顎鬚仙人残日録

日残りて昏るるに未だ遠し…

弘道館の屋根

2015年09月02日 | 水戸の観光
予約案内は小学4年生の団体です、この世代で興味を持ってもらえることは嬉しいことですが、内容と説明する言葉を選ばなくてならないので、とても難しいの一言です。終わってから、屋根を撮ってみました。



正庁の重厚な屋根です、東日本大震災後に屋根の上に覆いをかけ、一年かけて修理しました。伝統的な技法でその道の名だたる職人の指導の下に施工した水戸市のN左官㈱のホームページに下記のように載っています。

『今回の工事は国の重要文化財であり、復元工事のため現代の材料は使用できず伝統的な材料を現場で作成して使用した。今回の仕事で何より、嬉しかったことは、若手左官へ、こまい壁、荒壁、漆喰、屋根漆喰のはら、ひも、印籠、青海波、漆喰彫刻、鬼瓦の漆喰の影盛等の左官の伝統的材料の作り方、工法の伝承が出来たことである。左官の技能伝承は、学校、訓練校、練習では不可能であり、実際の仕事を通して親方、先輩から指導をもらい、実際に仕事をして、失敗を重ねながら習得するしかない。一年がかりの工事であったのでじっくりと若手左官に技能伝承ができたのは、茨城県の左官業界にとっても大きな財産となったと思う。』

漆喰で作った波の動き、きれいな青海波と整列した印籠、職人の方の心意気を見る思いです。通常携われない技術の伝承には、確かに二十年遷宮のようなシステムが必要なのかもしれません。



破風の下部にある懸魚(げぎょ)、この形が弘道館の正門、正庁正面、正庁側面などで微妙に違います。
写真は正面のもの。棟木や桁の先を隠すための飾り板ですが、火災から守るため,屋根にほどこした火除けのまじないとされています。
上部には六葉と菊座があり、中心には樽の口、口をひねると出てくる水をイメージし、左右に流れる鰭、水と深い関係の魚で火伏のおまじない、六葉と蕪にはハート型があり、これは猪目と言うようです。分類的には、猪目懸魚になるのでしょうか、東大寺の鐘楼に似た形のものが出ていました。また、この懸魚の部分は、174年前の建設当時のものか、昭和38年の大修理のときのものかもよく分かりません。
 
正門の懸魚、ちょっと違っています。



正庁側面の懸魚、少し違うのは、大修理の時に腐った部分を取り換えるのでしょうか。