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(写真は能装束を着付けされている様子。会場中カメラで写真を撮っておられましたので、私も便乗させていただきました。
右 オペラ歌手のような声の持ち主の金春欣三氏)
公開講座 無形文化遺産の能を楽しもう
二月二十三日土曜日。
奈良市中部公民館で開かれた、テーマ『無形文化遺産の能を楽しもう』の公開講座参加。
折込新聞『リビング』には、主催者無記名。
また、能楽の曲などもない。
電話で公民館に問い合わせたものの、一向に らちは明かず。
能楽写真も掲載されていたこともあり、まずは会場に向かう。
そこは奈良ユネスコ協議会及び奈良ユネスコ協会主催であった。
ユニセフにはなじみがあるものの、ユネスコは知らない。
会場に入るとユネスコ関係者が多い。
能楽に興味を持って行った私は、少し場違いな感じを受ける。
講義は面白かった。
手塚山短期大学名誉教授の青山茂氏は、無形文化財のいでたちや意味などを手短に話される。
中でも興味深かった内容は、江戸から奈良奉行所に移ってきた 川路聖謨という武士の日記の中に書かれた内容による、奈良の文化の高さの説明。
『江戸は金持ちが小唄や上節(?)を歌うが、大和は大工や一般の人間が、「船弁慶」などを口ずさむ。・・・文化の高さに舌をまく・・・これは、みながおん祭りに出て、日常の生活の中に取り入れているからではないか・・・・・・。』
といったことが、『寧府記(紀)事』(現在 東大出版より出る)に残されているとのこと。
青山茂先生のお話、結構面白い。
続いて、金春流シテ方の金春欣三氏が、無形文化遺産の能について話された。
能楽に使われる楽器の説明や面の説明。
面はいくつか用意されていて、拝見させていただいた。
面を見ると、うれしい気持ちがこみ上げてくる。
金春欣三氏は『羽衣』の謡いを四度、謡い、会場全員に謡わせて下さった。
これがまたなかなか難しい。
言葉はすぐに覚えられたが、抑揚は独特で、リズムがとれない。
聞いている分には心地の良かった能の謡いも、自分がやるのは御免こうむりたい心境。
とはいえ、習いでもしない限りはなかなか出来ない貴重な経験とあって、心地小さ目の声で、楽しむ。
金春欣三氏の『羽衣』、面をつけずにマイクをつけて発声されると、まるで和製オペラのようで、惚れ惚れしてしまう。
あまりの素晴らしさに、息づく暇もない。
この方大正十三年生まれとは、到底思えない はりのある 通りの良いお声に、うっとりと聞き惚れる。
能楽師の声も素晴らしい・・・と痛感。
金春欣三氏はあらかじめ用意されていた ツレ用の能装束をユネスコ関係者に着付けされ、説明してくださった。
衣装と鬘、面、扇をつければ、ある程度は 能楽師のようになるのかと思っていたが、それは考え違い。
腰の具合や仕草、気品、教養など、能楽に関するそういった何もかもが、能楽師には要求されるようだ。
それは長年の練習で培うものかもしれない。
能装束を着付けられる途中、金春欣三氏のお内儀様が、
「普段、女の人は能楽師には着付けを手伝うことはしません。一般の人だから、今日は手伝っています。」
と言われた言葉が、印象深い。
大正十三年、女性も能舞台に立つことが可能となり、ながき月日が流れた今も、そういった決まりごとがあるのが、心地よくもあり、複雑な心境でもある。
しかし能楽といった、我々には異質な空間の中で、そういった伝統の名残を継承していくことも、また文化なのかもしれないと感じた。
最後に、貴重な経験をさせていただき、楽しい時間をすごさせていただきました関係者の皆様方に、厚く御礼申し上げます。
ありがとうございました。
2月23日 13:30~15:30
奈良市中部公民館 5F(奈良市上三条町)
料金 受講無料
謡いましたよ。難しかったですが、貴重な経験をさせていただきました。
謡というそうです。難しい旋律でした。聴くのと謡うのでは実際は大違い。冷や汗物でした(笑)
ハイ。綿祖も着てみたかったです。あらかじめ関係者に決められていたようです。女性は化粧をしているので、省かれたと、おっしゃっていました。