特殊・SNS型 目立つネット送金

2025年02月07日 11時04分18秒 | 事件・事故

インターネットバンキング悪用の特殊詐欺など急増 なぜ?

去年1年間の特殊詐欺、SNSを使った投資詐欺、恋愛感情を抱かせて金銭をだまし取る「ロマンス詐欺」などの被害額は、あわせておよそ2000億円にのぼったことがわかりました。
警察庁によりますとインターネットバンキングを悪用して振り込ませる手口が急増中だということです。
便利で手軽に振込ができる一方で、銀行の窓口やATMなどと違って、声をかけて水際で被害を防ぐことができず、今後も増えるおそれがあります。

目次

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「老後資金 ほとんど持っていかれた」

 

札幌市の60代の男性は去年12月、外国語を学習するアプリで知り合った韓国籍の女性を名乗る人物に投資話を持ちかけられました。

男性は指定された口座にネットバンキングを使って、あわせておよそ3000万円を振り込み、だまし取られたということです。

男性は「老後の資金として、ためていたお金がほとんど持っていかれたので、ショックが大きいです」と話していました。

ネットバンキング悪用 被害分析すると…

インターネットバンキングはどのように特殊詐欺などに悪用されているのか。

警察庁はインターネットバンキングが悪用された特殊詐欺で、被害額が500万円以上だった1023件について分析しました。

それによりますと
▽被害者が被害に遭う前からネットバンキングの利用設定をしていたケースが742件ともっとも多く
▽犯人側の指示で被害者が新たにネットバンキングの機能付きの口座を開設したり、機能を追加したりしたケースは238件ありました。

さらに、▽犯人側が、被害者から聞き出した情報をもとに、勝手にネットバンキングの機能付きの口座を新たに開設したり、利用機能を追加したりしたケースも35件ありました。

具体的な手口の事例です。

《ケース1》

 

口座 勝手に開設されて

去年6月、富山県の70代の女性のもとに、NTTを名乗る音声ガイダンスで「携帯電話が解約されます」という電話がかかってきました。

その後、警察官や検察官を名乗る人物から電話があり、「あなたの名義の携帯電話が犯罪に使われている。優先的に調査をするには、ネットバンキングを開設する必要がある」などと伝えられたということです。

女性はネットバンキングを利用できる口座を持っていませんでしたが、「捜査に必要だ」などと言われたため、生年月日や住所などの個人情報を伝えたところ、犯人側によって、女性名義のネットバンキングの機能が付いた口座が勝手に開設されてしまったということです。

後日、女性の元には身に覚えのない自分名義のキャッシュカードが届き、再び電話で「口座は捜査のために検察が開設した。優先調査をするためには、預金をそこに移さないといけない」などと指示され、770万円を口座に振り込んだということです。

その後、相手と連絡が取れなくなったことから、銀行に問い合わせたところ、預けていたはずの770万円がなくなっていたということです。

犯人側が口座の開設時に勝手に設定した暗証番号を使い、770万円を別の口座に送金していたということです。

口座を開設するには本人確認が必要ですが、この銀行では、本人確認の書類の送付や店舗への来店は不要で、郵送でキャッシュカードが届いた際に宅配業者に運転免許証などを示して、本人確認できる仕組みだったということです。

このため、被害者が本人確認の書類を示してキャッシュカードを受け取りさえすれば、そのあとは犯人側が勝手に設定した暗証番号やパスワードを使ってネットバンキングで自由に金を移すことができたとみられています。

《ケース2》

 

ネットバンキング機能 設定してなかったのに

山口県の80代の女性は去年6月、検察官を名乗る人物から電話があり、「詐欺グループの携帯電話があなたの名義だった。共犯者として捜査するために口座を凍結する」と言われ、持っている口座の銀行名や口座番号などの情報を聞き出されてしまいました。

女性はネットバンキングの機能を設定していませんでしたが、電話で「ネットバンキングの利用申請はこちらで行う。口座を調べるためにほかの口座に入っているすべての預貯金をこの口座に移してほしい」などと指示され、口座に預けてしまったということです。

その後、犯人側によってネットバンキングで1420万円を別の口座に送金され、だまし取られてしまったということです。

“誰にも会わず振り込み”被害防止の対策難しく

なぜ、犯人側はインターネットバンキングを悪用するようになったのか。

捜査関係者は、従来の銀行の窓口やATMでの振り込みのように、被害者に声をかけて被害を水際で防いでくれる人がいないことや、ネットバンキングの振り込みの上限額が従来のATMでの振り込みの上限額よりも高額に設定できる場合が多いことなどから、犯人側にとって都合がいいと考えられているのではないかと指摘しています。

さらに、ネットバンキングを悪用した送金では「受け子」や「出し子」が存在しないため、防犯カメラを活用した捜査もできません。

また、周りが被害者に声をかけるタイミングがないため、被害に気づくまでに時間がかかってしまい、捜査や被害防止の対策を難しくしているということです。

警察庁長官官房の石井啓介参事官は「誰にも会うことなく、振り込みができてしまうということで、被害の抑止対策が完全に無効化されてしまうなど非常に課題が多い。犯人側からするとこれまで、リアルワールドでお金を受け取りに行ったり、引き出したりしていた実行役が必要ないうえに、より多くのお金を非対面でだまし取ることができるということで、利点があると考えているのではないか」と指摘しました。

そのうえで、警察庁は金融機関に対して不審な取り引きをしている口座のモニタリングの強化を求めるとともに、警察に情報を提供してもらう仕組みを整えるため調整を進めていて、金の流れから犯人を突き止めていくとしています。

また、ネットバンキングを悪用した詐欺に遭わないための注意点として、万が一の被害を最小化するために、振り込み限度額を低く設定しておくことや口座情報や暗証番号は第三者に教えないことなどを呼びかけています。

石井参事官は「日本で最初にオレオレ詐欺を確認してから20年近くが経過し、そのあいだに犯罪者たちは手口や手段を変化させて、お金をだまし取ってきた。詐欺は、人と人との信頼関係を逆手に取る、非常に悪質な犯罪だ。面識のない人からお金の話が出たら、まずは詐欺を疑ってもらい、家族や友人、警察に相談してもらいたい」と話しました。

特殊詐欺 去年1年間の被害額は過去最悪

警察庁によりますと、去年1年間に全国で確認された特殊詐欺の被害は2万987件、被害額は721億5000万円と、前の年に比べて269億円増加し、統計を取り始めた2004年以降、最も多くなりました。

また、SNSを使った投資詐欺や「ロマンス詐欺」は1万164件確認され、特殊詐欺、投資詐欺、それに「ロマンス詐欺」の3つをあわせると、被害額は1989億5000万円にのぼったということです。

いずれの詐欺もインターネットバンキングを悪用して振り込ませる手口が急増しています。

電話などで指示されてインターネットバンキングが利用できる口座を新たに開設させられたり、個人情報を聞き出され口座を勝手に作られたりして被害に遭うケースが見られるということです。

インターネットバンキングで振り込ませる手口は、従来の銀行窓口やATMでの振り込みと違い、声をかけて水際で被害を防止することができないため、今後も増えるおそれがあるということです。

警察庁は金融機関に対し、金の流れが不審な口座のモニタリングの強化を働きかけるほか、利用者に対しては振り込みの上限額の設定を低くするなど、対策を徹底してほしいと呼びかけています。


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