草履で歩きながら考える

笑う門には福来たるで、マイペースでやりたいこと やってみよう♪基本PTAブログですが、日常やがんのことも綴ります。

なんちゃってスペイン旅行

2019年06月11日 | 本棚
昨日、一昨日とスペインに旅してきました。読書です。
ダン・ブラウン『オリジン』上中下を一気読み!
いや~~、面白くてやめられませんでした。先が気になって気になって。ハラハラしどおしでした。
 
ダン・ブラウンお得意の歴史探訪をかねた謎ときに、AIやネットのテーマを絡めてありました。
 
多くは語るまい。お勧めします。

岡本茂樹『いい子に育てると犯罪者になります』

2017年04月11日 | 本棚

ひさびさに本を紹介します。
ネットサーフィンしていてちょっと刺激的なタイトルの本を発見し、読んでみました。

『いい子に育てると犯罪者になります』
著:岡本茂樹
新潮新書、2016年3月

心理学をまなばれた著者は、刑務所や少年院で、犯罪をおかした人々の更生プログラムを行っておられました。「おられました」と過去形なのは、2015年に著者がなくなっているからです。この本は、遺稿をもとに出版されました。

日本の刑務所や少年院のデータが紹介されます。再犯率が高いとのこと。刑務所や少年院の刑罰の内容がすこし紹介されています。表面的な反省や、作文でかく固い決意にはほとんど意味がないそうです。

大切なのは、受刑者が抑圧していた自分の気持ちをみとめるまでよりそうこと。面接等で受刑者の罪をおかした原点をさぐっていくと、たいていは幼少期の体験にたどりつくそうです。

いくつかのケースが紹介されます。原因の考察や、受刑者のこころがほぐされていく様子がこまかくレポートされています。覚せい剤でつかまった酒井法子さんに対する考察もあります。

そして最後の章では、「幼少期の子育てで知っておきたいこと」というタイトルで、子育ての要点が紹介されています。これは、子育て中の方にはぜひ読んでいただきたい部分です。

「いい子」には2種類あるそうです。

  • 自分の気持ちを受け止めてもらって安定している、いい子(外面も内面もいい)
  • 自分を抑圧せざるをえない、「いい子」(外面だけがよい)

後者の「いい子」は、抑圧やストレスに耐えきれなくなったときに爆発し、事件や問題を起こすとのこと。ひょっとすると、いじめっ子はこのパターンかもしれません。

私個人の感想としては、この本は、娘が生まれてまもないころ読んだ児童精神科医 平井信義先生の著書にあった「いわゆるいい子の問題」を、詳しくひもといた内容だと思いました。そして、敬愛するもうひとりの児童精神科医 佐々木正美先生があまたの著書でおっしゃっていることを、すこしだけ別の角度から紹介していると思います。

ストレスを生み出す20の価値観がこの本で紹介されているので、いくつか抜粋します。

  • 「しっかりしなければ」という気持ちが強い。
  • (親や周りの人に)迷惑をかけてはいけないと思う気持ちが強い。
  • 「我慢することが大切である」と思っている。
  • 自分の素直な気持ち(「うれしい」とか「悲しい」とか「つらい」とか)をなかなか出さないほうである。
  • 「弱いことは情けない」とか「弱いことはいけない」とか思っている。
  • 完璧さをもとめてしまうところがある。

これらの価値観にしばられてしまうと、親も子も苦しくなると思います。

「チャイルド・マルトリートメント」という「大人の子どもに対する不適切な取り扱い」という意味の言葉を、私は連想しました。これについては、拙ブログ過去記事でいくつか取り上げていますので、よかったらご覧ください。


『日本人のしつけは衰退したか』広田照幸:著

2012年11月21日 | 本棚

ネットで、どこかのリンクから飛んだ文科省の
委員会記録を読んだ際、著者:広田委員の 切れ味鋭い意見に
感服して、ネット検索、ヒットしたあまたの著書の中から
タイトルに惹かれて選んだ本です。

 

  『日本人のしつけは衰退したか
   ―「教育する家族」のゆくえ』

  著:広田照幸
  講談社現代新書1448、1999年04月

 

昨今、青少年の犯罪がマスコミでクローズアップされ、
「家庭に問題があった」 「家庭の教育力が低下した」と
よく取りざたされているようです。 

そして「親学」の台頭に象徴されるような
「昔の家庭/しつけはよかった」と
主観的なイメージに基づく回顧主義が はびこっています。

…それって本当?

