No 詩偈の短歌もどき
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1 ものごとは こころによりて つくられる 悪しきこころは 苦しみを生む
2 ものごとは こころによりて つくられる 清きこころは 福楽を生む
3 「面罵した 害されやられ 奪われた」 怨みの心 やむことがなし
4 「面罵した 害されやられ 奪われた」 思わなければ 怨みはやまむ
5 この世では 怨みをすてて 怨み止む これは真理で 永遠である
6 われわれは ここで必ず 死ぬことを 知る人いれば 争いは止む
7 この世をば 清らかなりと 思いなし 抑制せずば 悪魔がいらむ
8 この世をば 汚れていると 思いなし 抑制すれば 悪魔はいらず
9 煩悩を 残したままに 壊色なる 袈裟をきるのは ふさわしくなし
10 煩悩を 除きた後は 壊色なる 袈裟をきること ふさわしくあり
11 誤まりを 正しいことと 見える人 囚われていて 真実に到らず
12 正しきを 正しきことと 見える人 囚われなくて 真実に到る
13 屋根葺くに 粗雑なるとき 雨が漏る 修養なくば 情欲が入る
14 屋根葺くに 緻密なるとき 雨漏らず 修養すれば 情欲入らず
15 悪なせば この世あの世で 憂えたり 己が行為を 憂え悩めり
16 善なせば この世あの世で 喜べり 己が行為を 喜び楽しむ
17 悪なせば この世あの世で 悔い悩む 苦難のところで さらに悩めん
18 善なせば この世あの世で 歓喜する 幸あるところで さらに喜ぶ
19 ためになる こと多く語れども 実践なくば ただ怠りて 修行者でなし
20 少ししか ためなることを 語らずも 実践あれば 修行者である
21 はげめるは 不死の境地に あることで 勤めを続くば 死ぬことはない
22 はげみたる ことを理解し はげめるは 喜びとなり 聖者の心地す
23 道思い 忍びて健けく はげめるは 安らぎとなり 幸は無上に
24 ふるいたち 行い清く つつましく 修行をすれば 名声を得る
25 賢きは 自制・克己で 激流に 押し流されぬ 洲(しま)をつくれよ
26 心ある 人が財宝を(たから) 守るごと 勤め励むを 財宝としたり
27 放逸や 愛欲・歓楽 親しむな 思念をこらせば 楽しみを得る
28 賢きが 怠惰退け 修行せば 愚人見下ろす 山上にいて
29 怠け人 傍らにして つとめれば 追い抜かすよう 駿馬が駄馬を
30 インドラは つとめ励みて 神々の 最高の神に なれるといえり
31 いそしみて 放逸おそる 修行僧 わずらいすべて 焼きながら行く
32 いそしみて 放逸おそる 修行僧 既に近づく 涅槃の域に
33 御し難い 心をまっすぐ する人は 弓矢職人 似たるといえり
34 陸上に 投げ出されたる 魚のごと 悪魔をのがれ もがきまわれる
35 御しがたい 心をおさむ ことは善し 治めた後に 安楽があり
36 微妙なる 心を守る ことは善し 守れし後は 安楽があり
37 形なく 胸の洞窟に ひそみおる 心を御せば 死からまぬがる
38 おちつかず 真理を知らず 信念なくば 悟りの智慧は 満つることなし
39 煩悩に 汚れることなく 確として 目覚めていれば 何も恐れず
40 この身体 水がめのごと もろくあり 智慧の武器もち 悪魔に向かえ
41 もうすぐに この身大地に 横たわり 思いも失せて うち捨てられん
42 怨憎を 満たせりといえ それよりも 害悪はこぶ 邪心なるかな
43 父・母や 親しきよりも 優れかし 正しき心の なす行いが
44 この大地 閻魔や神の 世界なる 真理のことば つみ取るは誰
45 説かれたる 法句を摘みて 超えるなり 学びつとめる 人のほかなし
46 この世をば 無常と知りて 悟るなら 死の恐怖から 解き放たれん
47 花を摘む 夢中になるを 死神が さらっていくは 無常なるかな
48 花を摘み いまだ望みを 果たさずも 死神無常に 彼をさらわん
49 蜜蜂は 花を傷めず 飛び立てり 聖者も村で かくのごとあれ
50 他の人の したことせぬこと 見るなかれ 見るなら己が 行いを見よ
51 香なき 花あるごとく よき言葉 実行なくば 実ることなし
52 あでやかに 香たちたる 花のごと 善き説教は やがて実をつく
53 華かざり 花を集めて 作るごと 人の一生 よいことをなせ
54 花の香は 風に逆らい 進めぬも 徳ある人は どこでも香る
55 栴檀や 青蓮華らの 香の中で 徳の香が 最上である
56 徳行の 香は放つ 最上の 薫りは天の 神々が嗅ぐ
57 徳を積み つとめ励みて 解脱せし 人には悪魔も 近寄りがたし
58 大道に 降り積もりたる 塵・芥(ちりあくた) 時には蓮華の 咲くこともあり
