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「ホストクラブの売掛金が払えない」
飲食代金をホストが立て替える「売掛金」。客の女性から見ればツケ払いの借金です。
この仕組みをめぐって、いま客の女性とホスト側のトラブルが相次いでいます。
なかには、返済のために売春を強要されたり、暴力を振るわれたりするなど事件に発展するケースも。
取材を進めると、女性たちの恋愛感情を利用したホストクラブの悪質な営業の実態がみえてきました。
(「クローズアップ現代」取材班)
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ホストクラブの女性客が「ツケ払い」にした飲食代。
本来は店側に対して女性が負う「借金」ですが、ホストクラブの「売掛金」の仕組みでは、女性に代わってホストが一時的に肩代わりする形となっています。
月に1000万円を売り上げる歌舞伎町の現役ホストが、その実態を証言しました。
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ホスト
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「売掛金のシステムは、女性から支払いがなかった場合には、店がホストの給料から天引きするなどして埋め合わせる仕組みになっています。店に入るお金は変わらないので、店としては女性の支払い能力を超えてでも利益を上げたい。その結果生まれた売掛金を回収できるかどうかは、ホスト個人の問題なので必死になって回収しようとするんです」
その一方で、多くのホストクラブでは、月間や年間で1人のホストがいかに売り上げを伸ばすかが重要視され、その売り上げ額に応じて「年間1億円プレイヤー」などともてはやされたり、店やグループから表彰されたりすることもあります。
また、近年、ホストクラブで主流となっているのがSNSを利用した集客で、ティックトックや旧ツイッターのXなどで自身のアカウントを開設して宣伝をすることで、新規の客を獲得しようとしています。
こうした発信の際に、「肩書き」になるような大きな売り上げ実績があれば、女性客へのアピールにもなります。
このため、回収できない可能性があっても売り上げを大きく見せようと「売掛金」が膨らんでいくというのです。
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ホスト
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「客に選んでもらうためには、ほかのホストと差があるように見せかけなきゃいけない。実際にそれでなびく女の子もいるし、売り上げの記録を見て『仕事ができる人なんだ』という錯覚を起こさせるためにも、やはり記録っていうのは必要なんです」
独自に入手した、大手ホストクラブのマニュアルを書き写したというメモ。
そこには、ホストクラブに慣れていない女性を取り込む巧妙な手口が記されていました。
大手のホストクラブで働いていた男性によると、「マッチングアプリ」を使った集客の指導を受けていたといいます。
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大手ホストクラブで働いていた男性
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「まずプロフィールには絶対にホストとは書かない。客の勧誘を疑われて女性がアプリの運営者に通報してしまい、アカウントが使えなくなってしまう可能性が高いからです。なので最初はホストであることを伏せて、4回ほどやりとりすれば、すぐに別のメッセージアプリに移る」。
やりとりを重ねて仲良くなり、「1度、会おう」と持ちかけ、ホストだと明かすのだといいます。そして、ホストの悪いイメージを取り除いたり、「○○ちゃんのことが好きだ。つきあいたい」と好意を持っていることを伝えたりします。
営業ではないと信じ込ませることが鍵だといいます。
そして、女性から好意を寄せられた頃を見計らい、自ら店に来たいと思うような言葉を投げかけ、来店を後押しするよう指導されたといいます。
「ホストで頑張るのが俺の目標なんだ。夢があるから、一緒に頑張れたらうれしいな」
こうして呼び込んだ女性客を性風俗で働かせることを前提に、売掛金を作らせることが常態化していたと言います。
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大手ホストクラブで働いていた男性
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「売掛をさせて、女の子がもうこの金額払えないとなったら、『もうそろそろ、そういう仕事をしなきゃいけない』と必然的に思わせる。直接、風俗の仕事の話をすれば違法なあっせんになってしまうのでそれはしませんが、女の子の容姿や年齢を踏まえて、『この子だったら風俗を始めたらこれくらい稼げる』と想像した上で、自分の中でプランを立てて接客すると決めていました」
巧妙な手口で女性に「売掛金」を作らせ、中には性風俗で働かせることを前提に営業している悪質なホストクラブの実態。
背後に、性風俗の仕事を違法に斡旋するスカウトグループの存在も見えてきました。
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スカウトグループのメンバー
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「犯罪前提とは言わないですけど、仕事を探していればまあ仕事を紹介する」
ホストが女性に直接仕事を斡旋すると、罪に問われるためスカウトグループに依頼するのだといいます。
スカウト側は、女性が斡旋した店で働けば働くほど、見返りとして報酬が得られる仕組みです。
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スカウトグループのメンバー
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「風俗に行ってもらったりとかで、とりあえずお金が発生するわけじゃないですか、その発生したお金が自分の給料になるわけなんで、その子の給料100万稼げばじゃあそれとは別で10~15%報酬として出しますよとか、女の子が稼いでくれればこっちも儲かるだけの話なんで」
スカウトグループのメンバーは、女性がすぐに性風俗店を辞めてしまわないよう、再び知り合いのホストクラブに通わせて、さらなる売掛金を作らせ、際限のない負のスパイラルに落とし込んでいくと語りました。
それでも女性が性風俗の仕事を辞めたいと言った場合は、「手段を選ばず働かせ続ける」と平然と言い放ちました。
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スカウトグループのメンバー
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「だって1日にね、何人ものをね、お客さん相手にしてまともな神経じゃそんないられないと思うんで、これどうしよう、何してもダメだっつってもう最後(薬物に)漬けるしかねえやみたいな」
今回の取材で見えてきたのは、悪質なホストクラブ側が、社会経験が少ない若い女性客に対し、恋愛感情などを利用し、たくみに心をコントロールするという営業手法。
さらに、手持ちがなくても気軽にツケ払いができてしまう「売掛金」というシステムのために借金がどこまでも膨らむ構造。
そして、その回収にあたっては犯罪すらいとわないグループが介入し、あらゆる手段で搾取を続けるという圧倒的な「闇」でした。
こうした「搾取の構造」をどう改めていくのか、国、自治体、民間が連携した抜本的な対策が求められていると感じます。
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毎日涙して心配で仕方がないです。
助け出して欲しいです。