という素朴な疑問に対し、明快に答える一冊。

いやぁ~~、冷静明確な論点設定に脱帽。
豊富な文献に基づく歴史的事実がこれでもかこれでもかと登場。
巻末に載せられた参考文献・引用文献の数、実に159! 

切り口は、あくまで「家庭としつけ」なのですが、
明治・大正時代から、1997年までの社会環境や時代背景を踏まえた
教育近代史を読者はざざっと押さえることができます。

…惜しむらくは、この本が15年前に書かれたものだということ。
この15年間に日本はまた変化を遂げていますから、
最近の動向に対する著者の見解を知りたいです。
この点については、でも、別の文献を当たればきっとわかることでしょう。

 

*** まえがき から 少し紹介 ***

「家庭の教育力」は低下した?という命題に対し、著者は下記のイメージをまえがきで設定し、それらについて本文で検討しています。

<イメージ1>
家庭の教育力は低下している。

<イメージ1-A>
 昔は家庭のしつけがきびしかった。
<イメージ1-B>
 最近はしつけに無関心な親が増加している。
<イメージ1-C>
 家庭は外部の教育機関、特に学校にしつけを依存するようになってきている。
 

<イメージ2>
家庭の教育力の低下が、青少年の凶悪犯罪の増加を生み出している。
((A+B)の合成イメージ)

<イメージ2-A>
 近年、青少年の凶悪犯罪が増えている。
<イメージ2-B>
 それは、家庭の教育力の低下が大きな原因の一つになっている。


<イメージ3>
 家庭の教育力を高めることが、現在求められている方向である。

 

*** 紹介以上(まとめと引用、猫紫紺) ***

さて、この本は特別に、オチを書いてしまいましょうか。

結論から行くと、世間にはびこっている上記イメージは、史実とは正反対です。

 

以下は、私の私見です。

わたしの目からは、むしろ、「しつけ/我が子の教育に失敗してはいけない」と、親たちは戦々恐々としているように見えます。「少なく生んで、大事に育てる」風潮がそれに拍車をかけているようにも思えます。

そして、教育熱心になるあまり、我が子に過干渉になり、我が子の育ちを損ねている人が多いのではないか――そう思えてなりません。


『剣の天地』(上下巻)池波正太郎:著

2012年04月25日 | 本棚

池波正太郎の時代小説、それもできれば「鬼平」が
読みたくて図書館に行きました。
ですが、鬼平犯科帳は、1・2巻が借りられていたので
かわりに借りてきたのがこれ。 

選定基準は、読み跡が沢山付いていたから(笑)

 

  『剣の天地』 (上下巻)
  著:池波正太郎 
  新潮文庫、2002年1月

 

この物語については、何も知らずに
予備知識無く読みました。

上泉伊勢守秀綱(のちの上泉信綱)という、戦国時代幕開けの
武将の半生記。

伊勢守は、武芸の達人であり、鹿島神流の流れを汲む
“新陰流” を創始、これを柳生の郷へと伝えた兵法家だそうです。

読み始めは、三点リーダー(…)二つ使いの言い差し表現……
の多用に、「あれ?池波さんってこんな文体だっけ?」と
当惑しておりましたが、それに慣れてしまうと
あとはぐいぐい引き込まれました。 

武田信玄、上杉謙信に挟まれた土地に居を構える
上泉伊勢守。
戦国の勢力争いの図を楽しむもよし。

下巻で、上泉伊勢守が兵法家として生きる過程を楽しむもよし。

いきいきと活写された戦闘シーンを脳裏にうかべて楽しむもよし。

わたしは、全編に流れる

  「日本的なもの」

を堪能しました。
すなわち、武芸の境地とは、人の生き様とは、のあたりです。 
脇役の、於富という女性の生き方がまたすさまじい。


それよりなにより、読後感がすばらしく爽快でした。


『おふろじゃ おふろじゃ―バスタブ王ビドグッド』をムスメと楽しむ

2011年07月24日 | 本棚

今日、お墓参りの帰りに図書館へ寄りました。
そのときムスメが借りてきたのが、

  『おふろじゃ おふろじゃ―バスタブ王ビドグッド
  オードリー ウッド , ドン ウッド

 

ある国の、ビドグッド王が 朝から湯船に浸かり、
お風呂から出てこなくなります。

お小姓が、「お知恵拝借、お知恵拝借!」と
宮廷にいる大人の知恵をかりて、なんとかして
王様をお風呂から出そうとするのですが・・・。

という内容です。

まずは展開にびっくり。

絵が精緻なのに柔らかい印象で、とても上手です。
そして、絵を観察すると、そこここにお楽しみが隠されています!

