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2010年度 80冊目
『住居の貧困』
本間 義人 著
岩波新書
岩波新書 新赤版 1217
2009-11-20
224p 760円+税
本日朝から家事の合間を利用して、本間 義人先生の『居住の貧困』を読む。
いきなり先生付けしたのは、この本にいたく共感を覚えたからに他ならない。
日本の社会格差においては今までも色々読んできて考えさせられて佩いたが、今回は住居面からそれを痛感。
それは住居の面においても、格差拡大しているという。
問題は貧困問題にまで広がりをみせる。
当たり前の一般的なことかもしれないが、目の前を見ていると私たちにはそのような事実は見えてこない。
それをしっかりと論理に基づいて知らしめてくれる秀作だ。
本書は憲法第25条にも振れられている。
【国民の健康で文化的な生活を保障する】
などがそれである。
しかし残念なことに25条の理念を住居的に考え具体策をとられたとは言いがたい。
国や企業の業績第一主義をもと寝る流れの中で今もなおざりにされている問題点のひとつだといえよう。
そして今、派遣社員が社宅から終われ住居も困るといった日本の現状を見ると、悲しささえ感じます。
住宅困窮者は確実に増えているのです。
大阪の天王寺を年に何度か歩くことがあります。
一昨年辺から今までにはおられなかったタイプの男性や女性が大荷物を持ってへたり込まれている姿を見るのは忍びないものがありました。
こういった状況は、決してご本人のせいばかりではありません。
むしろ社会のひずみにはまり込んでしまわれた被害者だと感じます。
こういった状況は、年々深刻化の方向に向かっているようです。
大阪や上野でテント暮らしをなさっておられる方に出会いました。
彼等彼女等は幸せな笑みを浮かべ会話を楽しんでおられることも少なくありません。
しかし、そこに辿り着くまでに絶望を感じている人も多いのでしょう。
住居における貧困は憲法から考えても社会悪です。
ずいぶん昔からそういった方たちを意識的にとらえられていた作家がおられます。
安部公房先生です。
先生は記されています。
【弱者への愛は殺意が込められている】
先生はあふれんばかりの気持ちを抑え、そういった表現をなされています。
融通のきかない住宅事情。
住民票がなければ恩恵を授かれない生活保護制度。
『貧困ビジネス』だけを邪悪なものとした国、そして社会全体の、今後のていのよい生活保護受給者の切り捨て。
(ただしこの本でも『貧困ビジネス』に関しては一般論)
では、国自体も充分な対策が行われているとは言えない住居問題。
一体わたしたちに何ができるというのでしょうか?
こたえは非常にむなしいです。
しかしながらわたしたちには現状を知る、或は知ろうと試みることはできます。
今の日本に目を閉ざすことなく真実を知ろうとする。
事態はそれからだと思いますが、いかがでしょうか。
そういった意味でも、この本はお進めできる一冊だと思います。
最後までおつきあい下さいまして、ありがとうございます。
感謝申し上げます。
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