4月15日発売の後藤大輔さんの新刊本を読み終えました。
私は本を注文した時点では、フィギュアスケートとジェンダーという題に注目したのだけれど、フィギュア関係の本かと思って読むとそうでもなく、ジェンダーの本でもない。
むしろ、表紙に小さな文字のほうで書いてある「ぼくらに寄り添うスポーツの力」が本題で、「フィギュアスケートとジェンダー」は副題でもいいように思うけれど、あえて、フィギュアのほうを大きな文字にしたのは、平昌五輪直後の発行で、フィギュアが大注目を浴びたからかもしれません。
この本の主題は「スポーツには力がある」ということでしょう。フィギュアスケートと主にサッカーという2つのスポーツから、社会問題におけるスポーツの役割、人をつなげる力、若い世代のお手本となるトップアスリートの姿、これからのスポーツのあり方などが書かれています。
社会問題に対する目線が新聞記者らしく、多少硬派な本。
フィギュアスケートでもなく、ジェンダーでもないとすると、意図は何だろうと考えつつ最後まで読み終え、後書きに、この本を書いた意図がまとめて書いてあったので、こっちを先に読めばよかった~と思いました。
「著者は子どもたちのためになるスポーツ記事を書けないかと、迷ったときは立ち返るようにしている。対立や孤立してしまいがちな現代社会の人と人、多様な子どもと大人とを、スポーツが結びつけるような事例は特に意識して記事にしてきた。」(p211)
ここからは抜き書きをしながら内容について。
「フィギュアスケートはLGBTに他のスポーツより寛容です。アダム・リッポンやジェフリー・バトルのように、ゲイのロールモデルとなるように、ゲイであることを公表している選手がいます。」
「五輪に出てメダルを取るようなスポーツ選手が、フィールド内だけでなく、フィールド外でもロールモデルとなることができれば、社会の多くに人いい影響を与えることができるだろう」
「スポーツの世界だけに生きるのではなく、現役中にも家族や友人との生活の充実させ、社会の一員としての地域で何らかの役割を担い、社会貢献活動もする、そんな、よき人生、よき社会人のロールモデルであることを、欧米のスポーツ界は目指そうとしている。」(P35)
「欧米では能力のある人間には、スポーツでも成功できるように導き、学業も並行して行えるように支援し、社会貢献活動や、言葉や態度で周囲を引っ張るリーダーシップも身につけさせようという意識と仕組みがある。」
羽生さんは日本のスポーツ選手の中では先進的で、すでにロールモデルとなっています。社会に良い影響を与えていますが、日本スポーツ界、特に封建的に感じる相撲やパワハラ問題のあったレスリング協会もこのような考え方に進んでいけばいいなと思います。
「安藤美姫さんの私生活への関心 未婚の母への批判 父親を明かさないことは許されるのかアンケートまであった。憶測や予想情報が繰り返されると、それに引きずられてしまい、それが真実のように受け取ってしまう人も多い。根拠に基づいた情報が世の中に伝わることの大切さを再認識した。」
「ネットには、真偽不明のまとめがあげられている。一般紙でも、プライバシーに配慮しつつ、父親のことについて、確かな取材に基づいた情報をある程度提供すべきだったのではないかという後悔を、著者は今でも持
っている。」
「確かな取材に基づいた情報をある程度提供すべきだったのではないかという後悔を、著者は今でも持ってる」というところは、私自身、軽い驚きを覚えました。
その当時、この話題を知った私は、なんとなく常識的でないという、ネット報道そのままを受け取っていて、シングルマザーのおかれた立場というものに思いを致すことがなかったのです。
日本社会が、そのような立場の女性(子育てをしながら目標に向かって努力するシングルマザー)を支えようとするどころか、批判的ですらあり、突き放していることの表れであるように感じた。(p32)
スケートは友好の力にもなります。スケートを介した日中韓の深いつながり、ロシアとの交流を紹介しています。
都築章一郎コーチは中国から来た選手を育てていた、佐藤信夫コーチも中国の指導者育成に尽力した、キム・ヨナのコーチだったシン・ヘスクは日本でフィギュアを習った、などの事実を知るのはとても興味深かったです。
この後の章では、羽生さんについて書かれていることで、私が日頃感じていることと重なる部分がありますが、長くなるのでまた次回にします。