文章は短めで小気味よく、リズムがあります。
そして、言葉が美しいです。

登場人物の表情が、どれも豊かで、楽しめます。
なによりイタズラっぽい表情が多くて
愉快な気分になれること疑いなし!

 

ただ残念なことに、この本、絶版しているらしく
中古にどこかで出会うのを待たなければいけないようです。

賞や推薦を、いっぱいとっている本なのですが…。


『出る杭を伸ばせ―教育実験校「茗溪学園」プロジェクト―』柴谷晋:著

2010年11月19日 | 本棚
茗渓学園はわたしの地元の学校。
通っていなかったけれど、
ラグビーなどで名声高い覚えがあり
興味をそそられたので読んでみました。

  『出る杭を伸ばせ―教育実験校「茗溪学園」プロジェクト―』
  著:柴谷晋
  新潮社、2009年4月

学園創設の理念から、その経緯、名物生徒・教師の
エピソードやその後などが、熱の入った筆致で
綴られています。

学園創設者は、民間企業出身の、岡本稔氏。

当時、詰め込み教育全盛だったのに
あえて「国際教育」「問題解決型学習」「課外実習の充実」を
実践なさいました。

これは、今から見ると、「ゆとり教育」理念の先駆け
だったとも思えるのです。

本著は、具体的なエピソード満載で読みやすいです。

特に印象に残ったのは、
知育偏重で育ってきた学園生が寮に入り、洗濯や生活の
基本的なことを知らず、そこを学んでいく下りです。
子育ての方針に、はっとさせられました。

『僕の妻はエイリアン-「高機能自閉症」との不思議な結婚生活』泉 流星:著

2010年10月11日 | 本棚
図書館の本棚で一目惹かれた本書。
発達障害について知りたいわたしは、
1も2も無く借りました。

高機能自閉症・アスペルガー症候群に関わる方に
お薦めしたい本です。


  『僕の妻はエイリアン-
  「高機能自閉症」との不思議な結婚生活』

  著:泉 流星
  新潮社、2005年
  新潮文庫、2008年


「異星人」を自称する高機能自閉症の妻のことを、
夫の視点から描いた渾身の一冊。

夫の視点から、

妻の困ったところや問題行動、
言葉は豊富なのにズレがちなコミュニケーション
といった、普段の生活ぶりから、

妻から見た世界、

非常な努力をして社会にとけ込む妻の様子

などが、当事者の視点から事細かに描写されていて
非常に勉強になりました。


  わたしは、実は精神科医が書いた
  大人のアスペルガー症候群(高機能自閉症の一種)の
  本を読んだことがあるのですが、
  あまり実感を伴っては来ませんでした。

  当たり前といえば当たり前ですが、説明が
  大枠の、概念や診断、特徴の一般論的なもので
  当事者の感情・気持ちに寄り添ったものでは無かったからです。
  

本書は、夫婦のエピソードと会話が中心です。

高機能自閉症の2次障害にまで至るほど
苦悩なさった当事者である、妻の言葉がふんだんに出てきます。

実感を伴った言葉です。

ご自身が困られたこと、
あるいは鋭敏な感覚の描写
診断を受けてからいい方に変わったこと。
ご夫婦で取り組まれてきた、うまくいく為の工夫。

わたしは、妻のお力に舌を巻きました。

周囲の状況、ご自身を客観的に観察できること、
ご自身に起こったことを的確に分析できること。
言いたいことを論理的に語彙豊富に説明できること。

最後までお読み頂けるとわかるのですが
わたし、度肝を抜かれてしまいました。
とても、チャレンジングな本だと、思います。

『中高年パワーが 学校とまちをつくる』岸 裕司:著

2010年08月11日 | 本棚
PTAフォーラム「PTAは「新しい公共」を切り拓けるか」に行く前に、
パネラー/呼びかけ人である岸さんの本を読んでみました。

  『中高年パワーが 学校とまちをつくる
  著:岸 裕司
  岩波書店、2005年

新興住宅地、千葉県習志野市にある「秋津」で
学校と社会を融合させて(学社融合)、
学校を核とした豊かなコミュニティを創造された
立役者である岸裕司さんの本。

学校につどう「ノリノリおじさん」たちの
楽しい活動と、それにふれあう子どもたちの描写が
主で、楽しく読めました。

途中、その「学社融合」の理念が入ります。

ですが、出てくるのは男性ばかりなのが
気になりました・・と思ったら
あとがきにあったのですが、

岸さんはビジネスマンでいらっしゃるので
秋津に関わるのは、どうしても土日となり
おとうさん仲間となってしまうので
ご容赦下さい、とありました。

  岸さんは目の前で御体験された「一次情報」で
  御本を書いていらっしゃる様子。

そして、もうひとつ後書きで気になりましたのは
岸さんはPTA改革をなさったとのこと。
これは、別の本で読めるそうです。


PTAに地域が入る、学校に地域が入ることの意義として、
わたしは、下記がキモなのではないか・・と
思います。

引用致します(太字は引用者)。

      