59 盲いたる 凡夫の中で 仏弟子は 己れが智慧もち 光り輝く
60 眠れない 人には夜は 長くある 生死の道も 愚者には長い
61 旅に出て 優れた人に 出会わねば 一人で歩め 愚者は邪魔なり
62 子や財を もてると思う 浅はかさ 自分自身も 所有はできぬ
63 愚者がいて 己を愚だと 思いなば すなわち賢者 逆は愚者なり
64 スプーンが スープの味を 知らぬごと 愚者は賢者の 真(まこと)わからず
65 賢きは 舌がスープを 知るごとく 一瞬のうち 真理悟れり
66 愚人等は おのれ自身を いたわらず 悪行をして 苦き果実をなす
67 後悔し 涙を流し 泣くならば そんな行為は 善しくはなし
68 行動し それを嬉しく 喜べば 報いを受けど 善しきことなり
69 悪行を してもばれぬは 良きことと 思いなせるは 愚者の浅知恵
70 愚かには 苦行によりた 節食も 功徳は覚者に 及ぶことなし
71 そのカルマ 灰をかぶりた 火のごとく じわじわと燃え 愚者に寄り付く
72 愚者により 念慮は不利に はたらけり 幸を滅して 頭を砕く
73 愚者にとり 実にそぐわない 敬いを 得ようと思い あくせくとする
74 「われがした、 われのこころに したがえ」と かくして増せる 高慢ちきは
75 安らぎと 利得の道が あるという ことわり知りて 孤独を歩め
76 悪しきとこ 告げてくれるは 善き人で つきしたがえば 善きことのあり
77 いましめて 教え諭して 遠ざけよ 悪から離せば 悪に疎まる
78 悪き友 卑しき人と 交わるな 善く、尊ときと 交わるは善し
79 真理をば 喜ぶ人は 心澄み 安らかにして よく眠れかし
80 おのおのが 己が仕事を 果たすごと 賢き人は 自己を整う
81 賢きが 非難・賞賛 動じずは゛ 風に揺るがぬ 岩塊のごと
82 賢きは 真理を聞きて 静かなり 深き湖 澄みてあるごと
83 楽しきや 苦しきことに まみえても 賢者の常で 動くことなし
84 子を望む 財も国も 望むなく 真理に叶う 道を歩めよ
85 世に人は 多くいれども かの岸に 到るは少し 此岸に残る
86 真理聴き それに従う 人々は 死を超えゆきて 彼岸に至れり
87 賢きは 悪きを捨てて 善きをせよ 孤独のうちに 喜びを得よ
88 賢きは 欲楽すてて 無一物に 心のよごれ 去りて清めよ
89 心をば 正しくおさむ 住処には 煩悩もなし 執着もなし
90 旅を終え 憂いを離れ 縛られし 絆もなくば 悩みは消える
91 心ある 人は住まいを 楽しまず ここもあすこも 家を捨てらむ
92 その人の 解脱の境地 空にして 無相であれば 足跡知れず
93 92に同じ
94 感覚を 鎮め高ぶり 捨て去りし よごれなき人 神もうらやむ
95 逆らわず 慎み深く よごれなく 境地にいれば 生死は断てり
96 解脱せば 心静かで 言葉とか 身の振る舞いも 静かなるかな
97 ただ一人 涅槃を知りて 欲を断つ かくたる人は 最上である
98 村にせよ 林や低地 平地でも 聖者が住めば その地は楽し
99 人おらぬ 林楽しく 過ごされん とらわれぬ人 快求めぬゆえに
100 無益なる 千の言葉を 語るより 心静める 一句優れり
101 無益なる 千の詩がある それよりも 心静める 一詩優れり
102 無益なる 百詩を唱なう それよりも 心静まる 一詩優れり
103 戦場で 百万人に 勝よりも 己に克つが 真の勝利者
104 勝利者の 勝ちを負けに 転ずるは 神や悪魔も 梵天も不可
105 104に同じ
106 百年を 千々に火をば 祀るより 瞬間でよし 修養者祀れ
107 百年を 祀り火をば 守るより 瞬間でよし 修養者祀れ
108 功徳得る ために祭祀を 行えど 真の祀りの 功徳にならず
109 礼守り 老いたる人を 敬えば 四種のことが 増大したり
110 徳ありて 思い静かに 生きるなら 逆を百年 生きるに優る
111 智慧ありて 思い静かに 生きるなら 逆を百年 生きるに優る
112 たゆみなく 気力を持ちて 生きるなら 逆を百年 生きるに優る
113 ものごとの 生滅知りて 生きるなら 逆を百年 生きるに優る
114 死なざるの 境地を見つめ 生きるなら 逆を百年 生きるに優る
115 最上の 真理を見つめ 生きるなら 逆を百年 生きるに優る
116 急げかし 善をなすのに ためらわば 心は悪を 楽しみにする
117 悪しきこと もししたならば 断ち切れよ 悪の積もるは 苦しみとなる
118 善きことを もししたりなば 繰り返せ 善の積もるは 楽しみとなる
119 まだ悪の 報いが熟さぬ 時はよし もしきたりなば わざわいに遭う
