日本は平成をどのように生きたのか? 勃興するアジア経済を横目に、三〇年前一六%だった日本の世界GDPシェアは今や六%まで落ち込んだ。
食と農を切り捨てた「工業生産力モデル」の成功はデジタル経済への構造転換の足かせとなっている。戦後日本を再考し、転換期の世界の中で日本の未来を拓く「全体知」を探る。同時代人、内田樹氏との対談を収録。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
寺島/実郎
1947年北海道生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了後、三井物産入社。米国三井物産ワシントン事務所所長、三井物産常務執行役員、三井物産戦略研究所会長等を経て、現在は(一財)日本総合研究所会長、多摩大学学長。
国土交通省・国土審議会計画推進部会委員、経済産業省・資源エネルギー庁総合資源エネルギー調査会基本政策分科会委員等。国の審議会委員も多数を務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
寺島さんの「工業生産力モデルに立つ通商国家からの進化」を、現在の日本は工業社会から情報産業社会への転換に失敗しつつあると理解した。粗雑な工業生産モデルの緻密化に血道をあげている間に、情報産業社会の新しい段階に適応できなかったのだ。人類の自己実現の最終段階である情報産業社会はさらにさらに進展していくだろうから、GAFAを追いかけるだけでなく次の段階をにらんで準備をすることが必要だ。世界はプラットフォームの構築の競争の段階にあるが、脳・神経系産業の興隆によって、人間の5感が開発され、あらゆる産業が情報産業化するコンテンツ創造の段階には至っていない。情報産業社会の本番は今からだ。
高齢化社会については、参画がキーワードになる。人生100年時代に団塊の世代がどう向き合うかが大事なポイントになるだろう。日本人の先達たちがどのように高齢まで生きて情報を生産してきたかというモデルの発掘が大事になると思う。「遅咲き」などのテーマを追っているわたしの「人物記念館の旅」(900館超)や、「名言との対話」(1500人超)を役に立てたいと思う。
日本人の精神については人物記念館の旅や読書でわたしも追ってきた。二宮尊徳は「神道一さじ、儒仏半さじづつ」と言っている。新渡戸稲造は「日本は、仏教と神道と儒教の混合体である」「仏教では慈悲心を学び、神道からは忍耐心を学び、儒教からは道徳心を学んだ。これが武士道である。これが日本の精神だ」と語っている。森嶋通夫は「皇室は神道、政府は儒教、庶民は仏教。3つの倫理体系の伸縮的な組みわせが日本の発展に寄与した」と説明している。
戦後日本が築いてきた平和主義、民主主義を大事に守り、育てていくことが重要だ。それがアジアや世界に向けての強いメッセージになる。
「何をするかわからぬ男に任せゐる一国のことも職場のことも」というアララギの歌人・柴生田稔の歌を思い出している。
小生も著者の寺島氏とほぼ同年で、大学紛争を経験した世代である。多くの同級生は卒業後民間企業で活躍し、わが国の経済発展を支え、現在、高齢世代の一員となっている。本書で繰り返し述べられているが、わが国は工業生産力の強化と経済的豊かさを通じた幸福と平和を目指したが、世界の中での経済的な位置の低下とともに、わが国は自らの基軸を失ってしまったのではないかと指摘されている。このような状況、そして将来の状況を予測し、我が国が今後どうあるべきかを皆で考える良い視点を与えてくれる書である。
日本という国と民に向けた、寺島氏のブレない論考と主張がわかりやすく繰り返されている。日本再生論。 mxTVの3月以降の氏のコロナ特別番組と併せて私には有用な著作だった。
日本の置かれている課題と対処法が明確に示されている/本の出版時期とのタイムラグがあるので、コロナ禍という
大きな課題と地球的規模の取り組みが本では知ることができなかった。これからはこうした歴史観を背景に
近代史の深さを勉強すべきことを教示されました。
コロナで生活が揺れ動き、経済への不安も感じる中で将来への見通しを感じることができます。
コロナ後の世界、中国主導の様相露わ。
脱米国・脱日本のアジア・世界へ
世界95カ国以上が中国人民元の決済システムを採用
【米国覇権と基軸通貨ドルの崩壊】
ますます高まる反中リスク