また、学校という装置には、「みんなと同じであれ」といった「平等」という名の押しつけもあるように思う。同時に、「自分らしくあれ」と先生や大人にいわれても友だちから浮くことをおそれての「ほんとうの自分をだしてはいけない」との気持ちをこころの底に沈めてしまい、「自尊感情」の情勢や「主体性」の獲得がままならないといったこともあるように
思う。
 そういった装置になじめずに「ふつう」をよそおい、学校に通いつづけて卒業していく子どもたちは、あまたいるのだろうと思うのである。
 しかも少青年期のほとんどを暮らす校区社会に、他社とのコミュニケーション能力をつちかう機会や場がなく、学校装置と同じような「居場所のなさ感覚」のまま成長したとしたら、その子のいきつくさきは目にみえているように思うのである。

 しかし、秋津のように多種多様な大人とふれあう機会が多くある学校や校区社会であれば、誰かがその子のよい点をすくいあげ、なんらかで認めはげますチャンスが増大するだろう。かなりの数の子どもたちが癒され「学校って楽しいところ」や「校区ってやさしい」との豊かな感情が育まれるだろうと思うのである。なかには、「たちなおるきっかけ」を得るつまずいていた子がいるかもしれない。

『吉越式会議』吉越浩一郎:著

2010年06月24日 | 本棚
日経ビジネスオンラインで、気になる会議術の
連載がありました。

  吉越浩一郎の「結果の出る会議」

です。これはご紹介する本『吉越式会議』の
ダイジェスト版でありました。
早速図書館で3月に予約したのに、大人気で、
手元に届くまで3ヶ月ほどかかりました。


  『吉越式会議
  著:吉越浩一郎
  講談社、2009年11月


吉越氏は、トリンプ・インターナショナル・ジャパンを
お辞めになるまで、
19期連続増収増益を達成なさったとか。

その最大の要因が、早朝会議にあったそうです。

  その他にも、フランス女性を奥様に持たれる吉越氏、
  社員の残業を徹底して排除されたということが
  わたしにとっては憧憬でもあります。

毎朝8時30分からの全社会議で、1時間半にわたって
毎日、40の議題を次々に処理なさっていたそうです。

そう、1議題に掛ける時間は、たったの2分で!!

社長同席の会議室の他、遠隔地はオンラインでつなぎ、
役員から若手担当者までをフラットに
情報共有する仕組みだそうです。


      


アマゾンの著者メッセージを引用すると

本来、会議の基本的な目的とは、「課題や問題を顕在化し、最適な解決策を発見して実行し、再発防止につなげていく」ことです。報告する場や話し合う場ではなく、物事を決め、前に進める場にすべきなのです。

だそうです。

      


会議は、現場に近い担当者に、吉越氏が納得いかれるまで
質問をする、というスタイルだそうです。
ときには、葉書大の資料に図を書きながら。

そうして、議事録はその日の午前中には関係者に配信され、
案件によっては徹底して整備されたマニュアルに
反映もされるそうです。

なんというすばらしさ!!


実は吉越氏、ロジカル・シンキングを徹底して
身につけていらっしゃるようなんです。

  本の見返しには、ドイツに留学経験がおありになり、
  外資系会社を何社か渡り歩かれたあと、
  トリンプ・インターナショナル・香港で
  マーケティングを担当され、同ジャパンに勤務、とあります。
 
  そして、本文には、奥様からロジカル・シンキングを
  たたき込まれた旨の記述も。

ロジカル・シンキングは、「事実を積み上げ、データを分析し、
論理的に詰めていく」ことだそうです。

つまり、日本の組織での意志決定に顔を出しがちな

  GNN(義理・人情・浪花節)
  「好き」「嫌い」の感情
  情緒

  はたまた私利私欲!!

