東京多摩借地借家人組合

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店舗の原状回復費は家主が負担と明確に判断した大阪高裁判決

2008年02月25日 | 最高裁と判例集
(問)店舗で通常損耗を含む原状回復特約は認められないという注目すべき判決が大阪高裁であったというが、どんな内容の裁判だったのか。

(答)大阪高裁(2006年5月23日判決)の店舗の敷金返還請求裁判で、先の最高裁(2005年12月16日)判決の厳しい認定基準を適応し、原審の京都地裁判決が覆され、借主全面勝訴の判決があった。
 裁判が提起された原因は、店舗の賃貸借契約が終了したので、貸主に預託していた敷金140万円の返還を請求した。ところが返還された金額は36万9286円だけであった。約定の償却費42万円と未払光熱費2万2114円が敷金から差引かれることはやむを得ない。だが、残金の55万8600円は当然返還されるべきものであるとして借主は京都簡裁へ敷金返還請求訴訟を提起した。
 その後、裁判は京都地裁へ移送されて審理された。貸主は裁判で、契約書には通常損耗を含む原状回復特約があり、約定の償却費44万1000円(消費税を加算している)、未払光熱費、既払返還金、及び原状回復費53万7600円を差引くと返還すべき敷金残額は一銭も無いと主張し争った。
 京都地裁は通常損耗を含む原状回復特約の成立を認め、借主の請求を棄却する判決を下した。
 借主は判決を不服として大阪高裁へ控訴した。裁判は主に原状回復義務の成否を中心に争われた。
 大阪高裁は、通常損耗を含む原状回復特約の成立の成否を最高裁(2005年12月16日)の認定基準を適用し、次のように判断した。「本件賃貸借契約において、通常損耗分についても控訴人(借主)が原状回復義務を負う旨の特約があることを認めることはできない」として原状回復特約は成立していないと認定した。
 また裁判で貸主は営業用物件においては通常損耗を含む原状回復費用を賃料に含めて徴収することは不可能であると主張した。それに対し、大阪高裁は「営業用物件であるからといって、通常損耗に係る投下資本の減価の回収、減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行うことが不可能である」とは言えないとして原状回復費の貸主負担を認定し、その上で貸主に対し、借主が請求していた金額の総てを返還するよう判決した。



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