松井徹は幼い頃、母親の春子から度々、暴力を受けてきた。
ヒステリックな性格の春子は、心のイライラを息子にぶっていたのである。
だが、何故か弟の春樹にはほとんど、感情を爆発させることはなかった。
徹の血液は母親と同じB型だった。
一方の弟は父親の真司と同じA型であり、温厚で無口な父親に性格が似ていた。
1歳違いの弟が幼稚園に通っていたのに、徹は幼稚園に通っていなかった。
徹は母子家庭の幼馴染の朗と野山を駆けずり回っていた。
知恵遅れで同世代の晶子とは、畦道や堰で遊んでいた。
堰とは、田圃に水を引き入れる水路である。
畦道は蛍が飛ぶ季節となると幻想的となる。
感動する晶子の肩を抱いてみた。
小学となった徹も、母親から暴力を振るわれていた。
堰を石や木材の切れ端で堰き止め魚を獲るなど悪さをして、問題を起こしていた。
人の畑からスイカも盗んで食べていた。
母親は農業や蚕をやっていたが、父親は村の役場に勤める半農家であった。
その父親は役場に勤務していた未亡人と親しくなったことで、家庭は騒動ともなる。
「そんな顔していて、よくも女から惚れらたもんだね」母親にとっては当然の嫌味だった。
実は、相手はあろうことか幼馴染の朗の母親の峰子だったのだ。
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