を排除し、海外の会社では重要視されているFairness(公平さ)を
達成するにはロジカル・シンキングを徹底するしかない、と。

「ロジカルになれれば、個人個人が、"自立した個"になる」

とのことで、そんな会社、憧れます♪


      


本書の吉越さんといい、もとリクルートの藤原和博さんといい、
超デキるビジネスマンのお書きになった本は、
論旨が明快で、情報が整理されていて非常に読みやすいな、
という印象を持ちました。

『民主主義が一度もなかった国・日本』宮台真司・福山哲郎:共著

2010年04月07日 | 本棚
すごい本を借りてしまった!

外務副大臣 福山哲郎氏と、社会学者 宮台真司氏の
対談本です。


  『民主主義が一度もなかった国・日本
  共著:宮台真司福山哲郎
  幻冬舎新書、2009年11月


去年の総選挙で民主党が大勝して、
内閣が組閣された後1ヶ月目で、
宮台氏と福山氏の7時間に及ぶ対談が本になりました。

宮台氏のブログに、その経緯が詳しく記されています。

対談の密度、濃厚です。

宮台氏の博識ぶりに驚きました。

  毒舌な面がおありになるけれど、説明がわかりやすいし
  物事の考え方が勉強になります。

福山氏は、民主党のマニフェストを起草された方です。


民主党が政権を取って、官僚とのやりとりの中で
初めて見えてきたこと。

自民党と民主党の違い。

民主党のそれは風通しの良さ!
各副大臣同士で密に情報共有・意志決定すること。

自民党は、各派閥の代表が持ち回りで
大臣職に就いているため、官僚側はあえて
別の情報を上げて決済を図っていたこと。


保守とリベラルの意味が、欧州米国・日本で
異なること。


子ども手当の意味。

『子どもの貧困白書』明石書店
 読めば、わかりますが
より詳しく解説されています。


外務副大臣 福山哲郎氏がずっと携わって
いらっしゃる
環境問題について。

自民政権が出してきた
CO2削減 36万円家計負担増説
算出条件のいいかげんさの解説。


国連気候変動サミットで、鳩山首相が
英語で演説なさり、CO2 25%削減を宣言
なさったことの意味。各国の評価。


国内問題から国際問題まで、
内容は幅広く、
とても紹介しきれる物ではありません。

正直申し上げて、わたしには難しくて
分からない部分もありましたが
非常に勉強になりました。
また、読みたい本です。

『けっぱり先生』山口 瞳:著

2010年04月03日 | 本棚
学校の先生がこんな感じだったらいいよね、という話を
どこかの掲示板で見かけたので
図書館で借りてみました。


  『けっぱり先生
  著:山口 瞳
  新潮社、昭和47年(1972年)
  新潮文庫、1975年


私立の小中高大学一貫校を経営する 名物校長
猪俣先生、通称「けっぱり先生」を取材に行く
新聞記者 宮川氏の視点から描かれた小説。

取材のきっかけは、なんと 卒業式に
「仰げば尊し」を歌わない学校がある、と聞いたから。

けっぱり先生は、熱血で暖かい人柄、先生としても立派。
そして即断即決の リーダータイプの経営者でもあります。

そのけっぱり先生を慕って、学園には
熱意ある先生達が集い、薄給ながらも
学校近くにある社宅で なにかあると集い、お酒を飲みながら
心の通い合った密な人間関係をつくっています。

この感じ、なつかしく、あたたかい。

1972年と言えば、大阪万博が一段落し、オイルショックが来る直前。
首都圏移転の筑波学園都市構想が煮詰まりつつある頃でもあります。
日本が、まだ、いい時代だったころ。

会話中心の文体は、日本語が美しかった頃の
礼儀正しさや、あるいは、言いにくいことをも親しい間柄では
上手にずけずけと言える、日本語の語彙の豊富さ、

コミュニケーションのお手本としての読み方が
ある意味、出来るかも知れません。

一番、はっとした箇所、引用致します。

      


*******

「宮川さん、私は、中国大陸で三年間も過ごしたんですよ。日本に帰りたくて仕方がなかった。しかし、それは考えるだけで不可能なことだったんです。絶望的な状態でした。ですけれどね、もし、日本に帰れたら、と思いましたよ。もし、生きて日本に帰ることができたら、大和の古寺を訪れたい。毎日、そう思っていました。せつないくらいに」
「……………」
「歴史のなかに自分の生命を没入して、たとえば三笠山でもいいんですけれど、春の日に、何も考えずに寝ころんでみたいと思っていましたよ。外地に何年間も暮らすと、そういう気分になるんですよ。これは、経験がないとわからないことですが」
「わかりますよ」
 玉井も、しんみりとした口調で言った。
「大和・京洛を旅してみたいと切実に思いましたね。そうなんですよ、玉井君もやっとわかてきたんですよ。歴史というものがね、学問でなくて、体で分かってくるんですよ。それが本当の学問なんですけれどね
 猪俣は話を続けた。
「やっとわかってきたというのは、人間らしくなったってことですよ。教師でなくて人間になってきたんですなあ。それが嬉しくて……」

