本当は今月上旬に書こうと思っていたのだけど、何かと忙しくて・・。
ニッポン放送のアナウンサー、DJだった糸居五郎氏の、最終放送があったのが、34年前の今月上旬だったので、できれば同じ時期に書きたかったと言うだけの話だが。
糸居五郎さんは、ご存じの方も多いと思うけど日本のDJの草分けのような方だった。詳しい経歴はwikipediaを見ていただきたい。
もとより僕自身、それほど糸居さんのことを詳しく知っているわけではない。僕がラジオ(深夜放送)を聞き始めた頃は、日曜深夜にソウル・フリークという番組と、月曜深夜3時のオールナイト・ニッポンを担当されていた。それぞれかなり遅い時間なので、そう毎度聞けるわけではない。ソウル・フリークは多少早い時間だったが、子供にはちょっと取っつきにくい音楽をやっていた記憶がある。オールナイトはもうすこし幅広い選曲だったと思うが、なにしろ時間が遅く、試験勉強のときに数回、聞いた程度だと思う。
ただ、僕はなんとなく直感的に、糸居さんのことが好きだった。それは、この人は相当純粋な「趣味人」だな、と思ったからだ。
いまどき(でもないが)の言い方だと「オタク」というほうが一般的かも知れないが、オタクと趣味人はやっぱりちょっと違う。戦前から趣味活動をされていた方、たとえば自動車の小林彰太郎さんとか、オーディオの菅野沖彦さんとか、あまり一般的ではないかも知れないが鉄道模型の山崎喜陽氏とか、こうした方々は、当時としては中流以上の家庭に育ち、高い教養としっかりとしたマナーを身につけた方々、と言う点で共通している。昔はよほど余裕のある家庭でないと、大学には行けなかっただろうし、趣味に没頭するような余裕は持てなかったのだろう。
糸居氏は大学卒ではないらしいが、小石川の実業家の家に育ち、服装などのしつけもかなりされていたようだ。たしか、スーツなどは気に入った店を決めて、ずっとそこで作るように、と父親から言われたそうだ(「月刊宝島」の特集で読んだと思うけど、今現物がなくて確かめられない)。物腰が柔らかくてとても上品な印象を受ける。この最終放送でも、ゲストで来てくれたディキシー・キングスの薗田憲一氏にに「こちらでお話ししてもよろしゅうございますか?」などという言い方をしている。
一方で当時としてはかなりモダンな家庭だったようで、お兄さん方がジャズのレコードなどを聴いていて、幼少の頃からそうした音楽に親しんでいたらしい。やはり最終放送で、「なにしろ物心ついて最初に聞いたのがこういった、チャールストン・ディキシーランド・ジャズだったから・・ 1920年代、まだ小学校に上がってない頃、僕ちょうどこんな音楽ばっかり聴かされて・・たとえば、あの頃覚えているのは'Who' Who stole my heart away, whoなんて、あの・あたいのはーと誰か盗んじゃったなんて、まああの、幼稚園時代の子供が一生懸命口丸めて歌ってた、あれを思い出します」と語っている。
オールナイトでは、そのときの最新ヒット曲をかけておられた記憶しかないが、糸居氏の原体験というか、音楽好きになった原点はこうしたジャズ・エイジ、1920年代狂騒の時代のジャズだったようだ。ディキシー・キングズが次はハロー・ドーリーを演奏しますというと、糸居氏は「じゃあそれ、ひとつ、盛大に・・まあぶっ放しましょう、なんて・・だんだんだんだんこんな調子になってきて Hello, Dolly!!」という感じで、かなり乗って楽しまれているようだ。
戦前に満州に渡り、森繁久彌に指導を受けてアナウンサーになられたそうだが、なんとなくそうした、大陸のロマンというか、そういうおおらかさも、氏の話しぶりに深みを与えているのだろう。
僕はここでガイ・ロンバード楽団の「素敵なあなた Bei Mir Bist Du Shoen」とか、アレキサンダー・ラグタイム・バンドなんてのを初めて聴いて、このころかなり、クラクラと来てました。時間ができたらこうした、昔のポピュラーとかを勉強したいというか、まとめて聴いてみたいと思っているんだけど・・。すごく味が「濃い」ですよね・・。うちにはグレン・ミラーとかベニー・グッドマンくらいしかないけど、かなりびしびし来ます。いま(いつ?)は、音楽もグローバライズしたぶん、薄味になっているのかも知れないな。
まあ、はなしがまとまらなくなりそうなのでこの辺で終わりにしますが、たぶん大変だったとは思うのですが、好きなことを職業にして、純粋にそれに人生を捧げた方として、僕には大変印象に深い方だったわけです。Hi, GoGoGo and Goes On!
録音は偶然、期末試験で起きていてラジオをつけて慌ててテープを探してしたものだから、前半は入っていない。写真はテープを10年ほど前にMDに落としたものを掲げいているが、オリジナルのテープも探せば出てくるはずだ。MDのテープ落としはかなりやったのだが、これもまた何らかの形で変換しないとな・・。