「拘置所の面会なんて、嫌ね」
「そうですね」
「人には、とても言えないわ」
春の日差しの中、公園の桜が満開だった。
「小学校の近くに、拘置所があるとはね」
「あれが小学学校?」
「ええ、私が学んだ学校。松戸駅まで歩きでしょ?」
「そうです」
「私、車なの、駅まで送るわ」
「いいですよ。近いから」
「遠慮しないで、送るわ」
30歳の悟は、女性にはまるで縁がなかったで、女性の積極さに戸惑う。
拘置所から離れた駐車場に白いベンツがあったのだ。
「乗って」女が促すので彼は従った。
「あなたと、話してみたかったので、待っていたの」
「そうですか」
拘置所でこのような女と出会うとは、彼は不思議な心持となる。
「実は、あなたは、元の彼に似ているのよ」
「そうですか」
「どこかで、食事は?どう?」
「いいですが・・・」その日、徹は面接の前に、松戸競輪場に寄り、前売り車券を買っていて、財布には3000円しか残っていなかった。
「私、ご馳走する。いいわね」
「はい、そうですか」
「あなたは、毎回、そうですか、なのね」女は声を立てて朗らかに笑った。
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