*******

(注:玉井は教師のひとり、太字は猫紫紺の手による)

まぁ、けっぱり先生のお言葉は、日本人の直感に基づいていて
正直いって時代を感じる論理でもあるのだけれど・・。

日本人の、心のありようを示した言葉だと思えてなりません。


      


ほかにも、気になる生徒が登場したり
学園紛争が起こったりと、エピソードは満載です。

そんな中で、教育担当記者の宮川氏、けっぱり先生、
学園に勤める先生達の視点から、
当時の教育問題が、切々と、綴られています。

・・・これが、現代の問題と驚くほど共通しているの!!

学歴主義、上級校への試験対策としての学園でいいのか、
高校は高校の、中学は中学での勉強の仕方があるのではないか、
小学校は学校が楽しければいい、宿題はいらないから放課後は遊んで、ランドセルは採用しない。

などなど、教育のあり方の考察が盛りだくさんです。
教育をよくしようという情熱があふれています!

また、PTAの存在も無視できません。

個人的な利益を求め、学校へ横車を押しつけに来る圧力団体として
描かれています。作中に出てくるPTA婦人の、物の見方のくだらなさといったら!
そしてPTA解散を、けっぱり先生は提案するのでした。


教育問題の本質は、40年近く変わらないのかぁ!
問題をこのまま引きずっているから、今がこんなにも
ひずんでいるのか・・・と、思いました。


そして、感動のラスト!

読後感は、あくまでもさわやかです。

『ドキュメント ゆとり教育崩壊』小松夏樹:著

2010年03月26日 | 本棚
知人に教わったので読んでみました。


  『ドキュメント ゆとり教育崩壊
  著:小松夏樹
  中公新書ラクレ、2002年2月


ちょっと前の本なので、最新動向は
踏まえていないことに注意。

著者の小松氏は、読売新聞の記者でいらっしゃいます。

氏が、埼玉県の業者テスト偏差値問題を報道後、
教育とはしばらく遠ざかったセクションにいて、
ふたたび教育部門に戻ったら、
「ゆとり教育」が推進され、しかも揺り戻しが来ていたとのこと。

その有様を、つぶさに取材して
外部の目線で「なにがおこったか」を
描いておられます。

寺脇研氏がおっしゃっていた
ゆとり教育の本質、を示す言葉は一切出てきません。
(追記:わたし個人としては、この理念に共感しています)

目次を紹介します。

******

序章 「よい」学校、「わるい」学校チェックリスト
第1章 「ゆとり教育」をめぐる戦後教育小史
第2章 一・五ショック—2001年1月、「ゆとり教育」の転換点
第3章 教科書検定の攻防—学習内容削減の経緯
第4章 学力って何だ—データが語る事実
第5章 そしてエリートの養成へ
第6章 教育の再生はあるのか
終章 学校が変わってきた

******

どちらかというと、
ゆとり教育に伴って授業の時間数が減るために
授業内容(教科書内容)まで変な風に削ってしまった
文科省と世間の心配をめぐるドタバタ劇のレポート
と読めました。

公立校を週休5日制にして授業のコマが減る、
総合的な学習の時間が出来ることで教科学習のコマが減る、
それに併せて
学習指導要領の内容を3割削ったそうなのですが、

教科書に載せる内容を、その少ない指導要領に合わせて
教科書執筆者のわかりやすく理解を促す記述や
地域差に配慮した記述を、
四角四面に機械的にバッサリ切ってしまった時期があったそうです。

そして、学習指導要領に載っている内容についての
解釈は、ここまで教えれば充分という「上限基準」から
発展的な内容を教えても良いという「最低基準」に
ころっと変わったのでした。

