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更新料を支払う慣習或は慣習法の存在が否定された事例

2008年02月19日 | 契約更新と更新料
更新料を支払う旨の慣習あるいは慣習法の存否 (東京地裁平成7年12月8日判決、判例タイムズ918号)

 (事案)
 賃借人は銀座の土地を借地していた不動産会社であるが、倒産して会社更生手続が開始された。会社更生手続の中でこの不動産会社は他の会社に吸収合併されることになった。この結果、賃借権も新会社に譲渡された。そこで、地主は、新借地人である新会社に対して、賃借権譲渡の承諾料及び更新料として総額3億円を請求した。新賃借人は、更新料の支払を拒否し、譲渡承諾料について話合いをしていたが、交渉決裂となったため、地主が提訴した。

 地主は、新賃借人が、右交渉において、更新料支払約束をしたと主張、それが認められないとしても、慣習あるいは慣習法に基づいて更新料支払義務があると主張した。

 判決は、更新料の支払い合意は成立していないとした上で、慣習に基づく更新料支払請求について、次のように判決した。

 (判決要旨)
 「土地の賃貸借契約の更新に際して賃料を補充するものとしての更新料の支払がなされる事例の存することは否定し得ないところであり、東京都内、特に銀座地区においては、賃貸借契約の更新に際して、更新料が支払われる例が多くみられるが、これらの更新料の支払は、賃貸借契約の更新時における更新条件等の協議に基づいた合意の結果、支払がなされるに至ったもので、原告が主張するように、当事者間の更新料に関する合意が存しないにも関らず慣習あるいは慣習法に基づいて当然に更新料の支払がなされたという事例は散見することができない。
 したがって、東京都内、特に銀座地区においては、賃料の増額が地価の高騰に追いつかず、適正賃料額と現実の賃料額との格差が拡大する傾向にあることから、更新料の支払いが一般的に行われるとしても、右更新料の支払が、慣習あるいは慣習法に基づいてなされているという事実を認めることはできない。」

 (説明)
 更新料の支払約束がない場合、慣習によって更新料支払義務を認めることはできないということは、最高裁昭和51(1976)年10月1日判決で明確にされ、その後も地裁、高裁で同様の判決が出されており、判例上確定した見解となっている。
 本判決もこの流れの中にあるものだが、昭和51年10月1日の最高裁判決から既に久しい年月が経過している。慣習とは、日々の積み重ねで作られたり消えたりするものであるから、その間に更新料支払に関する慣行が変化することもありえる。その意味で、本判決が慣習に基づく更新料支払の慣行はない、としたことは意義があるので、判決例として紹介した。  1996.12.


(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


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