10月10日(木)は雲が多い空でも日差しが届き、朝晩はヒンヤリするものの、昼間は過ごしやすい体感になりました。
区長会視察研修の2日目は、宿泊先のホテルの前で昨夜お世話になった仲居さんと記念撮影をしてから、午前7時45分に出発し、豊田市旭地区敷島自治区に伺いました。
しきしまの家運営協議会 事務局長兼一般社団法人押井営農組合 代表理事 鈴木為吉氏から「これからの地域自治と食の自給」と題して説明をしていただきました。
2005年に豊田市が合併し、都市と山村が共存する「日本の縮図」となり、中山間地域の旭地区敷島自治区は、人口877人、世帯数322世帯、9集落(町内会)があり、公共施設は、旭中学校、敷島小学校、杉本こども園、杉本郵便局、杉本駐在所があるとのことでした。
押井の里は、敷島自治区の1集落で、(一社)押井営農組合は、押井平成23年に集落営農組織になり、トラクターなど農業機械を導入し取り組んできて、農業関係の制約が少ない「一般社団法人化」のため、平成30年度の2019年1月8日に法人登記をしました。
令和元年度からライスセンターと保冷庫を整備し、「自給家族」の募集を始め、令和2年度に「自給家族」を商標登録し、50家族でスタートして、令和4年度には100家族となり、横展開が開始されました。
(一社)押井営農組合の概要は、組合員数24戸(非農家1戸)、役員6人、経営耕地は直営3.5ha、作業受託10.5ha、生産作物は水稲、従業員はオペレーター2人、補助作業3人(季節雇用)とのことでした。
押井の里は、森と谷間の僅かな農地しかなく、人口68人であるが、そこには3000年にわたる人の営みがあり、それは土地に根差した食の自給の歴史がありました。しかし、この50年で里は消滅に向かい始めてしまい、それは農の営みを諦めた時に集落は消滅に向かうので、「自給」に集落存続のヒントがあるのではないかと、押井営農組織の取組を行っているとのことでした。
押井の里・押井営農組織のチャレンジとして、源流米ミネアサヒCSAプロジェクトが行われています。それは、一般社団法人を設立し、「地域まるっと中間管理方式」による安心で確実な農地の集約を行いました。
また、米の自給家族に対し、「つながる消費」を指向する100家族の皆さんと長期栽培契約を行い、ライスセンター・保冷庫など自給家族に必要な機械設備を拡充してきました。
米の自給家族とは、3~10年の長期栽培契約者「自給家族」を募り、契約者は、1俵30,000円の栽培経費を前払いし、契約に基づき「特別栽培米」として生産・保管し、「自給」の喜びもリスクも共有して、10kg単位で取扱、自己引取などで楽しく交流する取組です。
「源流米ミネアサヒCSAプロジェクト」は、押井の里のメリットとして、農の営みが続き農地が守られること、集落が消滅の危機から救われること、「関係人口」が生まれ暮らしが楽しくなることが挙げられ、新しい家族のメリットとして、安全で美味しいお米が確実に手に入ること、地球や人に優しい消費に貢献できること、自然や人の温もりを感じ暮らしが楽しくなることを挙げられていました。
「自給家族」の評価として、山村農地保全の切り札になり、地域まるっと中間管理方式は「現代の庄屋」であり、課題としては、「自給家族」のネットワークの課題と経営改善のポイントは「草刈りの省力化」とのことで、当地区は畦畔が広く、傾斜がきつくても、月1回、年7回ほど草刈りをされていると聞いて驚きました。
しきしまの家運営協議会は、10年後を展望し、5年間の行動計画を定めるため、敷島自治区の将来ビジョン「しきしま・ときめきプラン2020」を策定し、3つの重点プロジェクトとして「支え合い社会創造プロジェクト」、「農村景観を守る農地保全プロジェクト」、「未来への構造改革プロジェクト」を定めて取り組まれていました。
その前の2010年~2019年の10年間は、空き家活用などによる敷島自治区への移住者が、UIターン合わせて40世帯、98人で、加えて、民宿・菓子工房・助産院などのスモールビジネス起業や有機農家の新規就農など、好循環を生んだことが評価され、2020年11月27日、敷島自治区は、全国の過疎地域における自立活性化の優良事例として、最高賞である総務大臣賞を受賞されました。
敷島自治区の将来ビジョン「しきしま・ときめきプラン2020」に定められた重点プロジェクト「支え合い社会創造プロジェクト」の支え合いマッチング100件では、ナンバー1は、草刈りでその他、「大工仕事」「スマホの操作」「剪定」「農作業補助」などであり、「しきしま支え合いシステム」は、多様な価値観を認め支え合うことで身近な課題を解決し、美しい農村景観を守り、移住者や山村に関心を持つ人々を呼び込み、人口が減り、高齢化が進む社会であっても、ポジティブに幸せに生きるための仕組みとなるとのことでした。
次に、「農村景観を守る農地保全プロジェクト」について、耕作放棄農地の拡大は、美しい農村景観を損ない、定住促進の足かせになるだけでなく、集落消滅の引き金となる。生産者と消費者がつながる「自給家族」方式の横展開で敷島エリアの農地保全は可能であり、集落営農組織化を進め、「地域まるっと中間管理方式」により農地の集約を図り「自給家族」参加者を募り、Iターンを含む専業農家などと連携して60ha の全農地を保全していました。
「未来への構造改革プロジェクト」として、人口減少、小数社会化は、避けて通れず、人口規模に合った地域行事や組織、集落の再編が必要となり、移住者の増加により多様な価値観を認め合う「農村型多文化共生社会」のあり方についても研究をし、自治区役員を中心に、有識者、研究者などの助言も得ながら、新たな時代の地域経営について方向性を示して、改革は先送りせず、できることから試行、実践し、先進モデルづくりを目指していました。
最後に「しきしまの家」から始まる山村の未来として、お披露目会に約200名の参加があり、太田市長は「しきしまの家は、必ずこれからの地域自治のモデルになる」と挨拶され、「人口減少・超高齢社会を受け止めて前へ進む」、「アクティブシニアが地域のミライを拓く」、「次世代が今より幸せに暮らせる地域を残す」、「美しい農村景観を守ることが地域をつなぐ鍵」、「都市部の関係人口を地域自治の主体に加える」という大切なことを行うために、みんなの心の拠り所となり、汗をかき、楽しく努力する場「しきしまの家」を生かすことだと言われていました。
研修後のお昼はしきしまの家の日替わり定食をいただき、とても美味しかったですし、店内はお昼時でとても混んでいました。
鈴木事務局長には、一般社団法人押井営農組合やしきしまの家運営協議会の取組等を多岐に渡り詳細にご説明いただき御礼申し上げますとともに、両組織の取組が順調に進み、敷島自治区が益々ご発展なさいますことをご祈念申し上げます。
下生坂上空からの風景
△▽ 毎朝恒例の写真と動画は、先日撮り溜めの朝霧が立ち込めていた下生坂上空からの風景です。
その他生坂村では、保育園で園庭開放、小学校で金管練習、中学校で標津訪問団結式、健康応援隊in下生野、食生活改善推進協議会三役会、教育支援委員会などが行われました。