これって、教科書をもとに教える先生の力量で
授業の質がものすごく変わること、示唆しています。

教える内容を理解して、話をきく子どもの状況を把握して
臨機応変に、子ども達が理解できるように教えられる
先生でしたらいいのですけれど、

教科書をただ読んで済ませるタイプの先生でしたら
ちょっとね・・。心配です。

あ、でも、今春から、また指導要領が変わるのでしたっけ。


      



pp.91-133「学力」と「生きる力」
の考察は必見。適宜まとめながら引用します。


狭義の学力を仮に 学力A とする。

学力Aとは、主に座学で身につける知識・技能が含まれるだろう。

Aのうち「読み書き計算」は、子ども時代に身につけるべき
「狭義の基礎学力」といえそうなので 学力a とする。

「大学生の学力低下」と言われる場合は、主にAまたはaの低下を指す。

学力Aに対し、学力Bを定義する。

問題解決能力や理解力、思考力、創造性、意欲、関心、
時にはコミュニケーション能力を付け加えたものを、学力Bとする。

学力A+学力Bを、総合的に考えたものを、本当の学力、
つまり「生きる力」と考える。

以前の文科省の場合、都合により学力AとBを切り分けて
考えていたとのこと。


さて、ペーパーテストで測れるものは、学力Aだけではなく
最近では学力Bも測れるタイプのものもある。

IEAの学力調査:A
PISA調査:A+B

・・という具合。
さらに著者は、種々の学力調査のデータを挙げて、
日本の子どもの学力傾向や、保護者の意識に迫っています。

PISA調査では、日本の子ども、めんどくさそーな
長文の記述式問題に、手を付けずにスルーする率が
他国に比べて高いんだそうです。

  思考力を鍛えず、悪い意味での要領を覚えるという
  傾向にあるのかしら??
  わたしには、危険信号に思えます。


      



そして、本の最後を、当時の文科省事務次官でおられる
小野元之氏のインタビューで締めくくられています。

出来る子への対応が心配された「ゆとり教育」。
特に理科数学では、理解に必要なステップをひとつ
抜いたりしたそうです。

舵を切った「ゆとり教育」ではありますが
それをもっと超えた視点で
より重要な問題点を正視され、思い切った提言を
なさったご様子が感じられます。


      



偉そうに書いてしまって、申し訳ないです。

・・・なんだか、役所って、大変なところだなあ、と
思いました。

全国規模のことをを考えて、矛盾が出ないよう緻密な体系を
作り上げるっていうのは、ものすごくエネルギーが
いるんじゃないかしら・・?

でもって、皆さん優秀で、もちろん国全体のことを
お考えになって それぞれがベストを尽くして
最適解を求めていらっしゃるはず。

しかし、時代の変化は早すぎて、10年前のベストは
今では通用しないかもしれません。

「間違えました」とは口が裂けても言えないのが
役所のメンツらしいのですが
自分で自分を縛っているようにしか思えないなぁ・・。

大鑑巨砲主義で進路を変えにくくするより
意志決定を任せた小型艦の遊撃隊を、
しっかりとした情報伝達のしくみで支える方が
効率がいいような気がするのですが。

『オバサンとサムライ』養老 孟司+テリー伊藤:著

2010年03月08日 | 本棚
養老 孟司さんの本を前から読んでみたいと
思っていました。

図書館で、一番とっつき易そうで
面白いタイトルの本書を発見、借りてみました。


  『オバサンとサムライ
  著:養老 孟司テリー伊藤
  宝島社、2004年8月
  宝島SUGOI文庫


養老 孟司さんと、テリー伊藤さんの対談本。
テーマは、日本と、日本人。

ケラケラとよく笑って一気に読み終わった割には
なぜか読後にすっきりしなかったのが
不思議です。



目次を引用してみます。

第1章 日本人が自信を取り戻すための秘策-幸せになるためにお金はいくら必要なのか?
第2章 壊せ!"日本の壁"-一億総ウソつき化現象
第3章 日本人は自分の人生を生きているか?-つまらない仕事でも面白くする秘訣がある
第4章 日本人の正体-中国人、韓国人が日本人の悪口を言えなくなる日
第5章 サムライ精神は必要か?-"サムライ道"は幻想である
第6章 "オバサン道"宣言!-フリーターの増加は悪いことじゃない


すっごく、まじめで硬い話から始まって

養老さんの視点も面白いし
おっしゃってることも面白い。
へぇ~!っと思うことがいっぱい。

テリーさんの相づちの打ち方も、上手。

面白いな、いいな、と思ったのは以下の5点。

  
  1日に10分以上は、人工物でないものを眺めよ

  虚業と実業の話
  日本の昔のコミュニティの話

  水道の塩素消毒が始まってから、女性と幼児の寿命が延びた話

  悩むのも能力のうち・悩まないのも能力のうち


多岐にわたった話の結論が、目次をご覧になると
一目瞭然なので書いちゃいますけれど

元気でない日本人へ、サムライ道ではなく
オバサン道を目指そうよ!
最強のオバサンは、あの〇〇さんだ!

