「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2014・07・19

2014-07-19 07:15:00 | Weblog


今日の「お気に入り」。

 一瞥(いちべつ)のあはれみを我に賜ひたる老猫尊者目脂(めやに)わづらふ

 たましひを秤るは何をもてするやかすかにゆらぐ夜の気息(いき)の中

 冷したる白き豆腐が身の闇に喉より落ちてゆく夏日あり 

                      (齋藤史)

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2014・07・18

2014-07-18 08:00:00 | Weblog


今日の「お気に入り」。

 記憶の下に思ひ鎮めしことどもや〈もつてのほか〉といふ菊なます

 滑らなる水面を視れば何ごとも過ぎたるのちにうつくしげなる

 さりげなく交す挨拶「またいつか」何時と知れざる時の彼方に

                     (齋藤史)

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2014・07・17

2014-07-17 08:05:00 | Weblog


今日の「お気に入り」。

 台風すぎて事もなかりし昼ながらひりひりとしてわが擦過傷 

 坂の上に大寺ありて霖雨(ながあめ)はそのあたりより降りはじめたり

 はなびらは翳を含みぬ咲ききりてあとどれほどの持ち時間ある 

                      (齋藤史)

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2014・07・15

2014-07-15 07:00:00 | Weblog


今日の「お気に入り」。

 生きいそぎ死にいそぐべき我ならぬ花のひらくを待つ今日あした

 わが持たぬ浮袋とふ薄明を魚は身の内に抱きて生きたり 

 流言のひとひら三ひら花過ぎてことの終りしころ伝へくる

                               (齋藤史)

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2014・07・14

2014-07-14 07:45:00 | Weblog


今日の「お気に入り」。

 のぼりゆく非常階段 蒼天の下のいづこの非常をさして

 となりあふ花木咲(わら)ひていよいよに気鬱を病める松一樹あり

 遠望すればこの世のほかの時すぎてゆくらし他界の水が光れり

                         (齋藤史)

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2014・07・13

2014-07-13 06:10:00 | Weblog


今日の「お気に入り」。

 羚羊(かもしか)は岩をとびたりその細き四肢もて高く夕陽をまたぎ

 或るところにて消ゆるをねがひ蚊取香の渦の一処(ひとど)を挟みて眠る

 たやすげにこころざしなどいふ人よこころ刺されてのちの命運

                       (齋藤史)

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2014・07・11

2014-07-11 06:30:00 | Weblog


今日の「お気に入り」。

 いまわれのこころをうたふ破(や)れ蓮(はちす)茎折れ蓮の上に月照る

 青水泡(あをみなわ)ゆめのあはれも過ぎたりと思ひさだめて また濁りゆく

 ふはふはと不意にこころの浮遊してどうでもよくなるときを怖れよ

                         (齋藤史)

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2014・07・10

2014-07-10 06:40:00 | Weblog


今日の「お気に入り」。

 やはらかき空間あれば春来れば黄なる狐の子は生れにけむ

 ひそやかに地盤沈下のつづくこと残るこの樹の根は知れるらし

 植物は歩めず涙ながし得ず枯れゆく樹皮をわれはさすりぬ

                                   (齋藤史)

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2014・07・09

2014-07-09 07:10:00 | Weblog


今日の「お気に入り」。

 折りたたまれし椅子を開きて上体を仰向ければひろき曇天なりき

 或る記憶欠落しゐて人の語る片側とわれの側とことなる

 こなたを如何なる生類(しゃうるい)と見てゐるものか さだかならねど狐は逃げぬ
                            ――大丈夫よ。怖くない人間なのよ。

 かかるとき人間(ひと)ばなれわれは起すらしき ほのぼのとなりて来て微笑(わらひ)たり

                                         (齋藤史)

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2014・07・07

2014-07-07 06:35:00 | Weblog


今日の「お気に入り」。

 文豪の恋文に興味持てざりきおほかたは作品より他愛なし

 鶏頭のくれなゐ朽ちて飼ふ鶏の雌等いづれも子離れ終へつ

 ペットとして飼はるる蛇は貴種なりや田の畔に遭ひしものと異る

                        (齋藤史)

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