フィルム (講談社文庫) 価格:¥ 648(税込) 発売日:2009-06-12 |
仕事の帰り、偶々寄った有楽町の三省堂で、目についた文庫本をみてぱっと買ってしまった。
小山薫堂さん、の本を読むのは初めて。「おくりびと」も見ていなくて、これまで氏の作品や活動に触れたことはなかった。
表題作の「フィルム」に感応してしまったというのが正直なところ。主人公が父の遺したものを整理しているうちに、現像されていないフィルムを見つけた、というところから、物語が展開する。
「色あせたフジカラーの緑・・」と書かれていることから、これはネガカラーのフィルムと察せられるが、知っている人はわかると思うけど、撮影済みのフィルムをそのままにしておくとふつうどんどん状態が悪くなってしまう。そのままでは化学的に安定していないので、劣化が進むらしい。
なので、撮影済みフィルムを放っておくことは、「してはいけないこと」とされていたと思うのだが・・。
巻末に写真家、飯田安国さんとの対談が掲載されているが、飯田さんは現像していないフィルムを400本ほど、保管されているのだそうだ。そんなの、大丈夫なの?もっとも、飯田さんはどうやら、モノクロフィルムを現像してないらしいので、また違うのかもしれないが。
そんなことを気にしているのは、僕にも実際経験があるからだ。高校生の頃、フィルムを買うことまではできたが、撮り終わって現像プリントするお金がなくなり、そのままにしていたのが何本もあった。15年ぐらいたって、ラボやさんに持って行ったら、親父さんからだいぶ渋られた。古くなって劣化したフィルムを現像すると、現像液が汚れるのだそうだ。それに、画像が残っているかどうかも保証できないと。それでも何とかやってもらったが、やはり写っている画像はあまりなかったように記憶している。
物語でも、やはりフィルムは劣化しいてて、1枚だけしかプリントできなかった、とされている。やっぱりねえ・・。
この「フィルム」は例外だが、これ以外の物語はたいてい何らかの形でレストランやバーの話が出てくる。この小説がどういう形で作られたのか(雑誌に連載されたとか、書き下ろしとか)、知らないが、作品に共通するのは食べ物、レストラン、バーなどの話だ。「フィルム」もワイナリーが出てくるので、この点でつながっている。
そういえば僕が本を選ぶのも、どのお店で食事しようかと店を選ぶのと似てるような気がする。新しいお店に挑戦するのもいいし、何となく気の進まないときはなじみの店(作家さん)に入るのが、安心できて良いと思ったりする。どちらかというと、僕はあまり知らないお店には行かない方だ。
作品全体を通しての感想だが、全体に少し荒っぽくて、筋運びに無理があるような設定が目立つ。映像的、テレビドラマ的、なのかもしれない。生意気なようだが、あまり完成度が高い、とう感じではない。ただ、おもしろくないかというとそうでもなくて、結構引き込まれながら読ませてくれたし、読後感も悪くない。
好きな作品を挙げるなら、「スプーン」だろう。
さて、これから夏休みです。
帰りに見た、八重洲口の「鉄道キャラパーク」