となって
その方にお話をテリーさんが聴きにいって
秘訣を聞き出してこられた、という結末。


この展開に、面白い、と思ったと同時に
な~んだ、と思ったのも事実。

だって、オバサン予備軍であるわたしには、
〇〇さんのおっしゃったことは、あたりまえで
そんなに珍しくなかったのです。
背伸びをしない、など10箇条。

そう、日常のごく当たり前に思えることが、
実は大事なんだよね。

と、いうことに、オトナのオトコたちが
新鮮に感動している!!
という事実は、結構発見でありました。

オトコとオンナの思考回路の違いを知るには
戦中世代の方の考え方を知るには
いい本かも、と思います。

『さらば ゆとり教育』寺脇 研:著

2010年03月02日 | 本棚
わたしは不勉強にして、PTAのシンポジウムに出るまで
寺脇研氏のことを存じ上げませんでした。
もちろん、「ゆとり教育」の推進者だったことも。

でも、シンポジウムで生寺脇氏を一目拝見し
「ひとかどの人物」だと直感、
氏の発言がいちいち理にかなっていると感じたので
会場でも売っていた
この本を読んでみる気になりました。


  『さらば ゆとり教育
   A Farewell to Free Education
   -学力崩壊の「戦犯」と呼ばれて

  著:寺脇 研
  光文社ペーパーバックス、2008年


「ゆとり教育」を推進された方の本。



「ゆとり教育」って何なのでしょう?

恥ずかしながら
円周率が「およそ3」になることくらいしか
認識していなかったわたし。

  「円周率3」については、大手塾「日能研」の
  広告戦略だったことが言及されています。


学校が週休2日制になったこと、
教科書が薄くなったこと、
生活科が新設されたこと。

これも、「ゆとり教育」の一環だそうですが、

その真のねらいは、

  「成熟社会で自己実現するための教育」

だそうです。


多様な価値観を持つ社会にシフトしている昨今、
自分で自分の生き方を決められるように、
自分の頭でものを考えられるように、

乏しくなりつつある「体験」を
授業に取り込む工夫・・・etc

「ゆとり教育」の特徴や意義、
導入された歴史的背景を縷々述べておられます。


また、「ゆとり教育」への批判も現在あるそうで
官庁の裏話を含むそれへの反論が
小気味よい。


この本や寺脇氏への批判も、ネットを見ると
けっこうあるようですが、
わたしは総じて、面白く読めました。

寺脇氏の

  説明の歯切れの良さ、
  論旨の明快さ、
  ものの見方の公正さ
  (例えば、論敵を「軸がぶれない」という点から評価)

は、小気味がよいですし、わたしにとっては好印象。

けれど、「わかりやすさ」の裏には
何かがこぼれていそうで
心配を感じるのも事実ですが。


また、氏が主張している価値観


  「過度な公平」より「公正」(悪平等の対の概念)

  「分をわきまえる」のは大切(自分の能力を知る)

  集めた情報や知識を吟味し《本質を見極める》力が必要

  「全教科平均に好きになれ」は無理な話、
  得意を見つけてそれを伸ばせ

  知識をただ詰め込むより、そこに至る考え方を
  理解するように

  偏差値による輪切りで、自動的に進路を決めるのではなく
  本人の意志を尊重せよ


などは、自分がもともと持っている価値観に
ほど近く、「はっ」とさせられつつも
頷きながら読めました。


・・・もっとも「ゆとり教育」批判本も読まないと、
教育については語れないかも知れません。

わたし、まだまだ、ものの見方がアレかも知れません。
10年経って再読すると、感想が変わるのかしら。

芯のところは、子どもがハッピーで
自分の人生をたくましく生きる力を身につけてくれれば
それでよいではないか、とも思うのです。

『海辺の小さな町』宮城谷 昌光:著

2010年02月17日 | 本棚
図書館で
「あっ、珍しい。宮城谷さんの現代小説だ~!」
と借りてきた本。


  『海辺の小さな町
  著:宮城谷 昌光
  朝日新聞社、1996年
  文春文庫、2002年


宮城谷昌光さんは、中国の歴史小説を
得意とされ、いまは文藝春秋で『三国志』を
連載されておられます。

で、、『海辺の小さな町』を読んで思ったのは

宮城谷さんは、感性の鋭い、こころの綺麗な方だな~・・。

ということ。

芸術家の感性、かくあるべし、という感じ。


主人公は大学生の青年で、カメラのことを
軸にお話が展開されます。
それもそのはず、雑誌『アサヒカメラ』の
連載小説だったそうです。

カメラの入門書としても、読めるかも。
他の要素は、お楽しみです。