神野志隆光『漢字テキストとしての古事記』(東京大学出版会、2007年2月)
『古事記』は単純に古い伝承や古語を伝えた書として見ることは出来ない。読者の側が漢字によって書き起こされたテキストを読解することで、現在の我々が何となく抱いているような神話の世界観が形成されてきた。……そういった主旨の本です。
その前提として『古事記』が書かれる前後の日本では漢字や漢籍がどの程度、あるいはどのように受容されていたかということをかなり詳しく追っていますが、漢文の訓読が日本語の語彙や文体の形成に大きな影響を与えたという指摘があったりして、このあたりの話が結構面白いですね。
『古事記』の中のエピソードの新解釈としては、従来同母妹の軽大郎女との恋愛が露見したことによって太子の地位を追われ、伊予に流されたとされてきた軽太子の話を、軽太子はあくまでも穴穂御子(安康天皇)との権力闘争に敗れたことによって太子の地位を追われたのであり、軽大郎女との恋愛はこのこととは無関係で、また同母兄妹同士の恋愛は最後まで露見しなかったとする読み方を提示しています。
語り口がやわらかい割には内容が込み入ってますが、『古事記』に興味のある人にとっては何かしら得るところのある本だと思います。
『古事記』は単純に古い伝承や古語を伝えた書として見ることは出来ない。読者の側が漢字によって書き起こされたテキストを読解することで、現在の我々が何となく抱いているような神話の世界観が形成されてきた。……そういった主旨の本です。
その前提として『古事記』が書かれる前後の日本では漢字や漢籍がどの程度、あるいはどのように受容されていたかということをかなり詳しく追っていますが、漢文の訓読が日本語の語彙や文体の形成に大きな影響を与えたという指摘があったりして、このあたりの話が結構面白いですね。
『古事記』の中のエピソードの新解釈としては、従来同母妹の軽大郎女との恋愛が露見したことによって太子の地位を追われ、伊予に流されたとされてきた軽太子の話を、軽太子はあくまでも穴穂御子(安康天皇)との権力闘争に敗れたことによって太子の地位を追われたのであり、軽大郎女との恋愛はこのこととは無関係で、また同母兄妹同士の恋愛は最後まで露見しなかったとする読み方を提示しています。
語り口がやわらかい割には内容が込み入ってますが、『古事記』に興味のある人にとっては何かしら得るところのある本だと思います。