官庁の利権を背景とした再就職ではないかと邪推できるようなケースがないとは言い切れない。これは、再就職状況を個別に、見る人がみればわかるのだろう。

 

 

 


霞が関の「接待体質」 

2021年04月29日 11時08分58秒 | 社会・文化・政治・経済

論点

毎日新聞 2021/4/28 

 菅義偉首相の長男が勤める放送事業会社「東北新社」やNTTの幹部が総務省幹部らを接待していた問題を巡り、同省の第三者検証委員会が調査を続けている。行政がゆがめられたのではないかとの疑惑と共に、変わらない霞が関の体質に対する怒りが広がった。不適切な官民接待はなぜ起きたのか語ってもらった。

機能不全の内部通報制度 片山善博・元総務相

 総務省の幹部職員は、東北新社やNTTから高額な接待を受けていたのに届け出ていなかった。国家公務員倫理規程に違反していただけでなく、事実と異なる国会答弁をし、それが明るみに出ても平気でうそをついた。かつて、彼らの上司であった者として、誠実さに欠けた、情けない対応を見せられ、残念だった。

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《霞が関は萎縮するな》高額接待問題で元厚労官僚が緊急提言「民間人と官僚の食事は必要」
2/26(金) 18:42配信
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文春オンライン
「ステーキ海鮮で7万円なんて序の口」バブルの味を忘れられない“50代官僚”の接待感覚とは?  から続く

【画像】契機となった「ノーパンしゃぶしゃぶ」スキャンダル

 多くの議論が交わされている総務省官僚の接待問題。自身も元厚生労働省官僚(2001年入省・2019年退官)で、2020年11月に「ブラック霞が関」(新潮社)を上梓した千正康裕氏(45)が、「文春オンライン」に緊急提言を寄せた。

◆◆◆

ステレオタイプな官僚のイメージ

接待問題で処分の対象となった総務官僚ら。左から、秋本情報流通行政局長,、吉田情報流通行政局長、谷脇総務審議官、山田内閣広報官 ©️AFLO

 官僚の接待のニュースが出るたびに、非常にイヤな気持ちになる。それは、自分も官僚を長くやっていたので、常に色眼鏡で見られる経験をしてきたからだ。居酒屋で役所の先輩と飲んでいる時に、話の内容から職業がばれたようで、急に隣のテーブルのサラリーマンに絡まれたこともあるし、辞めた今でも変わらない。国民のことなど考えておらず、天下りや既得権益を守るために仕事をしている人たち、そんなステレオタイプな官僚のイメージを本当に信じている人も世の中には少なくなかったと感じる。

 1990年代の旧大蔵省の接待スキャンダルなどがあり、利害関係者からの接待などを禁止する国家公務員倫理法が2000年4月にスタートしたが、僕はその1年後に霞が関(厚労省)に入った。全省庁の新人キャリア官僚を集めての研修の最初に叩き込まれたのが国家公務員倫理法だった。今、思うと、新人に最初に叩き込むのがその内容って、ちょっと異常な気がするけど、当時の雰囲気はそんな感じだったのだろう。

 だから、僕らの世代(今の霞が関では課室長クラス)や下の世代の官僚たちは、そもそも接待の文化を知らないし、ステレオタイプな悪いイメージで世間から見られることがすごくイヤだったから、接待のようなことから距離を置いて生活するのが当たり前だった。

民間人との食事自体は、官僚にとって必要なもの
 僕自身もそうだけど、周りの官僚たちも利害関係者であろうがなかろうが、民間の人と会食する場合は割り勘にしておくのが普通だった。実態を理解して政策をつくるためには、役所の外の色々な人たちと会って話をしないといけないし、時に食事になることもある。食事は不要と思う人もいるかもしれないが、僕はそう思わない。セクターを超えて社会を一緒によくする仲間になる必要があるからだ。

 ほとんどの場合は、相手が無理にご馳走しようとはしなかったし、ちゃんとした企業の人たちはそれが分かっているので、最初から「割り勘で」と言ってきてくれる。

 まれに、どうしてもご馳走しようとする人に会ったこともある。それは、僕にご馳走して何か利益を得ようというよりも、そうするのが礼儀だ、当たり前だという民間の感覚でそうしていることが多い。利害関係者ではなかったと思うが、どうしても断れなかった時があって、先輩に相談して現金書留で送るというやり方があるよと聞いたので、そうやってお返ししたこともある。

