新緑の爽やかな風にさそわれて床屋に行く。
あれやこれやよもやま話を聞かされながら
喉元をすべるカミソリに緊張する。
暑くもないのに背筋を汗が流れる。
(おい、おい、大丈夫かい?)
昔から床屋は地域の情報発信源
良いことも悪いこともその日のうちに広がる。
他人の耳に私がどのように伝えられているか
興味あるところだが
ここでは私は紳士をよそおい
ひたすら聞き役に徹する。
三か月分の髪の毛が
無造作に掃き集められる。
分身として些かの惜別の情をおぼえる。
帰りがけ里山に
花を観に遠回りしたが女主人は留守であった。
初蝶か窓にひかりの過ぎりしは