2003年(平成15年)に発生した事件。親族3名が電車へ投身自殺(心中)した事件で、闇金融による法外な利子と執拗な取り立てが原因であった。
概要
2003年(平成15年)6月14日未明、大阪府八尾市の主婦(当時69歳)と夫の清掃作業員(当時61歳)と主婦の長兄(当時81歳)の3人が、西日本旅客鉄道(JR西日本)大和路線(関西本線)の踏切で電車への投身自殺する心中事件が発生[1]。
主婦は自殺する直前に、闇金融による法外な利子と執拗な取り立てを苦にしていたことを書いた遺書を残していた[2]。
親族の入院費などがかさんで、自己破産した主婦は同年4月8日に090金融をしていたヤミ金融業者から1万5000円を借りた。しかし、その直後からヤミ金融業者は主婦宅だけでなく主婦のアルバイト先や友人宅や無関係の周辺住民の家にも連日電話をかけ続けるなどの脅迫的な取り立てをしていた[3]。
法外な利子で借金が膨らみ、現金15万3000円を指定する金融口座に振り込んでも、利子だけで毎週1万5000円を支払う状態に追い込まれていた。
事件発覚後に捜査機関が捜査を行い、ヤミ金業者の関係者(8人)が主婦に対して恐喝を行っていたことを特定。捜査によって、実行犯であるヤミ金業者従業員6人が逮捕された。
また、ヤミ金業者統括役も、妻の母国であるルーマニアに逃亡していたが、2006年にルーマニアの警察に逮捕され、2007年に強制送還され、3月16日、合同捜査本部に逮捕された[4][5]。
しかし、ヤミ金業者店長のみは逃亡し続け、「東京都内に潜伏している」等の断片情報はあったものの消息はつかめず、共犯者の公判中の公訴時効停止を経て、2011年(平成23年)6月22日に公訴時効が成立した[6][7]。
恐喝事件に直接関与したヤミ金融業者に在籍していた関係者に対する恐喝罪及び出資法違反(高金利)の刑事裁判の結果は以下の通り(大阪地方裁判所)。
- ヤミ金業者統括役 懲役1年10月罰金250万円(求刑:懲役3年罰金300万円)[注 1][8]。
- ヤミ金業者店長 - 公訴時効成立[6]
- ヤミ金業者顧客情報担当従業員 - 懲役4年罰金100万円(求刑:懲役6年罰金100万円)[9]
- ヤミ金業者口座管理担当従業員 - 懲役4年罰金100万円(求刑:懲役6年罰金100万円)[10]
- ヤミ金業者回収担当従業員 - 懲役4年罰金50万円(求刑:懲役5年罰金50万円)[11]
- ヤミ金業者回収担当従業員 - 懲役4年罰金50万円(求刑:懲役5年罰金50万円)[11]
- ヤミ金業者回収担当従業員 - 懲役4年罰金50万円(求刑:懲役5年罰金50万円)[11]
- ヤミ金業者回収担当従業員[注 2] - 懲役3年罰金30万円(求刑・懲役4年罰金30万円)[11]
また、遺族が上述の8人のヤミ金関係者に対して損害賠償を求めた民事訴訟で、2009年に大阪地裁は恐喝行為と夫婦[注 3]の死亡の因果関係を認定し、実行犯6人だけでなく、恐喝罪で不起訴になったヤミ金業者統括役や逃亡しているヤミ金業者店長にも使用者責任を認め、計8人のヤミ金関係者に約4800万円の支払いを命じる判決を言い渡した[12]。
また、八尾市事件の捜査の過程で、恐喝事件のヤミ金業者を含め7つのヤミ金業者を傘下に収める大がかりなヤミ金グループの存在が浮上。このヤミ金グループはのべ5万8千人に現金を貸し付け、約50億円もの収益を上げていたとされている。このヤミ金グループについては、前述の恐喝事件の関係者7人を含め関係者59人が出資法違反等で逮捕された。ヤミ金グループ最高幹部に対しては貸金業法違反(無登録営業)や出資法違反(高金利)等の罪で起訴され、懲役5年6月、罰金1000万円(求刑:懲役7年、罰金1000万円)の有罪判決が下された[13]。
この事件はヤミ金犯罪史上最悪のケーススタディの1つに数えられている[14]。この事件を契機に、無登録や違法金利のヤミ金融に関与した者への刑事罰を懲役5年以下から懲役10年以下に引き上げるヤミ金融対策法(出資法、貸金業規制法改正)が制定され、2004年1月に施行された[14]。
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