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猫のプチ家出


抱いて階段を上ろうとしたタヌキに飼い猫のシロが爪を立てた。
服の上からだったので傷は付かなかったものの、タヌキは猫を投げ飛ばした。
猫はそのまま階段を駆け上がり、いつもの部屋ではなく隣の部屋に入った。
そして、追いついたタヌキにフーッと威嚇した。
タヌキはむっとして猫をつかみ、いつもの部屋の中に投げ入れたのだった。

この夜、タヌキの横で寝ている猫が、そこへは寄りつかない。
親父の所に来たりテレビの下に来たりと、その辺をうろうろしている。
そのうち、本箱の下、隠れるように居場所を見つけ、じっとしている。
タヌキが「シロ」と呼んでも無視している。
シロは猫なのに、怒られると拗ねたり逆ギレしたりするのだ。
夜中、いつものようにシロが外に出たいとせがむので、親父が2階から外に出す。

朝になり、タヌキに餌をねだって玄関に来るシロが、今朝は来なかったと言う。
猫のプチ家出だ。
「謝りに来ないなら、私も餌はやらない。戻らなくてもいい。」
タヌキの方も、猫と張り合うつもりらしい。(だから、女は怖い。)
後から住み着いたトラは巻き添い、餌はなし。
とうとうその日は帰ってこなかった。
かわいそうなトラには、午後になって親父が餌をやった。
夜、親父は少し近所を回ってみたが、見つからない。
交通事故だけが心配だ。

結局、二日目の午後、太股に怪我をして帰ってきた。原因は不明。
どこかで荒れていたに違いない。(親父なら外でやけ酒だ。)
居間の網戸を爪でひっかき、タヌキに入れてくれとお願いをしたのだと言う。
親父はその現場を見なかったが、どんな顔をして帰ってきたのだろうか。
ともあれ、タヌキが「謝ってきたから許す。」と言ったから、めでたし。
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