民間と官僚のルールの衝突
 役所を辞めてからは、民間の文化の中で仕事をしているけど、仕事関係の会食で割り勘ということはあまりないということが分かってきた。民間企業には、接待費もあるし、税法上も一定の条件の下で経費として認められるのだから、法律も業務上必要だと認めていると言える。一方で、役所には接待費というものがないし、利害関係者からの接待は禁じられていて、割り勘にする必要がある。割り勘にすると、企業も会社の接待費を使えないとすれば、自腹になってしまう。

 接待の問題のほとんどは、行政をゆがめるということよりも、こういう民間の文化と霞が関のルールのぶつかりの問題だ。ここが、官僚の接待のルールと運用の難しいところだと思う。今回のことを機に国家公務員への研修も強化されるのだろうが、せっかく官僚への接待に注目が集まっているので、民間企業の人たちにも周知するよい機会だと思う。

一度だけ経験した「高額の贈り物」
 このような民間の文化と霞が関のルールのぶつかり以外に、意図的と感じるケースもあった。僕の経験の中では一度だけだが、民間企業の支援をする仕事をしていた時に、仕事の中で面会した際に、高額の贈り物を置いていかれたことがある。先方が帰ってから気づいた。この時点で、「これは怪しい人達だな」と思って付き合うのは止めたし、依頼も無視した。贈り物は送り返した。正直、迷惑以外の何物でもない。

ほとんどの官僚は接待とは無縁
 僕ら世代以下の官僚たちはルール以上に、接待というものから距離を置いているが、幹部クラスの官僚になると、相手の社会的地位もすごく高いので、自ずと行く店のレベルも上がるのだろう。夜、人と会って会食する機会も多いと思う。それも仕事のうちなのだろう。官庁の場合は、企業と違って交際費というものがないので、利害関係者以外も含めて、すべてを割り勘で自腹にするというのは難しいのかもしれないが、当然ながらルールに反して利害関係者から接待を受けるのは許されないことだ。

 今回の事案が、行政をゆがめているとしたら単なる倫理規程違反では済まされない大問題だが、それは現時点ではわからない。確実に生じている別の悪影響を指摘したい。

 今の社会課題は霞が関だけでは解決できないものばかり。今回の件が、官僚たちが民間の人と接点を持つことに委縮するようなことにだけはなってほしくない。

 また、ほとんどの官僚たちは接待などとは全く無縁の環境で日々遅くまで働いている。今、「ブラック霞が関」と言われるような過酷な労働環境の中で若手の離職が急増している。それでも社会のために働きたいと踏ん張っている人たちがたくさんいる。そういう人たちの士気が大いに下がるのが心配だろう。また、官僚志望者が激減している中で、ますます官僚という職業のイメージが悪くなってしまうのも大きなマイナスだ。

 一見、国民には関係ない話と思うかもしれないが、これ以上霞が関が疲弊していけば、政策立案能力は落ち、ミスもどんどん増えていくことは間違いない。

千正 康裕/Webオリジナル(特集班)

 

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わいせつ教員対策案 免許再交付「拒否権」 教委裁量

2021年04月29日 10時58分22秒 | 事件・事故

毎日新聞 2021/4/28 
 子どもへのわいせつ行為で懲戒免職になった教員が再び教壇に立つことを防ぐため、与野党が超党派で今国会への提出を目指している新法の条文案が27日、大筋で固まった。現在の制度では、免職になっても最短3年で教員免許を再取得できるが、新法では免許を交付する都道府県教育委員会の裁量で再交付を拒めるようにする。自民、公明両党でつくるワーキングチームで合意した。
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わいせつ教員対策与党案「簡単なルール作りではない」 文科相
2021年4月20日 教育新聞

わいせつ行為で懲戒処分を受けた教員に対し、教員免許の授与権者に「裁量的拒絶権」を与えて事実上、再び教壇に立つことがないようにする与党の法整備案について、萩生田光一文科相は4月20日の閣議後会見で、「思いを共有して議論を進めていただいていることは極めて重要だと思う」と評価した一方、「そんなに簡単なルール作りではないのではないかと心配している」と述べ、免許再交付を拒絶できる統一基準の作成などに課題があるとの所見を明らかにした。与党では、大型連休明けにも議員立法として与野党で合意し、今国会中の成立を目指している。


