メイユウは、女の嫉妬心であったのだろうか、彼女の同居人である姉や従妹の名前なの一切を徹に明かすことはなかった。
「センセイは、わたしだけの人」彼女は徹に一途な気持ちを打ち明ける。
そして、驚くことに、既に日本の宗教団体の信者となっていた。
「センセイ、わたしと一緒に幸せになってください」と徹を弘教するまでとなる。
実は、彼女が勤務する韓国店の同僚から折伏されていたのである。
その後、メイユウの従兄が来日する。
羽振りが良くなったメイユウの従妹の話が、来日の契機となっていた。
この従兄こそが、メイユウの命運を左右するこことなったのだ。
徹がメイユウに与えた金が、皮肉にも従兄の標的となった。
新宿の大久保病院に搬送されたメイユウは、短刀で従兄に腹部を差されたものの、命を取り留めていた。
「もう、わたし、お金いらないです」メイユウが涙を流す。
徹が初めて、メイユウの柔らかい手を握りしめる。
「センセイ、わたしに、最後のキスしてください」徹は一瞬、ためらったが、それに応じた。
「わたし、北京に帰ります。さよなら、センセイのさよならのキス、とても嬉しいです」彼女は、白い数珠を握りしめていた。
徹は、改めて思った。
日本語の文字は、中国の漢字に由来する。
その意味で、中国は日本とは切っても切れない因縁のある国である。
メイユウに日本語を教える中で、そのことを徹な改め痛感していたのだ。
つまり、中国は日本にとっては、<報恩の国>とも言えたのである。
参考
折伏(しゃくぶく)とは、仏教用語で、悪人や悪法を打ち砕き、迷いを覚まさせることを意味します。
「折」は破邪の意、「伏」は顕正の意で、間違った考え方を打ち破り、正しい道に導くことを意味します。
折伏は、仏教における化導弘通(けどうぐづう)の方法のひとつで、相手の立場や考えを容認せず、その誤りを徹底的に破折して正法に導く厳しい方法です。
創価学会では、折伏を「真実を言いきっていくこと」と捉え、誠実に、まじめに、相手の幸せを願って仏法を語っていくことが折伏になるとされています。また、自分が分かっている範囲で話をし、折伏に挑戦していくことも大切です。
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