120 まだ善の 報いが熟さぬ 時は悪し もしきたりなば 幸いに遭う
121 軽く見て 悪を積むなら 誰にでも やがて満たさる 悪のしずくで
122 軽く見て 善を積むなら 誰にでも やがて満たさる 善のしずくで
123 生きるため 毒さけるごと われわれは もろもろの悪 避けていくべし
124 もしも手に 傷なかりせば 毒されぬ 悪をせざれば 悪も及ばぬ
125 けがれなく 咎なき人を 損なわば 損なう人に 禍及ぶ
126 行いが 悪しきは地獄 善きは天 汚れのなきは 安らぎに入る
127 空や海 深山の奥の いずこでも 悪しき業より 逃げる場所なし
128 空や海 山の洞窟の いずこでも 死の脅威から 逃げる場所なし
129 人は皆 暴力におびえ 死を恐る 殺すは無論 さててもならじ
130 いけるもの 暴力におびえ 生愛し 殺すは無論 さててもならじ
131 生きものは すべてが幸福 求めてる もし害すなら 幸せはこず
132 生きものは すべてが幸福 求めてる もし害さずば 幸せきたる
133 荒々し 言葉使うな 使うなら 報いがきたり 怒りを含み
134 こわれたる 鐘のごとくに 静かなら 安らぎにいて 怒ることなし
135 牛飼いが 牛追うごとく 老いと死は 生きとし生ける もの追い立てる
136 愚か者 悪しきをすれど 気がつかず やがて悩めり 自分の業に
137 手向かわぬ 罪なき人を 傷つけば 十の災い すぐに来たらん
138 十難は 激しき痛み 衰えや おもき病や 心の乱れ
139 王からは 災いきたり 告げ口も 同胞滅び 財を失う
140 その人の 家は火が焼き 彼の身は 破れた後に 地獄に生れる
141 裸行せど はたまたいくたの 苦行せど 欲離れずば 清められずや
142 身はいかに あるとも離欲 行ずれば バラモン、沙門 比丘というべき
143 良き馬が 鞭を気にせず 走るごと 非難気にせず 走るはありや
144 鞭受けし 良馬のごとく 走れかし 思念をこらし 苦しみ除け
145 職人が やるべきことを するごとく 慎みびとは 自己ととのえよ
146 冥き道 笑いや歓び あらざらむ なぜに求めん 照らす燈明
147 飾られた 身体をみれば いろいろと 災いのあり 安らかならず
148 このすがた やがて衰ふ 病巣で 腐りて破れ 死に帰り行く
149 秋の日に 打ち捨てられし 瓢ヒサゴかな 灰白の骨 見ても悲しき
150 骨の城 壁は血・肉 塗られたり 中は老死と 高慢・欺瞞
151 麗しき 国王であれ 滅びるも 善き人の徳 滅びざるかな
152 学ぶこと 少なき人は 牛のごと 老いゆき智慧の 増えることなし
153 住む家を 探し求めて 幾たびも 輪廻の生を 経るは苦しき
154 家建てる その正体を 見つけたり 心は離れ 妄執は消え
155 魚のいぬ 池の白鷺 死ぬごとく 滅びてしまう 財を貯めずば
156 壊れたる 弓のごとくに 無用なり 財を貯めずに 清らかざれば
157 もし人が 己を愛しく 思いなば 賢き人は 目覚めてすごせ
158 まず己れ 正しくととのへ つぎ他人 教えていけば 煩いはなし
159 他の人を 教えるごとく 自律せば 他をもととのう 自己より易し
160 自分こそ 自分の主 ならざらむ 自己をととのへ 善き主得よ
161 自らが つくり生ぜし 悪業は 己を砕く ダイヤのように
162 蔓草が 沙羅の木まとい つくように 性質悪しき人 己れむしばむ
163 善からぬや ためにならぬは なし易し 善きことするは なしがたしかな
164 真の人 聖者の教え 罵れば カッタカのごと 自ら滅ぶ
165 浄、不浄 決めるは己れの 行いで 人は他人を 清められずも
166 他の人の 大事であれど 他人は他人 己がつとめを すててはならじ
167 下劣なる 仕方なじむな 怠けるな 邪ならず 煩いを断て
168 怠けるな 善行の理を 行ずれば この世あの世で 安楽に臥す
169 悪行の 理をなすなかれ 善くあれば この世あの世で 安楽に臥す
170 世の中を 泡沫・陽炎の ごとく見よ かく観たりなば 死王も寄らじ
171 世をみれば 愚かは華美に 溺れども 心ある人 執着をせず
172 怠けたる 人も後々 怠けずば 月のごとくに 世を照らすなり
173 悪行を すれど後には 善をすりゃ 月のごとくに 世を照らすなり
174 この世をば 真っ暗闇と 見切るなら 網を逃れて 鳥天に行く
175 白鳥や 神通のもの 空を行く 心ある人 悪魔に勝てり
176 逸脱し 彼岸の世界 無視すれば どんな悪でも せずはなしかな
177 物惜しみ 分配をせぬ 人たちは 天の神々 迎えてくれず
178 大地とか 天や宇宙を 統べるより 聖者の預流果に 優ることなし