わいせつ教員対策の与党案について所見を述べる萩生田文科相
新法案の作成作業は与党わいせつ教員根絶立法検討ワーキングチーム(WT)が急ピッチで進めており、骨子案として▽児童生徒本人の同意の有無にかかわらず、教員による児童生徒との性交やわいせつ行為などを児童生徒性暴力と定義し、これにより、13歳以上でも生徒については本人の同意があっても性暴力と規定する▽文部科学大臣は性暴力の防止等に関する「基本指針」を定める▽懲戒処分によって教員免許が失効した場合、これまで欠格期間となる3年を経過すると自動的に再交付されていたが、この仕組みを改めて、再び免許を与えるのが適当であると認められる場合に限り、免許を再交付することとし、免許授与権者に「裁量的拒絶権」を与える--などを挙げている。

この新法案の受け止めについて、記者会見で質問を受けた萩生田文科相は「子供を守り育てる立場にある教員が、子供にわいせつな行為を行うことは決してあってはならないこと。ワーキングチームでもこのような思いを共有して議論を進めていただいていることは、極めて重要。仮に与野党で合意し、法制上の課題がクリアされるとすれば、それはいいことだと思う」と積極的に評価した。

同時に「いろいろ難しい点もあるのではないか。(懲戒処分に伴う3年の欠格期間が経過した人に対し)よその自治体では再び免許が出されて、この自治体では出さないと、その違いは何なんだ、ということがあっても困ると思う。国にその部分だけ基準を作れと言われても、地方教育行政や教員免許法との関係を考えると、そんなに簡単なルール作りではないのではないかと、ちょっと心配している」と指摘。都道府県などの教員免許の授与権者がそれぞれの裁量で再交付を拒絶する場合、その判断基準にばらつきが出る恐れがあることや、文科省が基本指針として統一基準を作成するとしても、その基準の在り方が難しいとの問題点を挙げた。

さらに「再交付の『裁量的拒絶権』を、各都道府県でどうやってバランスよく発信するのか。例えば、それを判断する人たちをどうやって選ぶのかなど、運用面ではいろいろ課題が出ると思う」とも述べ、都道府県などによる実際の運用にも課題があるとの見方を示した。

また、与党案が抱える構造的な仕組みとして、文科省が欠格期間を実質的に無期限とする教員免許法の改正に取り組み、刑法が刑執行後10年で想定する「刑の消滅」などとの整合性から、今国会での法案提出を見送った経緯を踏まえ、「結果として、私たちが考えていた法制度のアプローチとは違い、(欠格期間が過ぎた人に対する、教員免許の再交付について)全てを拒否することができないので、穴は開いてしまう」と指摘。「そこは法案が出てきた段階で考えてみたいと思う」と説明した。

与党WTでは、4月19日の会合で、骨子案について野党が大枠で賛成していることを確認。WT共同座長の馳浩衆院議員(元文科相、自民)によると、条文化に向けて詰めの作業を進め、大型連休明けには与野党で合意し、6月16日に会期末を迎える今国会中の成立を目指す。

 


新型コロナ 茨城、感染8000人超え 新規70人、重症最多20人

2021年04月29日 10時39分22秒 | 社会・文化・政治・経済

4/29(木) 4:00配信

茨城新聞クロスアイ

茨城県と水戸市は28日、県内で新型コロナウイルス感染者が新たに計70人確認されたと発表した。県内の累計感染者は8千人を超え、8040人となった。同日現在の県内の重症者は20人(前日比2人増)となり、最多を更新した。

累計が7千人を超えたのは今月9日で、3週間足らずで千人増えた。

県によると、これまでに変異株陽性と公表された人のうち、国の解析の結果、新たに16人が英国株、1人がブラジル株と判明。ブラジル株の確認は県内初めて。この陽性者は県外勤務で、県外での感染が疑われるという。また28日までに確認された陽性者のうち新たに2人が変異株と判明。

28日公表の新規感染者のうち、古河市内の事業所では30代男性の感染が判明。事業所内の陽性者は計6人に増えた。

新型コロナ感染者のうち新たに50人が回復。県内の退院・退所などは計7207人となった。

このほか、日本原子力研究開発機構は同日、核燃料サイクル工学研究所(東海村)で働く請負会社の40代作業員女性の感染を発表。水戸家裁は家事調停委員として勤務する60代女性、神栖市は健康増進課の30代男性職員の感染をそれぞれ発表した。

■県内の感染状況  
新規 70人  
累計 8040人  
うち死者 133人  
退院・退所等 7207人  
(県発表、28日午後10時現在)

 

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同志社大生一気飲み死亡で母親が大学提訴 賠償求め京都地裁に

2021年04月29日 10時33分58秒 | 事件・事故

4/27(火) 19:15配信

毎日新聞

同志社大(京都市)ダンスサークルの合宿で2016年、1年生だった男子学生が一気飲みした後に死亡したのは、大学側が安全配慮義務を怠ったからだとして、母親(52)が27日、大学に1000万円の賠償を求めて京都地裁に提訴した。

 亡くなったのは山口怜伊(れい)さん(当時19歳)。訴状などによると、合宿は16年2月22~26日、兵庫県豊岡市のホテルであり、山口さんを含むダンスサークルの男女ら29人が参加。合宿中、男子学生らは毎日、深夜から翌朝まで飲み会を開き、焼酎などを一気飲みしていた。

 26日午前0時ごろ、山口さんはトイレで意識を失って倒れているのを発見された。他の学生らが部屋まで運んだが、救急車は呼ばずに放置。午前8時すぎ、山口さんが呼吸していないのに気付いて119番し、病院で死亡が確認された。死因は急性アルコール中毒だった。

 サークルでは、上級生が1年生に一気飲みをさせることが「伝統」になっていたという。母親側は「大学は、徹底した指導や警告を発するなどして改善を促し、学生を生命身体の危険から保護する義務があったのに怠った」と主張している。同志社大は取材に「訴状が届いていないのでコメントを差し控える」としている。【中島怜子、藤河匠】

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東京・池袋暴走事故 「踏み間違えていない」 被告、改めて無罪主張

2021年04月29日 10時18分45秒 | 事件・事故

毎日新聞 2021/4/28

 
犠牲となった妻の真菜さんと長女莉子ちゃんの遺影とともに記者会見に臨む遺族の松永拓也さん=東京・霞が関の司法記者クラブで2021年4月27日午後4時34分、小川昌宏撮影
犠牲となった妻の真菜さんと長女莉子ちゃんの遺影とともに記者会見に臨む遺族の松永拓也さん=東京・霞が関の司法記者クラブで2021年4月27日午後4時34分、小川昌宏撮影
 東京・池袋で2019年4月、近くの主婦、松永真菜さん(当時31歳)と長女莉子ちゃん(同3歳)が乗用車にはねられ死亡した事故で、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)に問われた旧通産省工業技術院の元院長、飯塚幸三被告(89)は27日、東京地裁(下津健司裁判長)で開かれた被告人質問で、「ブレーキとアクセルは踏み間違えていない」と改めて無罪を主張した。「車が制御できないと思いパニックになった」としながらも、運転ミスはなかったと強調した。

 グレーのスーツに黒のネクタイ姿の飯塚被告は弁護人に車椅子を押されて入廷。裁判長に促されると、車椅子のまま証言台につき、はっきりした口調で事故の状況を語り始めた。

池袋暴走事故、被告「アクセル踏んだ記憶ない」と往生際の悪さ露呈[新聞ウォッチ]

東京・池袋で乗用車が暴走して2人が死亡、9人が重軽傷を負った事故で、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われた、89歳になる旧通産省工業技術院の元院長飯塚幸三被告が、改めて無罪を主張したという。

「踏み間違えた記憶は一切ない」---。国会の証人喚問ではよく聞くセリフだが、2年前、東京・池袋で乗用車が暴走して2人が死亡、9人が重軽傷を負った事故で、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われた、89歳になる旧通産省工業技術院の元院長飯塚幸三被告が、改めて無罪を主張したという。往生際の悪い、血も涙もない説明だったと聞いて、あきれ返る人も少なくないだろう。

きょうの各紙にも社会面で「踏み間違えていない。被告改めて無罪主張」とのタイトルで大きく取り上げているが、東京地裁で開かれた初の被告人質問では、車椅子で出廷した飯塚被告が「アクセルを踏んでいないのに加速した」と述べ、自身に過失はないとの認識を示したという。しかも、左側に車線変更しようとした際、意図せずに加速し「車が制御できず恐ろしく感じ、パニック状態になった。ブレーキを踏んだが減速せず、ますます加速した」と話したそうだ。

まるで、乗用車の『プリウス』が欠陥だったような答弁だが、これまでの公判では、走行時の記録装置にアクセルペタルを踏み込んだデータが残っていたことや、ブレーキランプが点灯していなかったとする目撃証言も明らかになっている。いわゆる“暴走老人”の踏み間違えによる運転ミスの事故の可能性が大きい。

裁判の後、遺族は会見で「これだけの物証とドライブレコーダーの映像があっても、被告は、絶対に自分は間違えていないと言う。悲しいとか苦しいとかを超越して、あきれてしまう。妻と娘の命を奪われ、被告とは本当に出会いたくなかった。永久に知らない人でいたかった」と話したという。